日本の旬・魚のお話

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日本の旬・魚のお話
日本の旬   魚のお話(秋の魚-12)
芭蕉旗魚(ばしょうかじき)
ヘミングウェイの『老人と海』に登場するのが、この種の魚である。俳句の季語は「旗魚鮪」で、店先でも「カジキマグロ」の俗称で売られている。
肉の色は白っぽいメカジキを除いてピンクだが、特に赤味が濃く色鮮やかなマカジキは刺身やすし種として利用されている。旬は、マカジキが冬で、それ以外は夏から秋。味の方はマカジキが最も美味とされ、次いでシロカワ、バショウ、クロカワ等の順になっている。
              旗魚は 王者の如く 天駆けり     魚 秀
命名
「梶木(かじき)通し、上唇よく梶木をも通す意なり」と辞典にある。広辞苑だけは、「尖った顎で船板を突き通す意からでた語」とある。カジキは和船の船側の最下部をなす板で、「ねだな」ともいう。カジキトオシがカジキに縮称された言葉。
『和漢三才図会』には、カジキはフカの仲間だとして、「岩穴にいる長いもので一丈余、春になると初めて出てきて陽に浮かぶが、日を見ると目が眩(くら)む、肉色は純白で寿司にするが珍とはいえ人に益なし」と愛想のない紹介である。
漢字は、背鰭が旗の様に見えることから「旗魚」、または船板から「梶木」や「舵木(かじき)」。
バショウカジキの背鰭はカジキ類で最も大きく長く、水面の上に広げて泳いでいる姿は壮厳で、その色彩も美しい。その背鰭が芭蕉の葉に似ているところからの命名。
地方名
スキヤワ・スギヤマ(紀州)
           ・・・・透綾魚(すきやま)と書く。透綾(すぎあや)は透き通るように織った模様入りの薄い布のこと。こ
              の魚の背鰭が透綾のようであることから、この語が転じた名。
オイラギ(関西)・・・・・・大棘魚の略称であろう。先が尖って長い吻を持った魚の意。
ノウラギ・ナイラゲ(関西・四国)
           ・・・・矢竹の古名を「ノ」といい、矢竹のように細く、棘のように先が尖った吻の魚の意。
カンヌシ(富山) ・・・・・・神主は長い直垂のついた冠を被っている。この魚の長い大きな背鰭があることから、神主に例
              えていう。
アキタロウ・アツタロウ(鹿児島)
           ・・・・秋に多くとれる大魚の意。秋多魚や秋大魚を表す。
ハウオ・ハイオ(九州・山口)
           ・・・・芭蕉の葉のようであるから葉魚と呼ぶ。九州ではカジキ類の総称として呼んでいる。
ビョウブ(富山)・・・・・・・屏風の意で、背鰭の大きいことから。
バリン・バレン(対馬・山陰)
           ・・・・竹製の熊手を山陰ではバリンやバレンと呼んでいる。この魚の背鰭の広く開いた様を熊手に
              例えた。
   英名  Banana sailfish Peacock fish
スズキ目カジキ亜科マカジキ科バショウカジキ属
仲間にはメカジキ一門があるが1種1属である。マカジキ科は4属5種ある。
マカジキ科
     ・バショウカジキ属・・・芭蕉カジキ
     ・クロカジキ属・・・・・・・黒カジキ・白カジキ
     ・フウライ属・・・・・・・・・フウライ・マカジキ
     ・アマシイラ属・・・・・・・アマシイラ(コバルト色の横シマの模様がある)
メカジキ科
     ・メカジキ属・・・メカジキ
        突出した上アゴの断面が縦につぶれた楕円形で、尾柄部の隆起線が1個(マカジキ科は2個)。熱帯か
        ら温帯にかけて世界中に広く分布する。地中海、北大西洋、南大西洋、インド洋及び大西洋の4つの群
        がある。
形態
体は紡錘形で延長し、著しく側扁する。吻部は突出し、第1背鰭は大きく、帆のような形状をしているのが大きな特徴で、尾柄部の両側には2対の隆起線がある。ウロコは変形し、長いが先端は鋭くなく、体表に粗に分布する。
体色は体側背部が淡青色、体側腹部は銀白色、全長は3mを超える。
1981年に高知の足摺岬沖で、船底をこの槍ような口吻で突き刺されて漁船が浸水するという事件が起こった。
分布
熱帯から温帯域に生息。アフリカ大陸の東岸からインド洋や太平洋、アメリカ大陸の西岸に広く分布する。日本では夏に富山や新潟辺りまで北上する。
外洋の表層に生息し、カジキ類では最も沿岸に寄る。背鰭を水面から出して表走する。
産卵
眼の後から尾ビレの後縁中央部までの長さが、106cm前後となる頃から成熟し始める。体重6kgで500万粒ほどを産卵し、産卵期は台湾周辺で4〜5月。卵は球形で直径1mm前後の分離浮性卵。
成長
日本では5〜10月に仔稚魚が南の海域に出現し、全長20cm頃から背鰭が大きく成長し始める。肉食で、カツオやマグロ、アジ類などの高速遊泳魚や、イカ類を食べる。特にカツオが好物で、大きな背鰭を振り立てて魚類を脅し、長い吻部を振り回して薙倒し、弱ったところを食べると言われている。
漁法
日本には昔から「突きん棒」という、きわめて独創的な漁法があった。
これは樫(かし)の棒の先端に銛(もり)を取りつけ、船上からカジキの心臓めがけて突き刺すという職人芸。今では、大衆的な漁法に変化して電気銛が使われ、カジキに命中すると電気が流れて絶命するという仕組みになっている。
一般的には延縄で多く漁獲されるが、定置網や流網も行われる。漁場は太平洋やインド洋の北緯10度から南緯10度の範囲の沿岸部。1000〜1500トン前後の漁獲量がある。
カジキが人を刺し殺す
昭和38年3月の新聞に、「神奈川県三崎町の漁船がタヒチと南米の中間地点で釣り上げた重さ500kgのカジキが獰猛で甲板上で暴れ、冬木さん(船員)はカジキを殴り殺そうとして、胸を刺され死亡した」との記事が掲載された。
カジキは手負いになると水面に跳び上がって襲ってくる。性質は荒く、クジラすら一突きで殺し、船を襲う事もある。
老人と海 
ヘミングウェイの著。
老漁夫サンチャゴとマーリンは兄弟であり、また良き友でもある。しかし、サンチャゴとマーリンには共通の敵がいた。せっかく仕留めたカジキを舟の横腹につけての帰路で、サメたちに襲われたカジキは骨クズ以外は何も残していなかった。哀調あふれた名作である。
食べ方
マグロに肉質の感触や色合いなどが似ていて、マグロの代用品として使われる。
マグロより淡い紅色で、身はしまっている。刺身用に色持ちがよく、マグロのように変色しないし、身から水分が出にくいため、早くからつくり置きの出来る利点がある。
魚は普通、脂肪ののった腹側が美味しいとされるが、カジキは脂肪が全体的にのっており、身のしまりのよい背側が美味。ただし尾に近い部分にはスジがある。
メカジキは身が柔らか過ぎて刺身には不向きだが、焼き物や煮物によく、冷めても身が固くならないので、お弁当に向いている。
油との相性がよく、調理用途は多様である。肉味が淡白なので、生姜を用いるのもよい。煮物には味の染みやすいネギと一緒にすると美味。アルミカップを利用したマヨネーズ焼などは子供のメニューにピッタリ。
生姜やみりん醤油のタレに漬けて焼いたり、バター焼、ステーキにもよい。
   幽庵焼き
      幽庵汁(醤油2、ミリン2、酒1、ゆずの輪切り)に、水気をとった2.5〜3cmの切身を途中で返しながら2時
      間程漬け、汁をきって串に刺して焼く。串は肉質の繊維に対して直角に刺すことで、身が割れて串から離れ
      落ちるのをふせぐ。焼き方は皮側から焼き、次に身のほうを焼く。八分通り火が通ったら、またタレをかけ、
      乾かすように2〜3回照りよく焼き上げる。


         水揚げの 舵をくひいる 旗魚かな        早川 信一
         悪童の ごとく旗魚の 横たはる             頬魚
         嘴も尾も 削がれて河岸の 旗魚かな      吉田 道子


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