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日本の旬 魚のお話(秋の魚-18) | |
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真鯊(まはぜ) | |
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旬 | |
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かの有名な歌麿も、「はぜ釣り舟」の題で遊女達の遊びの釣りを描いている。江戸の昔からマハゼは遊魚の対象として人気があり、秋には多くの釣り人が釣糸を垂れるという風物詩の一つでもあった。 寒さが増してくると脂が乗ってきて旨さが一段と増し、活魚での扱いで季節感を持つ高級魚のひとつである。だが、市場に出回ることは少なく、種物屋で扱っている。 また、サンゴ礁に生息するハタタテハゼやアケボノハゼなど、観賞用としても近年人気が高まっている。 ひらひらと 釣られて淋し 今年鯊 虚 子 |
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命名 | |
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ハゼという呼名は、ハゼ科と、それに似る為にハゼと呼ばれる全ての魚の総称。 ハゼは、全国的に見られる海水産と淡水産の多種類の魚だが、江戸時代以前の文農にはその名が見当らない。その理由は、恐らく雑魚や下魚として扱われていたからであろう。しかし、呼名としては相当古くからあったものと思われる。 陰茎を古語では「ハセ」や「オハセ」といった。ハゼの姿との相似から、実に素朴な発想による呼名であろう。また、「はじくる(跳びはねる)魚」の意からという説もある。 『大言海』には、「沙魚・弾塗魚、自らはじける義なり、カワラハゼというあり、男根に似たる魚が詳かなず」とある。 漢字で「沙魚」と書くが、「沙」は砂のことで、ハゼが砂に潜ることが多いことからこの字が当てられたのだろうか。 英名 Yellowfin goby(黄色のヒレのハゼ)、Genuine gody(真正のハゼ) |
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スズキ目ハゼ亜目ハゼ科 | |
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ハゼ亜目はハゼ科やドンコ科など、8科268属約2121種の大家族で、その内約200種が淡水産である。また、日本の周辺には350種が生息する。 ハゼ亜目の特徴は、背ビレが普通2つあり、腹ビレは胸ビレの下にあって、多くの場合左右の腹ビレが癒合(ゆごう)して吸盤に変形している。鰾(うきぶくろ)はなく、体側部の側線が未発達で、多くの種では側線がない。 ハゼ科には、マハゼの他にヨシノボリ(ゴリ)、ムツゴロウ、シロウオ、イサザなどがある。 ヨシノボリ(ゴリ)・・・能登半島ではマハゼをゴリと呼んでいるが、一般にゴリと言えばヨシノボリのこと。全国的に分布 し、左右の腹ビレが合わさって吸盤状になっており、渓流など小石の多い所をうろちょろしている。 ムツゴロウ・・・・・・・マハゼは全国各地に分布するが、なぜか有明海にだけはいない。そのかわり有明名物になって いるムツゴロウが生息する。有明海の干潟は6mにも達し、引潮の時は沿岸に幅数kmに渡って 大干潟が出来る。ムツゴロウはこの干潟に半径2mほどの縄張りを持ち、その中心に穴を掘って 住処にしながら、胸ビレで砂の上をはい回ったり、跳びはねたりしている愛嬌者。ウナギより淡白 で、蒲焼の他、味噌汁に入れても旨い。 むつごろう お前は愚者か 切れ者か 細身 九如 シロウオ(白魚)・・・ワカサギやアユなどに近い白魚(しらうお)とは名前も形も似ていて紛らわしいが、ニシン目シラウ オ科のシラウオに対して、こちらはれっきとしたハゼ科で、湯がくと白くなることからシロウオとの 呼名がついている。春の産卵期に川を遡(さかのぼ)ってくる九州では、ウズラの卵の入った小鉢 に三杯酢を入れ、ピチピチした獲れたてのシロウオといっしょにすすり込む「おどり食い」を楽しむ。 イサザ・・・・・・・・・・琵琶湖特産の淡水種で、漁の主体は底曳き網だが、産卵前後には岸近くに設置されたエリにも よく入り、佃煮などにして食べられる。 |
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形態 | |
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他のハゼ同様に腹ビレは吸盤状になっており、ウロコの大部分は櫛鱗で、後頭部や頬部などは円鱗で覆われている。背面は薄い褐色に黒褐色の斑紋が数列並び、体側腹面は白色をしており、全長25cmにも達する。 |
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分布 | |
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北海道から朝鮮半島や中国大陸沿岸に分布。海底ではほとんど静止状態で生息しており、浮き上がることはほとんどない。 季節的な深浅移動をしており、夏はごく浅い海域にいるが、水温の低下とともに深場に移動する。 水温や塩分の変化に強いだけでなく、汚染にも強いため、他の魚が姿を消した湾奥にも生息する。 |
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産卵 | |
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東北南部で春、関東で早春、南日本で冬から早春にかけて産卵する。産卵数は、全長15cm前後で1〜3万粒。 産卵場所は大変に変わっていて、水深5m前後かそれよりも浅い砂泥で、雄が海底にY型の穴を掘り、雌雄がその奥に入って産卵放精する。雌は雄よりも成熟する時期が遅いので、雌雄はしばらくこの産卵室で一緒に暮らすらしい。また、雄は産卵後もしばらく産卵室に留まり、卵を保護する。 最初、卵は球状形をしているが、やがて端に数十本の細糸が密生して底に付着し、まるでバットを並べた様に見える。産卵から孵化までの時間は水温10℃で約1ヶ月かかり、面倒を見つづけた雄も一生を終える。 |
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成長 | |
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孵化直後の仔魚は全長4.8mmで浮遊生活をし、17mm前後から底生生活に移行する。 多くの個体は1年で成熟し、産卵後は死ぬが、2年まで生きて成熟する個体もある。ゴカイなどの底生動物やアオノリなど海藻を食べて成長する。 エサを見つけると、存在感を示すかの様に全てのヒレを広げ、時折、大口を開けて大アクビをする様な姿勢を示すので、愛嬌がある。 |
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漁法と漁期 | |
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延縄や釣りで漁獲される。 沿岸各地で周年にわたって漁獲されるが、夏から秋が最盛期。『本朝食鑑』は、「江戸の庶民・好事家・遊び好きの者等は扁舟に棹さし、蓑傘を着け、名酒を載せ、竿を横たえ糸を垂れ競って相釣っている。これは江上の閉涼の楽しみである」と書き、ハゼ釣り人を、「志和・亀家の徒輩とでも言おうか」と評している。志和や亀家とはいずれも中国の仙人で、俗世間を逃れ専ら船上の釣りを楽しんで一生を終えたというから、ハゼ釣りは仙境に達した太公望達の無上の遊びということになる。 |
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ハゼも出世魚か | |
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ハゼ釣りが盛んとなって「天ぷら舟」がにぎわう9月頃に、5〜8cmに成長したものを「デキハゼ」と呼ぶ。彼岸に釣れるのを「彼岸ハゼ」、11〜2月にかけて深場に落ちたものを「落ちハゼ」や「ケタハゼ」、さらに泥地にもぐって口の周りが黒くなったのを「お歯黒ハゼ」と呼ぶ。このハゼは産卵の準備期に入ったことを示す。 デキハゼに混じって釣れる13〜18cmのハゼは「ヒネハゼ」と呼ばれ、これは2年物であるが、結局は春に産卵して一生を終える。 |
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ハゼ釣りのコツ | |
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「デキハゼはハリスを短く、ケタハゼは長く」がコツである。これは、活発にエサをとる時はアタリを早くとるために短くし、食いが悪くなるケタハゼにはハリスを長くして、微妙なアタリをじっくりとると言うこと。 ハゼの口にはヤスリ状の歯が上下に無数に並んでいて、これでエサを逃がさないようにする。そして、頭を振ってエサを食いちぎろうとするから、竿先にブルブルッというアタリが伝わってくる。 また、「デキハゼは短いエサを、ケタハゼには長めのエサを付けて食欲をそそること」が第二のコツ。ケタハゼになると魚体も丸々と太って美味しさが増すので、この深場の釣りこそ本当のハゼ釣りという人も多い。 |
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俗諺 | |
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白挟(しらぎ)海老で鯊を釣る ・・・・白挟海老は小海老の一種で、僅かな労力で大きな利益をあげることの例え。 中日(ちゅうにち)の鯊は水気の薬 ・・・・彼岸の中日に煮る鯊は水気の薬となるという俗諺。水気とは水腫と同じで、体の組織の間や体腔中 にリンパ球や漿液などが溜まる病気。 鯊釣り日和・・・・鯊は秋が釣りシーズンで、天気のいい日を表わす俗諺(大阪)。 |
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食べ方 | |
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ハゼが一番旨いのは厳冬期の1月頃で、この頃のハゼは丸々と太って脂が乗りきっており、腹中には真子や白子がはちきれんばかりに詰まってほとんど汚物がない。また、産卵直前のハゼは何故か頭も骨もやわらかく、さっと煮付けただけで頭からしっぽの先まで全部食べられる。 刺身 ・・・・・・粗塩を振り、もみ洗いしてヌメリを落とす。そのあと、鱗をとり、腹ビレと頭を一緒に落とす。これを 三枚に卸すと半透明の白い身肉があらわれる。これを薄めのそぎ切りで刺身や糸造りにして、ワ サビ醤油やショウガ醤油で食べる。また、「洗い」や「握り寿司」にしても美味。「背越し(ブツ切り)」 にしてアサツキやワケギ、サラシネギといった薬味を加えた酢味噌で和えると、これまた酒の肴と して最高。 天ぷら・・・・・やや高温で揚げるのがコツ。これはハゼの皮の持つ香ばしさを生かすためである。 唐揚げ ・・・・小さいものはワタだけを除き、中型のものは頭を落として唐揚げにする。唐揚げで食べ残したもの を南蛮漬けやマリネにすると保存がきく。 甘露煮 ・・・・串に刺し、焼いて干した焼き干しをホウジ茶で軟らかくなるまでもどし、同じホウジ茶でコトコトと煮 くずれしない様に軟らかく煮る。仕上げは醤油と水飴を使うが、どの過程でもハゼ以外のダシは使 わない。ホウジ茶を使うのは甘露煮の色付けのためと、魚の臭みを消すためである。 鯊釣りの 日和になりぬ 葉鶏頭(はげいとう) 子 規 魚籠の 鯊一つ踊るや みな跳ねて 児玉 小秋 掬(かく)ひたる 雑魚の中より 子持鯊 小原 弘幹 |
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