日本の旬・魚のお話

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日本の旬・魚のお話
日本の旬   魚のお話(夏の魚-22)
鯣烏賊(するめいか)
世界中で獲れるイカの四割以上は日本人の胃袋におさまっているほど、日本人はイカの愛好家である。
そのイカが貝の仲間だということをご存知だろうか。アンモナイトを祖先にもつ、「生きている化石」といわれるオオムガイは、イカやタコに最も近い親類筋にあたる。
イカの中にある、舟と呼ばれる石灰質で出来た甲羅は、貝類の名残りとのこと。スルメイカには三つの季節群があって季節を問わず獲れるので、「本朝食鑑」には、「江海のいたるところ、季節をとわず獲れる。春(2〜3月)から秋(7〜8月)にかけて最も獲れる」とある。
               生烏賊や 世は白妙(しろたえ)に ころもがえ       森川 許六(きょりく)
命名
「するめ」に利用されるイカ類の中で最も多く使われるからという説と、イカやタコといった墨を吐く群を「墨群(すみむれ)」と呼んでいたところから転じたという説がある。
「するめ」を水商売で「あたりめ」と呼ぶのは、財産やお金を使い果たす「擦る」という語意に通じて縁起が悪いから。
「寿留女(するめ)」の字を充てるのは、嫁いで来た花嫁が永く留まってくれるようにとの願いが込められたもの。
イカの足の数が多いことと金銭を意味する「おあし」を懸け、商売繁盛を願って「するめ」を贈る習慣もある。
地方名
マツイカ(長崎・下関)・・・下関近海の底曳網の漁師が呼んでいた。
マイカ(北海道・三陸)・・・一番多く獲れるイカから。
ムギイカ(伊豆)・・・・・・・・黒潮や対馬暖流に乗って北上し、伊豆では麦の収穫時に多く獲れることから。
ガンゼキ(長崎)
英名 Japanese common squid
県の魚
静岡県では「旬の魚13種」で8月の魚として、石川県では「四季の魚6種」で夏の魚として、長崎県では「県の魚12種」で春の魚として、それぞれ選ばれている。
形態
外套膜(がいとうまく)は円錐形で、後方は細く尖っている。ヒレは正方形に近い菱形で、眼は開眼型、軟甲は細い。腕の吸盤は2列で、大吸盤内の角質環には鋭い歯が6〜14個程存在する。全体に赤褐色で外套膜背部は濃色。
頭足綱ニ鰓亜目ツツイカ目アカイカ科スルメイカ
世界のイカ類漁獲量では本科のものが最大で、我国においても同様である。主なアカイカ科の仲間は以下の通り。
  1.アカイカ(ムラサキイカ)
                 ・・・・全身が赤っぽいから呼ばれるが、背中の色が濃いことから紫烏賊の名が通ってい
                    る。全世界の漁場から南北20度まで分布する。4kg以上にもなり、ロールイカとして
                    販売。
                       イカのサイズと漁期
                         SS群(外套長20cm以下)・・・晩秋
                         S群 ( 20〜25 )・・・・・・・・冬
                         L群 ( 30 )・・・・・・・・・・・・・春
                         LL群( 40 )・・・・・・・・・・・・・SS群の越冬群でメスのみ
  2.アメリカオオアカイカ・・・・南米ペルー沖に分布、1m近くになる巨大種。
  3.ニュージランドスルメイカ(ニュージランドマツイカ)
                 ・・・・日本のスルメイカと見分けが付かない程よく似ており、外套長は40cm。
  4.アルゼンチンイレックス(マツイカ)
                 ・・・・パタゴニア沖を中心に分布し、スルメイカに似ており、外套長は30cm。
  5.カナダイレックス(マツイカ)
                 ・・・・ニューファンドランド島周辺で獲られていたが、アルゼンチンイリックスの方に漁業の
                    主体が移ったことから、現在日本船は漁をおこなっていない。
  6.ヨーロッパイレックス ・・・・ヨーロッパからアフリカ沿岸とアメリカ東岸に分布。外套長は30cmで、カナダイレッ
                    クスに似ている。
  7.トビイカ・・・・・・・・・・・・・・・驚いた時に海面上を滑空するイカで、太平洋からインド洋にかけて暖海に散らばっ
                    て分布するので漁にならず、また、筋肉も硬く市場価値は低い。
分布
千島列島周辺から朝鮮半島、東シナ海に分布する。日本では北海道から九州にかけての沿岸各地に棲息する。
棲息の適温は15℃前後で、昼間は水深100m層にいるが、夜間は表層まで浮上する。
季節群
三つの季節群があるが、棲息場所や産卵場所が重複しており、それぞれ独立した集団かどうかは定かでない。
   秋期発生群(産卵期9〜11月)
         九州西方域で発生し、日本海沖合を中心に分布する。成熟サイズは27〜33cmと大型で、日本海側
         に大きな群で分布する。
   冬期発生群(産卵期1〜3月)
         東シナ海を中心に発生し、黒潮に乗って三陸沿岸や道東にまで分布する。成熟サイズは24〜27cm
         と中型で、資源量や回遊規模は最も大きい。
   夏期発生群(産卵期は日本海中部7〜9月、西南部6〜8月、九州西岸5〜7月)
         小規模で、主に隠岐から能登にかけての日本海に分布する。15〜23cmと小型。
日本一周の大旅行
冬生まれ群の中には、反時計回りに太平洋−オホーツク海−日本海−東シナ海と日本列島を一周するものがいることが、96年の標識放流調査の結果から明らかとなった。
産卵
オスはメスよりも2〜3ヶ月早く成熟するため、交接行動は産卵の2〜3ヶ月前に行われる。
交接は、まず雌雄が表層に浮上して活発に遊泳し、相互に接近して体を平行に重ね、腕を絡め合い、次いで頭部を下にしてゆっくりと旋回しながら沈んで行く。
交接は3〜10秒で終了する。この間に、オスが精子の入った精夾(せいきょう)というカプセルをメスの口の周りに植え付ける。
卵は直径0.8〜1.0mm、短径0.7〜0.8mmの球に近い楕円形。3〜4000粒程が、直径30〜80cm程のゆるい寒天質の透明球体に包まれて産出される。
この寒天質の卵塊は中層浮遊性で、海の中層に浮かんでいる。1つの卵塊を産出する時間は約2時間以内。外套長25〜30cmのイカで30〜47万粒を数回に分けて産卵し、産卵を終えたイカは一生を終える。
成長
水温15〜20℃の4〜5日で孵化する。稚魚の外套膜は1cmで、3ヶ月で4cm、6ヶ月で19cm、8ヶ月で22cmに成長。
秋期発生群が最も大型になり、メスの方が成長もよく、平均して1cm程大きい。
餌は、オキアミやヨコエビ類などの浮遊性の甲殻類、ハダカイワシ類やイワシ類の小型魚類で、時には共食いもする。
イカの食事
10本の腕をコウモリ傘をたたんだ様にして、まるでロケットのように直進し、瞬間的に2本の触腕の吸盤で捕え、残りの8本の腕でしっかりと抱きしめる。
捕らえた魚の後頭部を固いクチバシで一気にかじり、脳から脊髄への神経系を瞬時に切断してしまう。こうすれば魚は腕の中で暴れることも出来ない。
さらに、あまりにも大きな魚の場合には、まず最初に頭の固い部分だけきれいに切り取ってポイと捨て、残りの肉の部分をコツコツかじりながら食べていく。時には脊髄骨や尾の部分も食べずに捨ててしまうことがある。
イカ同士の共食いでも、美味しそうな胴体部分だけを食べて、耳(ひれ)の部分と腕の部分を捨ててしまう。
漁法
光に集まる習性を利用して集魚灯で誘い、全自動釣り機によって流れ作業式に漁獲されるのがほとんどである。
シーズンとなる夏の日本海上は、人工衛星のカメラにもはっきり捉えられる程の明るさで不夜城が出来るといい、シャンデリア漁と呼ぶこともある。
他には底曳網や定置網、刺網漁もある。
イカの寿命
魚の鱗や耳石に刻まれた成長輪を読み取ることで、その魚が何歳であるか判ることをご存知の方は多いと思う。
魚類と同じ機能を持つ石がイカ類にもあることが判った。その石は頭部の平衡胞(へいこうほう)の中にあり、平衡石とよばれている。
平衡胞はイカの加速度を検出し、平衡感覚を司るが、その中にある平衡石は加速度のセンサー的役目を果たしている。その石から、一部のイカを除き、ほとんどのイカの寿命が1年であることが判った。
ドスイカの寿命は4年と長いが、これは水温が氷のように冷たい北太平洋に棲息することで長寿命なのかも知れない。
日周鉛直移動
アカイカは、日の出と日没という明るさが大きく変化する時間帯に大きな潜行や浮上を行う。昼間は水深200〜700m、夜間は40〜70mの水域に移動するこのような行動を「日周鉛直移動」と呼んでいる。
イカは、日周鉛直移動からもわかるように、10℃以上という水温の差や数気圧もの水圧の変化に耐え、水深550mという真暗闇の中でも行動出来る特殊な能力を持っている。これらは餌をとったり、身を守る為の行動であろう。
編隊飛行
危険から逃避するために、小型のアカイカ、トビイカ、タコイカ、スジイカ、ツメイカなどは60m〜70m滑空する。
その形は先尾翼形式で、主翼は足を広げて作られた膜状の折りたたみ翼を使い、初速をつけるジャンプは水の噴射によるジェット推進であろう。
塩辛
身肉を細かく切って塩を振り、肝(肝臓)と和えて自己消化させた塩蔵品。
   白造り・・・・皮を剥いた胴の部分だけを使ったもの。
   赤造り・・・・皮を剥がずに作る。
   黒造り・・・・墨を混ぜて作ったもので、ホタルイカで作った富山産が有名。
   沖造り・・・・漁師が沖合で獲ったイカを、生きたままタレの中に投げ入れ、漁が終わった後に飯のおかずにして
          いたもので、最近では酒、みりん、醤油などで味付けしたタレの中に漬け込んで作られる。
スルメ
スルメの表面に現われる白い粉の中にはアミノ酸が豊富に含まれ、特にタウリンやプロリン、アルギニン、グルタミン酸、アラニンが多く、これらがイカの味を形成している。
このため、口の中で唾液とともに溶け出し、噛めば噛むほど味がでてくる。白い粉はイカの味の源。
   水スルメ・・・・・・ミズイカとも呼ばれるアオリイカで製造。高級品である。足・内臓を抜いて丸まま仕上げた丹後
             宮津の「袋するめ」が有名。
   笹スルメ・・・・・・ヤリイカで製造。身も薄く、細いことからの名。皮とヒレを取り去ってあるため、全体に白っぽい。
   剣先スルメ(一番スルメ・五島スルメ)
          ・・・・九州を中心に製造され、品質は最も良い。現在ではベトナムやタイ産のものが主力に出まわっ
             ている。
   二番スルメ・・・・北日本で多く獲れるスルメイカの加工品で、皮とヒレがそのままついている為に飴色となり、ず
             んぐりとした形から「お多福するめ」とも呼ばれる。剣先スルメと違って、白い粉の吹いたものよ
             り、飴色のほうが評価が高い。
   甲付スルメ・・・・瀬戸内沿岸での甲イカの加工品。味は剣先スルメに次いで美味。


      舟歌   (作詞 阿久 悠)
                 お酒はぬるめの燗がいい  肴はあぶったイカでいい
                 女は無口なひとがいい   灯りはぼんやり灯りゃいい
                 しみじみ飲めばしみじみと 想い出だけが行き過ぎる
                 涙がポロリとこぼれたら  歌いだすのさ舟歌を


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