日本の旬・魚のお話

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日本の旬・魚のお話
日本の旬   魚のお話(春の魚-15)
目撥鮪(めばちまぐろ)
マグロ類の中ではキハダマグロに次いで漁獲量が多く、黒マグロと比べて庶民的なマグロ。
日本へは世界各地から冷凍されて送られてくる。日本近海に回遊してくるのは、水温が18℃を超える4〜5月にかけてで、九州や四国の定置網にかかる。40〜60kgものが美味しく、ちょうど黒マグロの味が落ちる時季でもあるため、珍重される。
また、9月から翌年の2月にかけて、銚子から金華山沖で獲れるものは一層脂が乗っており、二つの旬をもつ。
鮮やかな赤身が身上だが、南マグロに次いで色変わりが早い。
                外海の 金波に向ふ 鮪船      中野 いさお
命名
眼が大きくパッチリしていることからの命名。
マグロという呼称はマグロ類の総称だが、これは関東方面の呼名をとったもので、関東以外の地方の多くは「シビ」と呼んでいた。
「マグロ」の語源は、背部が青黒いためとか、肉の色が赤黒いことからとか、眼が黒いから目黒(まぐろ)と言ったなどの諸説がある。
「シビ」の呼称については、「シ」は「宍(し)」の意で宍状の肉を有する大魚、「ビ」は「ミ」の音便で魚介の通称。「宍」は「肉」と同字で主として獣肉を指すことから、「獣肉に似た肉を持つ大魚」の意味であろう。「宍」はシカ、ウシ、シシ(猪)の「シ」と同義。
また、中国から飛鳥時代に伝来した鴟尾(しび)に似ているところからとも言われている。この鴟尾は、魔除けのまじないとして寺院や宮殿の屋根に設けられたもので、その尾の立派なところからの命名なのかもしれない。鴟尾は金のシャチホコのルーツでもある。
地方名
イモビシ(高知)、シビ(沖縄)、ソマガツオ(大阪)、ダルマ(静岡)、ダルマビシ(三重)、バチ(仙台・東京・神奈川・豊橋・高知)、メッパ・メッパチ(三重・和歌山)、メブト(九州)など。
英名 Big-eye tuna, Albacore
スズキ目サバ科マグロ属
マグロ属には、黒マグロ(全長3m・体重350kg・世界のマグロ漁獲量の2%)、南マグロとも呼ばれるインドマグロ(2m・300kg・1%)、メバチ(2m・150kg・16%)、キハダ(2m・50kg・69%)、鬢長マグロ(1m・30kg・12%)、腰長マグロ、大西洋マグロの7種がある。
このうち、メバチとキハダが漁獲量の8割以上を占める。また、よく間違えられるのはカジキマグロで、サバ科でなく、マカジキ科とメカジキ科に分類されている。
分布
北緯、南緯とも40度付近までに分布する。太平洋やインド洋、大西洋の暖海や熱帯海域に広く分布するが、地中海には生息せず、太平洋では北赤道海流や赤道反流域、インド洋では赤道反流域に多い。また、日本では東北以南の各沿岸に生息する。
水深100〜150mの中層に多いが、水深500m前後まで分布する。
形態
側面に突起を持つ紡錘形で、尾ビレは三日月型をして大きく、尾柄部は極端に細い。頭部と眼が大きく、胸ビレも長いが、ビンナガほどではない。また、第2背ビレと尻ビレの後方に8〜9本の小離鰭(しょうりき)がある。体幹部は著しく肥大して体高が高く、体長は体高の約3.3倍になる。体は小鱗に覆われ、マグロの仲間としては中型で、全長2mに達する。
回遊経路
北太平洋では、北緯15度以南で生まれた幼稚魚が北上して生活し、成熟すると再び南下して産卵行動に参加すると推測されている。キハダは表層近く、メバチは水温躍層より深い層にと、棲み分けをしている。
メバチの胃の中からは、ハダカイワシ類やミズウオといった、いわゆる深海魚が出てくる。ほの暗い深海でしっかりと獲物を見定めるためにも、大きな眼が役立つのだろう。
高速遊泳
カツオやマグロなどは高速で泳ぐため、血合の部分に高温の動脈と低温の静脈がごく近くに対向配置され、熱交換によって体温を上昇させている。
この為、体温の変動が少なく、かつ高体温によって効率的に筋肉運動を維持し続けることが可能となる。昼夜を通して遊泳し続けるのも酸素をエラから得るためで、もし前進することが出来なくなったら窒息死してしまう。
産卵
北緯10度から南緯10度までの赤道周辺では周年に渡って産卵行動が行われているが、北半球の赤道反流域では4〜10月、南半球では1〜6月が主産卵期となる。
体重50kgで300万粒、100kgで500万粒前後を産卵し、卵は球形で直径1mmの分離浮性卵。水温25〜30℃の24時間で孵化する。
成長
1年で45cm・体重2kg、2年で75cm・10kg、3年で100cm・22kg、5年で140cm・60kg、10年で190cm・150kgに成長する。
生後3年以降から成熟し始め、体長1m以下では魚類を、1m以上では頭足類を多く食べる。
年間を通じて摂取行動は夜間で、4〜7月が最も活発になり、8〜9月に最も不活発となる。
漁法
太平洋では、北緯30度付近の北赤道海流域や赤道周辺、南半球のチリ沖に漁場が形成されている。ほぼ周年に渡って延縄漁(はえなわ)で漁獲されるが、主漁期は冬。
延縄漁に使用される延縄は全長150kmもあり、延縄に約50m間隔で付けられた釣鉤は3000本にも及ぶ。これにイカなどの餌を付けて投入するには4〜5時間かかるが、それでも1回の綱入れで上がってくるマグロの本数は0〜7本程度である。
船上に上がったマグロは直ぐに血を抜き、内臓とエラをとり、尾を切り落としてから急速冷凍に掛けられる。それでも、魚体の中心がマイナス60℃までに凍結するのには、35時間かかるという。
凍結する時には、マイナス3〜8℃の間を出来るだけ早く通過させる事が大切である。この温度帯では細胞外体液が先に凍り出し、濃くなった細胞外の体液が浸透圧で細胞内の水分を奪う為、ここで時間をついやすとドリップが多くなり、身がバサバサになってしまう。
マグロの食味の決め手
マグロ類の食味は、死後硬直後の熟成如何で決まる。30kg以上のマグロの場合、氷温で3日間以上の熟成期間が必要である。
冷凍マグロは、死後硬直期に入る前に船上で-60℃以下に凍結されるため、死後硬直も熟成も確認出来ない。
冷凍マグロの場合は、解凍中に硬直、熟成の過程を経て、美味しく食べられる状態にもっていく。
同じ種類のマグロでも、熟成期間は漁獲時期、漁獲時の状態、血抜き、漁獲から氷詰までの時間によって異なる。
魚屋にとっては、凍結したマグロをいかにうまく解凍するかが腕の見せ所となる。
おいしい冷凍マグロの解凍法
凍結した時に細胞内の水分が凍り、解凍すると細胞から生マグロの20倍という量のドリップが出るため、食べると水っぽさを感じる。また、冷凍品は解凍すると一気に死後硬直が早まり、タンパク質が分解されて美味しさの成分であるイノシン酸が出来るので、早く食べる事がポイント。
解凍方法は、表面の水分を拭き取った冷凍マグロの冊を、4%の塩水に浸したサラシを絞って包み、24時間冷蔵庫で寝かせる。こうすると、生に近い旨さを味わえるが、これはおそらく、細胞内に入った塩分がタンパク質と水分をなじませる働きをするからと思われる。
赤身こそマグロの旨味
マグロの赤身肉のエキス分中には、旨味成分としてイノシン酸、旨味と甘味を兼ね備えているアラニン、タウリン、ヒスチジンなどが多い。
特に、筋肉タンパク質の構成と関係のない非タンパク態窒素というグループを多く含有するため、赤身にはコクのある旨味があり、これはメバチやキハダマグロに多い。
トロや中トロに人気があるが、その旨味は脂肪が舌に触れた時のとける食感のよさであって、身肉の旨味成分を味合うのではなく、脂の旨味を楽しんでいるのではないのだろうか。
食べ方
黒マグロに比して肉質はやや柔らかい。さく取りや切り付けの際はより圧力をかけないように扱うのがポイント。また、変色が早く起こるので取り扱いに注意し、買求めたら出来るだけ早目に食べるのがコツ。
すし種や刺身としては、これぼど旨い魚は他にないのではないかと思うほど舌に乗せた食感がよいのは、マグロは結合組織が少なく、肉質がやわらかい為。
照り焼き、塩焼きなどにすると身肉が堅くなりすぎるからあまり向かない。加熱して堅くなるのは筋形質タンパク質が多いためであるから、ミディアムかレア程度にするとか、しゃぶしゃぶぐらいの湯通しがよい。
血合いは水にさらして血抜きしたのち、塩焼きにしたり、ショウガ煮などにする。
脂っぽい身肉で人気のネギトロは、筋の多い部分についているカマの部分の肉をすきとって、さらしネギといっしょにたたきながら混ぜたものである。
スジは硬くて噛み切れず、敬遠されるが、成分はコラーゲンであり、加熱するとゼラチンとなって柔らかく美味しいものに変化する。これは、生のスジは引っ張りに強いものの、加熱すると生の1/9の強さになってしまうため。スジのあるところは安いので、加熱して利用すると、茶漬けなどに合う安くて旨い一品となる。
  料理例(4人前)
    材料  マグロの赤身冊 400g(スジの多いものを選ぶ)   バター 40g   もめん豆腐 2/3
         小麦粉   醤油 大さじ6   酒 大さじ6   薬味(青ねぎ・みょうが・生姜・かいわれなど)
    1.マグロを小麦粉でまぶし、バターを溶かしたフライパンで適当に切った豆腐と醤油、酒で炒める。
    2.マグロを取り出して冊を切り、再びフライパンに戻す。
    3.青ねぎやみょうが、生姜、かいわれなどをまぶす。


             潮の香を 強めてもどる 鮪船        田中 千鶴子
             砲弾の ごとし鮪を 競り落とし        檜  紀代
             後まはし されいる鮫や 鮪市        足立 すみ子


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