日本の旬・魚のお話

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日本の旬・魚のお話
日本の旬   魚のお話(冬の魚-5)
真鱈(まだら)
魚偏に雪と書くのは、初雪の後に獲れ出すからとも云われる。鱈は何でも食べる雑食性で貪欲なため、100種類以上もの餌を食べる。「たらふく食う」は、文字通り鱈の腹のようになるまで食べる様子を表わしている。
寒い海で獲れる白身の魚で、淡白な中にも旨味があり、獲れたばかりの鱈の身肉は透き通っていて臭みもなく、刺身には好適であるが、鮮度低下が早く一般には食せない。
肝臓からは「肝油」、胆嚢からは消化薬の原料、ウキブクロからはニカワなどが採れ、広範囲に利用されている。
鱈は世界中に分布しており、どこの海洋国においても人間との深いかかわりと鱈文化をもつ、国際性豊かな魚である。

                 鱈食えば 下北半島 吹雪くかな       草間 時彦
命名
普通は単に「タラ」と呼ぶので、マダラの原語は「タラ」であろうとする説もある。しかし、「マダラ」を原語とみる説の方が正しいようである。
日本で最もはっきりとした斑紋を持つヘビはマムシであるが、このマムシを古くは「斑(まだら)」と呼んでいた。当然、魚の場合でも、体表に斑紋や斑点のあることによって「斑(まだら)」と呼んだと考えられ、単に「タラ」と呼ぶのは頭音「マ」の脱落による呼称であろう。
また、スケトウダラの呼名に対して、「真ダラ」の意で「マダラ」と呼ぶ説もある。
『東医宝鑑』などの古書には、マダラのことを「大口魚」や「呑魚」と書いている。
また、『本朝食鑑』には、「鱈は初雪の後に獲れる故、雪に従う」とある。
地方名
国内における分布も狭いためか、地方名も少ない。
   イソダラ・ネダラ・・・・・・近海に定着するタラをいう。
   オキダラ・トオリダラ・・・繁殖期だけ近海に回遊するタラをいう。
英名 Gray cod 、Pacific cod
タラ目タラ科タラ属
先祖は、1億年から7千万年前の白亜紀頃か新生代第3期に、古い型のコイ族に近い魚から分かれて深い海に移った一群だとの説があり、ヒゲがあるのが共通。
22属500種以上が知られており、日本には54種が生息する。
スペイン語そのままのメルルーサも仲間で、メルルーサ科の他の魚はヘイクと呼ばれている。また、ギンダラはアイナメやホッケと同じカサゴ目の魚で、タラ目とは無縁であるが、標準和名としてまかり通っている。
タラ科で日本になじみの魚としては、マダラのほかに2種ある。
   スケトウダラ(介党鱈) ・・・マダラよりも小型で約60cmと細長い。深海とはいえマダラより中間に生息。生産量は
                   マダラより多く、身肉はすり身、卵巣はタラコや明太子として利用。
   コマイ(氷下魚)・・・・・・・・・スケトウダラより更に小型で体長は約30cm。北海道東部の汽水湖において、氷の下
                   から漁獲することで有名。干し物は上品で淡白、噛むほどに味がにじみ出し、酒の肴
                   として逸品。
形態
体は紡錘形で前腹部が大きく張り出し、体長は体高の約5倍。口は大きく、下顎は上顎より前に出ない。下顎の先端にアンテナの役割を持つヒゲがある。鱗は円鱗で薄く、体色は体側背部が褐色で不定形の暗色斑が散在し、腹部は白色である。
全長120cmで体重20kgに達する。
分布 
北緯34度以北の北太平洋と、その周辺海域に分布する。日本近海では、太平洋側は茨城県以北、日本海側は山口県以北に生息する。
生息場所は、水深200m前後の大陸棚や、その斜面の岩礁域に生息し、日本近海では水深150m付近に多い。
スケトウダラに比べて定住性が強く、岩礁の根割れなどに居付く高齢で太ったタラを「根鱈」、沖で取れたスマートな体形のタラを「沖鱈」と呼んでいる。
生息水温は18℃以下で、高緯度の地方では通常冬期に深場で産卵、越冬し、春期に浅場へ移動する。
生息域の南限にあたる日本近海では、冬期に浅場へ移動して産卵し夏期に深場へ移動するという、高緯度地方とまったく逆の生活を送る。
産卵
日本近海での産卵期は冬から春で、東北沿岸は12〜2月、北海道東岸で1〜3月。産卵場所は水深30〜100mの、岩盤が硬く締まっていて海底が平らかな締砂泥底で、「たら場」と呼ばれる。
産卵は、メスが放卵したのち、オスが激しく反転しながら精子を放出して行われ、1産卵期に1回のみ。魚卵は球形で多少の粘着性を持ち、孵化は水温2℃で1ヶ月、5℃で21日、6℃で18日、11℃で8日前後。
成長
孵化直後の仔魚は3.5mm前後で、好適水温は7〜8℃。北海道では体長3〜6cmに成長し、7月頃に底性生活に移行する。生後1年で16cm、2年で20cm、3年で47cm、5年で56cm、8年で90cm前後に成長し、寿命は13〜14年といわれている。雌雄とも2〜3年目から成熟し始める。動物性プランクトンを摂取し、底生生活に移行する頃から非常に貪食となり、まさに手当たり次第にタラ腹食うのである。
漁法
底曳き網、底刺網、底延縄で漁獲するが、1本釣りもある。以前、北海道では、太平洋側の道東産は身も締まって美味なので「本場物」とされ、日本海側のものはやや味が落ちるので「場違い」とされていたが、今はそれほど沢山獲れることもなく、生鮮のマダラは高級魚扱いである。
               鱈網の 入るる海溝 深くあり       依田 明倫
タラ戦争
北極圏に近いアイスランド近海は「世界三大タラ漁場」の一つで、9世紀以来、各国の漁船が先を争ってタラを獲りまくってきたが、タラに対する経済依存度が高いアイスランドは、1958年の12カイリ宣言で外国船を締め出した。そして、ついに1973年にイギリスの漁船へアイスランドの軍艦が発砲した為、「タラ戦争」にまで発展した。
タラは主な漁場が北海であり、この為、ヨーロッパやアメリカ、アフリカなどでタラを好む民族が多く、ことにイギリス人は「大のタラ好き国民」で、フライにした切身をおでんのようにして縁日などで売っている程である。
タラの鮮度落ち
鮮度落ちの早い魚で、チルドで2日間貯蔵しておくと生臭みが出てくるが、同じ条件で鯛なら8日間かかる。この様に鮮度落ちが早いのは、身肉の水分量が83%もある為で、鯛の73%やその他の魚と比べても多い。したがって、タラの身肉に塩を振って水分を減らすと、タンパク質が凝固するので長持ちする。
タラの旨味
タラの身肉は比較的弾力性があり、極く鮮度の良いものは刺身でも食感はいい。エキス分中の窒素量は肉100g当り約350mgで、赤身魚や青魚より少ないが、アンコウよりははるかに多い。
特に旨味成分のトリメチルアミンオキシサイドやアンセリン、メチルヒスチジンが多く、これらの物質がタラ特有のあっさりした旨味を出している。
タラの身割れ
鍋の中の大きな身を箸でつまみ上げようとして身割れし、失敗した経験は誰しもあることだろう。この身割れは、筋肉のブロックを包んでいる筋節という結合組織から起こる。
タラの身肉の結合組織に存在するタンパク質のコラーゲンとエラスチンの量をみると、エラスチンが多い。加熱するとコラーゲンはゼラチンに変わるが、エラスチンはそのまま残る。また、この二つ以外のタンパク質は加熱されると凝固し、身は縮んでしまう。こうしてエラスチンに包まれた筋肉の各ブロック間には隙間が出来てしまい、身割れをおこす。
進物
『本朝食鑑』には、棒ダラ(干ダラ)について、「世間では角力の好きな者が常にたしなむと力が増すこと十倍」とあり、また「太守・刺史などの厨(台所)へは生鮮なものを姿のままに乾して、供納している」とし、昔はよく進物に使われていたことが記録されている。
俗諺
京の生鱈・・・・・・・・・・・・・・・・京都は山に囲まれた盆地で、昔は生鮮魚が手に入りにくかったことから、めったにない
                  もの、珍しいもののたとえにいう。
鱈汁と雪道は後がいい・・・・・タラ汁は時間をかけてゆっくり煮込むほど美味しくなるので、あわてて食べない方がい
                  い。雪道も人の通った後の方が雪が固まって歩き易いという意で、あわて者を諌めるた
                  とえ。
鱈は馬の鼻息でも煮える・・・タラは肉が柔らかいので、煮るのが簡単だという意。
芋棒(京都名物)
エラとワタを除いたマダラやスケトウダラを、塩分を加えないで氷結と寒風にさらし、丸ごとカチカチに素干したものを棒ダラという。この棒ダラを京都では米のとぎ汁で戻し、特産のえび芋と炊合せた料理が芋棒である。
子付け(金沢の郷土料理)
タラの刺身にタラコをまぶしたもので、淡白な味のタラがこんなに深い味を持つ魚だったかと思う逸品。
食べ方
厳寒期が美味。白身で特有の光沢があり、淡白な味は和食だけでなく洋風料理にも合う。鮮度の良いものは身崩れするので昆布締めにする。煮付やフライ、塩焼き、潮汁、蒸し物、ムニエル、粕漬けなどは、味にコクが出て美味。
また、白子(精巣)の鮮度のよいものは三杯酢で食べたり、鍋物にも利用される。
真子(卵巣)は生タラコと呼ばれ、煮付けにして食べることが多い。
   タラチリ鍋
     安上がりの塩物でも十分だが、鮮度の良い生ものがあれば最上。昆布だしで豆腐や季節の野菜と共に煮立
     て、白子も加えると鍋の味が引き立つ。ポン酢醤油に好みの薬味で食べる。尚、タラの皮には独得の臭味が
     あるので、一定時間塩で締め、一度湯引きしてから鍋に入れると良い。北海道や佐渡では「沖汁」といい、美
     味しい秘訣は新鮮なタラを使うためだといわれている。
   ジャッパ汁(青森)
     ジャッパとは方言で「捨てもの」という意味で、「魚のアラ」のこと。タラのアラを昆布だしの汁で大根や人参、
     ゴボウなどの野菜とともに煮込み、味噌仕立したもので、しばれる海で漁をしたあと、体を温めるために考え
     出された漁師料理。山形の庄内地方にも似たような「ドンガラ汁」がある。
   タラの粕汁
     切身に塩を一振して20〜30分寝かせ、薄切りのジャガイモや大根、コンニャクと一緒に煮る。煮立って野菜
     が柔らかくなったところへ、酒粕と味噌をいれる。豆腐やネギを入れると一層美味。
   タラ豆腐
     塩タラと豆腐をだし汁でさっと煮て、刻んだネギをパラパラと散らしたものだが、タラの塩味がほどよくきいて、
     さっぱりとした旨味のある一品。


            大鱈を 秤る背筋を のばしけり      皆川 盤水
            一匹の 鱈の料理の 何や彼や      高木 晴子
            雪降りて こその鱈汁 能登泊       柿島 貫之


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