日本の旬・魚のお話

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日本の旬・魚のお話
日本の旬   魚のお話(秋の魚-7)
柳葉魚(ししゃも)
シシャモは北海道を代表する味覚の一魚で、和人が北海道に入り込む以前の大昔から、アイヌの人達の重要な海の幸であった。
アイヌ伝説によれば、シシャモは「柳の葉っぱ」を神様が魚にしたものとある。昔は、産卵のために川を遡上するシシャモで川底が真黒になるほどだったといわれたが、近年は乱獲により資源が枯渇してしまった。これはアイヌの神様の怒りに触れたのかもしれない。
アゴまで卵を満たして大きな腹となる産卵の頃が旬で、秋の深まる北海道の珍味でもある。

               ししゃもししゃも 顎(あご)まで卵 満たしゐる       修 羅
命名
アイヌ語のスス(柳)とハム(葉)でススハム(柳の葉)からきており、シシャモを柳葉魚と書くのは、アイヌ語をそっくり借用した近代の和製の漢字である。その為、古典の本草書にシシャモはいっさい記載されていない。
   英名 Shishamo smelt
サケ目キュウリウオ科シシャモ属シシャモ
キュウリウオ科の特徴は、ヒレに棘がなく、脂ビレがあり、輸卵管の代わりに輸卵溝というものがあることで、サケと構造がよく似ている。
   キュウリウオ科・・・・シシャモ属
                カラフトシシャモ属 Capelin, Pacific capelin
                キュウリウオ属 Rainbow smelt
                ワカサギ属・・・・・ワカサギ Japanese smelt
                           チカ Japanese surtsmelt
                           イシワリワカサギ

       ※カラフトシシャモ属
            シシャモとは異なり、淡水域には出現しない。北海道、オホーツク海沿岸、樺太、カムチャッカ、北
            米太平洋北部と北極海に分布する。産卵は、日本では晩春から初夏にかけて、カナダのブリティ
            シュコロンビア州では初秋。シシャモの資源が枯渇した為、このカラフトシシャモがノルウェーや
            カナダ、アイスランド、グリーンランド、アラスカなどから輸入され、店頭に並ぶシシャモといえば、
            このカラフトシシャモがほとんどである。

       ※キュウリウオ属
            他のキュウリウオ科の仲間と比べると、アゴや舌の上にある歯が強大。吻が細長くとがり、下アゴ
            が上アゴより前に突出する顔つきをしている。新鮮なうちは野菜のキュウリのような香りがする。
            冷凍にしておくと臭わなくなる。
産卵
10月下旬〜11月中旬の産卵期には、太平洋にそそぐ十勝川や沙流川(さるがわ)、鵡川(むがわ)などの釧路、日高地方の川に大群となって押し寄せる。
雄は婚姻色で体全体が錆びたように黒っぽくなり、尻ビレも大きくなる為、この時期の雌雄の区別は容易。
産卵は、暗夜で川岸に沿って河口から1〜4kmの水深60cm程の砂底の浅瀬で行い、卵は無数の油球を含む淡黄色半透明の球形卵で、直径1.5mmの沈性付着卵。性質はアユの卵に似る。
抱卵量は17cmの3年魚で12600粒、14cmの2年魚で6700粒。産卵後、親はサケと同様に一生を終える。
               産卵の 口うすくあけ 柳葉魚かな        福田 庄知
成長
水温6〜12℃なら80〜85日間で孵化し、動物性プランクトンや小魚を食べ、2年で成熟し大きさは15〜20cm前後となる。
漁法と漁期
シシャモが最も美味しくなるのは産卵の時期で、接岸してきたところを底引き網で捕獲する。10月初中旬から45日間がシシャモ漁の季節である。
資源枯渇
「北の新博物記」によると、シシャモには「卓越年級群」という現象があり、これが救いの手となって再び資源が盛り返すことを繰り返してきた。しかし、戦後は干し物の美味しさに俄然人気が出た為、乱獲が行われた結果、1961年を最後に資源復活がぱったり途絶えてしまったのである。
その後、地元の人達の懸命な努力で、ようやく川にシシャモの姿が見えるようになったという。
アイヌ伝説
1.雷神と国を守る神の国の庭に柳が植えてあり、ある年の秋、その葉は誤って下界に落ちてしまい、アイヌのコタン
  部落に散った。葉は天に帰りたいと願ったが、神は腐るのを恐れ、生命を与えて魚に変えた。しかし、魚は秋にな
  ると神の国を慕って川を上るのだという。
2.孝行息子が、老いた親に魚をと川岸に腰を掛けていると、柳の葉が落ち、それが川に浮かんで魚になったからだ
  という。
3.ある年、アイヌでは熊や鹿が獲れず、大飢饉に見舞われた為、一生懸命神に祈った。この祈りを聞いた神様は、
  川のほとりの柳の葉をたくさん取って川に入れた。やがて河口から、その柳の葉に似た小魚が川いっぱいに遡っ
  てきたので、その年は飢えることがなかったという。
食べ方
ビタミンA、B2、リン、カルシウムなどが豊富で、栄養面でも申し分ないシシャモだが、なんといっても美味しいのは子持ちシシャモのメス。たいていの魚は産卵期になると脂肪が落ちるものだが、シシャモだけは味も落ちず美味しい。
シシャモが多く獲れた頃は、サケと同様に獲れたてを自然で凍らせた、ルイベが最高の料理だったといわれている。
生鮮のものは、丸ごと唐揚げやフライにすると食べやすく美味しい。酢や柑橘類の調味料と相性がよく、揚げたものでマリネをつくってもよい。
子持ちシシャモは焼いて食べる。
卵の塩蔵品はそのまま副菜に、また、青ジソなどをあしらって軍艦巻きの具にしたり、マヨネーズと合えてサラダやスパゲッティーのソースにする。


                雨に得て 寸の柳葉魚ぞ 風蓮湖      黒木 野雨
                柳葉魚干す 海の穏やか なるときは    鈴木 とし子
                曇り日や 片手しまひて 柳葉魚焼く     小川 千賀


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