日本の旬・魚のお話

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日本の旬・魚のお話
日本の旬   魚のお話(春の魚-10)
五月鱒(さつきます)
アマゴの一部に、秋の深まりとともに海に下って新緑のころ再び川に上るものがあり、ちょうど5月頃に沿岸へと現われる。瀬戸内には珍しいサケ科の魚として静かな人気がある。マス特有の橙色がかった肉と、銀色の地に朱色の光をアクセントにした姿が目を楽しませてくれる。

       束の間の 糶や簗場の あめのうを   駒井 でる太
命名
5月頃沿岸に現われ、刺し網や定置網あるいは船曳きで獲れるので、「サツキマス」呼ばれたのであろう。
  英名 Red spotted masu trout
サケ目サケ科サケ属サツキマス
マスの名がつくが、サケの仲間で、このマスの陸封した河川残留組がアマゴである。
    1.サツキマスの陸封型 アマゴ(雨子)・・・腹部や背にかけてパーマークとよぶ美しい朱点がある。
    2.サクラマスの陸封型 ヤマメ(山女) ・・・朱点がない。
上記2種は遺伝的な距離がきわめて小さく、逆に同じ仲間同志の方が遺伝的距離が大きい場合もある。
    3.ビワマス                ・・・・以前、「アマゴ」はこの種の陸封型と言われていたが、上記2種とは
                              遺伝的な差が認められるくらい別種である。
分布
神奈川県酒匂川(さかわがわ)以西の本州太平洋岸及び九州の瀬戸内海沿岸と、四国の沿岸の限られた沿岸に分布。降海した後のサツキマスの回遊経路等はよくわかっていない。
東日本や日本海側へ注ぐ河川に生息するヤマメとは分布域が分かれていたが、人工種苗や放流事業の結果、現在ではアマゴとヤマメが混成する河川も見られるようになった。
近縁の異なる遺伝子集団が一度交雑すると、もはや絶対に元に戻せない。非常に残念なことである。
形態
サクラマス(ヤマメ)との外部形態的な相異は体側にある。小判状斑紋(パーマーク)の周辺に小さな朱色点が散在すること、及び鱗の露出部にも環状の成長線がある。
降海後、沿岸での生活期間が数ヶ月以内と短い為、体の大きさが30cm前後の小型であるのも特徴。

      雨魚 あかつき網を 打ちてとり 則近 文子
生殖
水温が13℃以下に低下する秋、メスが砂礫底に直径30cm、深さ数cm程のすり鉢状の窪みをつくり、産卵床にメスが体を沈める様にして、オスと並んで産卵、放精する。
産卵後、メスが小石で産卵床を埋め戻す。オスは放精前後メスの産卵床の周辺を遊泳し、接近する他のオスを牽制する。メスは産卵期間中に複数回産卵する。
産卵数は体長11cmでは約100粒、20cmでは250粒。産卵後は斃死するが、アマゴの、特に小型若齢で成熟した個体では、多数回受精する場合がある。これは、特にオスに見られる。
成長
肉食が中心で、カゲロウやトビゲラなどの水生昆虫や、落下及び流下した陸生昆虫、小魚などを食べ、1年で10cm、2年で20〜30cmまで成長する。
降海は、孵化した翌年の初冬にスモルト化し、降海して数ヶ月を沿岸で過ごした後、初夏に遡上する。遡上する時は30cm前後となる。
  ※スモルト化・・・・・体色が銀白色にかわり、体形が細くなる。また鱗が驚くほどハゲ易くなる。これが降海への準
              備で、スモルト化と呼ばれる。
アマゴ(雨子・天魚)
漢字の通り、空が曇り、小雨が降ると、とたんに釣れだす。釣り人はこの状態を「食いが立つ」と言って喜ぶ。恐らく、釣り人の姿が見えなくなることと、雨で昆虫などの餌が川に落ち易くなるためであろう。
また、「甘い(美味しいの意)魚」という意味の呼び名が転じて呼ばれたとも言われる。
地方名・・・・アメゴ、アメノウオ(長野・近畿・四国)、コサメ(紀伊半島南部)、ヒラべ(山陰)、エノハ(九州)
英名  Amago salmon
川と海の両方に生息出来るのは
明確ではないが、体内に入った塩分をエラから汲み出す機能が他の魚よりも強いためであろう。
降海した時は、海水から吸収した塩分をどんどん排出することで、体液濃度のバランスを保ち、川に遡上する時は逆に働く。
サケの南限
台湾中央部の大甲渓には、サクラマスが陸封された「サラマオマス」と呼ばれる個体群がおり、これが最も南に生息するサケである。
サケとマス
明確な分類はなく、混同しやすい。一般にサケは川で生まれるが、すぐに海に下って一生の大半を海で過ごすもの(海産型)を言う。
一方マスは、海産型と一生を淡水で過ごすもの(淡水型)がある。
    1.海産型のマス・・・紅サケ(紅マス)、樺太マス(セッパリマス)、マスノスケ、銀ザケ(銀マス)、桜マス(ヤマメ)、
                 五月マス(アマゴ)など
    2.淡水型のマス・・・山女、雨子、琵琶マス、国マス、イワナ、川マス、虹鱒など
サケとマスの違い
    1.サケの方が体長が長く腹が細い。また、体の割に頭が大きく鱗も大きい。
    2.サケの尾ビレには銀青色の斑点があり、マスには黒い斑点がある。
    3.肉質はサケの方がしまっている。マスの方が柔らかい。
    4.サケは北太平洋の東西両岸にすみ、マスは北太平洋と北大西洋に生息する。
淡水生活と海水生活
サケの淡水と海水での生活時間比率は、品種によって下記のように異なる。
   魚種       淡水生活 対 海水生活
   サケ         1    対    5
   カラフト鱒      1         3
   サクラ鱒      1.5       1.5
   ギンサケ      1.5       1.5
   ベニサケ      1.5       2.5
   マスノスケ     1.5       4.5
サケは赤身魚か
赤身魚の代表であるカツオやマグロは、筋肉色素や血色素がヘモクロビンやミオグロビンであるため、加熱すると褐色になる。しかし、サケは筋肉中にカニやエビの色素と同じアスタキサンチンというカロチノイド系の紅色色素を含んでおり、また、ヘモクロビンやミオグロビンがわずかしか含まれてないので、加熱しても褐色に変色しないのである。よってサケは白身魚のグループである。
ことわざ
鮭になるか鱒になるか・・・・・・・・カエルの子のオタマジャクシには尻尾があるので、親カエルは将来自分の子が鮭か
                    鱒のような大物になるのではないかと期待をかけるが、結局は同じカエルになったと
                    いう寓話で、期待が裏切られた親の落胆ぶりをいうたとえ。
鱒は三年の古傷を呼び出す・・・鱒を食べると昔の古傷が痛み出すという意で、鱒の精の強いことを言う。
鱒の厚い年は実りが悪い ・・・・・鱒が大群となって川を遡上する年は 水温が低いので冷害となり、米不足となる。
ひらめ料理
中国地方の山の中では「ひらめ料理」という看板が見られる。これは、この地方のヤマメやアマゴのことを「ヒラメ」と呼ぶ為で、この魚の料理を言う。
食べ方
初夏が旬で、塩焼きにすると美味。天プラも旨い。
煮付けにしたり素焼きにしてから甘露煮すると日持がよくなり、いろり端で燻製にしたものも乙な味が楽しめる。
丸のままホイル焼や酒蒸にするのも良い。味付けも塩や胡椒だけでなく、味噌や醤油を加えても良い。洋風にバター焼き、ムニエル、フライなどなど。

       あまご焼く 炭火のあかし 塗障子 幕内 千恵


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