日本の旬・魚のお話

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日本の旬・魚のお話
日本の旬   魚のお話(冬の魚-24)
蜆(しじみ)
「アサリは身をシジミは汁を」と云われる様に、シジミはコハク酸を多く含み、エキス分が出た汁は旨い。
江戸時代から黄疸(おうだん)に効くと云われており、「シジミ売り 黄色なつらへ 高く売り」という川柳からもそれがわかる。これは、シジミに多く含まれるビタミンB12の効果と思われる。
旬の言葉に「土用蜆」と「寒蜆」があり、夏の「土用蜆」には大和蜆が、冬の「寒蜆」には真しじみが旨いと云われ、四季を通じて食卓に上がるが、やはり身が締まった冬が一番美味しい。しかし、瀬田蜆だけは春が旬で、シジミの中でも最高の味と云われている。
                     花にまだ 早き京都の 蜆汁       黙鳥
命名
殻が縮んで見えることからの「ちぢみ」が、「しじみ」になったと云われている。字源は不明であり、万葉集では「四時美」の字が当てられている。
『本朝食鑑』では、「江州の勢多(瀬田)の橋あたりで多く獲れ、その身は最も厚い、これは上郡の嘉珍である」と瀬田蜆を絶賛している。また、瀬田蜆は貝殻がべっ甲色をしているので、紅しじみとも呼ばれる。
地方名
マシジミ・・・・・・・アワジシジミなど。
ヤマトシジミ ・・・ニッポンシジミ、ヒメニッポンシジミ、サドシジミ、センコクシジミなど。
 英名  Fresh-water clam(真蜆)、Brackish-water clam(大和蜆)
二枚貝網マルスダレガイ目シジミ科
一般にシジミと称しているが、主にマシジミとヤマトシジミ、セタシジミを指す。地質時代にヤマトシジミが大陸の海岸線の移動によって琵琶湖に閉じ込められ、淡水に適応し、分化したのがセタシジミと云われている。
形態
小型の二枚貝であり、貝殻は三角形に近い楕円形で、殻頂は突出する。殻表には粗い成長脈が走り、外面は褐色から黒褐色をしている。
マシジミ・・・・・・・・殻頂の光沢は弱く内面は紫色。若貝は横長で、殻表外面は黄褐色をしており、不規則な黒斑があ
           る。殻長4cm・殻高3.5cm・殻幅2cmに達する。
ヤマトシジミ ・・・・外面は殻頂に光沢のある黒色で内面は淡紫色。若貝は殻表に光沢があり、殻頂から黄褐色の放
           射状帯が走る。殻長4cm・殻高3.5cm・殻幅2.5cmに達する。貝類の中ではコハク酸を最も多く
           含むので、汁物にすると旨い。
セタシジミ ・・・・・・殻頂は黒褐色で内面は紫色。若貝は殻頂は光沢のある黄色をしている。殻長3.5cm・殻高3.5
           cm・殻幅1.5cmに達する。
分布
マシジミ・・・・・・・・純淡水性で、川の上流の砂礫底を好み、河口域には生息しない。塩分濃度が2.7%以上になると
           2週間で斃死する。本州以南から朝鮮半島、中国北部に分布し、北海道には生息しない。
ヤマトシジミ ・・・・淡水及び汽水域性で、塩分2.3%以上の水域には生息しない。樺太以南から朝鮮半島に分布し、
           日本では、北海道から九州に至る比較的大きな川の河口や、宍道湖のような汽水湖に生息する。
セタシジミ ・・・・・・琵琶湖水系の特産であったが、現在では諏訪湖や河口湖にも移植されている。水深1mから5mま
           での砂泥底に多い。
マシジミの産卵と成長
春から秋に多回産卵する。雌雄同体で、体内に卵と精子の両方を持つため、自家受精も行う。
産卵は日の出後と日没前に行われ、産卵から孵化するまでの時間は水温24℃で18〜20時間。卵胎生で、受精卵は親貝体内の保育嚢で孵化する。
保育嚢で孵化された幼生は、水温22℃前後なら3〜5日後に体外へ放出される。放出された幼生は浮遊生活を行い、殻頂が伸張し始める頃、足糸を出して水底の砂粒や木片に付着する。
その後、砂泥中に潜って生活し、6ヶ月で1.1〜1.3cm、1年で1.6cm、2年で2.5cm前後に成長する。1年後に成熟する。
ヤマトシジミの産卵と成長
春から夏に産卵し、マシジミと異なり雌雄異体である。産卵期の雄の内臓は黄白色、雌の内臓部は灰黒色になる為、識別が出来る。産卵から孵化までは約1日。
幼生は10日間ほど浮遊生活を行ったのち、底生生活に移行する。4ヶ月で殻長0.1cm、3年で2cm、5年で2.5cmに達する。珪藻などの植物プランクトン、有機混濁物などを食べて成長する。水温が12.5℃以下では成長が鈍化する。
セタシジミの産卵と成長
夏の6月から8月が産卵期で、雌雄異体であり、体外受精を行う。水温が20℃なら80〜90時間で孵化する。
生後1年で穀頂は1cm、2年で1.5〜2cm、4年で2.5cmに達する。
漁法
小型の桁網(けたあみ)や鋤簾(じょれん)で漁獲する。
日本では約3万トンが漁獲され、量的には利根川水系の茨城県や千葉県で全国の70〜80%の漁獲高を占める。また、種類ではヤマトシジミが圧倒的に多い。
鋤簾とは、長い柄の先に熊手のような歯を持つ篭を付けた道具で、先端の歯の部分を水底に押し付けるように柄を押さえ、引きずって採取する。
マシジミは内陸の各地で利用されるが、量的に市場出荷されるほどではない。
ヤマトシジミは利根川水系や宍道湖を中心とする地方に多い。
セタシジミは琵琶湖を中心として漁獲されるが、1957年(S32)の6072トンをピークに現在では約100トン以下と落ち込んでいる。
乱獲や水質の汚染、汽水域の減少により生産量は激減したが、各地で種苗の放流や移植が行われている。中国を中心に毎年約1万トン前後が輸入されているが、日本の種とは別種。
俗諺
蜆千より法螺貝(ほらがい)一つ
         ・・・・小さなシジミを千個集めても、法螺貝の用をなさないという意で、役に立たないものをいくら集めて
            も何の役にも立たないことの例え。
蜆で海をはかる・・・小さなシジミで大海の水の量を測るのは所詮無理な話で、無駄な労力を例えていう。
蜆貝で行水 ・・・・・・狭苦しいく窮屈であることの例え。
蜆が裃(かみしも)を着たよう
         ・・・・背の小さい人がかしこまっている様をいう。
内に居る時の蛤・外に出た時の蜆
         ・・・・「世間の蜆・門前の蛤」ともいい、家にいる時は威張っているが、人前に出ると意地がなくなり小さ
            くなることで、「内弁慶の外仏」と同義語。
土用蜆は腹薬・・・・土用の頃に出回るシジミは、夏バテの強壮剤として暑気当りや腹下しに効くという俗諺。
業平(なりひら)しじみ
『魚鑑』に、「東都、角田川(隅田川)のものを業平しじみと呼ぶ、その肉、殻裏に満ちてうまし」とある。業平は六歌仙の一人、在原(ありはらの)業平のことで、小野小町と並ぶ美男美女の代表。
その美男の名が江戸のシジミに付けられたのは、二条皇后との密事がバレて京を追放された業平の東下りに関係したのか、それとも都に残してきた女性を偲んで詠んだ業平の『都鳥』の歌に哀れをもよおした後世の酔人が付けたものかは、はっきりしない。江戸川柳には「色男 吾妻に貝の 名を残し」とある。
滋養満点
酒宴の後のしじみ汁は心のこもる一杯である。
シジミはアサリと比べ、カルシウムや鉄分といったミネラルが多く、糖質含量やビタミンB群の含量も数倍豊富である。また、タンパク質に含まれるアミノ酸の中のメチオニンやグリコーゲンなどが肝臓の働きを助け、肝臓の中のコレステロールを取除くタウリンも多い為、肝臓や黄疸の薬にもなるし、旨味成分であるコハク酸も非常に多く含んでいる。すなわち、栄養的な面からすれば、シジミはとても体によい食べ物である。
食べ方
口の大きく開いたものは良くない。また、貝殻の膜を張ったようなものも避ける。貝殻に光沢があり、水の中で触った時に、呼吸のために薄く開いた口を勢いよく閉めるものを選ぶ。マシジミの場合では、貝殻が真っ黒なものよりも赤っぽいものの方が美味しい。
シジミのほとんどが味噌汁の具として利用されている。シジミは真水でも砂を吐く。あまり火を通し過ぎると身肉が硬くなるので、貝の口が開いたら早く火を止める様にする。ちなみに、もち米を数粒いっしょに入れると身と殻がよく離れるとのこと。
味噌は赤だしや田舎味噌の方が合い、吸い口にユズの皮をあしらうと香りがよい。佃煮や時雨煮にする時は、ムキ身にしてから煮るが、ショウガを加えて煮汁がなくなるまで煮詰めると臭味も取れ保存性が増す。


           たくさんに 箸が骨折る しじみ汁          江戸の川柳
           行きつけの 医者に蜆を すすめられ          椿
           見る眼には 優雅に見える 蜆舟            泉甫


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