日本の旬・魚のお話

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日本の旬・魚のお話
日本の旬   魚のお話(夏の魚-14)
赤舌平目(あかしたびらめ)
旬 
魚の仲間としては、なかなかユニークな体つきをしている。
ヨーロッパでは「魚の女王」といわれるほど珍重され、中でもフランスでは舌平目の料理というのは欠かせない存在で、バター焼きやムニエルは高級料理。在来の魚料理は嫌いなヨーロッパの人でも、舌平目の料理だけは好きという人も多く、日本でも、海外旅行が盛んになるにつれて人気が出てきた魚である。
ほぼ年中獲れ、しかも味はあまり変わらず、白く淡白な身であっさりとした味わいのある魚である。夏から秋が旬であり、クロよりアカのほうが身が厚く美味しい。
冬の瀬戸内では、漁港や底引網漁船の上で寒風にさらされた半乾きの「干ゲタ」を火であぶって食べ、これがなかなかの絶品である。しかし、なかなか手には入らない。

               舌鮃 ひらたく水に 洗はるる     宮城 信行 
命名
牛の赤い舌のような平たい魚の意で、ウシノシタ科は両眼が左側にあり、平目の仲間という意味合いもあるのだろう。
『魚鑑』にも、「一種 舌平目、一名 靴底 また 牛の舌ともいう。状牛舌及び靴底に似たり、味わいよしといえども、下品にして類せず」と記されている。また『本草綱目啓蒙』には、「早く腐る下品の物、故に京には入荷しないが味はよい。宮廷女官の日記には、腐りが早くて下品なので、天皇にはさしあげなかった」との記載がある。
地方名
各地の呼名は舌と履物に関するものが多い。
丁銀鰈(チョウギンガレイ)(山陰)・・・丁銀というナマコ型をした江戸時代の銀貨に似ている為。
ベタ・ビタ(高知)・・・・・・・・・・・・・・・・・扁平なものを方言で「ベタ・ビタ」という。この魚が薄身で平らかなことから。
ゲタ(瀬戸内)、イゲタ(和歌山)、ゾオリウオ(山形)、ジョオリッカ(神奈川)
                   ・・・・下駄や草履の形に似ていることからの命名。
クツゾコ(佐賀)、クシゾコ(熊本)、クッチョコ(福岡)
                   ・・・・靴の底に似ている為。

英語では、ササウシノシタ科(両眼がカレイと同じ右側にある)をSole(靴の底)といい、ウシノシタ科をTongue(舌)fishと区別して呼んでいる。フランス料理に出てくる舌平目は、ドーバー海峡で獲れるドーバーソール(ササウシノシタ科)で、ムニエルの料理に使用するのが一般的。
   英名 Red Tongue sole      
カレイ目ウシノシタ科イヌノシタ属アカシタビラメ
舌平目はカレイ目のササウシノシタ科とウシノシタ科に属する総称をいう。
  ササウシノシタ科・・・31属117種あり、日本では1属15種生息している。両眼がカレイと同様に右側にある。
               シマウシノシタ、ササウシノシタ、ツノウシノシタ、ミナミウシノシタ、ドーバーソールなど。
  ウシノシタ科・・・・・・・3属103種あり、日本では3属20種が生息している。両眼がヒラメと同様に左側にある。
    イヌノシタ属・・・・・・・・・・赤舌平目、大舌平目、南赤舌平目、犬舌平目など。
    タイワンシタビラメ属・・・黒舌平目、台湾舌平目など。
    マズマ属
分布
関東、新潟以南から東シナ海に分布し、水深100m以浅の砂泥底、特に内湾の水深20〜50mに多く生息する。
クロシタビラメはやや北の北海道以南から生息している。
形態
体は楕円形で、背ビレと尻ビレが繋がった形になっている。有眼側の左体側は赤褐色で、無眼側は白色である。
普通の魚は口が先頭になっているのに対し、舌ビラメの顔では小さな両目のすぐ横に口が並ぶというユニークさがある。
これも、砂や泥の海底でゴカイやエビ、カニ類などの餌を獲るには、便利なスタイルなのだろう。
胃は小さくて食いだめ出来ないが、消化力が強く、胃が破れると消化液が漏れて肉が腐りやすくなる。鮮度を保つことが出来なかった昔では、これがあまり食べられなかった理由だったのかもしれない。
産卵
産卵期は夏で、若狭湾周辺では7〜9月に産卵する。卵は直径0.8mm前後の球形の分離浮性卵で、孵化後の仔魚は浮遊生活を送る。
成長
体長6mm前後の仔魚は、普通の魚と同じスタイルをしている。体長10mm前後から体が側扁し始め、浮き袋も縮小し、やがて消失する。
日本では、夏から初冬にかけて浮遊仔魚が沿岸に出現する。16mm前後で右眼の移動が完了し、この段階で成魚と体形も同じになり、胸ビレは消失する。
生後1年で体長10cm、2年で14cm、3年で17cm、4年で21cmに成長し、15cm前後から成熟し始める。夜間に、鋭い臭覚でゴカイなどの多毛類や、小型のエビ、カニ類、二枚貝などを食べて成長する。
眼の移行
仲間のヒラメやカレイのように眼が背側を回るのでなく、眼の移行直前に額の部分が垂れ下がって狭い一空間を作り、眼は短時間の間にここを通過する。そして、移行した翌日には、この空間が消失してしまうという不思議さである。
漁法
定置網か底曳網で、クロシタの方が漁獲量が多い。
食べ方
舌ビラメは目が小さいので、鮮度の判断には、ヒレが切れぎれになっていないか、また、腹が切れていないかを目安にする。皮は硬いため、頭の端に切れ込みを入れ、指に塩をつけて尾のほうに引っ張ると、スルリとめくれる。下ごしらえの時に塩とコショウで締めたあと、牛乳を少量ふりかけておくと、生臭みが消える上に焼き色もよくなる。
  ムニエル(仏語で「粉屋風」の意味)
    1.下ごしらえした舌ビラメを火にかける直前に小麦粉をまぶし、余分な粉を十分はたいておく。
    2.フライパンにサラダ油をひき、舌ビラメの目のある側から焼き、両面をこんがり焼きあげる。
    3.フライパンの油を除き、バターを熱し、焼いた舌ビラメをからめる。仕上げにレモン汁をふって食べる。
煮付も上品な味があり、また、佃煮のあめ煮にしても美味しい。
  舌平目の五目煮・・・・クズ粉を付けて揚げ、筍などと煮込んだ料理。
その他では、クリームソース添え、ワイン蒸し、グラタン、フライなど。


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