日本の旬・魚のお話

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日本の旬・魚のお話
日本の旬   魚のお話(冬の魚-1)
鰊(にしん)
春を運んでくるのがニシンの群来(くき)で、かつて3〜5月の北海道周辺にはニシンが産卵の為に沿岸へ押し寄せた。
この時期がニシン漁の本番で、「江差の五月は江戸にもない、出船入り船三千隻」と唄われたが、そのニシンも今はどこへ行ったのだろうか。
                 どんよりと 利尻の富士や ニシン雲    誓 子
命名
「二身」と称し、身を二つに割り干してミガキニシンとすることから。
また「鯡」とも書くが、これは江戸時代の松前藩がニシンを重要な食糧とみなして海から獲れる米と考えたからであり、魚に非ずという意から。中国でもこの字を使う。
その他、「春告魚」は産卵するニシンを春ニシンと言うところから。
地方名
北海道では春ニシン、秋ニシン、ハシリニシン、ナカニシン、サラバニシンなどの名がある。
カドニシン(北海道・東北) ・・・・蝦夷語で「カツ・カド」は糧(かて)や糅(かつ)の意で、飯の足しにするものを言う。数の
                   子はカツの子という意味。
ゴモアラニシン(北海道) ・・・・・海藻のことを一般にゴモと言い、産卵の為に海藻のある付近に襲来したニシンを言う。
イサザニシン(北海道)・・・・・・・小魚を食べているニシン。
テック(北海道)・・・・・・・・・・・・・体の割りに口の大きいニシン。
ヤナバ(宮城)・・・・・・・・・・・・・・魚体が柳の葉に似ていることからの意。
その他、チャット(岩手)、ニシンイワシ(富山)、コオライイワシ(福岡)、サメイワシ(壱岐)など。
   英名  Pacific herring
ニシン目ニシン科ニシン属
数種のニシンがおり、主に大西洋と太平洋に区分されるが、更に場所によっては多少の差異が認められ、アラスカ・カナダ系、ノルウェー系、イギリス・フランス・ポルトガル系、北海道・樺太系がある。
現在、北海道・樺太系は見られず、北海道で見られるのは北洋・サハリン系、テルペニア(サハリン東岸)系か、厚田(石狩湾)やサロマ湖、能取湖、風連湖、厚岸、湧洞沼など、沿岸各地で水揚げされる根付きニシンなど。根付のものは脂が少なくパサパサしている。
形態
同じ仲間としてはイワシがある。
魚類には涙腺が無いので悲しくても泣けないが、ニシンには目の周りに「脂瞼(しけん)」と呼ばれる脂肪が固まったものがある。
冷たい海で泳ぐため、目を保護しているのかもしれないが、目は閉じられない。フグやマンボウには閉じることの出来る瞼(まぶた)がある。
分布
冷水魚で、摂氏0℃から12、3℃の水温域に生息し、適温は4℃から6℃。寒流域沿岸であればほとんど分布し、北は北氷洋から南限は利根川までがその範囲である。また、湖沼性のニシンでは、茨城県の涸沼(ひぬま)に12〜4月にかけて遡上し、湖岸で産卵するものがある。
産卵と成長
通常4年たってから産卵する。アラスカでは6〜7年後ともいわれる。
一般に、魚の年齢に万を掛けた数がおおよその胞卵数で、ニシンは3〜10万粒ほど。ブリストル物の数の子がカナダ物より大きいのはこのためかも知れない。卵の大きさは1.3〜1.6mmで、水深5〜50mあたりの海藻に産卵する。産卵後の卵はお互いに密着する構造になっている。
ニシンは、狭い海域にいっせいに来遊して産卵をするため、海は雄の精液で真っ白になる。これを群来汁(くきじる)と言う。
1年で15cm、5年で30cmになり、寿命が18年に達するものもある。
振子
網の中で産出された卵は網の目で詰まってしまうが、それを棒でたたき落とした卵を言う。これにはすでに生命はない。
寄子
海藻等についた卵が、時化のため沿岸へ打ち寄せられたものを言う。この卵は日光に直射されている為、乾燥しても短時間で孵化する。
漁獲量
大正時代が最盛期で、70〜80万トンあったが、地元の人が「群来(くき)」と呼ぶ集団産卵現象が昭和30年に突然途切れ、姿を消した幻の大衆魚である。現在では北海道の風蓮湖(ふうれんこ)などの湖沼ニシンや沿岸型ニシンを中心に、この数年では1〜2千トン程度となっている。
輸入は、ニシンが数の子入りを含めて62千トン、数の子が冷凍と塩蔵で14千トン程度である。
96年6月に北海道厚田村の海へ、ニシンの稚魚10万匹が放流された。かつて日本海に押し寄せたニシンを呼び戻そうと、北海道水産部が6年計画で始めた事業である。回帰率ははっきりとは予想出来ない。
ひと起し千両 
最盛期の頃は、漁が終わると一年は食えたと言う。この時期に「やんしゅう」と呼ばれる出稼人も多く、ニシン御殿も出現した。
明治を支えた鰊
明治の勃興期の日本は生糸輸出から近代への道を走り出し、日清、日露戦争を戦い抜く戦費を生糸が稼いだ。生糸―カイコ―桑の生育に鰊の肥料が欠かせなかった。
また、ニシン油からは石鹸が作られ、グリセリンや火薬の材料としても利用された。まさに鰊によって明治は支えられたのである。
北前船と郷土料理
室町時代から食用にされたが、始めは数の子だけで、身は肥料にされていた。
江戸時代に発達した北前船は、北海道や日本海側と京都や大阪を結ぶ物流の中心で、ニシンもこれに乗って流通し、松前から津軽、秋田、山形にかけては主に生カドや塩カド、加賀では身欠によるニシン寿司、京都ではニシンそば、大阪ではコブ巻と、北の素材をその土地その土地でうまく加工した料理が生まれていった。
身欠ニシン
内臓や卵巣(数の子)を取り出して2〜3日よく日に干し乾かした後、1ヶ月以上干し固めたもので、腐らないのは、油脂やその中の不鹸化物が細菌などの発育を押さえる働きがあるため。
身欠ニシンを戻す時、米の研ぎ汁や灰汁につけるのは、いがらっぽい渋味を押さえて旨味を引き出すためである。
子持ち昆布(数の子昆布)
岸辺近くの昆布の上に卵が層をなして産卵したもの。だし醤油で味付けして食べ、酒の肴になる。現在はカナダやアラスカの入江に昆布を生育させ、そこに二シンを追い込み、昆布に産卵させて昆布ごと刈り取る。
俗諺 
ウドと鰊・鰊に昆布・・・夫婦の仲の良いことのたとえ、お互いにいっしょに使うことによって、うまみが生み出される。こ
              の様に「出会い」、つまり「よい組み合わせ、よい配合」の意味に使う。
                 妻も吾も みちのくびとや 鰊食う   山口 青邨
鰊と筍・・・・・・・・・・・・・料理によく合うことの意で、気の合う仲のいい間柄を言う。
鰊の頭は鶴の味 ・・・・ニシンの頭の肉がどこよりも一番美味しいという意。
松前の殿様鰊でお茶漬け
           ・・・・北海道の松前藩では領主がニシンの茶漬けを食べるほど、ニシンが大漁に獲れたという意。
産地別ニシンの特徴
数の子については、北部太平洋のアラスカ産かカナダBC州のものは、噛むとポリポリ鳴る上等な塩数の子になる。砂地に産卵する北大西洋産は、シャリシャリとした感じで味付け数の子や松前漬になる。また、上質な身欠ニシンはサンフランシスコ沖のものが適している。
   a.アメリカ北東太平洋
       サンフランシスコ沖・・・脂肪含量比較的多く身欠ニシンの原料。
       アラスカ湾沿岸・・・・・・低脂肪のため漬物用身欠ニシンの原料。
       ブリストル湾沿岸 ・・・・脂肪分があり、利用範囲が広い。
   b.カナダBC州 ・・・・・・・・・・・・脂肪分があり、上干物の身欠ニシンの原料として最適。
   c.大西洋
       カナダ ・・・・・・・・・・・・・肉質柔らかく、体脂肪が低いため加工原料としては不向き。冷凍ニシンは端売り用。
       ノルウェー・・・・・・・・・・端売りが主体。一部加工(開き)に利用されるが、品質は落ちる。
       アイスランド ・・・・・・・・体脂肪が高く、張りがあるため、開きや一夜干し身欠、その他に利用される。
数の子
『本朝食鑑』によると、「カドノコと呼ぶべきところをトとスを誤ってカズノコとよんでいる」と記載されている。
卵巣を乾燥した「干数の子」、塩漬にした「塩数の子」、味付けした「味付け数の子」がある。カナダ物は原卵で、カナダ物よりう皮がやや厚いブリストル物は原卵と原魚の両方で輸入される。
数の子は歯ごたえが命であるが、もともとの卵巣は他の魚と同様に柔らかい。しかし、ニシンの卵巣だけは、理由は不明だが、塩漬けにすると硬くなる性質がある。

太平洋産の数の子    ( )内は漁期と魚体重
  サンフランシスコ(12〜2月・120g)
                    ・・・・魚の割りに卵も大きく卵質もしっかりしており、無過水、無漂白数の子でよく販
                       売されている。
  カナダ(3〜4月・150g) ・・・・・・・卵質もしっかりしており、数の子の中心的存在。
  シトカ(4月下旬・90g)・・・・・・・・・小型中心。味付け用で業務筋中心に利用。
  クック&コディアック(4〜6月・200g)
                    ・・・・特大〜大中心。カナダ物とブリストル物の中間。
  トギャック&ノートン&ダッチハーバー(5〜8月・300g〜400g)
                    ・・・・特大中心で、 黄色味が強い、子質は粒子が大きい。

大西洋産の数の子
  カナダ東海岸(5〜6、9〜10月・370g)
                    ・・・・柔らかく、粘着力に欠けるため味付け用。
  シェトランド(8〜9月・180g) ・・・粘着力に欠けるが、歯ざわりよく、塩数の子と 味付け用。
  オランダ(11〜12月・155g)・・・上記に同じ。
  アイルランド(11〜2月・165g)
                   ・・・・・上記に同じ。
  バルチック(4〜5月・130g)・・・・塩数の子用。
  ノルウェー(9〜10、1〜3月)・・・卵の利用価値がない。
  アイスランド(10〜11月・400g)
                   ・・・・・上記に同じ。
数の子の生産工程
漁獲したニシンを水揚げし、ニシンの精巣は光を通しにくいことを利用して雌雄を自動選別する。次に、卵巣を傷付けないようにニシンの背中に切れ目を入れ、頭と尾をそれぞれ機械でつかみ、左右に引っ張って背中の切れ目から引きちぎると、卵巣がポロリと落ちてくる。
卵巣は塩漬けし、冷蔵して日本へ輸出される。
ソーラン節
ニシンは昆布だけでなく歌にもよくあい、『ソーラン節』、『江差追分』、『石狩挽歌』、『なみだ船』などの歌で歌われ、庶民と共に生きた魚である。

    ソーラン節(安政年間1855〜60年に作られ、積丹半島で定置網漁をしながら唄われた)
             ヤーレン ソーラン ソーラン 
             ソーラン ソーラン ハイハイ
             ニシン来たかと カモメに聞けば
             わたしゃ立つ鳥 エー波にきけよ
             ヤカ、エンエンヤーサーノドッコイショ
             アードッコイショ ドッコイショ   


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