日本の旬・魚のお話

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日本の旬・魚のお話
日本の旬   魚のお話(夏の魚-24)
縞鯵(しまあじ)
アジ類の中では味、姿形ともベストで、高級魚の中でもトップクラス。この魚が「幻の魚」とも云われているのは、庶民の手に届かない高嶺の花への羨望が込められているのではないか。
ブリなどよりおとなしい行動を示すが、釣り上げる時の手応えはなかなかのものである。また、口が弱いことから、ゆっくり釣り上げるのが釣り師の腕の見せどころでもある。
大型のものはやや脂肪が強すぎるが、1〜2kg前後の中型物は、淡いピンクから乳白色の上品な肉質で刺身に最高。夏が旬。

         鯵舟の ただよい出づる 潮境        原田  しずえ
命名
潮通しのよい沿岸岩礁域や島嶼(とうしょう)周辺でよく獲れて知られる様になったことから「島」を表すという説と、幼魚の時に体側に走る鮮やかな黄色い縦縞があるため「縞」を表すという二つの説がある。
『魚鑑』では、「状アジに似て全身マナオのごとし、料理人もっとも重んず」と評価しているが、『本朝食鑑』では「味は佳よくない、もっとも下品である」とあり、『大和本草』でも「味は劣る」と、評価が低い。
地方名
姿形からカツオアジ(鹿児島)、コセアジ(高知)、ヒラアジ(熊本)、シマイオ(浜名湖)と呼ばれている。また、東京ではシマアジの大物をオオカミと呼ぶ。英名のJackは、水夫など威勢のいい若者の俗称に用いられ、その名から生きのよい力持ちという印象がある。
   英名 Guely jack & Striped jack
スズキ目アジ科シマアジ属
仲間のなかで体形がそっくりなのがカイワリ(貝割)で、シマアジよりも体高が高く、色がやや淡い。味はシマアジに似ていて高級魚である。
北海道や北陸、大阪などでは、このカイワリをヒラアジ、またはメッキと呼んでまぎらわしい。
その他にはクロヒラアジ(かっぽれ)、ナガエバ(ぎんがめあじ)、オキアジ等。
分布
オーストラリア南岸やニュージランド、ハワイ諸島、大西洋、地中海、南アフリカなど、東部太平洋を除く暖海に分布する。
日本では岩手県南部の太平洋岸と、沖縄や小笠原近辺、能登半島以南の日本海に分布。
春から夏にかけて北上し、秋から冬にかけて南下する南北回遊を行う。
水深200m以浅の中下層に生息するが、特に潮の速い水深50m前後の沿岸に多い。
また、体長20〜30cmの若魚は、水深5〜10mの岩礁周辺を40〜50尾で群泳していることがある。眼はよくコントラストの強弱に敏感に反応する。
形態
体高が高い楕円形で、タイの様に平べったい。背中は銀青色、腹部は銀白色で、口先から尾にかけて一本の黄色い縦縞が走る。この黄色縦帯は老成すると不明瞭になる。また、鰓蓋(えらぶた)の後端に眼径ほどの目立つ黒色斑があることがこの魚の特徴。
尾柄にゼイゴと呼ばれるギザギザのウロコを持つことで、マアジの親戚であることがわかる。
この魚の口が少し伸びるようになっているのは、砂の中にいる餌を砂とともに吸い込んで鰓で濾して食べるため。体長1m、体重10kgに達する。
産卵
オスがメスを追っかける追尾行動から始まり、メスが産み落とした卵にオスが放精するという体外受精。
産卵期は水温が20度前後に降下する時期で、卵は直径0.9〜1mmの分離浮性卵。孵化するのは、20〜22℃なら産卵後40時間。
成長
孵化直後は全長2〜3mmで、50日後には10倍の大きさに成長し、親と体形が似てくる。仔稚魚は流れ藻などに付いて成長し、1年で18cm・170g、2年で30cm・800g、3年で40cm・2kg、4年で45cm・3kgに達する。生後3〜4年で体重2〜3kgに達すると成熟個体となる。
食性は肉食で、カタクチイワシやマイワシ、キビナゴなどの魚類のほか、小型のエビ類やアミ類も食べる。魚礁にもよく付き、周辺に群がる子魚やアミ類を集団で捕食する。
また、若い魚の群れは水深5m前後の浅い沿岸の砂底域にも出現し、口から水を吐いて海底の砂を巻き上げ、底生生物を捕食する。
18℃以下では摂餌行動が落ち、15℃以下では食べない。また、12℃以下の水温が長期に渡ると斃死する。
漁法
釣りまたは定置網。釣った魚を持ち帰る時は、体表を乾かさないようにすることが大事だが、真水がつくと色が悪くなるので、海水を含ませた布などに包むとよい。
養殖
1988年1月4日のサンケイ新聞では、日本栽培漁業協会が、「シマアジを人工孵化させ稚魚を育てることに成功し、その成果で高嶺の魚もいずれ庶民の食卓にのぼる見通しになった」という朗報を伝えている。
養殖技術のポイントは餌の投与回数を多くすることにあるそうで、これは、シマアジの胃が小さく、ため食いが出来ない消化器官の為。だから小型の魚ばかり狙うのであろう。
現在養殖用稚魚は約200万尾で、水揚げ高も約2500トンとなっている。
美しいが弱い体表
この魚は丁寧に扱わないと難しい。例えば、人工授精をするために親魚から採卵や採精をする場合、魚体をウレタンフォームで保護して腹部を圧迫するのであるが、シマアジの場合、かなり丁寧に扱っても2〜3日後には体表が赤くただれた状態になり、斃死することも多い。
発達したレーダー
シマアジの側線はよく発達しており、仲間の遊泳振動や外敵が近づいてくる時の遊泳振動など、低周波の振動に敏感である。
また、夜間の遊泳姿勢は昼間と異なり、体を前方に傾けて泳いでいるが、これは前方の外敵の遊泳振動をキャッチしやすくしていると思われる。
食べ方
頭が体の割りに小さいこともあり、食べる部分が多いので、料理の専門家には特に珍重されている魚である。
刺身や鮨種にするのが一番美味しく、生姜を薬味にすると格別である。
ミリン、酒、醤油のタレに漬け込んだものを島膳風に握ったり、丼物のネタにする。塩焼きや付け焼きにも適している。


           鯵裂いて 水の匂ひや 男の手       惣之助
           鯵くふや 夜はうごかぬ 雲ばかり     楸邨


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