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日本の旬 魚のお話(秋の魚-25) | |
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車蝦(くるまえび) | |
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旬 | |
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伊勢海老と二分するほどの人気があり、刺身や鮨種をはじめ、さまざまな料理に利用されている。 姿が立派な大型の伊勢海老が縁起物に使われるのに対し、より庶民的で日本人の味覚にあった車蝦は中型のエビを代表する食材である。 日本の一世帯当りの年間の消費量は2480g(1999年)で、アメリカの約2倍にものぼり、世界一のエビ好き民族である。 晩秋から冬にかけてが旬で、とくに冬のものは甘味が増す。 車蝦 歌舞伎役者に 食われけり 一寿 |
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命名 | |
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『和漢三才図会』によると、「煮ると色は紅色に変わり、形は車輪のように曲がる故の命名」とある。また、江戸時代に各地で多く獲れたことが『本朝食鑑』にも記載されており、『本草綱目啓蒙』には、「曝乾(ばっかん)すは十尾ごとに縄に連ねて、薩摩より出す」とある。 大きさによって呼名が変わる。10cm以下で約20g程度のものは「小巻」や「鞘巻(さいまき)」と呼ばれ、それから順に「中巻」、「巻」となり、20cm前後の20gから40gのものが「車蝦」と呼ばれる。30cmで100g近くになる大きいものは、「大車(おおぐるま)」と呼ばれる。 エビの語源には色合いからのものと、長い髭からのものとがある。色合い説は、新井白石の語源辞典『東雅(とうが)』によると、「蝦の体色がブドウの古名である葡萄(えび)の色に似ている」ためとある。 髭説は、「枝髭(えだひげ)」、「柄髭(えだひげ)」、「吉髭(えひげ)」がエビになったという。江戸時代に松永貞徳が記した『和句解(わくえい)』と称する語源辞典には、「エは江、ヒは髭の略」とあり、その他にもいくつかの説がある。 漢字の「蝦」は遊泳型のエビを示す。虫偏になっているのは、目が昆虫と同じ複眼であったり、外見が虫に見えるからであろう。また、伊勢海老のように歩行型を指す「海老」と区別している。 英名 Kuruma prawn |
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十脚目長尾亜目クルマエビ科 | |
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尾が長いので長尾亜目に分類され、車蝦グループとしてサクラエビ、チヒロエビ、クダヒゲエビ、イシエビ科があり、また、クルマエビ科は14属120種ある。 隈(くま)エビ(アシアカ)・・・フラワー系で車エビに次ぐ高級品。車エビよりも赤っぽく、体長は同程度。付属肢が鮮やか な赤であることから、足赤の名で流通。 牛エビ(ブラックタイガー) ・・・・車エビの中では最大種で、体長33cmにもなる。房総半島以南からインド洋に分布し、各国 で盛んに養殖され、漁獲高は年間約20万トンにのぼる。 高麗(こうらい)エビ(大正エビ) ・・・・黄海と渤海を中心に分布し、27cmにもなる。大正時代から漁が始まり、大手業者の大正 組が「大正エビ」の名で販売を始めたのが始まり。 赤エビ・・・・・・・・・・・・・・・・約13cmと小型で甲が硬いので、ムキエビとして利用。 葦(よし)エビ(シラサエビ・スエビ) ・・・・ピンク系で18~15cm。鮨種用として東南アジアで養殖されている。 芝エビ(アカヒゲ) ・・・・・・・葦エビに似ており、体長は15cm。東京湾の芝沖合で大量に獲れたことからの名。 猿エビ・・・・・・・・・・・・・・・・関西ではカワツエビの名で流通。 インドエビ・・・・・・・・・・・・・体長は23cm。淡黄褐色のホワイト系で縞模様はない。日本でも浜名湖と日向灘で記録さ れたことがある。 オーストラリアタイガー(ブラウンタイガー) ・・・・体長20cmで車エビに似た縞模様をもち、縞模様も脚も美しい赤褐色のブラウン系の高級 品種。見た目もよいため、有頭エビとして輸入。 エンデバー(オーストラリアエビ) ・・・・芝エビに似ており、体長は15cm。オーストラリア東岸を調査した、調査船エンデバー号か らの命名。オーストラリアから多量に輸入される為、別名オーストラリアエビと呼ばれる。 バナナエビ(天竺エビ)・・・ホワイト系で体長15cm。フィリピンからペルシャ湾まで分布し、薄いバナナ色をしているこ とからの命名。 ノーザンホワイトシュリンプ ・・・・メキシコ湾が産地で体長は25cmに達する。カリブ海からブラジル南部ではサザンホワイ トシュリンプが分布。 |
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輸入されるクルマエビの区分 | |
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まず縞模様の有無で大別され、さらに単色のものはホワイト系、ピンク系、ブラウン系、スポッティド系に分けられて流通する。 また、原産地名の表示で流通する場合も多く、ホワイト系は太平洋や西太平洋、インド洋の水の濁った汽水域、ブラウン系は沖合、ピンク系は東太平洋や大西洋、インド洋の沿岸水と沖合水が接する海域に棲息する。ブラウン系のうち、縞模様のあるものはタイガーと呼ばれ、西太平洋とインド洋の特産種。クルマエビ類の輸入はエビ全体の9割を占めている。 |
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分布 | |
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北海道以南から西太平洋やインド洋に広く分布するが、近年はスエズ運河を経て地中海東部に侵入し、現地でも重要種となっている。棲息水温域は6~35度で、最適水温は25度前後。水温が3度以下に下がると仮死状態となる。 内湾の水深100m前後の砂泥底に棲息する。昼間は砂泥中に浅く潜っており、夜間になると泳ぎだして、ゴカイや貝類、珪藻をはじめ、泥底の有機質も食べる。 |
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形態 | |
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クルマエビ科の大型種では体長25cmに達するが、多くは20cm以下である。体色は棲息場所によって異なり、茶褐色や青褐色、黒褐色を呈する。 クルマエビ類共通の特徴は、全ての腹節の幅が狭いことである。これは、孵化する前の卵を全て海中に産み放してしまうためであろう。卵を持ち歩く甘エビなどのタラバエビ類、イセエビ類は腹節が幅広く、卵を抱えやすい様になっている。 |
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産卵 | |
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オスが反転して腹部と腹部をつき合わせる体位を1~2秒間持続し、交尾する。 オスは精子の入った精包というカプセルをメスの受精嚢に付着させ、分泌物で生殖口をふさいでしまうので、メスは浮気が出来なくなる。これを交尾栓という。 産卵期は春から秋。産卵は水深10m以深の砂泥底で夜間に行われる。産卵時刻は春期ほど早く、次第に遅くなり、8月以降は夜半に行われる。 適性水温は20~30度で、産卵数は25~70万粒。メスは遊泳しながら、交尾で受け取って貯めていた精子と卵を同時に放出する。 卵は直径0.25mmで、青褐色か黒褐色。 産卵直後の未受精卵は浮遊しているが、受精すると卵膜が形成され、沈降する。 産卵から孵化までの時間は、水温21~25度で20~23時間、28度で18時間。産卵を終えると、ほとんどの個体は一生を終える。 |
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成長 | |
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ノープリウス→ゾエア→ミシス→ポストラーバ幼生と変態し、16~17回の脱皮を繰り返した後、稚エビとなって底生生活に移行する。 1年で10~15cm、2年で15~22cm、3年で25cmに成長する。寿命は2~3年で、オスは体長12cm前後、メスは15cm前後から成熟し始める。 |
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漁法と養殖 | |
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主な漁法は小型底曳網、刺網、手繰り網、打瀬網などで、主な産地では、伊勢湾が4~12月、紀伊水道や瀬戸内海が5~11月、有明海が5~10月に漁獲される。国内生産は4~5千トンで、天然物と養殖物が半々である。現在、瀬戸内海などで年間5億尾ほどが放流されている。 エビは夜行性で、月夜の晩は月の光を恐れて活動せずに身が痩せてしまうため、月夜が続いた後に獲れたエビは旨くない。 |
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アクの強いエビほど旨い | |
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エビを生のまま置いておくと黒変する。早く黒変するものほどアクが強い証拠であり、旨味も強いエビである。 同じホワイト系の大正エビとバナナエビとでは、大正エビの方がアクが強く各段に旨い。大正エビは黒変が早いので見た目が悪く、バナナエビは変色が遅いので見栄えは良い。販売側は、変色しにくいバナナエビやインドのホワイト、ネシアのホワイトなどを使いたがる。 |
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俗諺 | |
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蝦で鯛を釣る(蝦鯛)・・・・・・わずかな元手で、大きな利益を得る。 蝦跳(は)ねても枡(ます)を出ず ・・・・法外な事を望んで跳ねても、蝦は枡から出られない。物にはそれぞれ天分が定まってい ることのたとえ。 海老と名の付く家老殿・・・・外見は威儀を正して格式張って居ても、頭でっかちで中身や器量のない人をいう。 蝦の鯛交じり ・・・・・・・・・・・小さく弱いエビが大きく立派な鯛の中に混じっている。弱小の者が能力不相応の地位に いることのたとえ。 |
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車エビの甘味 | |
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晩秋から冬にかけて甘味が増すのは、遊離アミノ酸であるグリシンの含有量が増加するためである。車エビはグリシンの他、アラニンやプロニン、セリンがあり、その含有量はエビ類の中で最高の値になっている。 |
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エビと背ワタ | |
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エビの腸のことを背ワタいい、これを取った方が良いといわれるのは、腸管に残っている消化途中の汚物によって身が腐敗したり、餌と共に取り込んだ砂などでザラついたりしないようにするため。背ワタの黒いものは天然物、ピンク色のものは養殖物が多い。養殖物は、出荷する数日前から餌を与えないので腸の中が空っぽになり、腸管そのもののピンク色となるため。 |
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エビと鮨 | |
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鮨種に適したエビとは、色が赤くなること、味がよいこと、肉質があまり硬くないこと、という三条件があげられる。 立食用には活の車エビ、並鮨には冷凍エビを使うのが多い。 冷凍エビを使うにも、身の断面が丸い方が旨い。ギアナのピンクは丸く、バナナエビは楕円に近い形をしている。また、朱色抜群なのはメキシコブラウン。 |
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茹でると赤くなるのは | |
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殻の中の蛋白質と結合していたアスタキサンチンが、褐色又は青褐色から赤に変わるため。これはアスタキサンチンと蛋白質が遊離し、さらにアスタキサンチンは酸化してアスタシンに変わる為である。 |
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茹でるコツ | |
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甘エビやボタンエビは水分が多く、加熱すると水分が減って身がパサパサになり、生食でしか食べられない。車エビを生食にした時には甘味を強く感じ、茹でてしまうとそれほどでもなくなるのは、甘味が茹で汁の方移ってしまうため。 茹でるコツは、食塩を入れて煮立った湯の中に車エビをさっと通し、ミディアムレアの状態にすること。こうすると肉質もあまり硬くならず旨味も逃げないので、美味しく食べられる。天ぷらが美味しいのは同じ理由である。 |
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食べ方 | |
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踊り食いや活き造りといった生食にする時にも頭をもぎとり、背ワタを除いて食べたほうが衛生的である。 そのほか、湯引きや塩焼き、鬼殻焼き、串焼き、フライ、天ぷら、酒蒸、天丼といった食べ方がある。酒の肴の一品としても、下のようにすると美味。 1.天ぷらを揚げる時に取り外した頭を唐揚げにし、塩味をつける。 2.ムキ身にし、1~2日間味噌に漬けたものを軽く焼くと、エビの甘味と味噌の風味がよく合う。 3.酒盗を日本酒やだし汁で伸ばし、これに殻のついた姿の車エビに照り焼きの時と同じ様に何回も塗りながら焼 くと、香ばしさが調和して旨い。 竹篭に 身を踊らせし 車蝦 酔魚 海老の腰 伸びて天婦羅 出来上り 紫浪人 海老好きの 尾を残さずに 食べ終わり 扇啄坊 |
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