日本の旬・魚のお話

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日本の旬・魚のお話
日本の旬   魚のお話(秋の魚-20)
アラは、昔から切傷や打撲、破傷風、失血、のぼせへの薬効で人気があり、その昔、関取の利根川権太夫が初めてアラをチャンコ鍋に使ったと云われる。激しい土俵上でのぶつかり合いで生傷が絶えなかった力士の栄養食として、十分にその役割を果たしたものと思われる。
アラの季語と同様に冬が旬。

            あらの旬 来て玄海の灘 荒るる      大野 美幸
命名
アラの語源は、この魚の荒々しい習性と外貌などによるものと一般に考えられ、和字も「魚扁に荒」をあてている。
ところが大言海には、「その語源知られず」としてあり、他の文献にも語源にふれたものはない。
ハタ(ハタ科)、タラ(タラ科)、アラ(スズキ科)の三種の魚名は「斑(はだら)」を同根とする同義呼称で、ハが欠落して「タラ」、ラが欠落して「ハタ」と呼び、タラが転訛して「アラ」と呼称されたと考えられる。
『本朝食鑑』には、「当今、全国どこでも獲れ、最も下品なものである」とあり、江戸時代には庶民の魚として多く市中に出回っていたと思われる。
地方名
スケソウダラ(長崎)・・・・・・・・長崎で助宗タラが獲れるということで調査船まで出して調べたら、その正体はアラだっ
                  たとわかった。
ホタ(和歌山)・・・・・・・・・・・・・「ホタ」とは榾(ほた)や朽木、切株、もえさし、大きな倒木を意味し、大きくて、あまり役に
                  たたない魚の意か。
ヤナセ(山口・島根)・・・・・・・・丸々太った大きな魚を意味する呼名「ヤナ」は樽の方言。「セ」は魚名語尾。
ヤリモチ(島根・広島)・・・・・・若魚の体側には鮮やかな緑褐色の太い一縦帯がある。それを槍とみて呼ぶのであろう。
デッキ(山形)・・・・・・・・・・・・・気の強い男子をデキという。「デッキ」は暴れん坊のような魚の意。
キヨセ(島根・山口)・・・・・・・・「キオウセ」の音便で呼ぶのであろう。「セ」は魚を表わす語であるから、「気負う魚」や
                  「気の荒い魚」という意味の呼名。
イカケ(関西・長崎) ・・・・・・・・厳魚(いかけ)の意。「ケ」は食事や食物を表わす語。
カナ・カンナ(島根・山口)・・・・「カナ」は厳魚の略称であろう。
オキスズキ(四国・九州)・・・・スズキとマハタの中間種のような体形からいうのだろうか。
英名  Sawedged perch
スズキ目スズキ科アラ属
スズキ科の仲間にはさまざまな形態の魚が含まれるが、一般的に体はやや細長く、側扁する。体側には完全な側線が走り、1基か2基の背ビレ、2本か3本の尻ビレ棘などがあるのを特徴とする。
日本では12属23種が知られており、北海道から沖縄の淡水域からやや深い海水域まで広く分布し、手のひらサイズから1mを越す大型のものまでいる。
スズキ属を除いた食用魚種としては、アラの他にアカムツ、オオクチイシナギ、オオメハタ、中国の三大名魚のケツギョ、シマスズキ、ニュージーランドオオハタ、練製品に利用されるスミクイウオ、ホタルジャコなどが上げられる。
形態
体は紡錘形で、やや側扁して長い。吻部は尖っており、口は大きく、下顎は上顎より突出している。背ビレは1基で13棘あり、エラ蓋に後方へ向かう大きな鋭い棘がある。鱗は非常に小さく、体色は体側背部が灰青色で腹部は白。幼魚には、吻から尾柄部まで達する3本の褐色縦帯が体側背部にある。
スズキに似ているが、大きなエラ蓋に特徴がある。体長は1m余りに達する。
分布
南日本から東シナ海、フィリピンまで分布し、季節的な回遊は行わず、周年同じ場所に生息すると思われる。
やや深海性で、沖合いの岩礁域や貝殻混じりの砂泥域に生息する。
伊豆の東方方面では、実に200〜300mに達する深海近くで生息している。
産卵
産卵期は7〜8月で、この時期には生殖器官が著しく増大し、オスの精巣とメスの卵巣がそれぞれ通常の2〜3倍にも膨れ上がる。まだよく知られていないが、卵は分離性卵で20万〜100万粒に達するのではないかと思われる。
成長
幼魚は沿岸の水深100〜140mに生息するが、成長と共に深場へ移動する。大型魚になると200m前後に多く生息する。食欲は貪欲で、動作はさほどすばやくはないが、ハダカイワシやイカ類などの大型の餌を一飲みする。
漁法
延縄(はえなわ)や底引き網、釣で漁獲されるが、漁獲量は少なく、九州近海では年間100トン前後。
アラ釣
アラの口は深海魚特有の受け口。この形の口をした魚は見るからに貪食そうで、アラも大変な大食漢である。しかも、口が上を向いている受け口の魚は上から餌が接近してくるのを待つ習性があり、すぐ近くの底魚には見向きもしない。
また、動作がゆったりとしているので、釣でのあたりはなんとも頼りがない。根にひかかった程度の感触しかなく、それが突然強烈な引き込みを始めるので、タイミングの合わせ方が難しい。
釣り上げる時は、スズキの「エラ洗い」と同じようにエラを広げて体を震わせる。
秋のアラと娘の粗(あら)は見えぬ
アラは冬場の魚で、秋にはほとんど見当らない。秋のアラ同様、若々しい娘の粗など目に入らないほど美しい。
食べ方
白身の魚で、脂が乗っている割にあっさりした味わいである。
身がしまっているので、2日間ぐらい寝かせてから刺身にする方が旨い。
フグのように薄切りにするのがコツで、また、薄切りの肉を深く重ねないほうがよい。
頭やカマ、内臓はきれいに水洗いして塩を振り、熱湯に通す。これを適当な大きさに切り、もみじおろしにカボスの三杯酢を加えたものを薬味にして食べると美味。
   チャンコ鍋・・・四六時中チャンコを賞味して食べ飽きているはずのお相撲さんでさえ、アラのチャンコには目の
            色を変えると言われるほどで、アラはまさにチャンコ鍋の横綱である。


            潮流の はたと変わりて あら釣るる         曽田 卓夫
            あら綱の 船の傾く 風涛(かざなみ)に        黒田 陶陶庵
            かたわらに 手ぬくめ行火(あんか) あらを釣る   動坂 典子


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