日本の旬・魚のお話

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日本の旬・魚のお話
日本の旬   魚のお話(春の魚-9)
白魚(しらうお)
「月は朧(おぼろ)に白魚の篝(かかり)も霞む春の宵」は、ご存知『三人吉三』の名セリフで、名優初代「吉右衛門」の名演技で有名である。江戸時代は、隅田川に舟を浮かべて篝火を焚(た)く白魚漁が始まると、江戸にも春が訪れるといわれた。
透き通った容姿がいかにも可憐な魚で、かつては日本各地に生息していたが、水質汚染で激減し、今は宍道湖が産地として有名。
                 明ぼのや 白魚しろき こと一寸      芭 蕉
命名
死ぬと白くなるところからの命名であろう。
よく似た魚にシロウオ(素魚)がある。こちらはスズキ目ハゼ科に属し、ハゼ類独得の吸盤状の腹ビレがある。
全国的にシロウオをシラウオと呼ぶこともかなりある。たとえば、博多の室見川で生きたまま二杯酢で食べることで有名な「おどり食い」はシラウオと云っているが、実際にはシロウオである。
ちなみに「シラウオのおどり食い」という料理が熊本県にあるが、こちらは豆腐と生きたシラウオを鍋に入れて煮る。熱さを逃れようとシラウオが豆腐に入り込んだものを食べるものである。
地方名
紀州や伊勢湾沿岸地区などで見られるように、シラウオとシロウオが混同して使われているケースが多くある。
そのほかでは、オオシロヨ・シロヨ(八郎潟)、アマサギ(富山)、シラユ(佐渡)、シラス(石川)、スベリ(石川)、シラユオ(岡山)など。
 英名 Icefish
サケ目シラウオ科シラウオ属
姿はアユなどのシラス幼生期のものに似る。これは幼生期の姿を残したまま成熟して親となったもので、幼形成熟と呼ばれる現象である。
シラウオの場合は、キュウリウオ科に近縁な祖先種が進化の過程で幼形成熟化したものと考えられている。
  シラウオ科   シラウオ属・・・・・・・・・・・シラウオ(体長10cm)
                           イシカワシラウオ(体長6cmで宮城県以南に分布)
            ヒメシラウオ属・・・・・・・・アリアケヒメシラウオ(5cmで有明海の特産)
            アリアケシラウオ属・・・・アリアケシラウオ(体長14cmで有明海や朝鮮半島、中国に分布)
形態
体は細長くやや側扁し、頭は著しく縦扁する。尻ビレ基底付近が張り出しており、背ビレ1基で後方に小さな脂ビレがあるのがサケ類の特徴。
メスはウロコがなく、オスも尻ビレ基底上側の体側部に15枚前後のウロコが1列に並ぶのみ。体は透明で、体側腹面に黒点が2列に並び、全長は10cmに達する。
姿形がよく似たものに、高知では「ノレソレ」と呼んでいる魚がある。これは穴子やハモなどの稚魚だといわれ、シラウオより平たい形をしている。
分布
太平洋側では北海道の網走湖から岡山県まで、日本海側では樺太や北海道から九州西岸まで、さらには朝鮮半島からウラジオストックまで分布。
内湾や湖に生息し、降海型と陸封型のふたつのタイプがある。
産卵
早春、砂の多い川の下流域に高密度の産卵群が遡上する。水深2〜3m以浅、河床の砂の粒径が0.25mm以上の場所で産卵する。オスの精子も卵も、シラウオ同様に透明である。
産卵数は陸封型で約700粒、降海型で約1000〜2500粒。卵は粘着糸によって河床の砂礫に付着する。水温14〜20℃の7〜10日で孵化する。
成長
孵化直後の仔魚は、全長5mm前後で細長い卵黄を持つ。3日目には口を開いて摂餌をし、12日後には卵黄が完全に吸収される。河口の汽水域や海に入って成長し、翌年3月には全長7cm前後になって成熟する。
降海型のメスは全長10cm、オスは9cm前後、陸封型の個体では雌雄とも7cm前後と小型である。寿命は1年で産卵、放精後に斃死する。浮遊性の小動物を食べる。
漁法
産卵のために遡上する群を対象として、河口域で燈火によって集魚し、刺網や曳網それに四つ手網で漁獲する。漁獲量は年間700〜1000トンで、青森県が主産地。
              白魚を ふるひ寄せたる 四っ手かな         其角
御用の白魚
慶長8年、摂津出身者が移住したという佃島の漁師が、脳に葵の紋様(シラウオは半透明で脳が透き通って見える)があったので、シラウオではないかと将軍に届け出た。家康は三河でも獲れるシラウオが好物だったので、「江戸でシラウオが獲れるのは吉兆のしるし」と大喜びをしたという。
朱塗りの箱に入れ、「御用白魚」と金文字でしたためたものを、さらに黒塗りの挟み箱に入れて数人でこれをかついだという。この挟み箱には「御本丸御用」と朱書きして、きわめて丁重に扱われた。たとえ大名行列が通りかかっても、行列を突き切ってもよいとのことであった。また、後には家康が、「余の存命中は献上魚だけ獲って、その他は御止魚にせよ」と命じたという。
こうして白魚はみだりに販売することが禁じられた。 以後、シラウオは3月1日に必ず徳川家に献上されたという。
葵の紋が見えるので、これを源氏の魚と呼ぶが、幕府でもシラウオの取扱いを慎重にし、台所にシラウオ料理を専任とする役人がいたとか。
白魚祭
1月17日には、「御神酒(おみき)流し」というシラウオの祭りが行われ、佃島の住吉神社の神官や囃子(はやし)方が舟に乗り、御神酒を川に流して川を清めた。
この行事は、家康の命令で隅田川にシラウオの稚魚を放った際、その成長を住吉神社に祈願したことに由来しているといわれている。
活魚配送 
シラウオは網に掛かるとすぐに死んでしまうほど弱い魚で、「おどり食い」も地元でないと味わえない。そこで、海水よりやや濃いめの塩水で水温を8℃以下に調整し、また、光に弱い性質のため、丸い容器で黒い蓋をして輸送する方法を、主産地の小川原湖がある青森県上北町の人々が2002年に開発した。これによって長距離配送も可能となった。
食べ方 
早春にかけて、生きたものを二杯酢で「おどり食い」にするのが春の風物詩の一つ。ほかに吸い物、卵とじ、酢の物、かき玉汁、フライなどの料理がある。
体が小さいので鮮度落ちが早く、鮮度の落ちたものは味が極端に悪くなる。透明感や弾力があり、型崩れのないものを選ぶ。調理する前に薄い塩水で軽く洗ってザルに上げ、水切りしてから使うとよい。保存はザルに並べて受け皿をあて、ラップをかけて冷蔵する。仕入れたその日に使い切るのが原則。
  白魚の卵とじ
    シラウオをザルに並べ、薄塩をふってしばらく置き、塩が回ったら塩を少々加えた熱湯に入れる。魚が白くなっ
    たらすぐに引き上げ、冷水にさらしてさまし、水切りをする。吸い物程度の薄味の煮汁を用意して煮立て、茹で
    た白魚を並び入れる。再び煮立ったら、三つ葉を散らし、溶き卵を流し入れる。


        ふるい寄せて 白魚崩れん 許りなり       夏目 漱石
        白魚の 総身透きて 汚れ無し 利根川          幸枝
        女の過去 推しはかりいて 白魚食ふ       横山 白虹


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