日本の旬・魚のお話

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日本の旬・魚のお話
日本の旬   魚のお話(春の魚-5)
障泥烏賊(あおりいか)
イカは日本人の大好物の一つで、消費量は60万トン以上に達する。また、アミノ酸の一種で、肝臓の解毒作用の促進や胆石の生成阻止などに有効かつ、コレステロールを下げるという効果もあるタウリンが豊富に含まれ、人気の魚でもある。
アオリイカはイカ類の中では最も美味とされている。関西圏では商品価値が高く、40cm程のものを1杯釣れば、1日分の日当になるともいわれる。また、鹿児島県の「県の魚」には春の魚として選ばれている。
産卵前の春と成長した晩秋が美味。

        ふてぶてと 烏賊の刺身や 春の宵       徳川 夢声
命名
半円形のヒレをあおって泳ぐさまから、体の両側のヒレを馬具の障泥(あおり)に見立てたことからの命名。
イカの語意は「イ」は白いこと、「カ」は背のかたいことをいう。
烏賊の語源
    中国の『南越志』によると、「イカが死んだふりをして、水面に浮かんでいて、烏(からす)がついばもうとした時、
    巻きついて水中に引きずりこんで食べた」とある。つまり、イカは烏を賊害するから「烏賊」という字が当てられた。
    よく「鳥」と「烏(からす)」を間違えて「鳥賊」と書かれているのを見かける。
地方名
バショウイカ(伊豆)
         ・・・・芭蕉の葉に形が似ているところから。
アキイカ(丹後) ・・・丹後地方の港町では秋イカと呼び、秋に大きく成長したものを開き塩スルメにする。それを家々の
            軒に吊るす風景は、秋の風物詩となっている。
ミズイカ(瀬戸内・九州)
         ・・・・泳いでいるイカの体色は透明に近く、水揚げされると透明感のある灰色になるところから。
シロイカ(沖縄)・・・・気温が高い所では鮮度が急速に落ち、透明感のない乳白色になってしまうことから。
モイカ・・・・・・・・・・・藻場でよく棲息しているから。

   英名 Broad squid(幅広のヤリイカ) Oval squid(卵形のヤリイカ)  中国名 莱氏似烏賊
軟体動物門頭足綱二鰓亜目ツツイカ目ジンドウイカ科アオリイカ
イカとタコは貝類と同門である。その証拠に、イカの背にあるペラペラの軟骨状のものは、正確には「貝殻」であり、血色素も銅イオンを含んでいるので、青っぽい血に見える。加工されたイカの肉が青っぽく見えることもある。
また、頭から直接足(腕)が生えていることから、頭足綱のグループに入り、大先輩は生きている化石といわれるオウムガイである。
よくイカの絵が逆さまに描かれている様に見えるが、どんな魚でも頭を上か左にしているのと同じである。
イカの種類は世界中で450種ほど確認されており、日本ではその内30種ほどが食用になっている。中でも最も多いのは、アカイカ科のスルメイカである。
ツツイカ目ジンドウイカ科
硬い甲羅を持たないツツイカ目には、日本で食用とされるものにジンドウイカ科、アカイカ科、ソデイカ科、テガキイカ科、ホタルイカモドキ科の5科があり、ジンドウイカ科(ヤリイカ科)の主なイカとしては下記のものがある。
    ・障泥烏賊
    ・槍烏賊・・・・・・・・・・・・・・・・身は薄くて柔らかく甘味たっぷり。早春の子持は煮物にして絶品。
    ・カルフォルニア槍烏賊・・・小型のヤリイカ。
    ・剣先烏賊・・・・・・・・・・・・・・槍烏賊より太いので剣となったのか。スルメの原料。
    ・平剣先烏賊・・・・・・・・・・・・東南アジアからスルメにして輸入。
    ・ベイカ・・・・・・・・・・・・・・・・・日本では瀬戸内や有明海にしか分布しない小型のイカで雑魚(ざこ)扱い。
    ・ジンドウイカ ・・・・・・・・・・・・ヒイカ、コウイカとも呼ばれ、丸煮の惣菜として利用。
形態
ヒレが大きく、外套(胴の部分)の全長に沿って覆っている。全体を広げると卵円形をしているので、甲イカ類と思ってしまうことがある。
甲イカ類でない証拠に、石灰質の甲羅がなく、スルメイカと同じ軟骨である。腕が10本あり、そのうちの2本は長い触腕で、普段は他の8本と同じ長さにしているが、獲物を捕らえる瞬間に伸ばし、素早く獲物を腕の中に巻き込んで、カラストンビと呼ばれる嘴の様な顎板で獲物を噛切る。オスはそのうち1本の先端に吸盤がなく、交接腕となっている。
分布
北海道以南の日本沿岸からインド及び太平洋域(ハワイ)にかけての暖海に分布。特に九州沿岸から沖縄に多く分布する。
産卵
産卵は春から夏で、相模湾では5月、若狭湾では5〜8月、沖縄では2〜10月。卵は長径10mm前後の楕円形で、太さ10〜15mmの寒天質の卵嚢に入った状態で産み出される。一つの卵嚢には平均5個の卵が入っており、複数の卵嚢は房状の卵嚢塊となる。
産卵場所は沿岸の岩礁帯や藻場で、水深10m以浅のホンダワラ類などの海藻や、海底に沈んだ木の枝、イソバナなどの腔腸動物に卵嚢塊を産みつける。
多回産卵で、一回の産卵では1500〜2000粒、卵嚢にして300〜400嚢前後を産む。産卵した親のほとんどが一生を終える。
成長
卵は水温24℃なら約26日目に孵化し、稚仔は黄色赤褐色など多くの色素細胞を持つ。孵化直後から活発に遊泳し、沿岸の藻場に多く分布する。1ヶ月で外套長3cm、2ヶ月で5cm、3ヶ月で月7cmに成長。エビや魚類を捕食して生後1年で35cm前後に成長し、成熟する。メスよりオスの方が大型になる。
漁法と漁獲高
エビなどに似せた擬餌で釣るのが中心。
沿岸近くの藻場で産卵することから、粗朶を海中に沈め、産卵のために集まってきたところを漁獲するイカ柴漁という漁法もある。

漁獲高(千トン) H8 H9 H10 H11 H12 H13
スルメイカ 444 366 173 235 337 291
甲イカ 10 8 10 10 8 8
ムラサキイカ 57 63 53 36 107 99
その他イカ 153 198 142 212 172 116
663 635 378 493 624 514
輸入量 108 96 93 106 98 82

花イカ
桜の頃、大量に獲れる小さなイカの総称。この頃、定置網などに大量に入るのは主としてアカイカ、ヤリイカの仔魚、それに甲イカ類のミミイカでスルメイカ(マイカ)はあまり入らない。
       洗ひたる 花烏賊墨を すこし吐き 高浜 虚子
ヤツデイカ
ツツイカ目ヤツデイカ科に属するイカ。日本海の兵庫県伊笹岬沖で2008年4月12日にホタルイカ底引き網によって水深193mから初めて捕獲された。
このイカは成長途中に2本の触腕が切れるため、8本足になる特性がある。目は大きく開眼型で、腕は長く先端に僅かに膨れ、黒色色素のある発光器を持つ。腕に吸盤はなく、鉤形をしており、ヒレの幅が広く半寒天質の体で、外套長は22〜40cmになる。
水深200〜800mに棲息する深海性で、太平洋やインド洋などの南方に分布し、マッコウクジラなどの胃からよく見つかる。
イカとタウリン
タウリンは、体重60kgの人の体内には約20gあり、特に心筋、横隔膜、脾臓、骨髄、肺、脳、肝臓、膵臓などに多く分布している。
そして、コレステロールの低下、肝臓の解毒作用の促進、胆石の生成阻止、強心作用、抗不整脈作用、筋肉疲労の回復促進、アルコール中毒の抑制など、色々な分野に重要な働きをする。
スルメなどの乾燥したイカの表面についている白い粉が貴重な栄養源のタウリンなので、この粉は実は大切なものなのである。
俗諺
烏賊の甲より年の劫・・・・・・・・・・・「亀の甲より年の劫」と同じ意味で、烏賊の甲は役にたたないが、年の劫は人生経
                     験を積み重ねているだけ、尊い価値があるという意。
烏賊が墨を吐いて逃げるよう・・・・「頭隠して尻隠さず」と同じで、悪事や失敗などを隠そうとしても、隠れているのはご
                     く一部分で全体は丸見えという意。
烏賊ともタコとも知れぬ ・・・・・・・・どちらも吸盤、墨汁袋などがよく似ていることから、つかみどころがなく、どちらも
                     ハッキリしない状態をいう。
イカの提灯
イカの表面には、無数の小さな斑点が見られる。その一つ一つに色素があり、変色するのである。この小さな斑点を俗に「イカの提灯」といい、これが判然と出ているものは鮮度良好。逆に白っぽいものは鮮度落ち。
アオリイカの甘味
ケンサキイカの成分と似ており、アミノ酸の一種であるグリシンの含有量が多く、これを甘味として感じる。
これに対し、甲イカやスルメイカはグリシンを含まないので甘味をあまり感じない。但し、タウリンやプロリンが多量に含まれており、旨味を強く感じる。
プロリンは醤油に含まれるアミノ酸によってさらに味が引き立つ。
アニサキス
この寄生虫は、3cmほどの針のような形をした白い虫である。サバやイカを生で食べた時、胃壁に食い込んで腹痛を起こすので、食中毒と間違え易い。
皮をむいたイカの身を透かしてみた時に、白い線状の陰があったら要注意。
アニサキスは、ちょっと傷をつけたり、加熱や冷凍にすると死んでしまうので、刺身にする時は糸作りにするか、冷凍物を使うのが安全。
料理
刺身の味ではイカ随一。秋の小ぶりのものは皮をむいて干しスルメにしてもよいが、春のものはもったいない気がする。
調理のポイントは、墨袋を潰さないことと、皮を丁寧にむくこと。皮は、色がついたところはむきやすいが、その下の薄皮はフキンでこするようにして取り除く。
それでも取れない時は、刺身にする時に胴体の軸に対して斜めになるように2mm幅で包丁目を入れると口に残らない。
「下足」や「頭」もサット湯がいてから、すり潰した肝を塗り、塩を振って火にあぶる。


      いか徳利 地酒も生きる 旅の盃       虎山
      塩辛の 味へうるさい 烏賊の墨       宗明
      焼きいかの 匂いひろがる 観光地     延寿


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