日本の旬・魚のお話

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日本の旬・魚のお話
日本の旬   魚のお話(早春の魚-8)
金目鯛(きんめだい)
海に生きる金魚の様に、鮮やかな朱色で身を包んでいるのが金目鯛。海の中ではさぞ目立つように思われるが、深海では太陽光線の赤い色は吸収されて赤くは見えず、ほとんど黒い色に見えるようである。本当は地味な魚かもしれない。
伊豆地方では、真鯛の代わりに祝儀用の魚として使う時もあるが、最近はキンメダイ自体の味が良いことからさらに高値になり、キンメダイの代わりになる魚まで現れ始めた。
冬が脂ものってもっとも美味しい季節。
              金目鯛 煮て焼きてわが 小正月      動坂 典子 
命名
眼が大きく瞳孔(どうこう)が金色で、また、体色が鮮やかな赤ということもあってタイの代わりに使われたことから、こう呼ばれるようになった。
地方名
アカギ(三崎)・アカギキ(和歌山)
          ・・・・・・体色からの呼名。
アコウダイ(佐渡島)
カゲキヨ(尾鷲)・・・・・・・派手なところが平家の荒武者、悪七兵衛景清に似ている。
ギンメダイ(小田原) ・・・本来のキンメダイと同じように呼ぶ。
マキン(小田原)
英名 Alfonsino
キンメダイ目キンメダイ亜目キンメダイ科キンメダイ
3亜目7科28属約123種のグループを構成している。
   1.キンメダイ亜目・・・1科2属約9種
       キンメダイ属とナンヨウキンメ属(体高が高く平たい)
   2.ヒウチダイ亜目・・・5科18属約49種
       オニキンメ科
       ナカムラギンメ科
       ヒカリキンメダイ科・・・発光器をもっている魚もいる。
       マツカサウオ科
       ヒウチダイ科
         ※ヒカリキンメダイ科だけでなくマツカサウオ科、ヒウチダイ科にも発光器を持っている魚がいる。
   3.イットウダイ亜目・・1科8属約65種
       イットウダイ科
キンメダイに似た名前をもつ魚
1.ギンメダイ(銀目鯛)・・・・・ギンメダイ目ギンメダイ科。体色は青褐色で目の周辺が白く、銀色に光り、下顎に一対
                  の長いヒゲがある。小田原ではなぜか両方ともギンメダイと呼ぶ。
2.キントキダイ(金時鯛) ・・・スズキ目キントキダイ科。体色はキンメダイと同じであるが、ギョロ目が特徴。キントキ
                  ダイは源頼光の四天王の1人「坂田金時」からの貰い名。
     *「金時の火事見舞い」のことわざの語源
        真っ赤な顔をしている金時が火事見舞いに出掛け、火にあたってよけいに真っ赤になった様子を例えた
        もので、すなわち「赤い顔」の代名詞。
分布
東北から新潟以南の各地沖合深部、太平洋の東岸、インド洋、ニージーランド周辺や大西洋など、広く分布している。
水深200〜800mの中層から底層に生息し、底層水が上昇するような陸棚周辺部や海山の棚部に多く生息する。
形態
体高は高く側扁し、体長は体高の約2.5〜2.9倍。吻は尖って、餌を下から狙いやすい。眼は大きく、眼の前方には後方を向く鋭いトゲがある。尾ビレは大きく、その後縁は湾入してニ叉する。体や各ヒレは鮮赤色、体長は50cmにもなる。
産卵
産卵は夏から秋にかけて行われ、相模灘では8〜10月。産卵数は体長40cmのものなら30〜50万粒で、卵は球形の油球を一個持った分離浮性卵。
水温23℃なら2日間で孵化し、仔魚は仰向けになって海面近くを群れる。
しかし、3日もたつと卵黄吸収も終わり、腹を下にした正常な姿勢に戻る。仔魚は2.5mm前後。
成長
1年で15cm、2年で24cm、3年で40cm前後に成長する。4年頃になると産卵行動に参加する。未成魚は水深150〜250m層に多く、成長するにつれてさらに深部へ移動する。
成魚では、昼間は水深300〜600m付近に多いが、夜間は150〜300mまで浮上する。肉食で、ハダカイワシ類やエソ類などの底生魚を食べ、サクラエビや蛍イカなども食べている。
漁法と漁場
主にカタクチイワシなどを餌にした、立縄の一本釣りが主流であった。しかし、現在では鉤を数百本という単位で沢山つけた、底立延縄という効率のよい漁法になっている。一部では底曳網もある。
漁場は、伊豆諸島から鳥島に至る海域、四国海盆、九州からパラオ海嶺、南西諸島。
常磐物は主に網でとるので、500〜700gの小型。南伊豆の下田方面の物は2kgにもなる大物が多い。その中間が外房物の1〜1.5kgで、値も高い。
一発必中
餌の獲り方が変わっており、針につけたヒラヒラするエサを獲物の尾、動かないハリのほうを獲物の頭と思い、必ずハリを一気にくわえる。
キンメダイは不思議な魚で、水深500mから釣り上げても、鰾(うきぶくろ)が膨れてしまう「浮き鯛」と呼ばれる現象を起さない。
よって、釣り落とすと再び深海に戻って行く。この現象は、鰾と消化管とを結ぶ気道があるためと思われる。
深海で暮らせるのは
200mの深さにいるキンメダイの体は1cm2ごとに2kgもの水圧を受けているが、押しつぶされることはない。
なぜなら、キンメダイの体は体液と肉と骨格から出来ているからで、液体である体液や、固体である肉と骨格は外圧が加わっても体積が変わらないためである。圧縮されるのは気体だけで、素潜(すもぐ)りで人間が200mまでしか潜れないのは、肺や耳の中にある空気が押しつぶされてしまう為である。
黄金の眼
網膜の下に、タペータムと呼ばれるグァニンなどからなる物質の層があるためと考えられている。『釣魚大図鑑』によると、このグァニン物質は入ってくる光と出て行く光の両方を感じ取り、深海の暗い海の底に届く僅かばかりの光を有効に利用する働きをするとのこと。これが光を反射して金色の輝きになる。
食べ方
1kgぐらいのものがよく流通され、大きなものは切身や粕漬け、味噌漬けに加工される。300〜500gぐらいのものは開いて干したり、漬けたりする。
近年、キンメダイが高価になった為、ナンヨウキンメやアコウダイなどが代用に利用され、切身や粕漬けにされるようになった。これらは一般の人には見分けがつきにくいくらい似ている。
キンメダイの鱗は大きく硬いため、鱗が残っていると食べる時に口の中でかなり不快である。したがってこの魚を料理する時にポイントとなるのは、ヒレの下やカマの下などを見落とさないように、鱗を出刃の先や布巾を用いて丁寧にひくことである。
白身で脂肪分を多く含んだ冬場は、肉質は軟らかいが、煮付などにして火を通すと身が締り美味しい。
酒蒸しにすると、余分な脂肪が抜けてサッパリとした味になる。
頭やアラには身もいっぱいついており、ダシがよく取れることから、鍋物やブイヤベース、ムニエルにも向く。

             魚屋の 荷に雪降って 金目鯛      草間 晴彦
             セリを待つ 目玉大きな 金目鯛     野上 飛雲
             うしほ煮の 金目鯛の目 父に盛る    田中 美津子


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