日本の旬・魚のお話

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日本の旬・魚のお話
日本の旬   魚のお話(夏の魚-2)
猿蝦(さるえび)
西日本、特に瀬戸内海では「カワツ」と呼ばれて漁獲量が多く、関東における芝エビのように関西ではよく料理に利用されてきた。
林凱夫(1974)によれば、「サルエビは近縁のアカエビなどに比べ環境汚染などに伴う周辺の環境変化にも強い」と報告されている。
初夏から晩秋にかけて旨味が増してくる。鮮魚売場に豊富に並ぶエビの90%以上が輸入物の中で、前浜物として貴重な食材である。
               生きて逞し(たくま) 茹(ゆ)でてめでたし 海老の色      蓮 夫
命名
全体に赤味が強く、猿の顔を連想させるため、この名が付いたといわれる。
地方名の「カワツ」については、「カワ」は体皮、「ツ」は魚を表す語で、体皮つまり甲羅の硬い魚の意と思われる。
英名 Southern rough shrimp
十脚目長尾亜目クルマエビ科サルエビ属サルエビ
エビ、カニ、ヤドカリ類などの十脚目は約8300種あり、エビは尾が長いので長尾亜目、横長なカニは短尾亜目、腹尾部を巻貝の中に入れて生活するヤドカリは異尾亜目に分類されている。
また、長尾亜目には、遊泳型のクルマエビやコエビ類の甘エビ、ボタンエビなどと、歩行型のイセエビ、ザリガニ類がある。
エビは2300〜2800種あり、日本近海では450種あるが、商業漁獲対象となるのは約180種にすぎない。
クルマエビ科は14属120種あり、サルエビ属は18種が知られている。内訳は、インド西太平洋海域に11種、東太平洋に5種、大西洋に2種棲息している。
形態
全体に赤味が強い体色を持ち、体長は11cm程でオスはやや小さい。甲羅は硬く、体表は細かい毛で覆われている。頭部の角のような部分である額角(がっかく)はやや上に曲がり、上縁に6〜8棘がある。
エビの特徴
昆虫と同じ節足動物であるが、昆虫の頭、胸、腹の3部に対し、頭胸部と腹部の2部から成っている。
頭胸部の前方に突き出したギザギザした棘のある角は額角といい、泳ぐエビ特有のもの。頭胸部には8対の脚があり、うち前方の3対は、口に餌をとり込む時に手の働きをし、後5対の脚は胸部にあって歩脚の働きをする。また、腹部にある5対の脚は遊泳肢である。
エビの口は頭胸部の下側にあり、口には人間の前歯に似た一対の白い歯がある。
分布
西太平洋からインド洋に広く分布する。また、スエズ運河を通って地中海にも進入している。日本では仙台湾以南の太平洋沿岸、特に瀬戸内海に多く棲息する。
内湾では水深20〜30m、外海では水深50m以浅の砂泥底や泥底に棲息する。棲息水温は7〜29℃。
産卵 
産卵期は春から秋で、仙台湾では7〜9月、瀬戸内海・有明海では6〜10月。
親は産卵後まもなく一生を終えるが、サルエビには体の大きな長期世代(体長8〜10cm)と短期世代(6〜8cm)が存在する。長期世代は越冬して産まれた翌年の春に産卵するのに対し、短期世代は生まれた秋に産卵するため、体が小さい。
産卵場は水深10〜50mの砂泥底域で、産卵数は3〜8万粒。卵は直径0.2mmの沈性卵。
産卵から孵化するまでの時間は、水温21〜29℃で13〜14時間。
成長
孵化幼生はノープリウス幼生、ゾエア幼生、ミシス幼生と変態し、底生生活に移行して稚エビとなる。稚エビは河口域などの沿岸内湾の浅海底に多いが、成長するにしたがって湾口部へ移動する。
冬期には湾外の沖合部で越冬する。肉食性で、ゴカイなど多毛類やアミなどの小型甲殻類を食べる。
漁法
小型底曳網が中心。七尾湾、瀬戸内海、有明海などは周年にわたって漁獲されるが、一般に6〜9月が漁獲最盛期となる。

漁獲量と輸入量(トン)
イセエビ クルマエビ その他 輸入(千トン)
H1 1,231 2,802 39,425 283
H5 1,238 2,263 33,545 317
H10 1,000 2,000 25,000 251

1人あたりの消費量(g)
全体 京浜地区 中京地区 京阪神地区
H1 955 823 1,009 1,238
H5 1,020 864 1,118 1,270
H10 749 606 782 947

加工
生食用の他に乾製品(干エビ)、調味加工品、下処理加工などの加工原料にされる。
主なものとして、甘露煮や佃煮などの惣菜用に加工されるほか、干エビはカキ揚げ、蒲鉾などの煉製品、菓子、珍味に利用され、また、釣餌用としても利用されている。
              佃煮の 海老が歯ぐきを ちくり刺し     仙之助
エビの鮮度
エビは漁獲後、体内の酵素が付着して細菌により劣化する。まず尾部の鮮赤色が青白くなり、甲殻は緑色、褐色を経てついには黒変する。
また、頭部が脱落しやすくなり、時間の経過と共にアンモニア臭ないし腐敗臭を帯びてくる。エビは他の動物と異り、結合組織が軟弱であるので、組織が崩れやすい。また水分とタンパク質が多いことから、細菌の発育に適しており、腐敗しやすい。
白色化
小エビは乾燥すると白色化することがある。白色化は、凍結したエビを解凍後に乾燥した場合と、無凍結でも鮮度低下したエビを乾燥した時に起きる。
この白色化は、殻中の炭酸カルシュウムが水分の減少に伴って析出したものと考えられている。
白色化の抑制には、エビを凍結する前にソルビン酸ナトリュウムやアスコルビン酸などの還元剤で処理すると効果がある。
蝦と海老
泳ぐ型のエビには「蝦」、歩く型のエビには「海老」の字が当てられる。
英語でも、体長5cm程度よりも大きいエビをPrawn、小さいエビをShrimpとしている。
米語では区別せず、Shrimpとしてしまうことが多い。ちなみに歩くエビはLobster。
食べ方
エビはあしが速く、気温が高いとどんどん美味しさが逃げて行く食材である。サルエビの新鮮なものは赤味をもっているが、古くなるにつれて白っぽい灰色になり、黒い汁が出たら黒変している証拠。
食べ方としては、天ぷら、焼き物、鍋物の具や椀種、串焼きなどのほかに、茹でて酢の物にしたり、チリソースなどの中華料理にも使う。また、グラタン、クリーム煮、スパゲティ、ピザなどにも合う。
   唐揚げ ・・・・塩水でさっと汚れを取り、水切りをし、塩で薄味をつけた小麦粉をまぶし、余分な粉を落としてカラッ
           と揚げる。こうすると油切れも良く、殻の硬さが口に障らなくなる。
   干エビ・・・・・熱湯で茹でて、殻付きあるいは殻を剥いてザルに広げ、十分に乾燥させる。よく乾燥したものは保
           存ができ、ソウメンのダシを取る時に利用すると味が深まる。関西ではかかせない食材である。


             床の間の 海老が跳ねてる めでたい日      瓢太郎
             海老の腰 伸びて天婦羅 出来あがり       柴浪人
             海老好きの 尾を残さずに 喰い終り        扇豚坊


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