日本の旬・魚のお話

お問い合せ先
メバル
メバル
係  
部・課 企画管理部
主要扱い品目  
担当者  
TEL  
FAX  

日本の旬・魚のお話
日本の旬   魚のお話(早春の魚-1)
目張(めばる)
メバル釣りが始まると本格的な海釣りの季節となり、早春の魚として釣り人に珍重されている魚である。メバルは素直で上品な味を持ち、身も柔らかく誰にでも好まれる。クセのない分、煮ても焼いても揚げても良しと、あらゆる調理法にそってくれる。
魚の眼はつぶらなものと相場がきまっているが、メバルはとりわけ明眸に出来ており、鈴をはったような眼である。春先と秋が最も美味な魚で20cm前後の3〜4年魚が味もよい。

       めばる煮て こころをわかつ 皿二つ    古館 曹人
命名
『大和本草』に、「目ばる・・・略・・・目大なる故名づく。黒赤二色あり・・・略・・・めばるの子を鳴子と云」とある。頭部の半分近くを占めるこの大きな眼から、「目張」と命名されたのであろう。視力がよく、網や釣り糸を見分けるため、獲りにくい魚である。
天保2年(1831)に刊行された魚類辞典『魚鑑』に、「状あかをに似て・・・略・・・味ひほぼ同じ」と記されている。「あかを」は鯛のこと。当時、メバルは鯛と同等に扱われていたことがわかる。
地方名
全国各地に分布することから、地方名も日本産魚名大辞典では29挙げられている。この中で「め」がつく名前が14でほぼ半数もあり、メバルは眼に特徴があることがわかる。
アオテンジョウ(和歌山)・・・じっとしている時、常に斜め上を向いていることから空(青天井)を見ている魚の意。
ゴンダイメバル(鳥取) ・・・・生意気な面構えをしていることから「権太めばる」。
テンコ(新潟)・・・・・・・・・・・・テンは天で一番高い所を意味し、笠や傘なども「テン」という。つまり、笠魚はカサゴという
                 意となる。
ツズノメ(富山)・・・・・・・・・・・ツズは筒や粒、玉など、丸いものを表す。
その他、ハツメ・メバチ・モバチメ(北陸)、 メマル(兵庫・徳島)など。
   英名 Dark banded rockfish・・暗い縞のあるカサゴ
       Black rockfish, Japnese stingfish
カサゴ目フサカサゴ科メバル属メバル
メバル属の仲間は29種あり、フサカサゴ科では大きなグループ。主なものは下の通り。
トゴットメバル(戸毎眼張)
            ・・・・沖メバルとも呼ばれ、暖海性でメバルより沖合いの岩礁に生息。体色は朱赤色で、背部と背
               ビレつけ根にかけて、4〜6条の幅広い黒褐色の斑紋がある。
ウスメバル(薄眼張) ・・・寒海性の魚で、北海道から銚子まで生息。トゴットメバルに似ているが、色は前者より赤色
               が濃い。赤メバルとして流通している。
エゾメバル ・・・・・・・・・・北海道ではガャと呼ばれている。
タケノコメバル・・・・・・・・体色の色柄が筍の皮によく似ていることや、筍の季節においしくなることから命名。築地魚市
               場の符丁で「タケノコ」と呼ぶのは本メバルのことで、タケノコメバルではない。
クロソイ・・・・・・・・・・・・・黒メバルとして売られることがある。
その他に ムラソイ、ウケグチメバル、キツネメバル、ヨロイメバルなど。
体色で生息の水深を知る
200m以上・・・・・・・・・朱紅色一色の体色。(バラメヌケ・サンゴウメヌケ・キチジ)
数10m〜200m・・・・・朱紅色を基調としているが体色に斑紋があるもの。
                        (トゴットメバル・ウスメバル・アマメカサゴ・アメカサゴ)
数10m以下 ・・・・・・・・赤みがなく、むしろ黒から黒灰色に近い。(カサゴ・メバル・クロソイ・ゴマソイ)
              逆に熱帯系のものは色調が豊か。(ミノカサゴ・ヒメオコゼ・ヒレナガメバル)
形態
側扁形で受け口をしており、頭部にはカサゴ科の特徴であるさまざまな棘を持つ。中でも眼下に強い二つの棘があり、頭の背面や眼前のほかにエラ蓋にも棘がある。
体色は灰褐色(キン)、灰赤色(アカ)、黒灰色(クロ)の3種類があり、違った種類の魚と思われているが、これは環境の変化に順化させるための色であって、どれも同じ種類。
分布
暖海性の魚で、日本各地の沿岸の岩礁地帯に生息。成魚はいつも海面を向いて暮らしている。新潟及び庄内地方でテンコと呼ぶのは、この姿をぴったりと表現している。群れは10〜数10匹が普通。
生殖
メバルは卵胎生で、3年魚から産卵する。交尾期は11月頃で、合体の姿はやはりオスメス共に海面を向いてこすりつける。メスの体内に入った精子は1ヶ月程待たされ、卵が成熟してから受精する。その後、孵化した仔魚はただちに母体から放出される。
    産出期  東北  12〜3月      産卵数  体長 13cm 5〜9000尾
          関東   2〜4月                 16cm 30000尾
          山口  12〜1月
成長
肉食で、仔稚魚は動物プランクトンを食べるが、成長するとモエビ、ワレカラなどの甲殻類や魚類を食べる。摂取行動は夜間に活発で、昼間はじっとしている。
仔魚は水深10〜40mで浮遊生活をする。
       早春     10〜30mm  流れ藻に2〜300尾の群
       春〜初夏  30〜60mm  底性生活に移行し浅場の藻場へ
       夏       6cm       岩礁域へ移動
       冬       8cm       水温低下に伴って沖合深部へ移動
1年魚で10cm、2年魚で13cm、3年魚で15cmとなる。
1年魚はオスメスの割合がほぼ同じであるが、年を増すごとにメスが多くなり、5年魚では90%がメスである。
メバルとカサゴ
両者はよく似ているが、メバルの目は頭の左右、つまり側面にあるのに対し、カサゴの目は額、つまり背の方にあり、やや飛びだしている。
漁法
定置網や刺し網でも獲れるが、やはり一本釣りで釣ったものが一番。明石海峡周辺では、主に底引き網や一本釣り、延縄漁などで年間百トンあまりの水揚げがある。
食べ方
正岡子規の『墨汁一滴』(1901年)に、「余の郷里にはホゴ(ウスメバル)、メバルなどという四五寸許りの雑魚を葛に串いて売って居る。さういふのを煮て食うと実にうまい」と記している。
この魚はウロコが硬く多いので、ていねいに引く。また、ウロコの棘は硬くて鋭いので、刺さないように注意が必要。うっかり刺すと、2〜3日ずきずきと痛む。
近縁のカサゴの刺身は抜群だが、メバルは大形でないと刺身にむかない。
新鮮なメバルは煮付ると身が反り返り、ほろほろと美しい白身が骨離れもよく食べ易い。
     1.日本酒とミリンを3対1の割合で鍋に入れ、好みに応じて砂糖を加えあたためる。
     2.沸騰する前にメバルを並べ、落とし蓋をして中央で10分程煮る。
     3.ここで初めて醤油を加え2〜3分煮立てて火を止める。
        ※ 先に甘味をつけ、後から醤油を入れることにより、魚の身崩れを防ぎ、旨味を封じ込めることが出来る。
ほかに、三枚に卸したものをぶつ切りにしてチリ鍋にしたり、焼き物や天ぷらなどがある。


      よき潮と いう濁潮 めばる釣     田村 鬼現
      赤眼張 煮つけても 色失わず    上村 占魚

      やく匂い 明石の浦の 赤めばる
               神鳴殿も 落ちる精進   二葉集(道寸)


ウィンドウを閉じる