日本の旬・魚のお話

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日本の旬・魚のお話
日本の旬   魚のお話(春の魚-7)
蝶鮫(チョウザメ)
チョウザメは一般にサメと呼ばれる魚と同じ仲間と思われているが、全く異なる系統である。外見上の見分け方は、エラ蓋(ふた)があるのがチョウザメで、エラ蓋がなくエラ孔がむき出しになっているのが一般に言うサメである。
チョウザメは、1億年も前から生息していたのではないかとも云われ、その古さはシーラカンスに匹敵するといわれている。
チョウザメはもともとサケと同じ回遊魚で、かつては石狩川や天塩川にも春頃、産卵のために遡上したが、環境汚染などで日本の河川に産卵するものは絶滅したと考えられており、近年になって生息が見つかった。
ロシアでは、貴族社会において高級食材として珍重されたほか、身肉は燻製や缶詰に、皮から抽出したニカワは白ワインの濁りを吸着させて取り除くために使われるなど、重要な魚であった。身肉は白身で弾力性があり美味、産卵前が旬といわれている。

        しろがねの 鮫反り交す 無月かな 石 寒太
命名
大きな菱形の硬鱗が5列に並んでおり、その鱗が蝶の様な形をしているところからチョウザメといわれている。
「鮫」の語源について『和訓栞』には、「サメは狭眼(さめ)の義なり」と記されており、この魚の眼が体に比して、いたって細く小さいことからの命名である。
サメは他の魚と違って交尾をするから、漢字では魚が交わるとして「鮫」の字を当てた。また、サメをフカと呼ぶところもあり、サメが卵胎生であることから魚を養うとして「鱶(ふか)」の字を当てた。いずれもサメの生殖からきた漢字である。
   英名 Sturgeon
硬骨魚網チョウザメ目チョウザメ科
一般に「サメ」と呼んでいるのは軟骨魚網で、チョウザメは体形は似ているが全く系統の異なるサメであり、むしろタイやハマチと同じ硬骨魚の仲間である。
チョウザメ科は4属28種、ヘラチョウザメ科が2属2種の合わせて30種が知られているが、キャビアの名で知られる魚卵を採るために水産資源上で珍重されるのは3種。
     1.ダウリアチョウザメ属のオオチョウザメ(別名ベルーガ)
          カスピ海及びアゾフ海から黒海、地中海東部に生息
     2.チョウザメ属のロシアチョウザメ(別名アシュートル)
          アゾフ海から黒海に生息
     3.チョウザメ属のホシチョウザメ(別名セブリューガ)
          カスピ海及びアゾフ海から黒海に生息
ヘラチョウザメ科の魚は、吻がボートのオールのように長く前方に突出している。アメリカのミシシッピー水系に生息するものはプランクトンを食べるが、中国に生息するものは魚食性である。いずれも、卵はチョウザメと同じく貴重なキャビアとして賞味されるだけでなく、身肉も相当に旨い。
サメやエイなどの大型魚にビッタリくっついて生活するのはコバンザメで、この魚も硬骨魚網コザンザメ目に分類される。
日本ではかつて、ダリウアチョウザメとミカドチョウザメの2種が北海道に生息しており、前者は最大800kg、後者は60kgになる。石狩川や天塩川に産卵の為、水温む5月頃に遡上する。「札幌」はアイヌ語の「シャプ・ポロ」が語源となっているが、これは「大いなる魚が卵を産む所」という意味を表しており、この大いなる魚とはチョウザメを示してとも言われている。
形態
体は細長く、紡錘形で硬い。体長は体高の7倍前後で、背ビレと尻ビレは体の後方にあり、尻ビレの起部は背ビレ基底後端のほぼ直下から始まる。尾ビレは二叉するが、上下不相称で上葉の方が大きい。歯はなく、吻部下部に2対のヒゲがある。眼の直後に一対の噴水孔が開き、体頂には蝶の羽に似た五角形の角張った硬い鱗が5縦列に並ぶ。体色は、体側背面が灰青色から灰黒色で、体側腹部では色が淡くなる。
オオチョウザメは体重1500kgにも達するものもあるが、平均的には体重200kgで体長は200cm。ロシアチョウザメは体重60kgの体長160cm、ホシチョウザメは体重70kgの体長120〜150cmになる。
分布
アジア大陸北部、ヨーロッパ、北アメリカなど北半球のみに生息し、海水域と淡水域を産卵のために往復するものと、淡水域のみで生息するものがいる。
産卵
9〜10月に川を遡上する秋型と、3月頃に遡上する春型の2タイプがある。産卵期は春か初夏で、秋型は越冬してから産卵する。卵は粘着沈性卵で、川床の石の上に生み出され、水温13℃前後の約1週間で孵化する。
サケと異なるのは卵の粘着性が強さで、サケのように川底に穴を掘って産卵床を作らなくても水に流されない。また、サケは産卵を終えると一生を終えるが、チョウザメは海に下って数年後に再び川を遡上し、産卵を繰返す。寿命は70〜100年といわれ、人間よりも長生きかもしれない。
成長
仔魚は孵化するとすぐ海へ下る。オスは12〜14才、メスは16〜18才から成熟し始める。稚魚や幼魚は砂泥中の甲殻類や多毛類などの無脊椎動物を食べるが、成魚では95%以上がニシンなどの魚類である。時には胃中からアザラシの子供などが見つかることもある。
夏に活発に摂餌するが、産卵期に川に遡上した個体は摂取量が少なくなる。
漁法
刺網や曳網で漁獲する。カスピ海水系でのチョウザメ漁獲量は、世界全体の70〜80%を占める。
2001年7月に、ロシアと旧ソ連のアゼルバイジャン、トルクメニスタン、カザフスタン3国が、カスピ海産のキャビアの輸出と商業目的のチョウザメ類の漁獲の全面禁止を実施したことで、カスピ海産の90%が減産となった。
養殖魚ベステル
養殖魚として、身肉の美味しいコチョウザメのオスと体の大きくなるオオチョウザメのメスを交配して、ロシアで生まれたのがベステルである。
ベステルは淡水魚特有の臭みもなく、身の締まりがよく、刺身でも美味しい。和洋中のいずれの料理の材料にも利用できる特徴をもつ魚である。
成熟してキャビアが採れるようになるためには8〜10年以上もかかるので、コストの低減が課題である。
日本でも各地で養殖が行われるようになった。
皇帝の魚
古代ローマ時代より「ロイヤルフイッシュ」、中国では「煌魚(エンペラーフイッシュ)」と呼ばれ、時の王や皇帝に献上された歴史をもつ。
また、欧州ではチョウザメ料理がメニューに無ければ、三ツ星レストランとしては認められないほどの高級食材の一つである。
キャビア
世界三大珍味の一つで、ロシア産が有名だが、イランやアメリカ、ルーマニアなどのヨーロッパ諸国でも生産されている。
イクラとは、本来ロシア語で「魚の卵」という意味を持ち、キャビアのことを指すが、日本では一粒づづほぐしたサケの卵巣卵を塩漬けにしたもの言うようになった。
キャビアは種類と産地で値段が異なる。

    青ラベル・・・ベルーガ(オオチョウザメ)の卵で大粒。33〜35粒/g
    黄ラベル・・・オショートル(ロシアチョウザメ)の卵。50粒/g
     赤ラベル・・・ブリューガ(ホシチョウザメ)の卵。75粒/g

カルーガ(アムールチョウザメ)のキャビアの中でも、特に黄金色がかったキャビアはゴールデンキャビアといわれ、キャビアの中で最高級品である。
キャビアの模造品
代用品として、ランプフイシュというダンゴウオの仲間の卵を着色したものがあるが、チョウザメのものより小粒で脂肪分が足りない。
また、人工イクラと同じくアルギン酸とカルシュウムを組合せて作る人造キャビアもある。これらを見分ける方法として、純正品は水の中に入れると表面が白濁するが、模造品は黒い液が溶け出すか、何にも変化が起こらない。
サメ・フカ・ワニ
サメとフカが異なる魚と思っている人が意外と多い。また、サメの大きいものをフカと考えている人もいる。しかし、サメとフカは同じ魚であり、地方によって名称が異なっているだけのことである。
関東ではサメ、関西ではフカと呼んでおり、面白いことに、関東でサメの大きいのをフカ、逆に関西ではサメと呼んでいるので紛らわしい。九州や四国では小さくても大きくてもフカであるが、高知ではジンベイザメだけをサメと呼んでいる。
さらに、出雲地方ではサメのことをワニと呼ぶ。「因幡(いなば)の白兎」に登場するワニはサメのことなのである。例えば、ネコザメをネコブカとかサザエワニと呼び、シュモクザメをシュモクブカとかカセワニと呼んでいる。
俗諺
七皿食うて鮫臭い・・・・さんざん食べたあげく、鮫のようにまずい料理だったと文句をつけることで、身勝手な言動、振
              る舞いをいう。
鮫の横っ飛び・・・・・・・図体のでかい鮫が横っ飛びするという、醜い姿の連想から、醜女のたとえに用いる。
鱶が魅入る・・・・・・・・・執念深く鱶に追いかけられて絶対絶命のピンチになるという意で、一度狙ったら逃しはしない
              執念をたとえていう。
鱶ほど眠る・・・・・・・・・イビキをかいて寝る人のことをいう。
食べ方
サケと同様に、川を遡上する前の方が肉を食べるにはヌメリもなく味もよい。白身で、背の部分がピンク色をした肉で弾力性がある。
刺身にする時は薄造りにして大皿に並べると、ちょうどボタンやシャクヤクが咲いたように美しく出来、ワサビ醤油があう。白身の魚なのに脂も適度にあり、すこしコリコリとする。また、寿司のネタにもよい。
焼いたり、煮付けにしたり、ムニエルやフライなど、料理の幅は広い。火を通し過ぎると肉が硬くなるので、削ぎ切りにしたり、少し濃い目の味付けで調理するのがコツ。
皮は厚いので、湯引きしてから和え物にするとコリッした触感が味わえる。
中国やロシアでは、頭をダシにしてスープにする。特にロシアでは三番ダシをスープにするそう。
中国の高級食材である「フカヒレ」には、もともとチョウザメのヒレが使われていた。「ヒレ酒」としても利用できる。

キャビアの食べ方
  ポイントは加熱したり、冷凍にしたりしないこと。また、クラッカーにのせて食べると、クラッカーの塩味がキャビア
  の繊細な旨味を消してしまう。
    1.スプーンにのせて、そのまま食べるのが一番豪華で旨いと言われる。
    2.小さくかたどったソバ粉のパンケーキであるブルニに乗せてそのまま食べる。
    3.黒パンにのせてバターと一緒に。バターは無塩バターの方が美味しい。
    4.トーストに無塩バターを塗り、キャビアをのせてからレモン汁をかけるとさっぱりとした味で食べれる。
    5.ちらし寿司やにぎり寿司のネタとしても美味。


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