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日本の旬 魚のお話(夏の魚-17) | |
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九仙(きゅうせん) | |
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旬 | |
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関東では、「何だベラか」と無残にも捨てられてしまうほど下魚扱いされているが、関西、特に瀬戸内では随分と珍重される高級魚である。瀬戸内ものは外海のものより身がしまって美味しい。 夏が旬の魚である。 船酔ひに べら美しく 上がりけり 石名田 石泉 |
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命名 | |
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『魚名考』では、赤ベラと呼ばれるメスの体側に一本の黒褐色の縦線とその上下に赤褐色の8本の点線があることから、キュウセン(九仙・九線・求仙・気宇山)と呼ばれた。 それならオスはどう呼ぶのか?その当時は、オスは青ベラと呼ばれ、別種と考えられていたとのこと。 |
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地方名 | |
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ほとんどの地域で「青ベラ」、「赤ベラ」と呼び、瀬戸内海の四国も含む中部以西では、「ギザミ」や「ギサミ」と呼ぶ。その他、シマメグリ(青森)、モバミ(鹿児島)、ヤギ(島根)、モズク(富山)、クサビ(壱岐)など。 |
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スズキ目ベラ科キャウセン | |
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ベラ科のほとんどが「○○ベラ」というように、語尾にベラの字のつく種が大部分である。しかし、このキュウセンはベラと付かないことから、名前だけではベラ科と思われにくい。 だが、ベラの仲間の中では一番親しまれており、一般にベラと呼んでいるのはキュウセンのことである。日本には126種も棲息している。 |
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ベラの仲間 | |
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カンダイ(コブダイ) ・・・ベラ科の魚では随一の1mにもなる巨魚で、関西では「恵比寿魚」と呼んでいる。幼魚の時は他 のベラ科の魚と同じ形をしているが、オスは成熟すると、オデコが出っ張ってコブが出来る。 ホンソメワケベラ・・・・・ベラ科の魚では最も小型で、サメやハタ、ウツボ等に寄生し、口の中の食べかすや、肌につい た寄生虫を食べたりする。魚のお医者さん。 ホンベラ ・・・・・・・・・・・キュウセンよりやや小型でよく似ている。淡緑色をしており、9〜12cmになると殆どのメスはオ スへ性転換し、ハデな体色となる。最大で12cm程度。 その他、オハグロベラ、ササノハベラなど。 |
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分布 | |
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一般に熱帯のサンゴ礁域を分布の中心としているが、このキュウセンはベラ科の中で最も低温に強く、北海道以南から九州にかけて分布している。特に瀬戸内海に多く生息する。 岩礁地帯で藻場と砂地が点在するような場所に棲んでいる。 |
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形態 | |
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側偏した長卵形で、口は小さく出歯となっており、かなり貪食なせいか上下の牙顎歯(ががくし)や咽頭歯が発達し、相当硬い物でも食べられる。 オスの大部分は青味が強く、体軸に沿って淡褐色の幅の広い一本の縦線があり、胸鰭の後方に黒斑が出来る。また、頭部に多くの褐色の細い線がある。体長は15〜22cmになり、最大34.7cmという記録がある。 15cm以下はオス、メス同じで、黒褐色の縦線と8本の赤褐色の点線がある。 |
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産卵と成長 | |
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6〜9月頃になるとメスが集まってきて、砂場に産卵床を作り、雄が放精し、砂で覆う。 1年で約7cmになりオス、メスともに成熟し、2年で約9cm、3年で15cmとなる。食性は、エビやカニなど小動物を貪食する。 |
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性転換 | |
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赤ベラには雌と雄が同程度いるが、体長9〜14cmになるとメスの中の大きい物はオスへ性転換し、体色も青味がかった色に変化して、複数のメスをかかえるハーレムを作る。キュウセンの大物がほとんど青ベラなのはその為である。 青ベラになってあぶれオスになるよりも、安全で確実に自分の子孫を残す為、メスのふりをして赤ベラのまま他のオスの縄張りの中で生活し、他のペアが産卵する時に、こっそりと自分の精子をかけるという、したたかなオスの存在も最近明らかになった。 黒鯛(チヌ)も幼魚では総てオスで、3年魚のころ雌雄同体になり、体長約25cmになると雌雄に分かれる。 赤ベラの 上に青ベラ 魚篭の中 吉野 十夜 |
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漁法 | |
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底曳網、刺網。明石では年間50トンと、アイナメやアナゴにつぐ漁獲量。 |
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早寝早起き几帳面魚 | |
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日没になると砂にもぐってサッサと眠ってしまう。朝になると起床して餌さがしに出掛ける。ハデな色は敵に見つかり易いが、夜は砂に潜って眠るという規則正しい生活習慣がベラの身を守っているようだ。我々も見習わなくては!! 波の荒い日などはサッパリ釣れなくなる。海が濁っているので、ベラは日没と間違えて砂に潜って眠っているのかもしれない。 |
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冬眠 | |
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水温が下がる11〜12月頃で、13〜15度になると砂に潜って冬眠する。 来春4月頃になると14〜15度で起きだし、活動を開始する。 |
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郷土料理 | |
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1.いびり食い・・・瀬戸内海地域で、小魚を半日ほど天日干しにした物を焼いて食べる料理の総称。 1)ウロコを落とし、内臓とエラを取り、よく水洗いする。 2)ザルにベラを広げておき、かるく塩をして半日程、天日干にする。途中で裏返し、両面を平均に乾かす。 3)焼いて少々の醤油と、カボスかレモン汁をかけて食べる。干すことによって、身もしまり、酒の肴にもってこい の逸品。 2.ベラ寿司(おぼろ寿司)・・・淡路島の岩屋や西浦の北部で昔はよく作られた。大勢の人が集まる時に大きな寿司桶 に作っておいて、めいめいが取分けていただくお客料理。 1)ベラの内臓を取り、そのまま焼いて身をむしり、すり鉢でよく摺る。 2)(1)を鍋に入れ、砂糖や醤油で味を付け、醤油が無くなるまでイリ煮をしてソボロにする。 3)寿司飯を寿司桶に詰め、(2)をおいて押す。 4)ソボロが飯となじんだら、錦糸卵と紅ショウガをふり飾る。 |
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食べ方 | |
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ベラはヌメリが多いので、ボウルに入れてたっぷりの塩を振る。かき混ぜながらヌメリを取り、水洗いするとウロコが取り易い。 大きなベラは刺身にするのが最高。また、ベラの骨は硬いが、豆ベラ(10〜15cm)は酢を利用することで丸ごと食べることが出来る。 1.豆ベラ 唐揚げ ・・・・・・・・ベラを水洗いしながらヌメリを取り、ウロコや内臓は取らずにそのまま片栗粉でコロモを付けて カラッと揚げ、レモン汁と塩を振る。 唐揚南蛮漬 ・・・・170℃の油でアワが出なくなる程度までしっかりと揚げ、熱湯をサッとかけ、油の臭みを取る。 そのあと、南蛮酢に一晩漬け込むと、骨も軟らかくなり、丸ごと食べられる。同時に玉ねぎと人 参の千切りを南蛮酢に漬け込むと魚の臭みも取れ、一層風味が増す。南蛮酢とベラは温かい 内の方が漬かりがよく、早く食べられる。 2.多き目のベラ(15cm以上) 塩焼き ・・・・・・・ベラのウロコと内臓を取り、皮に二筋ほどの切れ目を入れ、頭とヒレにたっぷりと化粧塩をして 焼き、カボスやレモン汁をかける。 焼き南蛮漬 ・・・下処理したベラを素焼にする。素焼にしたベラを南蛮酢に漬けるか、油で揚げてから南蛮酢に 漬ける。同時に玉ねぎ、人参も漬け込む。好みによって二杯酢、三杯酢でもよい。 赤きべら 青きべらなど 沖膾 (おきなます) 谷口 三居 赤べらの 南蛮漬や にごり酒 久保 さとし 焼きて煮て べらの七色 失せにけり 立花 豊子 |
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