![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
|
|
![]() |
![]() |
![]() |
日本の旬 魚のお話(秋の魚-1) | |
![]() |
|
飛魚(とびうお) | |
![]() |
|
旬 | |
![]() |
松江の人は、ひと山なんぼの皿盛で丸々と太った子持のアゴが魚屋の店先に並ぶ時分になると、「夏を肌で感じる」という。また、博多ではハレの日に食べる習慣があり、「アゴがないと正月がこんと
!」と言われるくらい、正月のお雑煮には欠かせない魚である。 関東と違って、西日本の人には好まれている魚である。季語も旬も夏で、干し物中心だが、「たたき」で食べるのも美味である。 飛魚の 波に飛びつき 沈みけり 松藤 夏山 |
![]() |
|
命名 | |
![]() |
現代では飛魚という漢字を当てているが、『本朝食鑑』には文![]() ![]() また、地方の言葉には下のようなものがある。 地獄の魚・・・・奄美大島では、空中を飛ぶ魚ということで昔は食べずに「地獄の魚」と言って忌(い)み嫌っていたが、 天明の飢饉以来、食用として利用されるようになった。 春告げ魚・・・・沖縄地方で呼ばれている。 夏告げ魚・・・・丹後や若狭地方では5〜6月に飛魚が現われる。 |
![]() |
|
地方名 | |
![]() |
アゴ(長崎・福岡・島根・鳥取・能登)、トビ(関西)、ウズ(三重)、ツバクロ(石川)、フルセン(紀州)、タチョ(富山)、マイオ(焼津)など。 |
![]() |
|
ダツ目トビウオ亜科トビウオ科 | |
![]() |
ダツ目にはサヨリ、サンマが仲間におり、両者とも水面を飛んだりするところはよく似ている。 世界で53種、日本で24〜25種が知られているが、最も普通に見られるのはハマトビウオ亜科トビウオ属トビウオで、「本トビ」と呼ばれ広く分布する。 春〜夏にかけて、南の海から最も早くやってくるのは25〜45cmのハマトビウオ、ホソトビウオ(マルトビウオ)、ツクシトビウオなど。 続いて、25cm前後のサヨリトビウオ、アヤトビウオ、ヒメアカトビウオなどがやってくる。 前者を「春トビ」、後者を「夏トビ」と呼ぶ。 追い潮に 乗りて飛魚 月夜かな 工藤 義夫 |
![]() |
|
分布 | |
![]() |
世界中の温帯から熱帯の海に棲息し、日本では房総付近の南側から九州五島列島あたりまで分布。暖海域の表層性回遊魚で、春から夏に北上し、産卵する。 |
![]() |
|
形態 | |
![]() |
魚体を輪切りにした断面では、背部が広く腹部は狭い逆三角形で、胸鰭(むなびれ)が著しく大きく、その末端は背鰭の終りまで長く伸びている。 大半の魚は、水圧や水流などを感じ取る側線が体側の中央を頭から尾にかけて走っているが、滑空するトビウオでは腹側にあるのが特徴。尾鰭は一般的に上下対称だが、海面をけってジャンプするのに都合が良いよう、下側が大きくなっている。反対に上側が大きいのはサメ類である。 |
![]() |
|
産卵 | |
![]() |
水温が19〜23度になる5〜7月が産卵期で、水深10〜30mの海藻や岩礁に産卵する。卵には5〜20cmの付着糸がついており、これが海藻や岩に絡まり、また卵と卵とも絡まって、流されたり傷が付かないように保護している。 抱卵数は1.5万粒で、大きさは1.5mm前後。22〜24度なら10〜14日で孵化する。 孵化した稚魚は5mm前後。産卵を終えた親は一生を終える。 |
![]() |
|
成長 | |
![]() |
甲殻類の動物性プランクトンを食べて秋には幼魚に成長し、南下して九州南部で越冬する。幼魚時代は下顎(したあご)がサヨリのように長く伸び、幾分突き出しているが、成長するに従って脱落する。 普通は海面の近くを群れて泳ぎ回っているが、深くても40m前後である。翌年の夏頃には20cm以上になり、北上する。 |
![]() |
|
飛行 | |
![]() |
『和漢三才図会』に、「3〜4月頃、群れ飛び、その時に水上30cmばかりを離れて飛ぶが、のちに水に没し、再び空中に飛ぶ」と示されている。 飛翔(ひしょう)は、何かに驚いたり外敵に追われて逃げる時、または光に向かって飛ぶ時の行動だと言われ、その能力は普通、海面スレスレであるが、『魚の博物事典』(末広恭男)によると、高さ10m、距離400m、滑空時間42秒、時速70kmという記録もある。 飛び方も、尾鰭の振りで左右方向を自在に変えることが可能。胸鰭をパット広げ、尾鰭をキックして推進力をつけ、空中に飛び出す。鳥の翼のようにバタつかせるのではなく、グライダーの様に飛行する。また、体を軽くするため、食べたものが早く消化されるよう、腸も短く出来ている。 |
![]() |
|
漁法 | |
![]() |
漁期は5〜7月に刺網、浮刺網、定置網、すくい漁(伊豆七島)で漁獲する。 浮き刺網・・・トビウオの性格をうまく利用した方法で、海面から深さ5mくらいの所に長い網を設置し、勢いよく泳 いでくるトビウオが網に刺さるという仕掛け。網目より小さい魚は網をくぐり抜けるので、一定のサイ ズのトビウオが獲れる。 すくい漁・・・・暗闇の中で集魚灯を点灯すると、トビウオがいっせいに泳いでくる。このタイミングを見計らって舷 側に網を投入すると、突進してきたトビウオはたちまち網の目に突き刺さる。異常に気付いて反転 するトビウオを船の上からタモですくう。これもトビウオの性格を利用した漁法。 |
![]() |
|
薬効 | |
![]() |
『魚鑑』には、「難産は黒焼きを粉末にし、酒にて服す。また、妊婦常に食うてよし、また、鰭の黒焼きを乳のしこりにつけて妙なり」とあり、出産期の女性の諸々の病気や安産のための妙薬として、昔は妊婦がよく食べた魚のようだ。 |
![]() |
|
刺身 | |
![]() |
淡白な白身の魚で、鮮度の良いものは刺身にする。薬味はショウガが良い。また、タタキにして、擦った長芋や細かく切ったオクラをのせ、タルタル状にし、ショウガ醤油で食べるのも珍味。 |
![]() |
|
すり身の加工品 | |
![]() |
山陰(松江・鳥取)の「あご野焼き」または「あごのちくわ」 暑くて堪らず屋外であぶったことから命名された。鮮度のよいアゴと塩の加減、それと地酒で餅の様になるま ですり込むと、「アシ」の強いすり身が出来、あの独特の「あご野焼き」が出来る。 とび(三宅島) トビのタタキに味噌、生ショウガ、大葉などの薬味を加え、すり鉢で擦って団子にして油で揚げたもの。 団子汁 だんご汁(長崎)、すり身団子(福岡)、アゴのすり流し味噌汁(山口)、アゴの団子汁(島根・鳥取)、飛魚のくずし (和歌山)、すりいお(高知)など、西日本の各地によく似た一品がある。 |
![]() |
|
干し物 | |
![]() |
脂肪含量が約1%と少なく、このため酸化は起こりにくい。逆にタンパク質は20%以上もあるので、干している間に熟成がすすみ、アミノ酸の遊離する量は多くなるから、格別の味となる。 『本朝食鑑』にも、「生食は良くなく、乾魚は味がよい」と書かれている。全国的に代表的な干し物として下記がある。 長崎の「焼あご」 ・・・・・・・炭火で焼いて干し上げたもので、ダシ等に利用。 「塩あご」 ・・・・・・・塩漬けしてから、背が透き通るほどカチンカチンに干したもので、トンカチでたたいて軽く あぶる。酒の肴の逸品。 伊豆七島の「くさや」 ・・・・ムロアジよりも飛魚のほうが美味い。「くさや汁」が考案されたのは400年以上も昔で、 干し物を作る時に漬ける塩水を繰り返し使っている間に独特の旨味が出てきたとのこと。 「くさや汁」には「くさや菌」が生きており、防腐作用や魚の蛋白質を分解して独特の旨味 を引き出すのである。 飛魚の 且つとぶ夕日 ゆれて落つ 増本 春蘭 飛魚や 波に傾く 佐渡ケ島 加藤 湛水 飛魚を 干して食うべて 博多かな 逢田 節 |
![]() |
![]() |