日本の旬・魚のお話

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日本の旬・魚のお話
日本の旬   魚のお話(冬の魚-15)
公魚(わかさぎ)
極寒の中、氷の張った池や湖に出て、開いた穴から釣り糸を垂らして釣るワカサギ釣りは、北海道や本州山間部にある湖の冬の風物詩である。桜の頃に孵化した稚魚の漁は、秋から始まる。
ワカサギの味は淡白の一語につき、全くバター臭さがない。秋の深まりと共に脂がのり、身がしまって適度に脂も落ちる冬から春先が旬。

                公魚の よるさざなみか 降る雪に      渡辺 水巴
命名
鮖、公魚、若鷺などの字をもって「ワカサギ」に当てているが、いずれも呼名の語意を表わしていない。
「ワカサギ」は、「ワカ=幼い・清新」と「サギ=細魚・小魚」の合成語であり、その語意は「清新な小魚」という意。
公魚の漢字の由来は、霞ヶ浦や北浦の一部を治めていた麻生藩が江戸幕府11代将軍徳川家斉公に年貢として納めたことから、公儀御用の魚、つまり「公魚」となった。
      英名 Japanese Smelt, Pond Smelt
地方名
全国各地でさまざまな名がついている。主な産地での呼名は以下の通り。
  チカ(北海道・東北)・・・・・・・近縁種ながら別種のチカと混称。
  サイカチ(群馬)・・・・・・・・・・サイは氷柱、流氷。カチは徒歩の意味で、氷が川を流れるころに遡行してくる魚という意。
  マハヤ(千葉) ・・・・・・・・・・・体系がハヤに似て、しかも高級魚であることから。
  スズメウオ(千葉・静岡) ・・・細小な動物で群集性のある動物を「スズメ」と呼ぶことから。
  サクラウオ(茨城) ・・・・・・・・常州桜川で桜の咲く頃よく獲れた。
  ソメグリ(北陸)・・・・・・・・・・・産卵期だけ遡河することから「磯巡り」の意味。
  アマサギ(島根・石川・福岡)
                 ・・・「アマ」は味が良い、「サギ」は小魚の意。
  キキンウオ(松江) ・・・・・・・・夏の冷害で飢饉の年に多産する。冷水性の魚を表している。
サケ目キュウリウオ科ワカサギ属ワカサギ
仲間にはイシカリワカサギや、新鮮なものはキュウリに似た香りを放つキュウリウオ、シシャモなど。
ちなみにチカは、北海道から東北の沿岸を回遊し、ワカサギとよく似た形をしているが、ワカサギより腹ビレがやや後方にあることと、歯の数が少ない点が異なる。
            暗き湖より 獲りし公魚の 夢無数      藤田 湘子
外形
背の部分に黄色いスジが走り、腹にかけては銀白色で、体は細長く、スマートな姿が優しく美しい魚である。
ウロコが体全体をおおい、はがれ易いのが特徴。特に流通段階でウロコはほとんどなくなっているため、ウロコの無い魚と思われることもある。背ビレの後方に脂ビレがあり、これがサケの仲間である証拠。体長15〜20cm余りに成長する。
分布
太平洋岸では茨城県の霞ヶ浦以北、日本海岸では島根県の宍道湖以北に分布。大昔は海産魚であったが、陸封されて淡水性となり、いまでは淡水魚扱いにされている。しかし、その昔の名残りであろうか、淡水と海水が混じる汽水湖にも棲息しており、その代表が島根の宍道湖、茨城の涸沼(ヒヌマ)、秋田の八郎潟、福井の三方湖など。
つい最近まで北浦や霞ヶ浦も汽水湖だったが、利根川河口堰のために純淡水化してしまった。また、ワカサギの卵は非常に丈夫で移植が容易なことから、淡水湖へ移植され、すっかり「淡水のワカサギ」となってしまった。
既来、寒水系の魚でありながら適応能力があり、棲息水温は0〜30℃と、広い範囲での生活が可能である。
生殖
生殖腺(卵巣・精巣)は左右一対だが、ほとんどの魚の生殖腺は左右の大きさが同じであるのに対して、ワカサギの生殖腺は左側が著しく大きく、右側が極めて小さい。性比はオスの方が多く、北方系になるとさらに多くなる。
産卵は1〜4月で、400〜25000粒とかなり差が認められる。
成長
卵は粘着性で、川では川底の小石に、湖沼では水草に産み付ける。卵は非常に変化に対応しうる能力をもつため、人工増殖による移植放流が行われた。
約1ヶ月で孵化し、プランクトンや水生昆虫を食べ、満一年で成熟する。多くは産卵後に死ぬが、北海道では2歳以上の魚も珍しくはない。
漁法と漁場
氷の張りつめた湖面に穴を開けて釣り糸を垂らす、諏訪湖や山中湖などのワカサギ穴釣りは有名だが、網漁で有名なのは、陸奥小川原湖の引網漁や宍道湖の投網漁などである。
かつて霞ヶ浦で操業された帆曳網は「寒引き」とも言われ、冬の風物詩として詩情があった。現在ではトロール船に交代し、効率の良さから急速に資源が減少した。そのため、早朝短時間での操業により、資源の回復に努めている。
また、最近では新たな漁場として、琵琶湖からも産出される様になった。
全国では、北海道や北東北からの出荷が全体の半分近くを占め、生産量は内水面で約2千トンと、年々減少傾向にある。
小型底引網、刺網、定置網    (H1年 2320t、H5年 2330t、H7年 2080t)

              帆傾け 公魚舟の 戻りけり      佐藤 比佐子
生鮮・加工・流通
秋から冬にかけては鮮魚でも流通するが、年間を通じては冷凍物が流通し、その中には特にフライに用いられる輸入物も含まれている。
北海道や東北地方では、海産のチカも時々ワカサギと称して流通している。
EPA.DHAがたっふり
ワカサギの脂肪酸組成は、淡水魚にもかかわらず多価不飽和脂肪酸が多く、不飽和脂肪酸の中でもEPAやDHAの占める割合が大きい。淡水魚でDHAの占める割合がオレイン酸より多いのも珍しい。
骨が軟らかく丸ごと食べられるので、カルシウム補給にもなり、健康食品としての価値は高い。
淡白な味
ワカサギのタンパク質は17%で他の魚よりも少なく、構成アミノ酸も著しく多かったり少なかったりするものは無い。旨味も白身と近いが、脂肪含有量が3%以下という少なさから、さっぱりとした味を醸し出してくれている。
紅梅煮(諏訪湖名産)
梅は魚の身を引き締めて型崩れを防ぎ、生臭さを消して骨を軟らかくするとともに、酸化を防いで味を保つのに役立つ。また、梅に含まれる成分がカルシウムの吸収を高める効果がある。
ワカサギの鮮度が良いうちに、醤油と砂糖、それに水飴を少々合わせたダシを煮立てて梅肉エキスを加え、落し蓋をして40分ほど煮る。
食べ方
ワカサギは死後硬直に入る時間が短く、死後硬直の時間も熟成の時間も短いため、釣り上げて氷の上に放って置き、「野締め→死後硬直→熟成→天ぷら」の一連の手続きを氷の上ですませてしまうのが、最高の味わい方である。
ウロコもほとんど無く、骨が軟らかいので丸ごと調理する。

刺身・・・・・・・面倒ではあるが、鮮度の良いうちに刺身にし、ワサビ醤油で食べるとさっぱりして抜群の味。
天ぷら・・・・・味は上品だが、衣を沢山つけた市販の冷凍フライは衣が多いために油を吸いすぎてしまい、油の味を
        強く感じる。決して美味しいとはいえない。
白焼き・・・・・2〜3尾を串刺し、焼き醤油とレモンをかけて食べると、ワカサギの淡白な旨味が生きてくる。
その他・・・・・唐揚や唐揚にしたものをマリネにする。酒蒸し、南蛮漬、煮付け、吸い物、なます等もある。


              公魚釣り 穴をのこして 帰りたる      保坂 伸秋
              公魚の 群れ寄る性を 獲られけり     萩原 杏子
              公魚を 焼く杉箸の すぐ焦げて       鳥越 すみこ


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