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日本の旬 魚のお話(早春の魚-7) | |
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帆立貝(ほたてがい) | |
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旬 | |
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アイヌ語で「サラカピー」と呼び、奥尻島で沢山獲れる時はニセコに近い寿都(すっつ)では不漁になると云う伝説がある。ホタテは海水をジェット式で噴出し、その反動で1〜2m泳ぐので、きっと奥尻島と寿都を行ったり来たりしているのであろう。 日本人の胃袋に最も多く入る貝で、その量は45〜50万トン。ちなみに2番手はカキの25〜30万トン、3番手はアサリの約12万トンである。旬は10月頃と云われるが、オホーツク海の天然物は6月から操業が開始される。冷凍物でも生鮮物に劣らず、味は落ちない。 海の貴婦人といわれるだけあって気品があり、清楚で奥深い味がする貝。 帆立貝 帆にさからへる 潮目かな 芭角星 |
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命名 |
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古書によると、車渠(しゃきょう)」や「海扇(かいせん)」の字が当てられていた。「車渠」は貝殻の外側にある縦の溝模様が車輪の溝、つまり渠に似ていることからで、「海扇」は形が扇に似ていることからこの字を当てた。現在でも白干などの干貝柱業界団体にこの名称が残っているし、中国では「海扇」の字が使われている。 「帆立貝」は、この貝が移動する時に舟の帆を立てたように殻を立てて海底を移動する姿からか、または、貝を焼いた時に、貝殻が殻から離れて蝶番(ちょうばん)の靭帯の力で開口するが、その時の姿が帆掛け舟に似ていることから命名したのであろう。 『和漢三才図会』には、「殻の一つは舟、もう一つ殻は帆のようで、風に乗って走る。それで帆立蛤といふ」とある。 『本朝食鑑』には、ホタテガイの膨らみのある方である右殻を竹に挟んでヒシャク代わりに利用していることが記され、「帆立蛤の殻はもろもろの毒を解する。それで大柄杓(おおひしゃく)を作り、これで諸汁、熱つものを酌み、鳥や魚、野菜の毒を解するのである。誰が始めたのかその博識の仁術は立派なものである」とある。確かに貝殻には銀が含まれており、銀イオンは殺菌作用があるので、先人達のすばらしい活用方法である。 |
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貝と介 | |
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「貝」という字はあくまでも貝殻を意味し、漢字では、良質で堅い貝の事を表す「賢」、財貨を分けてしまう事を表す「貧」、交換によって物に化ける財貨を表す「貨」、財貨の代わりに貸す事を表す「貸」、財貨を加えて増す事を表す「賀」のように使われる。一方、貝殻の中に入っている身肉に意味がある場合の漢字は、蛤(はまぐり)、蚫(あわび)、蛎(かき)、蜆(しじみ)など、全て生き物を表す虫の字がつく。「介」は二枚貝の形から生まれ、賢いという意味を表す漢字であるが、現在では意味が広がり、甲羅をもつエビ類やカニ類も含む言葉でもある。 「魚介類」という「介」は、中身に重点をおいたことから「貝」に代わって用いられたのではないだろうか。 |
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ウグイスガイ目イタヤ貝科ホタテ貝 | |
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イタヤ貝科は300種類ほどが生息しているが、イタヤ貝と間違っている人もいる。ホタテ貝は雌雄異体であるのに対し、イタヤ貝は雌雄同体で、ホタテ貝と逆に北海道南部より南が生息域である。また、殻の長さも12cmほどで、ホタテ貝の20cmに比べると小さい。 |
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形態 | |
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殻は扇形で、殻の背縁前後に耳状の突起がある。左右の貝殻はほぼ同形だが、左殻はほぼ平坦であるのに対し、右殻の方が膨らみが強く、若干大きい。左右の殻とも殻頂から腹縁に向かって放射状の肋(ろく)が25本前後走っており、右殻の放射肋は太くて強いが、左殻の肋は細い。表面に細かいウロコ状の模様が刻まれており、右殻が白色か淡黄色で左殻は紫褐色である。心臓は2心房1心室からなり、血液は無色透明。 貝柱は、二枚貝では通常2つあるが、ホタテ貝は大きいのを1つ持つだけである。外套膜縁(ヒモ)上には20〜30個の黒い眼が付いており、光の強弱や動くものによく反応する。また、外套膜の外縁には感覚器を備えた多くの触手を持つ。 |
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分布 | |
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潮通しのよい水深70m以浅の砂泥底や砂礫底に生息し、水深30m以浅に多い。生息水温は22℃以下で、20℃以上では成長が止まる。23℃以上になると斃死が出現し、25℃を超えると全滅する。 また、低塩分にも弱く、淡水中に入れると1分前後で斃死する。海底では膨らんだ右殻を下にし、平らな左殻の上に薄く砂を被って生活する。 ヒトデやタコなどの外敵に遭遇したり、周辺の環境が悪化すると、貝殻の耳状突起の両側から勢いよく水を噴出して短距離を遊泳する。 樺太、千島、北海道、青森などの冷水海に生息し、南限は千葉であるが、新生代第4世紀には東京湾にまで生息していた記録がある。 |
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産卵 | |
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サクラ前線の到達期頃に産卵が始まる。適水温は10〜15℃といわれ、陸奥湾で3月下旬〜5月中旬、噴火湾で4月〜5月下旬、また、オホーツク海では5月中旬〜6月中旬にかけて放卵と放精がみられる。放卵数は8千万〜1億8千万個。 産卵期の卵巣は桃橙色、精巣は白色を呈するため、雌雄の見分けは容易である。 |
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成長 | |
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卵は5〜7日で孵化し、受精浮遊幼生のラーバとなって浮遊生活を行う。35日前後で貝殻の蝶番から糸状の足糸を出して何にでも付着する。付着生活2ヶ月程で殻長が1cmとなり、足糸も退化し、落下して海底生活が始まる。増養殖を行う場合は、落下前に採苗器を引き上げて稚貝の採取を行う。 成長は春と秋によく、夏は高水温、冬は低水温のため成長が悪い。貝殻には木の年輪のような同心円状の線があり、成長が停滞している時に現れるため、この線を数えることで年齢を知ることが出来る。 約2年で10cm前後となり、漁獲対象になる。 海水中の珪藻などの植物プランクトンや、有機懸濁物(ゆうきけんだくぶつ)をエラで濾し取って食べる。 天敵はハリガネ虫(ポリドラ)で、貝殻に穴を開けて成長を阻害し、ヒトデからは食害を受ける。寿命は10〜12年であるが、8年を過ぎると食味が落ちてくる。 |
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増養殖 | |
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採取した稚貝を、水深10m前後の潮通しの良い場所に吊るした網篭の中に入れて中間育成し、殻長が2cm前後になった大型種苗を適地に放流や養殖をする。オホーツク海側では漁場を4区画に分け、毎年1区画づつ稚貝の放流と収穫を行う地まき式と呼ばれる方法である。養殖物と比べて収穫するまで4年と長く、また冷たく栄養分の多い海で運動量も豊富なことから、旨味成分も多く、貝柱も太い。 一方、噴火湾、陸奥湾、三陸では、篭に稚貝を入れ、海面から垂らしたロープにいくつもの篭を一列に吊るし、水深10mより深いところに位置するよう垂下する方式と、貝の前耳殻の基部に穴を開け、ロープを通して吊るす「耳づり方式」とで養殖されている。 最盛期 主な製品 収穫までの期間 オホーツク海 6〜8月 玉冷(貝柱)白干し(干貝柱) 4年 噴火湾 3〜4 ボイル、一部玉冷 2年 陸奥湾 5〜6 ベビー帆立、ソフト燻製 1〜1.5年 三陸 5〜6 活貝、生むき玉、ボイル 1〜1.5年 |
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貝毒 | |
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ホタテ貝は、春から秋季に下痢性と麻痺性貝毒を蓄積することがあるが、これはホタテ貝が動物プランクトンを餌にしている為である。毒素を持つプランクトンを食べた貝の場合、肝臓とすい臓の働きをする通称ウロと呼ばれる中腸腺に毒素が存在するので、この中腸腺を傷つけない様に取り除けば安全である。 |
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ヴィーナスの誕生 | |
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ギリシャ神話によると、海の泡から生まれた愛と美の女神ヴィーナスが波のまにまにキプロス島に着くと、四季の女神達が迎えて美しく飾り立て、神々の集まる天上の大広間に案内したという。 ボッティチェリの名画「ヴィーナスの誕生」では、ヴィーナスの台座がホタテ貝の一種であるジェームスホタテで画かれている。ちなみに、ジェームスはキリストの第1番使徒であるゼウスの息子の名。 |
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楊妃舌(ようひぜつ) | |
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中国人は貝柱を「楊妃舌(楊貴妃の舌」と形容しているほどで、中国料理には欠かせない食材。 |
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サンチャゴ(スペイン)巡礼 | |
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この巡礼はキリスト教のお遍路さんといったところだが、巡礼者は食器の代わりにホタテの貝殻を持ち歩く。その由来は、聖ヤコブの杖にホタテ貝が付いていたからとか。作家のパウロ・コエーリョは、『星の巡礼』という作品で巡礼者のホタテが光る場面を書いている。 |
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シェル石油 | |
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19世紀後半、老マレコス・サミュエルがロンドン塔の側で水夫相手の店を出していて、東インドの貝を水夫から安く買って儲けた。その遺産4万ポンドで息子がタンカーを作り、石油業を始めた。その紋章がホタテ貝である。 また、イギリスで最高勲位であるガーター勲章にはホタテ貝の紋章が用いられ、チャーチル卿もこの勲章を受けている。 |
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貝柱の旨味 | |
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貝柱のタンパク質は約21%もあり、アワビより多く、サザエと同じくらいある。煮干したものは64%にもなる。この様にタンパク質が多いということは、噛めば噛むほど旨味の出ることを意味する。甘味はグリシンの含有量が多いからで、グリシンは他のアミノ酸と比べると非常に甘味の強いアミノ酸である。また、コクのある旨味を出すコハク酸もアサリの10倍あり、シジミに次いで多い。 |
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食べ方 | |
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殻付きのホタテ貝は、まず殻をタワシでよくこすり、汚れをきれいに洗い流す。殻の膨らんでいる方を下に持ち、殻のあわせ目に包丁を入れ、ねじる様にして開ける。この時、貝殻をあまり空け過ぎると二枚の貝殻が離れすぎ、後で焼く時に焼きにくくなるので注意する。 身をはずして水洗いし、この身を殻に入れ、そのまま火にかけて醤油をさして食べると、磯の香りが口いっぱいにひろがる。殻付きを焼く時は、丸みを帯びた方を下にして焼き、旨味の出た汁をこぼさない様にするのがポイント。 貝柱は生では軟らかく甘味があり、火を通すと濃厚な旨味が出る。刺身はワサビ醤油や二杯酢やレモン汁で食べてもよい。 野菜や他の魚介類と炒めたり、ワイン蒸しにしてもよい。 酒とミリン、醤油で一煮立ちさせ、炊き込みご飯も美味しい。 ヒモは塩で揉むようにしてよくぬめりと汚れを取り、水で余分な塩分を落とし、刺身や酢の物や和え物にする。また、酒蒸しや煮付けにしてもよい。 干し貝柱はぬるま湯でよく戻してから煮物や中華料理に使う。 貝殻節 (鳥取県気高郡浜村に伝わる浜村音頭) 小さい時から貝殻漕ぎなろて 今じゃ舵取りとも櫓とり 帆立貝なら帆立てて行こよ わたしゃあなたの身を立てる *帆立貝の採取は重労働であったとのこと、当時は イタヤ貝をホタテ貝と呼んでいた当時の名残りである。 |
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