日本の旬・魚のお話

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日本の旬・魚のお話
日本の旬   魚のお話(冬の魚-25)
魴鯡(ほうぼう)
赤い体色と鎧兜を着けた武士を連想させる姿形から、タイと同様に目出度い魚とされて祝い事にも使われ、赤ん坊が生後100〜120日目になると行われる「箸初め」の儀式にも用いられる。
『魚鑑』に「肉雪白、味甘美し、冬月のは上饌なり」とあり、雪の降っている間が旬で、脂ものっていて最も美味しく、高級魚として取引される。
                ほうぼうの 髭脚立てて 貌(ぼん)そろう      秋山 牧草
命名
頭部が角張っているから「方頭」とされたという説があり、『大言海』には、「形、方頭(かながしら)にたり、故に魴鯡(ほうぼう)と書く。詳かならず」とある。
また鰾(うきぶくろ)の振動による発生音が、「ホオブオッ」と聞こえることからの呼名だともいう。ところが、ホウボウの発生音はヒキガエルの様な「グワッグワッ」に似ている。
ホウボウの呼名の語意は、指状になった胸鰭の一部を使って海底を這い歩くことから、「這(は)う魚」の意であろう。「ボウ」は魚名語尾である。
地方名
ホコノウオ(九州)・・・・・・ホコには3つの意味がある。這う子、つまり赤ん坊人形を指す意と、「這う魚(はうこ)」の意、そ
               れに赤い魚「赤魚(ほこ)」の意でもある。
ドコ・ドオコ(秋田) ・・・・・方言で梟(ふくろう)のことを「ドコ・ドオコ」という。梟に似て、ホウボウの目が円く大きいことから
               の呼名。日本海側の各地でウルメイワシやカタクチイワシも「ドコ・ドオコ」と呼んでいる。
キミヨ・キミウオ(北陸)
            ・・・・体色が華やかなことから、「女郎魚」の意で呼ぶ。昔は遊女、巫女(みこ)の雅号を「君」と呼ん
               だ。また、佐渡に流された後鳥羽上皇が美味しいと食べたことから名が付いたという説もある。
コトオ・コトヒキ(島根)
            ・・・・鰾(うきぶくろ)の収縮で振動音を発することから「琴ひき」という。
ギス(福島・瀬戸内) ・・・目と胸鰭が大きく、海底を歩く様子が昆虫のキリギリスに似ていることから。
ダンカラ(青森) ・・・・・・・マングローブの一種であるオヒルギの汁で染め、赤茶色に染まった色を丹殻(たんがら)とい
               うが、その色に体色が似ていることから。
ホウショウ(佐渡)・・・・・・体色が粗雑で斑紋があるため、疱瘡(ほうそう)の転訛で疱瘡魚の意。
英名 Gurnard(文句をいう魚) 中国 緑鰭魚
分布
北海道南部から南シナ海まで分布し、沿岸浅所から水深600mまでの砂底や砂泥底に棲息する。冬は南下し、春から夏にかけて北上する。
カサゴ目ホウボウ科ホウボウ属
世界の熱帯及び温帯域におよそ14属90種が棲息し、日本にはこのうち9属30種前後が棲息する。
仲間としてはカナガシラ属、トゲカナガシラ属、カナド属等があり、ホウボウのことをカナガシラと呼ぶ地方もある。だが、カナガシラは鱗が大きくザラザラした感じがするが、ホウボウはカナガシラと比べると鱗が小さく、ツルツルしている。
また、ホウボウの体色は紫が勝っており、胸鰭も大きく、美しい紫と緑に彩られ、食べてみるとカナガシラよりも断然美味しい。
同じように胸鰭が長く、扇状に広がるセミホウボウは、ホウボウ科ではなく、カサゴ目セミホウボウ科に属している。
形態
ホウボウは大変奇妙な姿をした魚だ。体は朱赤で頭が大きく、尾にかけて三角形。頭は骨板に覆われ、大きな眼を持ち、眼の上には二つの棘、それにエラブタも棘立っている。口はスコップのように幅広く、胸鰭は大きく美しい孔雀色、胸鰭の前三条は遊離して、脚のように砂の上を歩く。この脚は触手の役を兼ねており、餌をさがす。
幅広の口は、砂の中をひっくり返して泥の中に潜っている餌を丸飲みするのに都合がよい。また、鰾(うきぶくろ)は二つの部屋にわかれており、その穴を空気が往復する時の振動で音を発する。出す音は、ちょうどゴム風船を膨らませてその表面を親指と人差し指でこすった時に発する音に似ている。同じ様に鳴く魚としてイシモチやニベなどがいる。体長は40cmにもなる。
              ほうぼうの 鳴くや五彩の 鰭張りて     沖崎 青波
産卵
九州では12〜4月、東シナ海では2〜5月に産卵。卵は球形で直径約1.2mm の分離浮性卵。水温15℃なら4〜5日で孵化し、全長3.2mm前後である。
成長
全長1.4mmで各ヒレの条数は成魚と同数になる。幼魚は黒色で胸鰭の裏側にも斑紋はない。
成長が大変遅い魚で、1年目で13cm、2年目20cm、3年目25cm、4年目で27cmとなり、成熟する。
夜行性で底生のエビやカニ、二枚貝類、ゴカイなどの多毛類、魚類を食べて成長する。
オス・メスの見分け方
ほおの部分が厚くふくらんだのがオス、少しコケ気味なのがメスという具合で、専門的にいう第二次性徴の現れである。これも30cm以上のものでないと見分けがつかない。
俗諺
ホウボウの豆餌・・・・ホウボウ釣りでは、餌はなるべく小さく付けるのがコツだという釣りの諺。最近はサンマやサバの
             切身が使われる。
魴鯡赫尾(ほうぼうていび)
          ・・・・ホウボウの尾が赤いのは苦労が絶えない為だと言う意で、人生には苦労が多いことをいう。
漁法
底曳網が主で、ほかに定置網や刺網がある。漁獲量はホウボウ類として1千トン前後。
忠臣蔵
江戸の川柳に、「鮒の仇討ったのは芝のカナガシラ」というのがある。鮒は吉良上野介から「鮒侍」とののしられた浅野内匠頭のこと。
カナガシラは「かな頭」を意味し、いろは四十七文字の頭、つまり四十七士の頭領である大石内蔵助を魚のカナガシラにかけたもので、フナとカナガシラのとり合わせが妙を得ている。
食べ方
体の赤みが鮮やかなもの、ヌメリが透明なもの、腹が白くて引き締ったものを選ぶ。ホウボウの肉質は白身で、タンパク質を多く含むのが特徴。
鮮度の良い大ぶりのものは刺身にし、そぎ造りや平造りにする。
皮にゼラチン質が多いため、じっくり煮込むと美味しい煮こごりが出来る。
淡白な味を生かして、塩焼きやうす味の煮付、椀だねに利用するのもよい。
また、よい味が出るので、鱗や鰭を落としたものをブツ切りにしてチリ鍋にしたり、ブイヤベースの材料にする。サッパリとしたトマトソースなどによく合う。


                 釣り上げし ほうぼうも鳴く 寒さかな       朱星
                 河岸の 灯にほうぼう 朱を競ひけり     福島 五波
                 ほうぼうの 煮こごる姿 いかめしき      阿波野 青畝


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