日本の旬・魚のお話

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ワタリガニ
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日本の旬・魚のお話
日本の旬   魚のお話(冬の魚-3)
渡蟹(わたりがに)
全体的に暗褐色だが、ハサミや甲羅の端々には濃い紅や白い斑点があり、脚の節にはうっすらと青も混じってなかなか美しい蟹である。これを茹でると、表側は殆ど朱色に、対照的に裏側は真っ白となり、また違った魅力が出てくる。
ズワイガニやタラバガニ、毛ガニは主に脚の肉を食べるが、ワタリガニの脚には身が少なく、胸肉、すなわち脚の付根の肉を食べる。白く美しい身の成分は車エビと似ており、二杯酢につけて食べると、ほの甘い肉汁が口中に広がってえにもいわれぬ口福を感じるのである。
春から初夏にかけて、メスの甲羅の中には卵巣が充満し、最高のカニミソが楽しめる。秋は交尾後の太ったオスが、冬は再びメスが旨くなる。
                 岩伝う 水上走り がざめの子         松瀬 青々
命名
標準和名はガザミだが、「ワタリガニ」の呼び名の方がよく知られている。ボートの櫂のような第5脚を巧みに操って泳ぎ、遠くへ移動することからの命名。
また、このカニは月夜に群れをなして泳ぐことから「月夜ガニ」とも呼ばれたり、形から「菱ガニ」と呼ばれたりもする。
「ガザミ」とはカニのハサミの略語で、ハサミを意味するカサメの転訛とも云われてる。『本朝食鑑』には、「一つのハサミは大きく、一つのハサミは小さいので、いつも大きいほうのハサミで闘い、小さい方で物を食べる」とある。
ワタリガニを食用としたのは弥生時代にさかのぼるとのことから、それだけ手に入りやすいところに生息していたことが想像される。
    英名 Swmming crab , Blue crab 
ワタリガニ科ガザミ属ガザミ
仲間には、近縁種で甲の表面に白色の雲状模様がある「台湾ガザミ」と、白く縁どられた3個の紫色の斑紋がある「蛇の目ガザミ」がある。甲長14cm、甲幅20cmにもなるワタリガニ科最大の「鋸(のこぎり)ガザミ」も仲間で、この蟹の肉は多いものの、大味である。
また、甲が硬いので脱皮したてのカニを丸ごと食べる「青ガニ」は、アメリカで人気があり、ソフトシェルと呼ばれている。
以上が食用種として重要で、その他の仲間には、通称マルガニと呼ばれ、甲羅の中央にHの字に見える溝があってエッチガニとも呼ばれる「平爪ガニ」がいるほか、味は良いが小型で肉の量が少ない「石ガニ」、紋付石ガニ、赤石ガニ、縞石ガニ、小紋ガニ、目長ガザミなど。                
形態
ワタリガニ科共通の特徴は、最後の第4歩脚がヒレのように扁平になっていることで、これを遊泳脚という。
ワタリガニの甲は横長の菱形で、甲の前側縁は三角形の8棘が並び、第9棘は長大で側方へ突き出ている。オスは青みが強い色で腹部の幅が狭く、俗にフンドシという腹蓋も狭い。
逆にメスは腹部の幅が広く、同じように腹蓋も左右に広くて丸みがあるので、容易にオスメスの見分けが出来る。
メスの方が大きくなり、大きいものでは甲幅が25cmにも達するものもある。
分布
青森県以南の日本や韓国、台湾、中国大陸などの沿岸に分布する。棲息水温は7〜35℃の夜行性で、季節的な鉛直移動を行い、夏季は沿岸や水深40m以浅の湾内の海底に棲息し、冬季には沖合や湾外の深場に移動する。水温が14〜15℃に低下すると摂餌活動を停止して砂の中に潜り、水温が10℃前後に上昇するまで冬眠する。
産卵
丸1年で成熟し、交尾は水温の降下期である秋に行なわれることが多く、相模湾では9月が盛期となる。
交尾期のオスは、メスが脱皮して軟甲になるまで歩脚を用いてメスを背後から抱える。オスがメスを抱かえてからメスが脱皮するまでの期間は通常2〜5日であるが、10日間もそのままの体勢で過ごすことがある。
やがてメスが脱皮すると、オスはメスを仰向けにして上に乗り、歩脚でメスを抱えながら交尾針をメスの生殖孔に差し込んで、精夾というカプセルをメスの体内に送り込む。
その後、オスはメスの生殖孔をセメント様の物質で塞ぐ。産卵は初夏から夏に行われ、5〜6月に生まれるのが一番仔、7〜8月に生まれるのが二番仔で、送り込まれたカプセルは半年以上もメスの体内で保管される。産卵場所は内湾の水深10〜30m前後で、藻場周辺の砂泥底。一般に産卵は夜間に行われ、卵は産卵時に受精する。産卵数は80〜450万粒である。
成長
産卵した卵はメスの腹部内の内肢に付着して卵塊となる。卵の色は黄橙色から灰黒色に変化し、20℃前後なら2〜3週間程度で孵化する。孵化は夜半以降に行われる。
孵化直後の幼生ゾエアは11〜17時間で4〜5回脱皮し、メカロパ幼生に変態し、約1週間で稚ガニに変態する。
稚ガニは昼間、中層から上層に浮き上がって遊泳し、成長するにつれて軟泥質の海底から砂泥底へと生息場所を変え、秋には甲幅が15cm前後に成長する。
瀬戸内での一番仔は、11月頃までに18cm程となり成熟する。9月頃に孵化する二番仔は7cm前後で越冬し、翌年9月頃には25cmに成長する。
肉食性で、多毛類や巻貝、二枚貝など底生の小動物を食べる。寿命は約2年で、二番仔の幼生を放した後に我が子を見守るかの様に死ぬ。まれに生き残るメスもある。この間の脱皮は10〜15回行われる。
漁法と供給量
漁獲量は3〜4千トンで、輸入量は約1万トン。内、活ガニはその2割程度で、中国からのものが6〜7割を占める。
晩春から水温の下がる秋まで、底刺網や底曳網、カニ篭漁が行われる。
8〜10月が盛期で、夏は脱皮する個体が多く、身肉が少ない上、味も良くない。交尾後の深場へ移動する秋以降が美味しくなる。
栽培漁業
昭和12年に卵から稚ガニまでの飼育に成功し、昭和30年代後半からは各地で種苗の大量生産が行われるようになり、3〜4千万尾以上の種苗を放流している。放流サイズは甲幅約1cmで、共食いが激しいため、中間育成を行わないことが多い。
カニの紅色
エビ同様に茹でたり焼いたりすると赤変するのは、甲羅の中のアスタキサンチンがアスタシンに変化したからである。死んだ状態で空気に触れたり、食酢に漬けてもアスタキサンチンは酸化されて鮮やかな赤色となる。
自切
敵から身を守るのに、自ら脚を切り落として逃げることを自切といい、数ヶ月で再生する。ワタリガニは自切しやすく、活きがよいものほど自切する。そこで、輸送中に自切しないようにカニをゴムなどで縛っておく。
カニの脳震盪
活ガニを茹でる時、自切しない様にするため、カニの口の部分をまな板などに打ちつけて脳震盪を起こさせる。カニが回復しないうちに熱湯に入れれば、湯の中で暴れて自切することはない。
カニの口を打ちつけるのは、口の部分にカニの脳にあたる口部神経節があるためである。
俗諺
月夜ガニ・・・・・・・月夜のカニには身が少ないということから、中味がからっぽ、つまり頭が空っぽな人をいう。
カニは食うともガニ食うな
        ・・・・ガニはカニのエラの部分のことで、食べられない部分をいう。
カニの横這い・・・カニは横に歩く。他人から見ると不自由のようであるが、本人は一向に気にならないことの例え。
カニの念仏・・・・・口の中でブツブツつぶやくことの例え。
カニの旨味
旨味の主成分は、グリシンという甘味の強いアミノ酸と、ベタインという甘味のある旨味成分による。一般にメスよりオスの方が旨く、エキス分が10倍も多い。
食べ方
カニ類は自己消化が早いので、活きているものを入手するというのが美味しく食べるための条件である。また、脚が抜けていると茹でる時に水が入り、味が落ちる。手に持ってずっしりと重量感のあるものを選ぶのがポイント。
  茹で・蒸し・焼ガニ
    カニは一般に茹でるより蒸した方が、さらに蒸すより焼ガニの方が、エキスが逃げなくて美味しく食べられる。
    茹でる時は脚をゴムで縛るが、脳震盪を起こさせて、塩分2%程の沸騰した湯で25〜30分茹でる。茹で過ぎ
    ると身が固くなり、味もぬける。蒸す時は必ず仰向けにして30分程度蒸す。身は二杯酢か三杯酢で食べるが、
    焼ガニの時はレモン汁の方がレモンのクエン酸と揮発性の香気成分によって風味が増し、美味しい。甲羅の裏
    側には「みそ」と呼ばれる黄褐色の肝臓があり、独特の旨味をかもし出す。また、卵も朱色か橙色でねっとりと
    ほくほくして美味である。更に甲羅に熱燗を注ぎ、甲羅酒にしてもよい。
  鍋物や味噌汁
    具にぶつ切りにして入れると、こくのある味がよく出る。
  洋風料理
    ホワイトソースとの相性がよい。主に味噌を使ったクリームスープにする。
  中華風料理
    ぶつ切りにして炒め物や揚げ物にする他、甘酢に唐辛子などの香辛料を加えたタレなどを絡めて調味する。


              飲む方が おろそかになる 蟹の足        肖 五
              蟹料理 妓が剥いて 世帯じみ           源 氏
              雪を来て 胃に突き抜ける 甲羅酒        寿 夫


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