日本の旬・魚のお話

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日本の旬・魚のお話
日本の旬   魚のお話(秋の魚-24)
糸撚魚(いとより)
天然真鯛の赤色をもっと薄くしたような淡い桃色に黄色と白の帯びが縦に走り、いわゆる熱帯魚のようなドギツイ派手さはないが、鑑賞魚でもしたいような優美で気品のある魚である。
鯛に劣らぬあっさりとした白身の高級魚で、関西では真鯛のかわりに祝いの膳に使われるほど、よく知られた魚である。イタリヤやスペインでもよく料理に使われる。
旬は晩秋から冬。
        金の糸 身にちりばめて 金糸魚(イトヨリ)      名和 隆志
命名 
『魚鑑』には、「状まったく甘鯛のごとく背に黄線三条ありて、尾の前に一条の銀糸を着く」と説明している様に、体色の赤黄色の縦縞の黄色が泳いでいる時にきらめくように見えて金糸を撚るようだからという説と、糸のように長く伸びた尾鰭の軟条が泳ぐ時に旋回するように見えるからだという説とがある。
漢字は「糸撚魚」、「糸綟魚」、「糸縒魚」、「金線魚」、「金糸魚」、「紅古魚」などと書く。
地方名
糸引(コビリ)(山陰)・・・・・・・「コビリ」は甘鯛のことをいい、また、縮んだものやこましゃくれたもののことで、甘鯛に似
                 て尾に糸を引いた魚の意。
ヒナイオ(富山) ・・・・・・・・・・赤くて美しいから「雛人形のような魚」という意味か、それとも「緋な魚」の意でいうのか。
三升米(讃岐)・・・・・・・・・・・1尾釣れれば三升の米代になるということから。
糸魚(ヤマメ)(土佐須崎)・・・尾鰭に糸のある魚の呼名。「ヤマ」は漁村用語で「糸」こと、「メ」は魚名語尾。
アバ糸引(和歌山) ・・・・・・・「アバ」は未婚の年増女や伯母、浜の女、姉などを意味する方言であるが、特に大型の
                 魚の呼名となれば、年増女か浜の女を連想しての呼名ではなかろうか。
テレンコ(和歌山) ・・・・・・・・「テレンコ」とは関西方言で反対になることや逆になることをいう。この魚が泳ぐ時、体の
                 左右の動きと、尾鰭の糸状軟条が反対になることからの呼名であろう。埼玉の方言では
                 「テレンコ」とは「のろま」のこと。
英名  Golden thread(金の糸)  中国語  金綫魚
スズキ目イトヨリダイ科イトヨリダイ属
『本朝食鑑』や『和漢三才図会』には鯛の仲間として書かれており、また『大和本草』では甘鯛の仲間として扱っている。
仲間としてソコイトヨリ、モモイトヨリ、シャムイトヨリ、トンキンイトヨリなど。
日本では9種が知られているが、イトヨリダイに最も似ているのはソコイトヨリである。体側の縦縞が、イトヨリの6〜8本に対し3本で、腹側の黄味が強く、別名をキイトヨリともよばれ、イトヨリダイより味は落ちる。
イトヨリダイは30〜40cmに成長し、同属のなかでは一番大きい。
形態
体は細長く側扁して尾鰭は深く二叉し、上端部の軟条は糸状に延びる。体は赤色で、体側には鱗列にそって走る6〜8条の黄色縦線がある。頭部の近くのこの側線始部には、小さな赤色斑が3個並んでいる。また、背鰭、尻鰭にもそれぞれ2条の黄色縦線がある。
分布
琉球列島を除く本州中部以南から、東シナ海や台湾にまで分布する。瀬戸内海では少なく、徳島、福岡、山口、島根などで漁獲される。水深100〜200mまでの砂泥底となっているところを好む。
成長と産卵
エビやカニ、多毛類、小魚を食べて成長する。1年で尾叉長が12cmとなり、22cmぐらいとなる2年で産卵に加わる。3年で30cm、5年で40cmになる。
産卵期は4〜8月で、直径0.6〜0.7mmの球形の分離浮遊性卵を産む。孵化後40時間で2〜3mmとなる。
漁期と流通
一本釣り、延縄、底曳網で漁獲する。
1960年代は1000トンを超える漁獲であったが、近年では100トン前後である。市場には通年出廻るが、入荷はさほど多くない。
関東より関西で珍重され、高級魚扱いされる。香港や韓国からも空輸される。また、イトヨリのすり身として、37千トン前後が輸入されている。
徳川家斉(十一代将軍)
イトヨリダイを大いに好み、小田原沖で獲れた時は早飛脚で送らせた。早川長兵衛という包丁家がそれを焼き、彼はイトヨリダイを1尾焼くたびに炭100表を褒美として受け取ったという。  柳樽悦 『山陰落栗』より
食べ方
『栗氏魚譜』に、「イトヨリの身は透明で味は淡白、甘鯛より軽く病人によい」とある。また、『日東魚譜』には、「気を益し、水道を利し、胃を整える」とある。
体色がきれいなピンク色のものは鮮度がよく、鱗が剥げたもの、体色が白っぽくなっているものは古い。身は軟らかいので、振り塩でしめてから用いる。
三枚に卸し、小骨を抜き取ってから皮目にうす塩をし、フキンをかぶせた上から熱湯をかけ、手早く氷水の中に落とす。こうすると身が白くならず、縮れに皮霜に仕上がるので、水気をふき取って色紙形に切る。かき氷の上につまを添えて盛り付け、ワサビや梅肉醤油で食べる。
皮目が美しいので碗種にもよく、切った後、塩水につけて熱湯をくぐらせると汁に濁りがない。
煮付、塩焼き、照り焼きなど用途は広く、みそ漬も旨い。
また、バター焼、ブイヤベース、グラタンなどの洋風料理にも向き、サッパリとしたレモンなどの柑橘類のソースが合う。


        糸撚鯛の 煮るには惜しき はなの彩     東  百代
        いとよりに 炭火を熾す 山桜         黒田 杏子 


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