日本の旬・魚のお話

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日本の旬・魚のお話
日本の旬   魚のお話(夏の魚-10)
鰻(うなぎ)
万葉集に鰻を詠んだ大伴家持の歌があるように、日本では昔から食べてきたが、もっと以前の古代ギリシャ、ローマの人々も好んで食べていた。ウナギを食べる様子が、紀元前425年に上演されたギリシャ喜劇「アカルナイの人々」にも登場している。
夏の土用の鰻が良いと言われるが、本当に美味なのは初秋に産卵のために海へ下る銀毛鰻。産卵に備えて栄養を十二分に蓄え、豊満になっているからである。

                  うなぎ屋の 前でとも角 深呼吸
命名
鰻は万葉集に「武奈伎(むなぎ)」として登場する。その後「ムナギ」から「ウナギ」へと転呼併称された。
日本釈名(1700年刊行)には、「ム」と「ウ」とは音通ずるが故に「ウナギ」といい、その意味棟木(むなぎ)なり。その形丸くして長く、家の棟木に似てるなり」とある。
また、日本古語大辞典には、古くは蛇状のものを全て「ムナキ」と呼んだと記載されている。
一方、大言海には、鰻の胸部がやや黄色味をおびていることから「胸黄」の名がついて転化し、ウナギと言ったと記載されている。

          石麻呂に 吾もの申す 夏痩せに
               良しという 物ぞ武奈伎 獲り食(め)せ  大伴 家持(万葉集)
           (夏バテ気味の吉田石麻呂に鰻でも食べて栄養をつけろと詠った歌)
地方名
全国的にそのまま通じ、成魚の地方名は少ないが、成長過程の地方名は多い。
カンナメ・カミナゲ(三重・愛知) ・・・仔ウナギの呼名。古語では「糸」を「カナ」や「カンナ」と呼んだ。
カヨオ・カヨコ(千葉・埼玉)・・・・・・・「カ」は細少のものを表す語。
クチボソ(和歌山)・・・・・・・・・・・・・・鰻は広頭型と狭頭型に大別できる。クチボソは狭頭型のものであるが、この種のも
                     のは雄が多い。
マムシ(関西)・・・・・・・・・・・・・・・・・「まむし」は「まぶし」の変化した語。飯に鰻をまぶすの意でうなぎ飯をいう。
英名 Japanese Eel  中国名 河鰻
ウナギ目ウナギ科ウナギ属ウナギ
世界中には16種3亜種の計19種あり、太平洋に13種、大西洋に2種、インド洋に6種が分布。
日本には、北海道以南に棲息するウナギと、関東以南に棲息するオオウナギ(カニクイ)の2種である。
オオウナギは、全長160cmの12kgと大きく、伊豆半島の伊豆市浮ヶ池などに棲息し、天然記念物となっている。
形態
円筒形で細長く、背鰭、尾鰭、尻鰭は連続しており、腹鰭はない。体色は、体側背部が黒から黄褐色まで様々だが、腹部は白い。全長は1m以上にもなるが、60cm以上になるとほとんどメスばかりで、オスは50cmのものすらまれである。
寿命は10〜50年で、成熟したメスの胸鰭はオスより短い。体表がヌルヌルしているのは、蛋白質の一種であるムチンという物質に覆われている為で、また、鱗が無い様に見えるが、表皮の下に埋没して外から全く見えないだけである。
産卵
2005年の東大塚本教授の調査から、ウナギはマリアナ諸島のグァム島の北西にあるスルガ海山付近で、5〜6月の新月に産卵することがわかっている。
成長
孵化直後の仔魚をプレレプトケファルスと呼び、30日後には柳葉型の幼生レプトケファレスとなる。この幼生は海面を漂いながら、西へ流れる北赤道海流によってフィリピン近海まで運ばれ、さらに北上する黒潮に乗って日本近海にたどり着く。700kmにも及ぶ長旅である。
日本近海に着いたレプトケファレスは、半透明なウナギの稚魚に姿を変える。そして群れをなして川を遡上する。
ウナギは皮膚呼吸することが出来るので、水気さえあれば畑の上でも、岩場でも這って行ける。まさに「ウナギ上り」である。

成長段階での名称
  シラス − クロコ − メソ(40g以下) − ビリ − サジ(40〜50g) −
                                  キソダシ(50〜70g) − アラ(75〜300g) − ボク(300g以上)

            釣り上げた メソにてこずる 女連れ    一 遊
食性
夜行性で、餌であれば手当たり次第貪欲に食べる。大好物はアユで、養殖池から数匹のウナギがアユ池に入り込み、数日後にはアユが居なくなってしまい、後に残ったのは腹を脹らませたウナギだけだったという嘘のような本当の話がある。
これとは逆に、天然ウナギを飼育しようとしても、臆病で1年ぐらい絶食状態を続けるという。また、水温が14℃以下になるとほとんど餌をとらなくなる。
生殖
ウナギは、ある年齢までは雌雄同体で、30cm以上になるとオスとメスに分かれる。5〜10年の間、淡水生活をしたウナギは、夏から秋にかけて産卵の為に海へ出る。これを「下りウナギ」といい、銀色の婚姻色に彩られる。1〜2kgもあるメスに対し、オスは500〜700gの軽量で、ノミの夫婦である。
河口付近でたっぷりと栄養をつけたウナギは、何も食べずに群れをなして産卵場へと700kmの旅をする。
人工飼育
シラスウナギまでの人工飼育が出来ず、天然物に頼っている為、シラスウナギは「白いダイヤ」と呼ばれ、高価な取引となっている。
1970年に千葉県水試で産卵に成功し、1973年には北大で人工孵化に成功している。また、1999年5月20日に水産庁養殖研究所が、受精卵から孵化したプレレプトケファルスを253日飼育し、30mm以上のレプトケファレスまで成長する人工飼育に世界で始めて成功したと発表。
このように、シラスウナギの人工生産へ一歩ずつ近づきつつあるので、いずれ「白いダイヤ」が昔話になるかもしれない。
養殖
明治13年(1880年)に深川で服部倉次郎が試みたのが始まりとのこと。後に、養殖に必要な「シラス」、「餌」、「水」の立地条件がよい静岡に移った。これが浜名湖地区の大規模養鰻のはしりとなった。
(主なる養殖の品種)
  アンギラ・アンギラ(ヨーロッパ産・フランス産)
     20℃前後の低水温を好み、25℃以上になると斃死する。獰猛(どうもう)で共食いをし、少しでも湿ぽさがあれ
     ば電柱でも登る。イタリア、オランダ、デンマークなどのEU諸国で養殖され、フランスはシラスの販売のみで
     ある。また、中国でも養殖に成功している。日本では国内の寄生虫に弱く、養殖が難しい。
     シラス・・・2500〜3000匹/kg(0.4〜0.3g/匹) 15〜20万
  アンギラ・ロストラータ(アメリカ産)
     上記と近種で、大西洋のバミューダ諸島で産卵する。
  アンギラ・ジャポニカ(日本産)
     フランス産と比べて全長が2/3と短く太く、目が大きい。脂が多くてやわらかく、あっさりしてクセが少ない。
     シラス・・・5000匹/kg(0.2g/匹) 98年度は120万円まで高騰した。
流通
日本人が1年間に食べる量は約12万トンあり、国産養殖が30%、輸入が70%で、天然物は1%も満たない貴重品。
天然鰻は川物と沼物があり、川物として有名なのが四万十川と利根川の鰻。沼物では宍道湖(島根県)や涸沼、霞ヶ浦、北浦(茨城県)など。
天然物の腹は黄色味をおびているのに対し、養殖物は白っぽい。

脂肪含有率 脂肪酸
養殖物 12〜13% 多価不飽和脂肪酸が多い
天然物 3〜20% オレイン酸(植物に多い)が多い

土用の丑の日
中国から伝わった五行説とは、天地間の全ての出来事を木火土金水の五つの要素に置き換える。四季も春−木、夏−火、秋−金、冬−水とし、土は春夏秋冬のそれぞれの終り18日間、年間72日間(4回×18日)とした。現在では立夏、立秋、立冬、立春の前日までを土用の日(18〜19日間)としている。
また土用のそれぞれの日には子丑虎卯・・・の十二支が1日ごとに割り当てられているので、年によっては「土用の丑の日」が2回くる年もある。
血液の毒
血液中の血漿は普通、黄色味をおびているが、ウナギのものは鮮やかな緑色で、イクチオトキシンという有毒物質が含まれる。
この毒によって人間は下痢、血便、吐き気をもよおし、目に入ると結膜炎になり、傷口に入ると皮膚炎を引き起こすため、生食は難しい。
但し、熱には弱く、60℃以上で毒性はなくなる。
ヨーロッパ料理 
欧州でもウナギはよく食べられている。
  ドイツ(ハンブルグ名物)「アールズッぺ」
                   ・・・・ウナギのスープ
  イギリス「シェリードイ−ル」・・・・煮込んだブツ切りの鰻を冷やしてゼリー状にしたもの
  イタリヤ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・煮込みウナギ
  スペイン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・シラスウナギの空揚
土用ウナギは江戸時代のCM
この日に食べることには多くの諸説がある。
 1.平賀源内・・・・町内のウナギ屋頼まれて看板を書いた時、丁度、土用の丑の日だったので、「本日土用の丑の日」
            と大書したのが大当たりした。
 2.太田蜀山人(太田南畝)(狂歌、洒落本などで有名人)
         ・・・・はやらぬウナギ屋に義侠心を出し、土用の丑の日に「本日食べれば一年中無病息災」と書いて張
            り出した。
 3.春木屋(元禄年間の江戸神田のウナギ屋)
         ・・・・大名の藤堂家から大量の蒲焼の注文を受け、子、丑、寅の三日間焼き、それを涼しい穴蔵に納め
            ておいたところ、丑の日のものは味が落ちなかったというのが評判になった。

      あな鰻 いずこの里の 妹(いも)と背(せ)に
             裂かれて後に 身を焦がすとは  蜀山人(狂歌)
蒲焼
蒲焼の語源には、焼いた皮の色が樺(かば)の樹皮の色ににている「樺焼」説や、焼いた形が植物の蒲の穂に似ている「蒲焼」説、焼くときの香りが疾く届くので「香疾焼」説などがある。
江戸の元禄時代に、京都人が丸のまま串刺しにして焼き、タレは塩か味噌を使った。
安永天明年間には、江戸で醤油のタレをつけて焼く食べ方を「江戸前」と呼び、流行した。のちに鮨ネタの材料となる。
関東では「蒸し」の工程が入り、関西風とは食感が異なる。
   関東風・・・・・・背開き − 半分に切る − 串打ち − 白焼き − 蒸し −
                                       タレ − 焼き − タレをくぐらせる − 盛りつけ
            150〜200g/匹を好む。
   関西風・・・・・・腹開き − 串打ち − 白焼き − 焼きながらタレ付け − 盛りつけ
            200〜250g/匹を好む。
   白焼き・・・・・・ワサビ醤油で刺身風にする。また、大根おろしをたっぷりのせて食べるのもオツな味。酒の肴に最高。
蒲焼の匂い
食欲をそそるこの匂いの主役は、川魚臭として存在するピペリシンらしい。
その他、タレの中の糖分である味醂、醤油に含まれるアミノ酸のメチオニン、鰻の脂肪などが要因と思われる。
冷凍や真空包装された蒲焼がそれほど匂わないのは、ピペリジンが減った為であろう。また、海魚のイワシやサンマで蒲焼を作ってもウナギの特有の匂いがないのは、ピペリジンの存在がないためと考えられる。
うな丼
江戸時代の文化年間に、芝居小屋の持ち主であった堺の大久保氏が、大好物の蒲焼が冷えないよう保温のために工夫したのが始まりという。
      
             魚篭のまま 土用鰻の 到来す      亀井 糸游
             土用丑 のろのろされぬ 蒲焼屋     古川柳
             盆僧の 昼餉鰻丼 たのまるる       林 直人


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