日本の旬・魚のお話

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日本の旬・魚のお話
日本の旬   魚のお話(秋の魚-9)
喜知次(きちじ)
旬 
昭和の中頃までは主に肥料にされたり、また、仙台名産の「笹かまぼこ」の原料にもなったり、下魚扱いの魚だった。
キチジも乱獲によって漁獲量が減少し、今では高級魚となっている。
東北の太平洋側の地域では、鯛に代わる祝い魚として古くから珍重されてきた魚で、正月にキチジを神棚にお供えする風習があった。
近年では、アラスカキチジなどの近縁種が、冷凍品の粕漬けとして出回っている。旬の冬には脂ものり、白身の身肉も最高に旨くなる。
              喜知次煮て 焼きて我が家の お正月      博 風
命名
体色が黄色ががった血色(ちいろ)であることから、魚名語尾の「ジ」を付けて「黄血魚(きちじ)」の意で呼ぶのであろう。
また、体色が朱赤色で目出度い吉兆であるという意味からの命名との説もある。漢字で吉次とも書く。
地方名
アスナロ(三浦)・・・・・一般に檜の一種であるヒバをアスナロと呼び、「明日は檜になろう」の意に解する。キチジの場
             合は「明日は鯛になろう」という意に解すべきなのだろうか。高知でイトヨリを「アスナル」というの
             と同義であろう。
キンキン(東北・北海道)キンキ(関東)
          ・・・・黄金色で輝かしいばかりに赤く、美しい魚の意でいう。
アカジ(東北)・・・・・・・赤魚の意で呼ぶ。前記の通り「ジ」は魚名語尾で「ギ」と同義語尾。神奈川県三浦地方では赤色
             のキンメダイを「アカギ」と呼ぶ。
メイメイセン・メイメ(釧路)
          ・・・・「朱色の魚」の意でいう。「メイメイ」はアカアカ(明明)したことであり、信州や東北地方では朱色
             のことを「メイメイ」という。「セン」は「セ」の音便で魚名語尾。
   英名 Bibhand thornyhead、Kichiji rockfish
カサゴ目フカカサゴ科キチジ
熱帯や温帯海域を中心に生息。代表的な仲間にはメバルやクロソイ、キツネメバル、オオサガ、アコウダイ、カサゴ、オニオコゼなど、388種の大グループ。多くの種類が背鰭や尻鰭、腹鰭の棘条に毒腺を持っている。
   アラスカキチジ(近縁種)
      頭部の断面はほぼ円形で、背鰭の黒斑紋が不明瞭な点はキチジと異なる。体長は80cmとなる大型魚。北
      海道東部からベーリング海をへて北米東岸まで分布する。味はキチジより劣るが、多くは切身で出荷され、
      味噌漬けや干物に加工される。
形態
体は長卵形で側扁する。頭部の各種の棘は強く鋭い。口は大きく、上アゴの後端は眼の中央下に達する。胸鰭の後縁に切れ込みがある。体色は朱赤色で背鰭の棘部に大きい黒斑があるのが特徴。体長は約30cmに達する。
分布
駿河湾以北の本州や北海道、および千島列島の太平洋側とオホーツク海南西部に分布する。特に東北や北海道の太平洋側に多く、日本海側には生息しない。
水深150〜1200mの大陸棚斜面に分布するが、200〜600mの岩礁域に定住する。若魚は浅所に、高齢魚は深所に多く生息し、大きな回遊はせず季節的な深浅移動を行う程度。
産卵
体長は北方海域ほど大きく、三陸北部から北海道海域では、メスは体長15cmから産卵を始め、オスは17cmぐらいから成熟する。
常磐海域ではメスは13cm、オスは12cm以上で成熟する。
産卵は北海道周辺で2〜5月頃に行われ、長さ35cm、巾6.5cmの長楕円形の卵塊となり浮遊する。透明のゼラチン質中に卵が一層に配列され、卵塊は中空である。産卵数は3万粒前後。水温12〜18℃なら9日間前後で孵化する。
成長
仔魚は産卵後13日目で体長3.8mmとなり、卵黄が吸収される。1年目で約8〜9cm、2年目で約12cm、3年目で約15cm、4年目で約18cmとなり、その後1年で1〜2cmづつ成長し、30cmに達する。
幼魚はオキアミ類を多く食べ、15〜20cmではエヒ類も食べる。体長20cm以上の個体はエビ類と魚類を食べ、大型魚ほど底生性の餌を多くとる。
漁法
底引き網が中心で、道東太平洋ではウビ桁網、網走沖では刺網や延縄で漁獲される。三陸沿岸では盛夏を除き、周年漁獲されている。
道南太平洋で1968年に2500トンの漁獲があったが、現在では百トン台に減少した上、魚体も小型になり、大半が成熟前後の魚で占められている。
栄養たっぷり
脂の中に、コレステロールを低下させて血圧を下げる働きのあるDHAや、血栓を作りにくくするEPAが多く含まれている。
赤い色素のアスタキサンチンにはガンの抑制作用があることも研究され、皮を残さず食べるほうが栄養を多く摂れる。
食べ方
眼が落ち窪まず澄んでいるもので、体はみずみずしく鮮やかな朱色をし、背ビレの黒い斑紋がくっきりしているものを選ぶ。
鮮度の良いものは刺身にし、煮付けや干物、唐揚げ、鍋料理、または粕漬けや味噌漬に加工される。
   煮付け・・・・・脂が乗っているので、やや甘辛く煮付けるのがコツ。煮汁にはキチジの旨味やコクが出るので、野
           菜やキノコ、豆腐などをその汁で煮ると旨い。特に肝臓は口の中でとろける格別の珍味なので、忘
           れずに利用すること。
   二度味わえる開干し
        ・・・・身をていねいに食べずに粗く食べた開き干しを、もう一度焙り直して醤油をたらし、さらしねぎを散ら
           して熱湯を注ぎ、スープにする。こうすると頭やカマのまわり、中落ちの旨いところが無駄なく味わ
           える他に、身や骨から出たエキスのスープがなんともいえない旨さである。お酒の好きな人は焙っ
           た骨に熱燗を注いで骨酒にするもよい。


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