日本の旬・魚のお話

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日本の旬・魚のお話
日本の旬   魚のお話(夏の魚-6)
馬糞海胆(ばふんうに)
江戸時代から天下の三珍として、「肥後のカラスミ」、「三河のクチコ」と並んで「越前のウニ」が知られている。
縄文時代や弥生時代の遺跡からウニの殻が数多く出土しており、昔から日本人との関係が深く、重要な水産資源であったことを表している。
下関を始めとする雲丹の産地で、その原料となっているのがこのバフンウニである。ウニの生殖巣を食べることから、生殖巣の発達する春から夏の産卵期前が最も美味である。
                   藻の蔭に 隠れしつもり 馬糞海胆       板谷 島風 
命名
ウニは、体が球状ないし半球状の形をし、棘で覆われ、毬栗(いがぐり)の様に見える。
漢字は海胆、あるいは海栗と書く。海胆はウニの卵巣や精巣を胆と思ったことから、海栗は毬栗からの連想と思われる。
昔は「宇爾」や「宇仁」などの字が当てられ、また、北海道や東北では「カゼ」、もしくは「ガゼ」と呼ばれ、「加世」の字が当てられた。「雲丹」や「海丹」は、卵巣と精巣を塩蔵にしたものを言う。
バフンウニはトゲが短く、その形が馬糞に似ていることから名が付けられた。
『本朝食鑑』には、「全く鎧兜の形に似ている。当今、漆工が入れ物に造り、児女の玩器としている」と述べている。
英名 Short spined sea urchin (海のハリネズミ)
棘皮動物門ウニ網ホンウニ目オオバフンウニ科
世界中に約860種が知られており、日本近海にも100種以上が生息している。
オオバフンウニ科の主なものにはバフンウニの他に以下の種類がある。
  エゾバフンウニ・・・・・・・・・・以前は加工用として越前や下関へ送られていたが、冷蔵技術の発達で生ウニとして出
                   荷されている。日本で獲れるウニのなかで最も美味。7〜9月が産卵期。
  キタムラサキウニ・・・・・・・・ウエットスーツやクツなども突き抜けるほど棘は強固、刺さると激痛が走る。9〜11月
                   が産卵期。
  赤ウニはラッパウニ科・・・・西日本中心に分布し、全体が赤褐色をしていることからの呼名。人によってはこのウニ
                   が最高の味と言う。
  ムラサキウニはナガウニ科
                ・・・・ウニの体の様々な器官が、すべて5方向に放射状に並んでいることが大きな特徴であ
                   り、また、体は石灰質の板状の骨格で覆われている。ウニの棘は可動性で、棘の間に
                   は管足と呼ばれる吸盤の付いた足が密生し、管足内にある水管内の圧力を調整する
                   ことによって吸盤を操ることが出来る。ウニはこの管足と棘を動かして移動している。
分布
北海道南部の日本海沿岸から九州南端にかけてと、朝鮮半島及び中国の北部に生息する。水深20m以浅の転石帯や岩礁帯に生息し、とくに潮間帯から水深5mまでに多い。夜行性であるので、夜間に活発に摂食、移動する。生息適水温は12〜16℃で、12℃以下では摂食量が減少する。また、塩分濃度が0.7%以下になると斃死する。
形態
棘は細くて短く、長さは5mm以下である。管足は4縦列で、管足の生える四つの孔対は水平な弧をつくり、管足内にはC字状の骨片がある。体色は全体に緑色で、口の中に石灰質の強大な5本の鋭い歯があり、海藻を削ったりすりつぶしたりするのに使われる。
アリストテレスの提灯
上述のように、ウニの歯は強靭で複雑な構造をしており、その構造を哲学に例えたものかもしれない。提灯というのは歯の形からきている。
産卵
冬から初夏に行われ、福井では12〜5月にかけ、水温が10〜13℃で始まる。雌雄異体で体外受精し、体の頂上部にある生殖孔から精子、または卵子を一斉に放出して受精させる。卵は直径0.1mm前後の分離沈性卵であるが、20時間後には浮遊する。
成長 
受精後40〜50日で稚ウニに変態し、底生生活に移行する。変態直後の稚ウニの殻径は1mm前後。その後、1年で1.4cm、2年で2.4cm、3年で3cm、5年で4cmに成長するが、殻径が2cm前後から成熟する。藻食性で、浮遊期の幼生は浮遊珪藻を主に食べ、着底以降は付着珪藻やアオサ、ワカメ、アオメ等を食べる。
大きくなるにつれて特に褐藻類のコンブを好むようになり、1日に体重の5〜20%も食べる大食漢となる。ただ、このコンブがないところのウニの成長は遅れる傾向にある。
越前雲丹
越前浜の海女は、ウニを古来からの「ガンジョ」という名で呼んでいる。
7月23日の土用の入りから解禁となり、盆過ぎまでが漁期で、その日の内に加工される。
まず、腸などを取除き、水切りし、うに板と呼ばれる板に並べて10〜13%の塩を振りかけ、色が赤く変わったらザルに移して陰干しにする。これを江戸時代から続いている福井市内の「天たつ」に運び、練って桶に詰められて熟成させる。
ウニは、中国からの来朝僧により我国に伝えられたといい、「禅僧のいるところにウニあり」とまで云われた。曹洞宗の本山である永平寺が越前にあることからも、ウニが越前の名産となったことがうなずける。
漁法
底面にガラス板を張った箱眼鏡でウニを探し、鉤たも網で漁獲する。また、潜水でも漁獲される。
ウニの加工
粒うに・泥うに・・・・・バフンウニやアカウニなどのウニの卵巣を食塩を加えて熟成させたもの。混ざり物のないもので、
            赤みがかった黄色味を呈し、特有の風味を持ったものが上品といわれている。「山口名産うに」や
            「関門名産ウニ」として名高い。
練うに・・・・・・・・・・・「泥うに」からさらに水分を取り、調味料やアルコール、焼酎などを加えて練り固めたもので、歩留
            まりが悪く高価なものとなる。「越前うに」が名産。
焼うに・・・・・・・・・・・塩湯で煮熟して焙炉で乾燥させたもの。
蒸焼うに(貝焼き)
         ・・・・宮古、釜石の名産品で、貝殻などに詰めて蒸焼きにしたもの。地方では「焼ガゼ」と呼ばれる。
水うに・・・・・・・・・・・水分をとらずに塩を多くするので、「泥うに」より塩辛く柔らかい。このウニを「うにの塩辛」と言う。
食べ方
ウニの卵巣は五角形の中に詰まっており、これを取り出して食べることになる。なんといっても新鮮な生ものをすし飯の上にのせたり、小鉢に盛付けてワサビ醤油か生姜醤油で食べるのが一番。
特に山口県萩市の見島の郷土料理であるうに飯は、米に丼一杯のウニとアワビ、サザエのみじん切りを一緒に醤油で炊き込んだもので、豪快な料理である。


            箱眼鏡 上下にゆれて 海胆を突く     黒瀬 石洋
            針に触れ 海胆の命を たしかむる     竹腰 八柏
            うに壷の 底をつついて 酒うまし       小西 無声


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