日本の旬・魚のお話

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日本の旬・魚のお話
日本の旬   魚のお話(冬の魚-23)
鰰(はたはた)
ハタハタは、鰰または鱈などという字を書き、太宰治の『津軽』には、「鱗の無い5,6寸くらゐの魚でまあ海の鮎とでも言えるのでは・・・・。西海岸の特産で 秋田地方が・・・・」とある。
雷が鳴る真冬の日本海で獲れたハタハタは身ばなれもよく、脂肪の口当たりがなんとも柔らかい美味な魚である。

                 はたはたや 雷鳴ぴぴと 男鹿の海    平山 曲卓
命名
漢名では霹靂魚(はがみうお)、波太多雷魚(はたたらいうお)、雷魚、神鳴魚、鱈、鰰と書く。
ハタ科の魚はいずれも体表に「斑(はたら)」のあることにより、ハタラの縮語「ハタ」をつけて呼称としている。
ハタハタも体表の背部に特異な流紋状の斑紋があることにより、古くは「斑斑(はたはた)」、または「斑鮮(はたはだ)」と命名された。
近年では、冬の北日本で雷鳴がよくあることから、この時期に産卵のために群集して接岸する魚を、雷光の古語「ハタハタ神」からとってハタハタと呼んでいる。
また、江戸時代の随筆家である大田南畝(なんぽ)の『一話一言』には、「鱗の中に富士山の模様生じ候段、めでたき魚と祝し、文字はいつごろからか魚へんに神と書くなり」と紹介されている。
地方名
カミナリウオ(北日本)・カタハ(鳥取)
            ・・・・片方だけ刃をつけた小刀の名前である片刃から。
オキアジ(山陰)・シマアジ(新潟)
            ・・・・形がアジの仲間に似ているところから。
サタケウオ(秋田)・・・・・関ヶ原合戦後、常磐の領主だった佐竹氏が秋田に左遷されてから秋田でハタハタがよく獲れ
               るようになったといい、これは常磐のハタハタが佐竹氏を慕って移動してきたためであろうと
               言う俗説から。
英名  Japanes Sandfish & Sailfin Sandfish
スズキ目ハタハタ科ハタハタ
仲間にはエゾハタハタがいるだけで、この魚はハタハタと比べて30cmとやや大きく、尾ビレが2叉する点が大きく異なる。
外形
体はやや細長く、強く側篇する。貪食に餌をあさる底魚タイプの魚と同じで、口は大きく斜め上方に開く受け口型。
前鰓蓋骨に5本の棘があり、胸ビレは著しく大きい。それに2基の背ビレと長い尻ビレが特徴。鱗も側線も無く、背部には銀白色に褐色の班紋がある。全長15〜20cm。
分布
アラスカから北海道、本州の日本海側および東北以北の太平洋側にかなり広く分布している。日本近海には朝鮮半島東岸、日本海北区、北海道西区、南区という4つの系群が知られている。
秋田県近海が主産地。水深150〜400mに棲息し、産卵期だけ浅場へと移動する。砂泥地にもぐっているところから英名では「サンド・フィッシュ」と呼ばれる。
生殖
産卵期は雷の多い11〜12月で、水深2〜10m前後の浅場にある産卵場へ何百万尾もの大群で押し寄せる。
おもしろいのは、オスが円錐状に突起した生殖器を持つこと。しかし交尾するのではなく、メスの生み出す卵を目掛けて放精するのに使われる。
卵は直径2〜3mmの粘着沈性卵で、海中に放出されるやいなやお互いに付着し、ピンポン玉大の600〜2300粒の卵塊となる。この卵塊は中空になっており、卵塊の中心部にも新鮮な海水が出入りしている。
これがホンダワラ、アカモンオオバモクといった海藻に付着して卵塊毎にその色が変わり、淡紅色、淡緑色、淡褐色を呈す。
成長
産卵後、水温7℃で70日、12℃なら50日ほどで孵化するが、この間に海がシケると波にもまれながら卵が海岸や岩場に何キロも打ち上げられる。この卵の卵膜は強靭で、中の胚を保護し、そのまま発育を続けて再び波に拾われ、海へ戻る。
孵化直後は体長12mmで、1年目は6cm、2年目は12cm、3年目は16cm、4年目で20cmに成長する。
餌は、ヨコエビ類、オキアミ類、スケトウダラやイカの子、そして海藻まで食べ、夜間に群で餌場に近づき、寝込みを襲うという貪欲な魚である。
漁法・漁場・漁獲
日本海側の東北から山陰が主産地であり、底引網で年中獲れ、その他では定置網、刺網もある。
産卵期は動作もにぶく、岸から手網や投網でも獲れる。
山陰で獲れるハタハタはオスが多く、メスは100尾に1尾ぐらいの割合。近年は漁獲量が激減し、養殖や栽培漁業も行われ、年間100万尾が放流されている。
また、秋田では平成4年から3年間禁漁としたが、その後の資源回復は芳しくない。
韓国、北朝鮮からも生鮮、冷凍、無頭処理したものが輸入され、飯鮨や丸干しの原料となる。
ブリコ
秋田藩主佐竹氏が、水戸藩主の頃には正月に必ずブリを食べていたが、秋田では食べられず、代わりにハタハタの卵を「ブリコ」と呼んで食べたとのことが『採薬使記』の中巻に記されている。
また、一説には佐竹氏が禁漁期を設け資源保護をしたが、密漁者がハタハタの卵巣をブリの卵巣、つまりブリ子と称して売ったとの説もある。ブリコは生のまま味噌汁、粕汁や鍋物などに入れて食べる。
しょっつる鍋
秋田では、ハタハタを塩漬けにした塩汁である魚醤を「しょっつる」と呼び、ハタハタにせり、ねぎ、えのきだけ、春菊などの野菜や豆腐を入れて煮込む。昔は鍋の代りに貝を使ったところから、正式名は塩汁貝焼(しょっつるかやき)という。
  ・「しょっつる」の作り方
     材料はハタハタ以外にイワシ、アジなど、小魚ならなんでもよい。材料に対して2〜3割の塩を加えてかき混
     ぜ、樽に詰め、石のおもしをして一年以上置く。その間に数回かきまぜ、そのつど塩を加える。仕込みの初期
     に麹を加えると、甘味をおびて風味が増す。この過程で魚はすっかり溶け、飴色の醤油のような液体になる
     ので、これを布でこし、煮立てて浮き上がったものを取り除く。そして、そのまましばらく暗所に置いてオリを取
     り去り、熟成させれば出来上がりとなる。
ハタハタの丸煮
ハタハタを丸のまま、ごく薄い味の塩水で煮たもので、醤油をつけて食べる。窓の外の雪をながめながら、子持ちハタハタをブリコとともに食べるのは、山形の庄内地方ならではの冬の味覚。
ハタハタずし
秋田地方の越冬用の食品で、獲れたてのものを使って作る。家庭によって味もさまざまで、酒の肴にもよく、長い冬の間、食べる分だけ取り出して食べる。
ハタハタの粕漬け
庄内地方の家庭でよく作られる。焼いて酒の肴すると、こうばしい味覚がたまらない。
食べ方
白身でさっぱりとした肉質をしており、脂質も高度不飽和脂肪酸であるDHAとEPAの含有量が26%とイワシ類と同様で、正に健康食品である。
野菜を入れた鍋、塩焼き、煮付けの他に天ぷらの具にする。
また、味噌汁や粕汁に入れるといいダシが出る。和風料理の他、ムニエルやフライ、フリッターなどの洋風料理にも合う。


               はたはたを 煮る大鍋を 出されけり     三宅 旬生
               鰰の 白き女中の 手の白さ          鷹羽 狩行
               鰰や 酔ふて 埒なき 秋田弁          吉田 菰文


               秋田名物 八森はたはた 男鹿で男鹿ぶりこ
                    能代春慶 桧山納豆 大館曲げわっぱ   ( 秋田音頭より)


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