日本の旬・魚のお話

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日本の旬・魚のお話
日本の旬   魚のお話(冬の魚-18)
黒鮪(くろまぐろ)
岩手県の太陽台貝塚からマグロの骨が出土し、日本人は5000年前からマグロを食べていたことが判明した。石器時代の人達も、マグロは好物だったかも知れない。
近年は「蓄養マグロ」の飼育技術も進歩し、トロの取れる割合は天然マグロが全体の2割程度に対し、蓄養物はほぼ100%と、脂の有無のリスクが天然物より少なく、また、色変わりは早いという欠点はあるものの、生け簀から取上げてすぐ処理するので鮮度も良く、量販店や外食業者からは蓄養マグロが支持されている。
脂の乗る冬が旬といわれているが、2歳ぐらいまでの90cm以内のものをメジと呼び、春先から初夏に獲れるメジも鮨ネタとして逸品である。
                  投げ置ける 鮪に雪の 降りつもり        杉本 怜一
命名
マグロという呼称はマグロ類の総称でもあり、また、クロマグロは一般的には「本マグロ」をさす。和名のマグロは関東地方の呼名で、関東以外の多くは「シビ」と呼んでいた。
マグロの語源は、背部が青黒いためとか、肉の色が赤黒いこととか、目が黒いから「目黒」というなどの諸説がある。「シビ」の語源の「シ」は「宍」の意で、宍状の肉を有する大魚をいう。「宍」は「肉」と同字で、主として獣肉をさす。「マグロ」は「黒い体皮の魚」、「シビ」は「獣肉状の肉のある魚」を示しているのであろう。
『本朝食鑑』に、「鮪と呼ぶのは7〜8尺以上、4〜5尺のものは真黒(まぐろ)と呼び2〜3尺のものは目鹿(めじか)、京・大阪ではそれを目黒(まぐろ)と呼ぶ」とある。今でも若魚をメジやメジマグロと呼ぶのは、その名残であろう。
地方名
クロシビ、ホンマグロ、マグロ、シビ、クロシビ(静岡・小名浜)など。また、体重7.5kgぐらいより小型の若魚をヨコワ、メジ、クロメジと呼ぶ。
 英名 Bluefin tuna
スズキ目サバ科マグロ属
マグロ属は7種で、クロマグロ、体形がクロマグロに似ていて尾部の隆起が黄色のミナミマグロ、メバチマグロ、キハダマグロ、ビンナガマグロ、コシナガマグロ、タイセイヨウマグロである。クロマグロは、大西洋産と、太平洋及びインド洋産の2亜種あり、これはDNA鑑定で明らかになっている。
形態
他のマグロに比べ、その先端は第一背鰭の中央下方まで達せず、第2背鰭と尻鰭は共に低く、眼は小さい。また、最も大型になり、体長2.5m、体重300kgに達する。最大の記録は北西大西洋のもので、体長304cm、体重679kgである。
マグロ類は大きな口を持っているが、歯は小さい。このタイプの魚は比較的大きな動物を丸呑みにする。
口に比べて大きな歯を持つ魚は、歯が邪魔してあまり大きな魚を食べられないが、マグロ類はだいたい自分の大きさの半分程度の餌を呑み込める。
分布
マグロ類は暖かい海に適応し、水温によって生息する種類が異なる。その中で一番低い水温に適応したのがクロマグロで、太平洋と大西洋の北半球の亜熱帯から温帯あたりを中心に分布しており、成魚は7〜8℃でも生息出来る。大西洋のマグロは南半球にも生息し、また、地中海にいるのもこのクロマグロである。日本近海はカりフォルニア沿岸とともに太平洋では最も分布密度が高い。
回遊
日本近海のクロマグロの幼魚は、生まれた年か翌年の秋に太平洋を横断してカリフォルニア沿岸に到達し、2〜3年滞留したのち、再び太平洋を横断して日本近海に戻り、産卵行動に参加するといわれている。
成熟後は太平洋を横断することもなく夏に北上、冬に南下する季節的な南北回遊を行う。高価なクロマグロが獲れる漁場は、越冬と産卵のための南下に備えて餌をたっぷり取った大きなマグロが多い津軽海峡など、水温の低い北日本にあり、一部は「大間のマグロ」などとしてブランド化されている。
産卵
日本近海では、伊豆諸島以西からフィリピンに至る海域で春から夏に産卵期を迎え、産卵の適水温は24℃以上である。体重280kgで100万粒以上、卵は球形で直径1mm前後の分離浮性卵。水温22〜27℃の35時間前後で孵化する。孵化後数ヶ月は産卵場近くの亜熱帯で浮遊生活をし、その後は温帯域へ移動する。
成長
稚魚は南日本に5〜6月に出現する。8月頃には体長20cm前後に成長し、日本海沿岸でも観察出来る。生後1年で60cm・3kg、2年で80cm・10kg、3年で110cm・20kg前後のスピードで成長し、5年で150cm・55kg、10年で200cm・180kgを越え、18年で240cmに成長する。
水産総合研究センターの研究(2008年3月)の報告によると、マグロの耳石調査の結果、10年を越えると成長が鈍り、寿命は約20年であることなどが判明した。
若魚はカタクチイワシやマイワシ、キビナゴなどを食べ、この後はトビウオ、カツオ、イカ類などを捕食する。また、沿岸に来遊したクロマグロの胃からは、カレイ類やヒトデなどの底生物が観察されることもあり、非常に貪食で何でも食べる魚である。
漁法と漁期
表層漁業には流網や竿釣り、巻網があり、小型のマグロが中心で缶詰用を主とする。
延縄漁は水深100〜300m以上の水深で、高齢で大型のマグロが主となる。漁獲盛期は北海道で7〜9月、東北で6〜10月、日本海中部は4〜9月となる。
世界の漁獲量は1945年の40万トンから、2000年の360万トンで9倍となり、資源保護が問題とされるようになった。
日本が消費する刺身用のマグロは約60万トンで、その約50%が輸入となっており、この輸入マグロは10年間で2倍以上に膨れ上がった。これが刺身マグロの価格を低下させている主な要因で、日本のマグロ漁業には深刻な経済的影響を与えている。
マグロ資源の国際管理機関
マグロ類は高度回遊性魚類と呼ばれる魚の一つで、200海里や公海域を通る魚であることから、漁場は国際漁場となっている。国連海洋法条約の発効によって、国際的な漁業管理規制は世界共通の方式へと収斂されようとしている。
  1.全米熱帯マグロ類委員会(IATTC)・・・・・・・・・・加盟 8ヶ国(日本も参加)
  2.大西洋マグロ類保存国際委員会(ICCAT) ・・・加盟21ヶ国(   〃   )
  3.ミナミマグロ保存委員会(CCSBT)・・・・・・・・・・加盟 4ヶ国(   〃   )
  4.インド洋マグロ類委員会(IOTC)・・・・・・・・・・・・加盟11ヶ国(   〃   )
  5.北太平洋マグロ類及びマグロ類類似種に関する暫定的科学委員会(ISC)
                             ・・・・・加盟 7ヶ国(   〃   )
  6.中西部太平洋マグロ類委員会(WCPFC) ・・・世界で最も大きなマグロ漁場であるが、現在は関係国の条約批
                                 准待ち。日本も2006年に批准する予定で、日本漁業にとって
                                 重要な意味をもつ。
  7.マグロ・カジキ類常設委員会(SCTB) ・・・・・・・加盟20ヶ国(   〃   )
                                 現在は非公式のマグロ類の資源評価を行う組織で、15年以上
                                 の歴史がある。正式メンバーは持っておらず、主として熱帯性
                                 のマグロ類の資源評価と南太平洋のビンナガの資源評価を行っ
                                 ている。                                 
蓄養マグロ
「養殖」とは卵や稚魚を成魚まで育てることで、「蓄養」は天然物の成魚に3ヶ月から半年ぐらいの間エサを与え、脂を乗せて太らせることを言う。
海外では主にスペインやクロアチア、オーストラリアなどで行われており、日本でも四国沖などで一本釣りされた300g程度のヨコワ(幼魚)を、沖縄や奄美大島などで3〜5年かけて40〜50kgにまで飼育して出荷されている。
地中海のクロマグロ
4〜6月にかけて産卵のためにジブラルタル海峡を東へ進んで7〜8月にかけてまた戻って行くマグロを、巻網を使って捕獲し、サバを中心とした餌を与えたもの。平均200kgで最大600kgを越えるものもあり、11〜2月頃に出荷される。150kg以上の物はドレス(D)、それ以下はジージー(GG)に処理して冷やす。生鮮で空輸する場合は氷詰めにし、冷凍物はロイン(四つ割)に加工され、2〜5千トン生産される。
蓄養ミナミマグロ
12〜3月にインドネシアやアフリカ南部から来遊するミナミマグロの群れを、グレートオーストラリア湾で巻網を使って捕獲し、ボストン島付近でイワシを中心とした餌をマグロの体重の5〜10%与え、蓄養される。
出荷は4〜10月頃まで行われるが、水温が下がって品質の良くなる7〜9月が出荷のピークで、体重は30kg前後の小型。生鮮はGGに処理され、氷詰にして空輸で、冷凍はGGのまま年一度日本に搬入される。
流通過程における加工行程別品目名
    ラウンド「もち」
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   ジージーGG「まる」  内臓とエラをとった物
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    (セミドレスSD)    GGから尾をカット
        |
    ドレスD「無頭」    SDから頭をカット
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    フィレF「三枚卸」
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    ロイン「四つ割」   Fを雄節と雌節に切り分けた状態
        |
      (ブロック)     ロインとチャンクの中間的形態
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    チャンク「ころ」    ロインをトレイの長さに輪切りにした状態
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     ステック「さく」    チャンクを天丈・赤身・皮ぎし(トロ部分)・分かれ身に切り分け、さらに棒状に切った状態。
                 さくどりという。

従来は、GGまでは生産者が、セミドレスからブロックまでが仲卸業者、チャンクからステックまでを小売業者がそれぞれ分担加工するのが一般的であったが、卸売業者の段階でステックまで加工されたものも流通されている。
10月10日
万葉集に、山部赤人(やまべのあかひと)が聖武(しょうむ)天皇の御供で現在の明石市にあたる印南野(いなみの)の藤井浦を旅した折、マグロ漁で栄えるこの地方をたたえた歌が記載されている。その日が神亀3年(726年)10月10日であったことから「マグロの日」が生まれた。
        やすみしし吾が大君の 神ながら高知らせる 印南野の邑美の原の
            荒たへの藤井の浦に 鮪釣ると海人舟さわぐ・・・・・清き白浜
                                                赤人
         (天下を治めになる天皇が、神々しい宮殿をお造りになる印南野の邑美の原の
             藤井浦にマグロを釣ろうと漁師の舟が行き交っている・・・・清き白浜よ)
冷凍マグロのサクの解凍法
1.20〜30℃のぬるま湯に海水と同じ3%程度の塩を混ぜた塩水を準備し、冷凍のサクを流水で洗い、5分程度ぬ
  るま湯につける。
2.取出したサクの水分を布巾でふき取る。そして、ペーパータオルか布巾に巻いてラップをし、約15〜20分間放置
  間放置しておき、その後、冷蔵庫で保管する。
食べ方
冬が旬だが、近海物や若魚は夏から秋にかけてが旬。
肉はマグロ類の中で一番赤味が濃い暗赤色で、脂肪分も多い。
刺身や鮨ネタが主だが、ぶつ切りにして山掛けにしたり、分けぎやウド、季節の野菜をつかったぬたなどの酢味噌和えなどにする。頬肉はステーキに、目玉はホイル焼きに。脂肪分の少ない赤身をアボガドや白胡麻、青じそと一緒にのり巻にしたカルフォルニア巻きはトロのような味わい。
刺身に向かない部分を角煮や「ネギマ鍋」にする。ブツ切りにした身に熱湯をかけ霜降にしておき、鍋にダシ醤油、酒、味醂、塩を入れて煮立て、3cmぐらいのネギとマグロを入れる。煮すぎないようにするのがポイント。


            南下する 鮪を追って 来た日焼け        春 坊
            丸太ほど 鮪が並ぶ 朝の河岸          徹 夫
            にぎり寿司 先ず手が伸びる トロの味      は  く


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