日本の旬・魚のお話

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日本の旬・魚のお話
日本の旬   魚のお話(秋の魚-13)
水中では青と緑に光り、黄金色のヒレをキラキラと輝かせ、泳ぐ速さは時速60km/hを超え、6mもジャンプする。この七色に変わる体色の美しい輝きが人を惹き付ける。
山陰や九州以外では人気のない魚であるが、欧米では高級魚扱いされる。
ハワイでは「マヒマヒ」と呼び、このフライは日本人のツアー客にも大好評。晩夏から秋が旬である。

                大海の 波荒立てて しいらあり  魚 秀
命名
この魚の体皮は堅く、薄身で肉が少ないことから、米や麦の結実しない籾(もみ)のことを粃(しいな)と呼ぶことにちなんで命名されたといわれている。
また、水死体の下について泳ぐことがあることから、「死」や「屍魚」が語源とも。「ラ」は「平たい魚」を呼ぶ一般的な語で、「死平(しいら)」の意。
           英名 Dolphin Fish(イルカ魚) Dorado(黄金色の魚)
地方名
万作(まんさく)(愛媛・島根)、万匹・万疋(まんびき)(熊本・和歌山・福岡)、十百(とうひゃく)(神奈川・高知)、顛好(てんほう)(浜名湖)
                ・・・・・・・・・一度に大漁にとれる意。
金山(かなやま)(長崎五島)・・・・・・・・大漁に獲れて大金が得られる意。
秋よし(山口)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・秋に旨いという意。
南鐐(なんりょう)(和歌山) ・・・・・・・・・質の美しい銀の異称の意で、体表が銀色で美しいことから。
死人旗(しびとばた)(神奈川三浦)・・・葬式の時に使う細長い三角形の小旗に似ていることから。
死人食(しびとくらい)(千葉)・・・・・・・・漂流物の周辺に群がる習性があり、水死体の周辺にも集まることから。この
                       為、シイラを食べることを嫌がる風習がある。これは死人を食うからと嫌がら
                       られているヨーロッパでの鯛と同じである。
紫摩御前(しまごぜん)(串本野)・・・・・シマは美しい黄金の意。コセン(コゼン)は婦女子に対する敬称。
分布
世界の温熱帯域に棲息し、日本では本州中部以南に棲息する。夏季の高水温期にはオホーツク海にも出現することがある。
主に春から夏に北上し、秋から冬に南下する季節回遊を行っている。海藻の下や、海面の漂流物について遊泳する習性がきわめて強い。
スズキ目シイラ科シイラ属シイラ
仲間はエビスシイラの一種のみ。エビスシイラはやや体高が高く、寸づまりである。沖合いの表層に棲息し、体長はシイラよりも短い90cmと小型。
形態
舌の上にも歯を備える猛魚で、魚体は全体に平べったく、頭部ほど体高が高い。成長するに従って雄の頭はおでこの様に脹れているので、雌雄の区別が容易である
また、オスの方が大きく、最大1.5〜1.8m、体重は30kgにもなる。尾鰭はマグロのように深く切れ込む。
体色は、体側背部が濃青色、体側腹部は黄褐色で、体側には緑色の小斑が散在する。死の直前には体色が鮮黄色に変化する。
産卵
産卵期は、日本近海では6〜8月。温帯から熱帯海域にかけ広く産卵するが、南方海域ほど産卵期間も長い。
卵は1.2〜1.3mmの大きさの分離浮性卵で球形をしており、一粒づつ表層を漂う。24〜25℃の水温なら60時間前後で体長4〜5mmの稚魚が孵化する。
成長
体長が16mmになると成魚と同じヒレになり、20mmで鋭い歯を形成、40mmになると流藻で浮遊生活をする。
1〜2年目は40〜70cmの大きさで数十から数百尾の群れをなし、90cmとなる3年目には10尾前後の群れとなる。110cm程度になる4年目には単独か雌雄で生活をする。
昼行性で、餌は表層のカタクシイワシやマイワシ、飛魚などの魚類やイカが90%を占め、残りは岩礁に定着している海綿を食べている。海綿を食べることが出来るのは、ウキブクロを持たず海面や海底へと自由自在に泳げるからである。
漁期・漁法
日本近海での漁期は6〜11月頃までだが、最盛期は6〜9月にかけてで、とくに水温25度前後の海域がよい漁場となる。
九州で全国の4割前後の水揚げがあり、92年頃までは2万トンの漁獲があったが、近年は1万トン前後。
漁法は定置網、巻網、マグロ延縄、表層曳き網の他に、シイラ漬が有名。
 シイラ漬・・・・・日本海の夏の風物詩でもあるこの漁法は、シイラの習性を利用したもので、約8mに切った竹を束
          ねた「漬(づけ)」と呼ばれるイカダを、約1.5km間隔に30〜70個ほど流されないように固定して浮
          かべる。そして集まってきたシイラを巻網で獲るという漁法。
結納の魚
高知県では、シイラは「雌雄仲の良い魚」とされ、塩干品が結納に使われる。
トローリングなどでオスが漁獲されると、ペアのメスは漁船の後をどこまでも付いて泳ぐといわれ、また、オスが釣り上げられると、その後すぐにメスも釣れるという。
老人と海
ヘミングウェイの高名な小説には、このドルフィン(Dolphin)が登場するのであるが、初期の日本語訳では何とこれをイルカと訳してしまったそうで、どうも話がしっくりとこなかった。これをお魚博士として有名な末広恭雄博士が指摘し、しかる後にイルカからシイラに訂正翻訳されて出版されたという有名な話がある。

         老漁夫の 滴たるしいら 下げ来たる       山田 みづえ
中華の魚
「和漢三才図会」によると、「夏に唐船が多く入船する時にシイラが船についてやってきて、唐船が帰帆する時は九州のタイが船について入唐するので、日本近海で夏にシイラが多く、中国沿岸では冬にタイが多くなる」ということから、中華の魚と呼んでいる。
万疋(まんびき)の煮びたし・・郷土料理
熊本市では、加藤清正の朝鮮出兵の戦勝を祝うことから始まった「ボシタ祭」(藤崎八幡宮祭)が毎年9月11日から行われるが、その時のご馳走である。
万疋(シイラ)を切身にし、塩でしめ、酢を少量落とした熱湯にさっとくぐらせて、クセを抜く。昆布を敷いた鍋に並べ、材料が浸るぐらいのダシ汁で吸い口の味加減に仕上げる。肥後ズイキとともに盛り合わせ煮汁をかけて食べる。
食べ方
シイラの食味に関しては、水っぽく生臭くて不味いという説と、刺身やフライで上等という説に分かれる。
魚皮とそのまわりが案外と生臭いので、荒塩をふり、タワシでよく洗い、ウロコは小さくても丁寧に除くことがポイント。
また、魚をおろしたら料理の如何にかかわらず、皮をひいてしまった方がよい。一晩塩でしめるとコリコリに身のしまったシイラになる。
刺身は、薄目の平造りにするとワラサやイナダに似ている。また、照り焼き、ムニエル、バター焼、そしてフライで洋風のタルタルソースなどをそえると美味である。
  シイラのすき焼き
     魚スキの場合は肉よりも味付けをぐっと薄くするのがコツであるが、シイラは牛肉でやるスキ焼と全く同じ
     くらいが美味。


           しいら舟 かたむく岬の 汐早む        遠山 壷中
           鉤先に しいらのおでこ 見えて来し     岸上 波人
           山里の 秋を祝える シイラかな           長寸


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