日本の旬・魚のお話

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日本の旬・魚のお話
日本の旬   魚のお話(冬の魚-16)
介党鱈(すけとうだら)
江戸時代までは、朝鮮半島から伝わった「明太魚(めんたい)」の呼名が一般的に使われていたという。今でも、スケトウダラの卵巣の塩蔵品を唐辛子などで調味したものは、明太(めんたい)子と呼ばれる。タラコもマダラではなくスケトウダラの卵巣から作られる。
この魚は「足の早い魚」、つまり鮮度落ちが早いため、昔は鮮魚として利用出来なかった。その為、真子(卵巣)と白子(精巣)を取るためだけに乱獲し、身の方は捨ててしまっていた時代もあったが、現在では「すり身」の原料として重要な役割をもつ魚である。
真鱈と同様に冬が旬。

             奥蝦夷の 沖の暗さに すけそ船      板谷 島風
命名
タラ漁は網を揚げるのに人手がかかり、助っ人がいるので「助っ人だら」といわれたとの説がある。
また、江戸時代の『魚鑑』には、「体色微黒にして痩小(そうしょ)なる一種あり、シッコケダラとかスケトウダラという。佐渡金山に真近き所にとれるものは味よし、よって佐(すけ)・渡(と)という」とでている。このことから、タラを付けず「スケトウ」、または「スケトオ」と呼ぶのが正式であろう。
タラの名前を冠したのは明治時代末で、これは塩の奨励金がタラ産業にしか支給されなかったことから付けられるようになったと云われる。
漢字の「介」とは貝の当て字であり、「とるに足りないものを云う時の言葉」でもある。よって「介党」とは、とるに足りないマダラの郎党とも解釈出来る。
また、底にいる魚の意味から、魚偏に底の一文字でスケトウダラと読むこともあるし、『魚鑑』にあったように「佐渡鱈」と書くこともある。
 英名 Pollock whiting
助宗鱈・助惣(すけそう) 
この魚の正式名を「スケソウダラ」と思い込んでいる人が少なくない。これはNHKの放送が原因だった。太平洋戦争の終戦当時は食料難の時代であり、配給物資の放送をNHKが毎日伝えていた。
「今日の配給品をお知らせします。○○地区スケソウダラ・・・・」
この配給のお知らせでNHKは、何故か「スケソウダラ」と報じたのである。当時、耳からの情報収集手段はラジオしかなく、しかもたった一つの放送局がNHKであった為に影響力は絶大で、以来、半世紀過ぎた今でも、この魚の正式名称を「スケソウダラ」と思い込んでいる人が少なくない。
地方名 
漁場が狭い為、地方名も少ない。
マダラに比べて体色がやや黄色いことからギダラやキジダラと富山で呼ばれるほか、ナツトウダラ・ヨイダラ(新潟)、アラ(長崎・熊本)、エゾイソアイナメ(小田原)など。
タラ目タラ科スケトウダラ属
タラ科の魚は、鰓孔の上端が胸鰭より高い位置にあること、第1背鰭は頭部より後方から始まること、また、尾鰭は上下相称であることなどが特徴づけられる。日本ではマダラやコマイを合わせた3種がよく利用されている。
   タラ科 ・・・・・・ 30種   メルルーサ科・・・・・・13種
   ソコダラ科・・・285種   マクルノルス科・・・・・ 8種
   チコダラ科・・・ 98種   ムラエノレピス科 ・・・ 4種
   ピュキス科・・・ 27種
形態
体は細長く側扁し、体長は、マダラが体高の5倍に対して約6倍あり、背鰭は3基で尻鰭は2基。雄の腹鰭が雌よりも長く伸びているのは、産卵時、雄が雌を抱くような行動をするのと関係があるらしい。吻部は尖り、目と口は大きく、マダラと反対に下顎は上顎より長い。また、下顎にマダラのようなヒゲがないのも特徴。
体色はマダラと同様に、体側背方が褐色で虫食い状の斑紋があり、体長は70cm。
分布 
北太平洋と日本海、ベーリング海、オホーツク海に広く分布する。日本近海では、太平洋側は宮城県以北、日本海側では山口県以北の沿岸と沖合に棲息。
棲息水温は10℃以下で、2〜5℃の海域に多く、水深200mの大陸棚やその斜面に棲息する。夜間には表層域や中層域に浮上することもある。季節的に深浅移動を繰り返すようで、冬から春にかけては100〜200m以浅の比較的浅い海域に、夏から秋の高水温では300m以深に移動する。また、餌を獲るために分散し、産卵期に再び沿岸に回遊するという生活を繰り返している。
産卵
北海道周辺の産卵期は12〜4月で、1〜2月が盛期。
スケトウダラは、産卵に適した1〜5℃の水温帯で、しかも水深200mの等高線が入り組んだような卵や稚魚が沖合に流されにくい海底地形を産卵場としている。
産卵は、雄が雌の下側に入って反転し、腹鰭で雌の腹側を支えたままの姿勢で、雌雄が重なり合って泳ぎながら放卵、放精する。また、一連の産卵行動の間、雄はうき袋を振動させて発音をし続ける。
一尾の雌は、1ヶ月ほどの間に数日間隔で数回産卵を繰り返す。体長40cmで約20万粒、60cmで100万粒の卵が産卵される。中層から底層で産み出された直径1.3mm前後の受精卵は、バラバラになって海中を浮遊し、水温2℃なら約30日、4℃なら20日、6〜7℃なら15日間で孵化する。
成長
孵化直後の仔魚は全長4mm前後で細長く、体の2ヶ所に黒い色素の集まりがあり、これがタラ類の稚魚の特徴。仔稚魚は沿岸の浅海域の表層で、体長3〜7cmくらいになるまで遊泳生活をする。生後1年で体長が約14cm、2年で22cm、4年で38cmとなり成熟する。年齢が8〜9年に達すると51cm前後、体重10kgを超える大物もみられる。
日本海側のスケトウダラは成長が悪く、成熟する4歳で体長が約31cmと、1年ぐらい成長が遅い。
生後3〜4年で成熟し始め、5年で全ての個体が成熟する。仔稚魚は動物プランクトンを摂取し、やがて魚類やイカ類を食べるようになる。成魚が幼魚を食べる共食いを行うことが知られている。
漁法・漁期
スケトウダラの漁場は、カナダ沿岸から韓国沿岸まで広がっている。
日本近海での主な漁場は、檜山地区や噴火湾、根室海峡などの北海道の周辺と三陸沿岸。底曳網、底刺網、延縄で行われ、延縄物の釣りのタラは黄金色に輝く鮮度を保つため、他の漁法で獲れたものとは一線を画して取り扱われる。
漁獲盛期は、産卵期とその後の索餌期に一致している。北海道やオホーツク海では12〜4月、日本海北部では3〜5月、三陸海域では11〜6月、東北沿岸では初夏に大漁の幼魚が漁獲され、養殖用の餌として利用される。韓国への輸出も1996年頃から行われている。
俗諺
介党の嫁入り・・・・・・・・・・スケトウダラは肉よりタラ子が有名で、腹に子を宿して嫁に行くことのたとえ。
干鱈提げて礼に行く ・・・・相手に敬意を表して挨拶に行くという意で、上には上があるというたとえに使う。干鱈はよく
                進物に使われた。
すり身
蒲鉾や竹輪、ハンペンなどの煉製品に無くてはならない存在になった。
このスリ身は昭和30年代後半に発明された、スケトウダラを船内で加工、冷凍するという画期的な技術によるものである。もともと蒲鉾などの業者は、例えば四国のエソ、山陰のカレイ、宮城のヒラメやキンキといった地元特産の魚を主材料として、その味に特色を出し、それぞれに自慢の味を誇ってきた。
しかし、近海の原材料が減少して値上がりすると、他の雑魚を混ぜたものになった。そこに突如、発明された技術よってスケトウダラの船内加工の冷凍スリ身が登場すると、最初は敬遠気味に使用していたが、大したくせもないこのスリ身を主原料とするようになった。
その様な訳で、日本各地の名産品も殆ど似た様な特色のない味の製品になってしまったのである。コピー食品のカニカマやホタテ貝柱なども、このスリ身が原材料になっている。
たらこ
タラコが生産される様になったきっかけは、マダラが不漁の際にスケトウダラを漁獲したことによる。それまでは身肉の殆どが肥飼料にしか利用されていなかったが、卵巣の方は食品化が進み、大正時代の頃から塩蔵品が出回るようになった。
鮮度が落ちてくるとくすんだ桃色に変わってしまうのだが、食用色素を加えて紅色に着色することが考案され、「紅葉子や旭子」の商品名で出荷されるようになった。また、博多名産の辛子明太子は、唐辛子をベースにした味付け液に漬け込んだもので、朝鮮語でスケトウダラをメンタイと呼ぶところからの名である。
塩タラコは、
原料の解凍 − 塩・調味料・食用色素を加えた液への漬け込み − 熟成 − 水切り − 整形・選別 − 計量・パック
といった5〜6日間の工程を経て製造され、冷凍品として出荷される。
国内産が主流だった頃は、北海道産のものが11〜2月頃に多く出回ったが、アラスカやロシアで漁獲される様になり、船内で加工、凍結された原料を使用するようになってからは、一年中供給される様になった。
現在、世界各地のスケトウダラ資源は減少傾向にあると云われ、魚体も小型化し、それにともなって卵巣も小さくなり、商品価値が下がっている。そこで、最近は南半球で獲れるミナミダラや深海で獲れるソコダラ類の卵巣が、代用品として利用される様になってきた。
食べ方
鮮度の良い物が手に入ったら、チリ鍋、煮魚にすると美味である。
 真子(卵巣)・・・・旬の時期の真子はうすい桃色で美しく、艶があるものが良品である。その真子を一口大に切って、
           切り口から裏返して水洗いし、だし汁に醤油や酒、味醂、砂糖などで味付けし、さっと煮詰めたもの
           は花が開いたようにきれいで美味。小芋などと共に煮るのもよい。
 白子(精巣)・・・・別名「菊子」ともいわれるように、菊の花が開いたように白く美しい。この白子を塩を加えた熱湯で湯
           がき、或いは酒蒸しにして、ポン酢醤油に薬味で食べると、口の中でとろりと溶ける風味は滋味にあ
           ふれ、酒の肴に絶品。また、白子はチリ鍋にしたり、大根の干切りと共に味噌汁に仕立てて白子汁
           にしても美味。
煮付ける場合はコンニャクとゴボウを加えて煮る。スケトウダラにはゴボウがよくあう。
タラ鍋は豆腐に白菜、ネギ、エンノキ、シイタケなど具をたくさん入れ、ユズを加えた出し汁で煮る。
スケトウダラと同様に、マダラの真子や白子も食べられるが、マダラの真子は卵巣を覆う袋の皮が黒く、それこそ斑状で、見たところ食欲がわかない。また、白子も大きすぎて見栄えは悪いし、スケトウダラよりもやや大味である。


           鱈船の 錨凍らせ 接岸す        三関きよし
           横たわる 介党鱈に 雪容赦なし       魚秀
           鱈汁や 夫婦おのずと 国ことば    永谷八重女


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