日本の旬・魚のお話

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日本の旬・魚のお話
日本の旬   魚のお話(春の魚-12)
真子鰈(まこがれい)
魚の旬についても、南北に長い日本では地方によって違うのが当然なのだが、このマコガレイも関東では「霜月ガレイ」とも呼ばれ、11月頃に東北で獲れたものを最上とし、冬場を旬としている。一方、瀬戸内海の西の大分県には日出という城下町で獲れる「城下ガレイ」なる名物があり、こちらの旬は初夏である。
定着性の強い魚で、獲れる場所によって味が異なり、海底から湧水があるところで育ったカレイは絶品とされ、刺身や煮魚にしても美味しい高級魚である。

         釣り寄せし 鰈ひらひらと 春潮に        乙幡 水苔子
命名
『大和本草』には、「此魚背黒く腹白くして魚の半斤の如し、カタワレウオと云う意にて略してカレイと名づく。目は一処に二つあり近し」とある。
『広辞林』には、「韓鰾の約。朝鮮近海に多く産するより、いう」とある。また『漢和辞典』には、「鰈域の約。鰈域は朝鮮の別名、朝鮮の近海で鰈が多く獲れるのでいう」とある。
以上から推察するに、「韓」は朝鮮の南部地域を指す一方、「舶来品」や「上等な物」の意味で使われた語であるから、「韓鰾」の意は「エイ」より旨い「エイ型の魚」ということと、朝鮮近海に多い「エイ型の魚」という二つの意味にとれ、このどちらかが「カレイ」の語源と思われる。
漢字は「蝶」のようにうすっぺらい魚から、「鰈」の字が当てられたと云われる。
地方名
アマテ(瀬戸内・鹿児島)
            ・・・・「アマテ」とは手が脹れて病むこと、また、手のことを方言で言う。カレイにしては身が厚く、脹
               れた手の形に似た魚形から。
ウソ(富山)・・・・・・・・・・・藁製の足半草藁のことを方言で「ウソ」という。それに似た形や感触からの呼名。
チクラ(仙台) ・・・・・・・・・「チクラ」とは、九州の筑紫と朝鮮の新羅のことを言い、転じてこの間にあるものを意味する。
               つまり、「どちらともつかず」の意で、韓国近海でこの魚がよく獲れたからであろう。
クチボソ(富山)・・・・・・・・口が小さいことから。
タバコアサバ(富山)・・・・煙草の香に似た魚の意で呼ぶ。アサバはカレイ類の異称。
ホウショウ(七尾)・・・・・・体表に多数の斑点や斑紋のあることから、「疱瘡魚」の意で呼ぶのであろうか。
メダマ(山口)・・・・・・・・・・両眼が接近して大きく突き出ているため。
城下かれい(大分県日出)
            ・・・・別府湾の最奥にある日出町の海で獲れるマコガレイ。名前の由来は、日出藩の城主木下氏
               の居城前の海で獲れるカレイだからと言われている。木下家の家老の日誌には、江戸時代
               の参勤交代の折には将軍家に干し物を献上し、また4年毎の閏年は活魚で献上したという。
               物流コストは、大阪までが50両、大阪から江戸まで200両だったといい、早馬では海水を浸
               浸した厚紙に包んで箱に入れて配送したという。
                 <ルート>
                   日出−(船)−室津(兵庫県)−(手漕ぎ船)−大阪−(早馬)−江戸
               
   英名 Marbled sole(マコガレイ) Brown soie(マガレイ)
カレイ目カレイ科マコガレイ属マコガレイ
カレイ科の仲間は全世界の寒帯から温帯まで41属100種前後が棲息しており、日本近海に約80種がいる。
カレイ科の御三家としてマガレイ、マコガレイ、イシガレイがあり、続いてソウハチ、ムシ、メイタ、マツカワ、ヤナギムシ、ナメタ、ヌマガレイ、オヒョウ、更にアブラ、ヒレグロ、アカバ、アサバ、カラスガレイ等など。
砂中に横になって休息する、ベラ類などのような生態をもつ魚類から進化してきたのではないかとの仮説も提唱されている。
形態
体のわりに口が小さいのが特徴。マガレイとの違いは、マコガレイには両眼の間の鱗がなく、吻部がマガレイに比べて円くない。また、マコガレイには普通、無眼側の縁辺部に沿って走る淡黄色の帯もない。
分布
北海道南部から九州、朝鮮半島、東シナ海に分布している。水深40mから数mの砂泥質の海底に棲息。雑食性であり、底生生物が主食で定着性がある。
産卵
瀬戸内海では10月中旬頃から釣れ出し、産卵のために浅場に接岸しているので「のぼりガレイ」という。冬になると産卵のために全く釣れなくなるが、水深50m前後の砂泥ではオスとメスが集まり、産卵と放精を繰り返している。
卵は球形で、直径0.8mm前後の大きさ。殆どのカレイは浮性卵だが、マコガレイは珍しい付着性卵である。
体長20cmで15〜30万粒、30cmで70万粒を産卵し、水温5℃では17〜24日間、10〜17℃では5日間で孵化する。
産卵を終えたカレイは再び接岸してくる。これを「もどりガレイ」といい、ちょうど桜の開花時期にあたるので、「花見ガレイ」とも呼ばれている。
成長
稚魚は普通の魚と同じ様に泳いでいるが、2〜3週間経って体長4mmぐらいなると左目が移動を開始し、体長1cm頃には頭のてっぺんに移動する。また、その頃からヒレが形成され始める。体長1.3cmほどになり、左目と右目が並ぶころには、これまで垂直だった体が左傾し、扁平形となって海底に着定する。
底生生活ではゴカイ類などの多毛類や二枚貝類、クモヒトデ類、魚類などを摂取する。摂食は昼間に活発に行われ、わずかに頭部を浮かして体を静止させ、餌に対して口吻を延ばし吸い込むようにして捕食する。
左ヒラメに右カレイ
見分けの目安にそう呼ばれているが、例外もあって、ヌマガレイはヒラメと同じ側に眼がある。
また、ヒラメ類なのにメガレイ、ナンヨウガレイ、ホウズガレイ、アラメガレイなどという名の魚もいる。
城下カレイの旨さ
お城の下の海底に湧いてくる真水に海藻類やプランクトンの発生が多く、これに魚が多く集まることにより、餌が豊富になるという。
2〜3月にかけては海藻類を、4〜5月になると藻エビを餌にしているのが、他の地域と違って独特の肉厚と旨味に差が出る。
漁期は2〜11月で本格的な漁は4〜6月頃。この頃が最も味がよくヒラメよりはるかに高値がつく。
日出(ひじ)町では広域型増養殖場を平成12年3月に完成させ、6cmに育ったカレイを放流させ増産を目指している。現在の年間漁獲量は200トン。

       海水に ま清水湧きて 魚育つ 高浜 虚子 (城下公園内の句碑)
王余魚
中国では、ヒラメの二つの眼が並んでいることから「比目魚」というが、カレイは「王余魚」と呼ばれ、この名は、春秋時代(日本の縄文晩期)の話に由来する。
越の王「勾踐」は船料理で魚を片身だけ食べて海に捨てていたが、捨てる片身は骨付きの方とみえて、その半身が水中で元気良く泳ぎ出し、魚になったという。これ以来、この魚を王が余って捨てた魚として「王余魚」と呼ぶようになった。
青森空港の南西約4kmあたりに、「王余魚沢(かれいざわ)」という地名があり、縄文時代の遺跡である青森市内の三内円山遺跡と結びつきがあるのか謎である。
カレイの縁側
カレイの上下のヒレのつけ根に並ぶ、骨の間にはさまった柱状の肉のことをいう。この縁側は常に動かすところなので、刺身にしてもコリコリと歯ごたえが良く、煮て食べても脂がのって美味しい。この縁側を「カレイのかくし味」ともいう。
縁側にはコラーゲンが多く含まれており、皮膚を張りのあるつややかなものにし、いつまでも若々しい肌を保たせる働きがある。
煮付のあと、冷やすと出来るのが「煮こごり」で、この煮こごりはコラーゲンが熱で溶けたものである。
加工品
さっと蒸して陰干しした蒸鰈と、カレイの内臓を抜いて天日で干し上げた干鰈があり、名産品として若狭湾のヤナギムシレイや尾道のデビラなどがある。
  ヤナギムシカレイ
      ・・・・カレイ類では最も細長く、本当に栗の葉の形に似ている。薄塩の一夜干として有名であり、腹子が透け
         て見えるのが何とも魅力的。淡白なうちにもほんのり脂の乗った「こく」のある上品な味である。
  デビラ・・・・タマガンゾウビラメの干し物を瀬戸内では「デビラ」と呼び、底曳網で獲れ、春から夏に多く加工する。
食べ方
大きいものは薄く、そぎ造りにした刺身か洗いで。
肝は湯がいてつぶし、つけ汁に混ぜるとカワハギと同じで旨味が増す。
湯引きした皮は細かくきざみ、ポン酢醤油ともみじおろしときざみアサツキが合う。コリコリとして珍味である。
カレイの刺身は醤油とワサビよりも、ポン酢醤油と薬味が合う。中落ちはカラリと揚げて骨せんべいにすれば、酒の肴にもってこいの一品。
  煮付・・・「マコガレイの旨さは煮付けにあり」ともいわれ、一匹付けになる手のひらサイズがよく、うす味で仕上げ
       るのがコツ。ウロコと内臓を取って水気をぬぐっておき、ダシと醤油、酒、みりんを3:1:1:1の割合で魚が
       ひたる程度に入れ、沸騰させる。この時、焦げつき防止で鍋底に切れ目をいれた竹の皮を敷く。火の通り
       と味がしみ込み易い様に、カレイの身の厚い部分に×印に切れこみを入れ、落とし蓋をし、中火で数分煮
       る。煮過ぎると旨味が逃げるので注意。

          大鰈 海星を載せて 釣られけり        富岡 桐人
          鰈干す 室津の港 波高し           岩崎 文子
          若狭には 仏多くて 蒸鰈            森   澄雄


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