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日本の旬 魚のお話(冬の魚-2) | |
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鮃(ひらめ) | |
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旬 | |
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冬の鮃を「寒鮃」といい、秋から冬が旬である。 だが、近年は養殖活鮃の流通や、アメリカをはじめ韓国や中国からも輸入され、また、日本と季節が反対のニュージーランドやオーストラリアからも輸入される為、夏でも美味しく食べられるようになった。 「夏鮃は猫も食わぬ」と言う格言もあてはまらぬ昨今である。 寒鮃 ひらひらひらと 月に釣る 大野 雑草子 |
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命名 | |
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江戸時代の貝原益軒は、宝永6(1709)年に著した「大和本草」の中で、「此ノ魚背黒ク腹白クシテ魚ノ半片ノ如シ、カタワレ魚ト言フ」と述べている。また、この後に「目ハ一処二二ツアリ、近ク・・・」と記されているように、目が二つ並んであることから、此目魚とも呼ばれる。此目魚とは中国でヒラメを指す。 漢字は体形が平たい魚という意味から「鮃」と書くが、江戸時代には「平目」という字を使った。これは、当時、会津東山温泉で働いていた公娼の話に由来し、片目の女に限って娼妓になることが許されたことから。片目の女性を魚の鮃に因んで「平目」と呼んでいたからという。 |
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地方名 | |
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カレイとの混称が多く見られる。 バンゴ(福井)・・・・・・・・・半身の魚、「半魚(はんこ)」が訛ったもの。 サカムカイ(佐渡)・・・・・・ヒラメの体はカレイと左右反対になっているということから、「逆向かい」というのであろう。 ハス・ハスガレイ(三重・浜名湖) ・・・・関西の古い方言で、子供の頭に出来る瘡(かさ)や湿疹を「ハス」と言った。体表に瘡のような 斑紋があることから。 カッタイガレイ(仙台)・・・癩(らい)病のことを「カッタイ」と言い、上記と同義である。 ヤイトガレイ(兵庫) ・・・・灸(やいと)の跡のような斑紋のあるところから。 オヤニラミ(高知)・・・・・・地元では親を睨む子は不幸者になると言う俗諺があるが、両眼が接近しているので睨(にら) んでいるように見えることから。 トイダ(仙台)・・・・・・・・・・平たくて大きな板のような魚ということで、「戸板」の訛り。 カルハ(柳川)・・・・・・・・・「枯る葉」の意でいうのであろう。体色、体形とも枯葉に似ていることによる。 ヒダリグチ(山口)・・・・・・体の左側に口のあるのを一般にヒラメと呼んでいる。 ハタタ(隠岐) ・・・・・・・・・ハタは古語で扁平なものの意。 ベタ(長崎)・・・・・・・・・・・ベタ足と呼ばれる様に扁平の意味で呼ばれる。 オオグチカレイ(関西)・オオグチ(愛媛) ・・・・カレイ類と比べて口が大きい事から。 その他、ハガレイ、ホンガレイ(徳島)、メビキ(富山)等がある。 英名 Flat Fish. |
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カレイ目ヒラメ科ヒラメ | |
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ヒラメはカレイの仲間であり、左右の眼が体の左側に寄り集まっているのがヒラメ。 一般に「左鮃に右鰈」と呼んでいるが、例外もあって、北海道の湖沼にいるヌマガレイはヒラメと同様に左に頭がくる。しかし、このヌマガレイは、アメリカ西海岸で棲息するものの約半分がカレイと同じ右側に眼がある。 |
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形態 | |
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顎歯は鋭く一列に生え並んでいるが、この歯も眼の無い右側の方が大きい。これは海底に体を横たえて砂中の生物を捕食するため発達したのであろう。 また、近寄ってくる魚を一飲みにする「居食い」が採食行動の中心で、好きな餌に対して、砂地からジャンプして丸呑みするさまは壮観である。捕食は夜間に行う。 |
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分布 | |
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千島列島及びサハリン以南から日本全国の外海沿岸に10数種おり、水深50〜100m以上の砂地に棲息する。 |
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産卵 | |
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4〜6月頃、水温15〜16℃になると水深20〜30mの浅場に移動し産卵する。生殖行動はかなり派手で、オスとメスが時には突っ立つ程激しく組み合うと言われている。 卵は浮遊卵で30〜40万粒産み落とすが、ヒラメの卵巣は一度には成熟しないので、産卵は数回にわたる。浮遊卵は2〜3日後に孵化する。 |
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成長 | |
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孵化後、10日目ぐらいまでは普通の魚と同じ形であるが、その後、眼の移動が始まり、30日頃で右眼は背ビレの直前、頭部の正中線上へ移動し、40日目には移動が完了して親と同じ形になる。 3〜5年で50cm程に成長し、3年魚から産卵する。大きいものでは1m以上に成長するものもいる。 |
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漁法 | |
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トロール漁や底引網が主であるが、沿岸の小型漁船は中層トローリングでも獲る。 天然物6〜7千トン、養殖物6〜7千トン、輸入活物(含カレイ)6千トン。 |
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天然物と養殖物の見分け方 | |
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天然物の体の裏側は白いのに対し、人口種苗で育成されたヒラメには黒っぽい斑があるので、容易に見分ける事が出来る。自然の海で獲れたヒラメでも、黒斑があれば放流されたヒラメであることがわかる。しかし、最近は底に砂を敷いた水槽で育てる種苗もあり、これには黒斑がつかないので見分けにくくなってきた。 |
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バイオ技術で養殖 | |
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ヒラメはメスの方が成長が早く、大型になる。 この利点を生かす為、受精卵の中の性を決定する遺伝子を操作し、母親だけの遺伝形質を受け継ぐ子を作出する技術を用いてメスの種苗をつくり、養殖をする。 そのうち「食卓にのぼるヒラメは全部メス」の時代になるかも? |
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ヒラメの祖先 | |
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体の片側を下にして休息するスズキ科や、砂の中に潜って眠るベラ科の祖先から進化したものといわれている。それを示す中間型としてボウズカレイがあり、この魚のエラや口、歯などは左右対称で、他にもスズキ型の魚類と共通の特長をもっている。 |
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海のカメレオン | |
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ヒラメは体表を保護色に変える能力を持っている。 光に対して非常に敏感で、黒褐色の側の体表にある色素胞を広げて暗色になったり、縮めて明色になったりすることができる。しかも、わずか15〜20分で周囲と同じ色に変色する。この判断は目で行っているらしく、砂の上で頭部だけ黒くしてやると体全体を黒く変えてしまう。多分、黒い所にいると錯覚してしまうのだろう。また、舟の影などにも敏感に反応してすばやく逃げるのだが、そのために折角の保護色が生かされず簡単に見付かってしまうドジな面も持っている。何事にも一長一短あり。 |
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俗諺 | |
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親を睨むと鮃になる ・・・・子供に対して、「親を睨むと鮃のような眼になるぞ」と脅かしに使われた。昔、良寛和尚が子 供の頃、母親に叱られて「そんなに睨むと鮃になる」と脅かされ、海辺の岩に腰掛けて泣い ていたという話は有名。 産婦に鮃を食わすな・・・・鮃を嫁に食べさせると、産まれてくる子の口が鮃の様に曲がってしまうという俗信。嫁には 美味しい鮃を食べさせたくない姑の気持ちなどの意味も含まれる。 比目の魚・・・・・・・・・・・・・もともと1尾の魚だったものが、2尾に分かれた為、いつまでも仲睦まじいという中国の俗諺 からきている。「比目の枕」と言えば夫婦が褥(しとね)を伴にすることである。 |
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ヒラメの旨味 | |
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筋力100g中のエキス窒素分の含有量は約400mgで、筋肉に対して0.4%であり、カレイの0.3%より多い。それだけヒラメの方が旨味を強く感じる。また、寒鮃は脂肪含有量が2.2%(養殖物は3%)と、夏鮃に比べて2倍以上含んでいる。 知恵のなさ 四月鮃の 刺し身なり |
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縁側(えんがわ) | |
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食通がヒラメを食べる時に必ず注文するのが、ヒラメの縁側である。縁側は鰭の部分で、身肉の刺身はコリコリとした食感をもち、また脂も乗って最高に旨い。 縁側の脂肪含量は冬の天然物で20%(養殖物は30%)、夏でも16%ある。縁側にはタンパク質の一種であるコラーゲンが多く含まれており、このコラーゲンは細胞と細胞を結び付ける結合組織の主成分であるから、これを食べると張りのあるつややかな皮膚になる。 |
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食べ方 | |
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1kg前後のものが好まれる。 薄造りで三杯酢と紅葉おろし、またはワサビ醤油で食べるのが高級料理の一つ。大型のヒラメは切身にして、バター焼き、ムニエル、グラタンなどの西洋料理に使われる。また、切身に塩を振って焼物や煮物にも好適。 昆布じめ・・・・・・産地で活け締めして脱血し、氷詰めにして半日間熟成したものを五枚(背骨を中心に背側の身ニ 枚と腹側の身二枚)に卸し、身肉を昆布じめにする。昆布のグルタミン酸と食酢の酸味が身肉へと 徐々に移って行く。 ヒラメの肝 ・・・・新鮮な旬の肝はオレンジに近い鮮やかな冴えた色をしており、この肝を壊さない様に取り出し、一 度湯がいて薄めの醤油味でさっと味を付けると、酒の肴に絶品。 大鮃 つと身を起こし 泳ぎ出す 細見 しゆこう まな板に 貼りつき鮃 上目使う 津川 あい 値のあがる までの生簀の 寒鮃 和田 雪華 |
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