日本の旬・魚のお話

お問い合せ先
現在作成中
係  
部・課 企画管理部
主要扱い品目  
担当者  
TEL  
FAX  

日本の旬・魚のお話
日本の旬   魚のお話(早春の魚-5)
桜蝦(さくらえび)
さくら色は古来から日本人の心をとらえてきた色であり、桜エビの人気もそのへんにあるのではないだろうか。海中を泳ぐ桜エビは半透明の桜色をしており、海の中の群れはさぞかし桜見物に行ったように美しいことだろう。
産地の由比や蒲原、大井町の浜で一面に桜エビを干す光景は、まるで絨毯(じゅうたん)を敷つめたように美しく、周辺の風景とのコントラストがすばらしい春の風物詩となっている。

        とれたての あけぼのいろの 桜えび    本宮 鼎三
命名
生きている桜エビの体は透明で、そこに赤色素胞が散在している。茹でられると不透明となり、体色が桜色となるところから命名された。また、桜の咲くころに獲れることからともいわれている。
素干しや釜揚げしたものを干したエビは、合成着色料の赤色102号で色付けされているため、さらに鮮やかな朱色を呈している。

   英名  Sakura shrimp, Spotted shrimp
十脚目長尾亜目サクラエビ科サクラエビ属
尾が長いので長尾亜目に分類され、属にいう「クルマエビ」グループの仲間である。サクラエビ科は世界で35種ほどが知られているが、漁獲対象とされているのは日本の桜エビのみで、プランクトン性の動物が資源としてこれほど利用されている例は他にはない。
形態
161個の発光器が体表に散在し、体は透明で赤色素胞が散在している。第2触角が長いのが特徴で、体長の約3.5倍ある。基部から約1/3前後のところから屈曲し、体長は5cmに達する。
分布
東京湾や相模湾、駿河湾、そして台湾の東港沖にも分布する。日没前後に水深50m以浅の表層近くに浮上し、日の出頃に水深200〜300m前後に沈降するという日周期的な深浅移動をしている。大きな群をつくり、特に夜間は密集する。
産卵
春から秋にかけて産卵する。駿河湾や相模湾などでの産卵最盛期は7〜8月、産卵水温は18〜25℃。産卵は夜間に行われ、産卵数は1500〜2000粒。卵は直径0.2〜0.3mmの分離浮遊卵で、中層を浮遊する。水温21〜23℃の30時間前後で孵化する。
成長
孵化幼生はノープリウス期、プロトゾエア期、ゾエア期を経て、約30日で体長7〜8mmのポロトラーバー期に達する。孵化後3〜4ヶ月で2〜3cmの稚エビとなる。1年で4〜5cmとなり成熟する。寿命は1年で、産卵後に斃死する。
プロトゾエア期はもっぱら珪藻類を食べ、ゾエア期やポストラーバー期には動物性プランクトンも食べるようになる。成体は雑食性で、珪藻類や小型動物性プランクトンなどを食べる。
駿河湾
桜エビが生息する駿河湾は、狩野川、富士川、安倍川、大井川などの大きな河川が流れ込む為、餌となるプランクトンが豊富にある上、さらに海底が急に深くなっており、光を嫌う桜エビにとって理想的な環境条件が整っている適地。
静岡県では4月の魚として「県の魚」に指定されている。
漁法と流通
サクラエビ網と呼ばれる船曳網の一種で漁獲する。1970年頃は5000トンを上回る漁獲量の記録があるものの、1980年代に半減し、近年はさらに減少傾向にある。
富士川河口から御前崎付近に至る駿河湾が好漁場となっている。3月末よりスタートし、4月にピークを迎える春期は駿河湾奥部、10月末からスタートする秋期は西沿岸が主漁場となる。
水揚げの60〜70%は生食用や釜揚げなどに販売され、健康食品として高い評価を得ており、現在はインターネット上での販売も頻繁に行われている。また、宅配便を利用して全国の居酒屋や寿司店などで需要が高まっている反面、漁獲量の減少で高値相場が続いている。
桜エビ漁の起こり
江戸時代から漁民の間では桜エビが生息していることは知られていた。
明治27年(1894年)12月のこと、いつものようにアジの夜曳漁に出かけて行った今宿(静岡県由比町)の望月平七と渡辺忠兵衛は、富士川尻沖の漁場についてから、網を浮かせておく浮樽を積み忘れたことに気がついた。仕方なく浮樽なしで網をおろしたところ、なんと網に一石以上の桜エビが入ったという。これをさかいに桜エビ漁は一期に盛んとなり、今までは駿河湾の特産品として有名になった。
加工品
塩蔵品の塩辛にされるほか、蒲鉾すり身など煉製品として、かき揚げなどの惣菜や、菓子や珍味などに添加される。
静岡名産の干しエビには、「素干し」と「煮干し」がある。台湾産も多く輸入されているが、台湾産と比べ、型は大きく、風味が良くて甘味も強いのが特徴。
食べ方
生食・・・・・生鮮物は春先が旬。冷凍技術の発達で一年を通じて食べることが出来るようになったが、獲れたての生は
       一味違う。色艶の良いものが鮮度も良く、酢醤油やわさび醤油で食べ、さらに大根おろしを添えると一層風
       味が増す。
釜揚げ・・・獲れたての桜エビを塩ゆでにしたもので、生のものと違う食感と独特の甘味がある。そのまま大根おろしで
       食べるのが美味。かき揚げや炊き込みご飯にするのもよい。
素干し・・・・生の桜エビを干したもので、かき揚げやお好み焼き、焼きそばなどに利用すると風味が増す。
その他 ・・・中華料理の食材としてよく使われるほか、桜エビの塩辛は白菜のキムチ漬けの調味料としても欠かせない
       素材である。


        海空の 沖に融け入る 桜えび    市川 忝子
        初漁の さくらの色の 桜えび     久保田 せつ
        桜蝦 干す香の甘き 朝月夜     田島 桐影


ウィンドウを閉じる