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| 日本の旬 魚のお話（秋の魚-14） | |
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| 太刀魚（たちうお） | |
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| 旬 | |
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年中獲れるが、秋から初冬が旬である。 小骨は非常に多いが、骨離れが良く、塩焼きやフライ、バター焼きの他、味醂漬けの一夜干しなどにすると美味しい。 中国を始めとするアジア諸国やヨーロッパでは、日本よりも沢山食べるようだ。多分、油やバターを使った料理に合うからだろう。 釣りあぐる 海より太刀魚 引抜きて 村上 しゅこう |
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| 命名 | |
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潮流のゆるい所では頭を上にして立って泳ぐから「立ち魚」なのか、魚体が銀白色の太刀形をしているから「太刀魚」なのか。いずれも姿形からの呼び名。 『俳詣歳時記栞草』には、「状狭くして長し、薄くして削れる木片のごとし。また、長く薄くして尖れる刀の形の如し」とある。 |
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| 地方名 | |
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イトキリ(小田原)・・・・歯が鋭いので、釣り糸をたやすく切ることから。 ダツ(秋田)・・・・・・・・・ダツは炭俵や叺など口を広げて使う袋。口が大きいのが似ていることから。 ハクナギ(宮城)・・・・・体表が銀箔の様なため「箔(はく)ウナギ」の意。 タチノウオ(東京)・・・・太刀の魚。 タビノヒモ(摂津) ・・・・幼魚の呼名。足袋の紐の意で呼ぶ。 英名もCutlass fish(短剣魚)や Scabbard fish(鞘魚)と刀にゆかりの名が多い。 |
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| スズキ目サバ亜目タチウオ科 | |
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サバの仲間に近く、３２種ほどが知られている。 尾はヒモのような糸状になっており、歯は鋭くて大きい。上下のあごの先端には奥に向かって返しのついた犬馬があり、ちょっとふれただけでもカミソリで切ったように血が止まらない。あごの中には予備の歯があり、前列の歯が欠けるとすぐに生え変わる。このことから、「タチウオは歯を大事にする」と漁師たちは褒める。 日本ではタチウオとオシロイダチの２種類が知られている。 |
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| 分布 | |
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世界中の温帯から亜熱帯にすむ暖海性の魚で、その種類も２３種類ぐらいである。 主に北海道から朝鮮、オーストラリア、大西洋に分布しているが、南日本にも多く、餌となる小魚が多いためか瀬戸内海には特に多い。和歌山が日本一の水揚。 |
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| 産卵 | |
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南の海で越冬し、夏は本州中部まで北上して産卵する。晩秋には再び南下という回遊を行っている。 産卵場で大群があの長い体を垂直に立ててニョロニョロとさせている姿は壮観ではなかろうか。 卵は２mm前後で、産卵数は４〜５万粒と案外少ない。 |
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| 成長 | |
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１cmを越すぐらいになると、背ビレ前端に３本のトゲを持ち、尾部が伸び、親魚にない尻ビレも持つ。体長３０〜４０cmぐらいまでは、主にカニや多毛類などの底生生物の他、プランクトンを食べる。成長につれて魚類も食べるようになり、７０cm以上になると魚だけの食性に変化する。 夜行性で、夕方から夜分明けの間に上層に浮上する。凄い歯を持っているのだが、かたい殻のついたものは食べず、イワシやアジ、サバなど比較的柔らかいものを好む。夏から晩秋にかけて食欲が旺盛になると、時には共食いもするほどの食欲である。 |
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| 漁法 | |
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底延縄、底曳網、定置網などで捕えるが、魚体の痛みが激しく、魚価も安い。 一方、引縄釣りなどで釣って一尾づつ氷詰にするなど丁寧に取り扱ったものは鮮度も良く、魚体の銀色のハゲ落ちも少ない。 |
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| 上品な味 | |
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海産魚としては珍しくオレイン酸が多いため、脂が乗っていても蛋白で上品な味であり、関西人には好まれている。銀皮造りという、体表の銀箔を生かして昆布締めにした太刀魚の刺身は絶品である。 ビタミンＢ1やＢ2、Ｄの他に亜鉛や銅などのミネラルも多く、疲労回復や口内炎、味覚障害、骨粗ショウ症など幅広い効用があると言われている。 |
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| 真珠 | |
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太刀魚には鱗がないが、その体表は銀色のグアニン箔がむき出しで、体表にくっついている。昔はこのグアニンを集めて『タチハク』というものを作り、これをセルロイドで練ってガラス玉に塗った。かくして出来あがったものがイミテーションパールである。 太刀魚はこのグアニンが剥離すると、水槽に入れてもすぐに死んでしまう。 |
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| 江戸の小咄 | |
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ギラギラ光る抜身の刀をさげ、とある一軒家に「金を出せ」と強盗が深夜に押し入った。主人は恐ろしさに布団を頭から被って震えていたが、その時、足許に潜り込んで寝ていたネコが突然刀にとびかかった。飼い主の危急を救う為に身を挺して立ち向かうとは、なんとも感心なネコよと思ったが、よくよく見れば、強盗のさげていたのはタチならぬタチウオだった・・・。 |
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| 新田義貞 | |
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南北朝の武将「新田義貞」が引き潮を祈願して、稲村ヶ崎の海に投じた太刀の生れ変わりだという故事を詠んだ川柳がある。 太刀の魚 新田この方 出来るなり 稲村が 崎で取れるは 太刀の魚 |
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