日本の旬・魚のお話

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日本の旬・魚のお話
日本の旬   魚のお話(春の魚-13)
甲烏賊(こういか)
イカは貝類と同じ軟体動物のグループで、その証拠に貝殻を持っている。一般のイカの貝殻は背中に埋もれて外からでは見ることが出来ず、また、その形は薄く細長くなり、貝類とはほど遠いものであるが、甲イカ類のそれは石灰質で出来たしっかりしたものであるのが特徴。
肉厚でトロッとした感じと、コリコリとした歯ごたえが交り合い、噛むほどにほんのりした甘さのあるイカで、春から初夏の産卵前が旬。
                   きざまれて 烏賊の水肌 箸に透く      相葉 有流
命名
貝殻を甲と云い、舟形の石灰質の甲を持つことからの命名。甲の後端に短く鋭い棘があることから、関西では「針イカ」と呼ぶ。また、墨の多いことから「墨イカ」ともいう。
地方によっては「真イカ」と呼ばれることもあるが、「真」という言葉はその地方で最も一般的に利用されているものに付けられる名であり、三陸や北海道の「真イカ」は本種でなくスルメイカを指す。
英語では、Cuttlfishはツツイカ目のヤリイカやスルメイカを指し、Squidの甲イカ目と区別して呼んでいる。
頭足網甲イカ目甲イカ科
甲イカ科は30属80種ほどあり、日本近海には20種ほどが知られている。
甲イカの仲間
   ・カミナリイカ(紋甲イカ・マルイチ・コブイカ)
         ・・・・虎斑(横縞)の間に眼のような紋様が散在する。U字形の太い稜(内円錐)があるのが特徴。本種を
            紋甲イカと呼んでいたが、現在は輸入される大きい甲イカ種を呼ぶようになった。
   ・トラフ甲イカ(紋甲イカ)
         ・・・・東南アジアからの輸入品は本種が中心で、名のごとく背中の虎斑は明瞭。
   ・ヨーロッパ甲イカ(紋甲イカ) 
         ・・・・西アフリカから輸入さている。
   ・コブジメ・・・・甲イカの中で一番大きい。
   ・尻焼イカ ・・・東南アジアから輸入。
   ・姫甲イカ ・・・小型で7〜8cmのイカ。
   ・ミミイカ
   ・その他・・・・・・ヨーロッパ姫甲イカ、三崎甲イカ、筋甲イカ、獅イカなど。
紋甲イカ
もともと東シナ海などで獲れていたものが、主に九州や関西地方に出回った。
全国の市場に広がったのは、1959年に日本漁船が西アフリカ沖合いで好漁場を発見してからである。
その後、200海里の影響で1982年に日本漁船が撤退した後も、海外から輸入した紋甲イカを使って加工が続けられた。
厚皮を剥いて出荷し、薄皮は刺身にする直前に職人が剥くものであったが、90年頃から薄皮を剥いた製品が求められ、現在では海外から「皮剥き紋甲」の輸入が増えている。
皮付きも含め、3万トンが15ヶ国から輸入されている。 
分布
本州中部以南から台湾南部まで分布。季節的な深浅移動や小規模な南北回遊を行い、沿岸100m以浅の砂泥底に生息する。生息水温は5〜30℃で、夜行性であることから、昼間は海底の砂泥中に潜っていることがある。
形態
楕円形の石灰質で出来た舟形の甲は、多孔質で軽く、フロートの役目を果たしている。
全長は30cmとアオリイカと同じ程度で、ヒレは外套膜(がいとうまく)の縁をほとんど覆っているが、そのヒレは小さく、体の周りを縁取っている様にも見える。このヒレを波打たせてゆっくりと移動し、速く移動する時はジェット噴射を使う。
足は10本で、そのうちの8本は短く、残りの2本は普段しまわれている。この2本は触腕(しょくわん)と呼ばれ、身長ほどの長さがあり、先の部分だけにある吸盤を使って目にも留まらぬ早業で獲物を捕らえる。これぞまさに「奥の手」である。
この獲物を捕らえる技は生まれながらの才能で、孵化してからわずか1日で触腕を使い、自分と同じ大きさのアシエビなどを捕らえてしまうほどである。
産卵
春から初夏の水温13〜19℃になる頃に行われ、関東では4月、九州では5〜6月が産卵のピークとなる。
産卵場所は水深10m以浅の内湾の沿岸浅瀬。
産卵期には雌雄一対で行動することが多く、抱卵数は平均2700粒程度。交接行動の前にオスが第一腕を高く上げ、外套膜背側の横縞を鮮明にしてディスプレイをする。メスはオスを気に入ると向き合い、人間が両手の指を組合せる様にお互いの腕を絡み合せる。
産卵は交接後すぐに行われ、木の実形の卵嚢に1粒づつ包まれた卵は、海藻や汎木、転石などに産み分けられる。多回産卵で、1回に500粒前後を産卵する。
孵化は水温21℃で約4週間。
成長
孵化直後の稚仔は外套長が4.5〜5mmで、海底に着底する。他の種のイカと異なり、普段は底にじっとしたままで、体色も底の砂に似ている。
餌はエビ類やカニ類、シュコ、小型の魚などで、早業で捕らえ、カラストンビの嘴で食べる。
孵化後100日で外套長が5〜10cm、200日で10〜15cmに達するが、その後の成長は鈍い。寿命は1年で、産卵後は死んでしまう。
漁法と輸入
瀬戸内海から九州などの西日本が主産地で、底引き網で漁獲されるが、大きな群をつくらない為にその量は少ない。
輸入物はアジアやモロッコ、アフリカ、大西洋沿岸のカンビア、カナリア諸島が主な産地で、約3万トンが輸入されている。
モーツァルトとイカ
茶褐色をセピア色というが、このセピアとは甲イカ属の学名Sepiasがもとという。
甲イカはよく墨を出す為、西欧ではその墨を染料に用いた。また、インクとしても利用され、音楽家モーツァルトもイカの墨で楽譜を書き、それが現在も残っているという。
変化に対応
イカの体表には無数の色素細胞が散在している。この色素細胞を広めたり縮めたりすることによって体色を変化させ、周辺の環境に対応することで身の安全をはかってきた。
また、体色の変化は個体同志のコミュニケーションをとる役割も果たしており、コブジメなどはメスに対する求愛行動に使う。求愛行動中にオスが割りこんでくると、メスの方を向いた半身は求愛を示す模様を、オス側には威嚇(いかく)の色彩を表すという器用さも合わせ持つ。
イカ足とタコ足の違い
イカの足(腕)は、普段泳いでいる時には8本に見えるが、別に餌を捕らえる為の触腕という足を2本持っている。
また、イカの吸盤は足と短い筋肉の柄で繋がっていて、グルグル自由に動き、硬くて小さなトゲのついている輪となっている。これを角質環といい、指でしごくとポロポロと取れる。これに対してタコの吸盤は筋肉質で、大きいが環もない。
イカはなぜ1パイ
「枚」はヒラメやカレイなどの平たい魚に、「匹」は小さめの魚に、「尾」は小ぶりの魚に、「本」は大きい魚に使われているが、イカやタコは「杯(盃)」が用いられている。
中国では盃の数を指し、特に生き物には使わないようで、船の数やイカ、タコに使われるのは日本特有のケース。おそらく、イカ徳利やタコ壷などから連想されたのではないかと思われる。
イカと魚の旨味の違い
イカの刺身、照り焼き、素干のスルメをよく噛むと、甘いような旨さが感じられる。これはタウリン、リジン、ベタインなどの弱い甘味と、旨味を持つアミノ酸の影響が強いため。
核酸関連物質であるAMP(アデノシン一リン酸)はATP(アデノシン三リン酸)の分解によって生まれるが、魚の旨味成分はAMPがさらに分解されたイノシン酸(IMP)である。これがイカと魚の旨味の根本的な違いで、貝やタコもイカとよく似た成分である。
イカと健康
噛めば噛むほどアゴの働きが活発になり、頬の筋肉の血流が良くなる。また、咀嚼(そしゃく)によって脳の働きも活性化し、脳の老化防止にもなる。また、干しスルメに多いタウリンは眼の網膜の発達とも関係がある為、眼の衰退の予防になり、特にコンピーターを使う人にとっては、とてもよい食品である。
最大と最小のイカ
最大のイカは、大西洋を生まれ故郷とするダイオウイカで、これまでの最も大きい記録は全長が18mという怪物ぶり。日本でも6mという記録がある。
一方、最小のイカはヒメイカで、その大きさは2cm。ほかにはコビトイメイカダマシが4〜5cm。
8本足のイカ
鮭鱒や海鳥、海獣類の重要な餌となるヤツデイカやタコイカは8本足に見えるが、これは小さい時に2本が抜け落ちてしまうからである。
なぜ無くなるのかは謎であるが、やっぱりイカは10本、タコは8本なのだ。
イカの外観的鮮度変化
漁獲直後・・・・・・・・透明感があり、外套膜の背部は黒褐色で、表皮の色素胞は活動している。
死後・・・・・・・・・・・・透明感は失われるが、まだ表皮は赤褐色で、筋肉は硬直状態。表皮が乾燥状態の場合は、赤褐
            色で色素胞が拡大したまま固定。表皮が湿潤な場合は、色素胞が収縮して黒色の斑点状になり、
            最後は白っぽくなって色素胞が消失したようになる。氷水処理を行ったり、あるいは積み重ねた状
            態の場合は、白色化の進行が早い。
硬直期を過ぎる・・・筋肉の弾力が失われ、軟らかくなる。さらに時間が経過すると表皮が赤褐色を呈し、異臭を発生
            する。鮮度低下に比例してドリップ量が増加するが、鮮度がよくても緩慢凍結、あるいは保管中に
            温度が上昇したりすると、ドリップ量が増加する。
夏イカと秋イカ
一般に、イカが魚肉と比べて鮮度落ちが早いというのは、イカの身肉がエキス成分に富み、細菌が繁殖しやすい為である。
夏イカが早く腐敗するのは、秋イカに比べて肉の組織が緻密でないこと、自己消化速度が速いこと、タンパク質が溶解しやすいことなどが考えられる。
   初期腐敗に対する貯蔵温度
                   10℃保存    25℃保存 
            夏イカ    35時間     17時間                    
            秋イカ    90時間     23時間          
タコとイカの墨
タコの墨はサラサラとしていて、海中で墨を吐くと煙幕のような状態になり、その間に敵から逃れる。
一方、イカの墨は油分が多いので、墨を出すとちょうど分身を作ったように見え、これによって敵を欺く。
また、イカの墨には、ガン細胞の増殖を防ぐ成分が含まれていることが発見されている。
ツツイカ目と甲イカ目の比較
ツツイカ目には代表的なものに、
   アカイカ科(スルメイカ・アカイカ・トビイカ)
   ジンドウイカ科(アオリイカ・ヤリイカ・ケンサキイカ・ベイカ)
   ホタルイカ科
などがあるが、たえず泳いでいるために筋肉が発達している。その理由は、甲イカは甲が浮袋の役割を果たすのでゆったりと泳ぐのに対し、これらのツツイカ目のイカは甲イカのような甲が無く、常に泳がないと沈む為である。従って甲イカは筋肉が発達せず、身も厚く軟らかい。

            弾力  食感         揚げる場合                     
     ツツイカ  10  刺身が最適   サット揚げる(180℃で30秒)
     甲イカ    5  テンプラ       飾りの切れ込みを入れて揚げる(170℃で1分) 
イカを焼くと丸くなる
イカを焼くと丸くなってしまうのは、表皮の下にある薄皮の繊維が縦方向に走っているためである。
その下にある筋肉の繊維は横方向に走っているので、焼いたイカは横方向になら楽に裂くことができる。
イカを焼くときは、焼き過ぎないようにしないとタンパク質のタウリンが減少してしまう。5分程度が一番タウリンの量が多い。

            烏賊船に きらきらと網 積まれをり    仲村 青彦
            烏賊干して 水平線を 斜めにす      田鎖 雷峰
            子持烏賊 一つ買い足す 棹秤       渋谷 雛子


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