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日本の旬 魚のお話(秋の魚-16) | |
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牡蠣(かき) | |
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旬 | |
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西洋では、「カキはRのつかない月(5〜8月)のものは食べるな」といわれる。日本でも同様な言葉に、「花見過ぎたらカキ食うな」とあり、夏は身が痩せ、味が落ちて不味い。その上、夏の海は細菌汚染がひどくなるので、中毒も起こり易い。 最高に美味しいのは、カキがグリコーゲンでたっぷりとなる12〜2月。 冬霞む 瀬戸の入江の 牡蠣筏 小西 静子 |
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命名 | |
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日本の名産を紹介した『日本山海名産図会』には、「石について動く事なければ、雌雄の道なし。皆、牡なりとするが故に牡蠣と言う。蠣とは貝の類大で、ブドウの房のように沢山の貝がくっついている様を言う。」とある。また『本朝食鑑』にも、「もっぱら雄にして雌なし、そこで牡の名がある」と記されている。 中国では干しガキを「ホウシー」と呼び、正月に食べる風習がある。これは、お目出度いことを意味する「好市」と発音が同じことからきている。 英名 Oyster |
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軟体動物門二枚貝網ウグイス貝目イタボガキ科 | |
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世界に約80種あり、二枚貝特有の貝柱が普通は2個あるところが、カキはホタテ貝同様に1個しかない。 日本には冬が旬で主に有明海で獲れるマガキスミノエカキや、やや形の長いナガガキ、小型でしまっているイタボガキ、夏が旬の岩ガキなど約25種が棲息する。カキの王様ブロンで知られる平ガキは、イタボガキの一種である。 養殖されている大半がマガキで、主な産地は岩手、宮城、三重、広島である。 |
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分布 | |
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カキの餌は、海中の上層部分に多い植物性プランクトンである。このプランクトンは真水と海水が混じり合う塩分濃度の低い海域を好むので、河川が流れ込むリアス式海岸が適している。 岩に張り付き、干潮線の近くで成長して行く。殻は鱗状に重なり、干潮時には堅く閉じているが、潮が満ちて来ると僅かに殻を開けてプランクトンを食べる。 |
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産卵 | |
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5〜6月に産卵し、産卵が終わると雌雄がなくなって中性になる。産卵後は翌年まで栄養を取って育つが、産卵期の前にあまり栄養を取れなかったカキは雄に、栄養を取ったカキは雌になる。 |
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成長 | |
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5〜6月頃に孵化した貝は浮遊生活を送り、やがて岩などに付着して定着した生活を送る。プランクトンの発生が少ない年は孵化しても生存できない為、カキの少ない年もある。 養殖業者は、北海道から購入したホタテ貝の殻に穴を開け、この時期にカキ棚の間へ吊るす。すると、浮遊している仔貝がこの貝殻に定着する。これが種カキで、2年間筏に吊るして成長させ、出荷する。 |
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養殖 | |
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『シーザーの晩餐』の著者である塚田孝雄氏によると、古代ギリシャやローマでは、すでにカキの養殖が行われていたと言う。また、日本で養殖が盛んに行われる様になったのは、江戸時代からと言われている。 当時は海中に竹などを立てて置き、これに付着した稚貝を獲って海底に蒔くと言う方法であった。その後、大正12年(1923年)に筏を使った垂下式が広島の宮島で考案された。 植物プランクトンの多い水深2m前後に吊るす事で、地蒔き方式に比べてその成長期間が半分で済む様になった。 養殖筏には長さ10mのワイヤ約700本が垂れ下がり、30万個のカキがついている。また、世界の養殖量は約100万トンで、日本と韓国がそれぞれ25%づつを占めている。 広島産は身が大きくプリプリしていて若い人が好み、宮城産は貝柱が大きく旨味の多いことから、年配の人に好まれている。 |
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ヒスイ色のカキ | |
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フランス西海岸ビスケー湾に浮かぶオレロン島はカキの島で、世界でおそらくただ1ヶ所、緑色のカキが育つ島。 地蒔きして育てたカキを出荷前に海から海水の池へ移し、ここでしばらく棲息させるうちに身が緑色に変わってくる。この秘密は、池に漂っているナビキュ―ル・ブルーという青いケイ藻で、これをカキが毎日食べることでエラのヒダが緑色に染まってくる。 これを見出したのは2千年前のローマの怠け者で、普通、カキが食べたくなると海まで漁に出掛けなければならなかったが、いちいち面倒なので、カキを海水の溜まった池に入れておいたのが始まり。 オレロン産の「スペシャル・ド・クレール」の名で売る上級品は、藻の池の1m×1mの範囲に10個の密度で最低2ヶ月間は置かなくてはならない規制をし、2千年かけて築いた伝統を今も守り続けている。 |
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フランスのカキを救った日本のマガキ | |
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1970年前後、フランス各地のカキがウィルスに侵された。全滅の危機を救ったのが、日本から輸入されたマガキ。現在も立派にフランス人に役立っている。 |
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日本酒&ワイン | |
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マガキやイワガキは甘味が強く、日本酒に合うが、フランスガキは少し渋味を感じるのでワインが合う。ちなみに、フランスガキは東北地方で養殖されている。 |
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カキと植林 | |
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プランクトンの生育には鉄や亜鉛などの無機質が欠かせないが、これらを運んでくる栄養豊かな水が海に注ぐようにするため、広島では太田川の上流で植林を始めている。 |
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英雄、カキを好む | |
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カキは、紀元前から世界各地で「精のつく食品」として知られていた。実際に精液をつくるのに亜鉛が必要であり、カキはこれを多く含む食品である。シーザーやナポレオンもカキを好み、鉄血宰相ビルマスクは一度に175個も食べたという記録がある。 |
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産直 旬の味 カキ船 | |
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江戸時代(1670年)より始まった、広島から水の都大阪へのカキ船は、戦前まで長きにわたって続き、橋のたもとに浮かぶ浪速(なにわ)の冬の風物詩であった。 もともと船は新鮮なカキを販売するだけの、今流でいえば産地直送便であったが、次第に船の中で土手鍋や酢ガキ、雑炊などの料理にして食べさせるようになった。最も盛んになったのは明治末期から大正時代にかけてで、その数は80隻以上に及び、庶民のささやかな贅沢として広く親しまれた。 牡蠣船を 赤い襷(たすき)の ちらすかす 川崎 展宏 |
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広島カキのルーツ | |
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養殖は広島が最も早く、小林五郎左衛門が寛文10年(1670)に始めたのが最初とされるが、そのルーツは元和5年(1619年)に転封された浅野長晟が、産地振興の為に和歌の浦(和歌山)から移植したもの。 養殖によって生産過剰に陥ったカキを、舟で大阪に直売した浅野の殿様の企画力は抜群であった。 |
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平城京とカキ | |
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平城京から出土した木簡に「献上蠣一籠」と記されたものが見つかったが、どう料理したのかは記録されていない。 江戸時代になると『料理物語』(1643年)に吸い物、汁物、酢牡蠣、串焼き等、色々と登場してくる。 |
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海のミルク | |
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カキは完全栄養食品だと言われる。 100g中に91kcal(67)、蛋白質9.5g(3.3)、脂質2.2g(3.8)、炭水化物7.4g(4.8)の他に無機質、ビタミン等をまんべんなく含んでいるので、同じ完全栄養食品である牛乳に互して「海のミルク」と呼ばれている。 ※( )の数値は牛乳の値 |
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カキが中毒を起こし易いのは | |
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貝類の中で最も中毒を起こし易いといわれるのは、カキが栄養豊富で細菌が繁殖しやすいこと。また、カキは1時間に20mlもの海水を吸い込んでプランクトンを食べるが、その海水中の細菌、時には有毒な菌も同時に食べてしまう為であろう。逆によく海水を排出し、約20時間で細菌も排出するので、内臓はきれいになる。 主な食中毒の原因は、SRSV(小型球形ウィルス)によるウィルス性食中毒で、体調が悪い時や疲れている時、もしくは一度に多量のカキを食べた時に起こる。 |
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カキは水なしでも長く生きられる | |
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干潮時でエラ呼吸が出来なくても、グリコーゲンを多く持つカキは10日間も生きられる。なぜなら、グリコーゲンは筋肉中で急激な運動をした時の無酸素状態で利用される物質であるため。ちなみにホタテは2日間しか生きられない。 |
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Rの月 | |
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西洋のことわざに「Rのつかない月(5月〜8月)は食べない」とあるのは、気温が高く食中毒が起こり易いのと、産卵期間中はカキ自身がグリコーゲンを多量に使うので、旨味が少なくなるため。 |
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夏でもおいしく食べられる生カキ | |
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一般にマガキは夏に産卵し、産卵後は痩せ細って美味しくないので、冬まで待たなくてはならない。しかし、近年、夏でもおいしく食べられるカキが、広島県立総合技術研究所水産海洋技術センターで開発された。 これは、カキの受精卵をカフェインの液体に漬けることにより、生殖器官の発達を制御したものである。この効果によって産卵しない為、栄養価の高いまま成長することが可能となり、更に普通のカキと比べて身が大きくなるのも特徴である。 カフェインに漬けたカキは染色体の数が増えるので、交雑などによって在来種に影響を及ぼす恐れが懸念される為、現在はまだ大量生産ができないが、将来は夏でも美味しい生カキが店頭に並ぶことだろう。 |
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生食用と加熱用 | |
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むき身販売されている市販のカキの表示の違いは、鮮度は同じであるが、浄水で丁寧に洗ってあるかないかの違いである。生食用は浄水で丁寧に洗ってあり、細菌数は少なくなっている。出荷日だけを注意して買うのがポイント。 |
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生カキが旨いのは | |
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生カキが旨いのは、旨味成分のタウリンやグルタミン酸の含有量が違うからである。 タウリン グルタミン酸 生カキ 100% 100% 水煮 60 60 フライ 80 55 |
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なぜカキは内臓が多いのか | |
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他の貝と違い、一度付着すると一生動かず、筋肉が発達しないために内蔵が大きくなる。また、筋肉より内臓が旨いのも、アミノ酸の含有量に差があるためである。 筋肉 内臓 筋肉 内臓 カキ 10% 90% グルタミン酸 110g 300g ハマグリ 32 68 アラニン 105 310 ホタテ 49 51 アラニンは大人の味ともいわれ、苦味がある。 |
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食べ方 | |
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和風は食酢を、洋風はレモン汁を使い、共に生カキを酸味で食べている。酸味は甘味が締まり、ヌルヌルした食感がやわらぐので、旨味がより一層生きる。 和風ではモミジおろしで辛味を、洋風ではケチャップやタバスコでホットなアクセントを付けるところも、和風と洋風が共通している点である。 カキフライ、どて焼き、雑炊、カキ鍋など、さまざまな料理に利用される。また、カキフライは揚げすぎないことがコツで、細かいアワの音がしだいに大きくなってきた時が揚げ時である。 育ちよき 牡蠣に浦々 活気づく 坂本 とみ子 冬霞む 瀬戸の入江の 牡蠣筏 小西 静子 牡蠣の酢に むせてうなじの うつくしさ 鷹羽 狩行 |
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