日本の旬・魚のお話

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日本の旬・魚のお話
日本の旬   魚のお話(秋の魚-2)
疣鯛(いぼだい)
徳島の吉野川で、秋祭りでの神事の供物と一緒にハレの食として必ず作られるのが、この地方で「ボオゼ」と呼ばれるイボダイなどの姿寿司であり、この秋祭りの時期は、同じ徳島の阿南地方で「ボオゼ漁」がにぎわいをみせる季節でもある。
白身でやわらかく、上品な味のする魚である。
命名
形がやや鯛に似て偏平で、胸鰭の下部に小さな突起が「疣(いぼ)」のように見えたことから。また、エラ孔の上方には輪郭のぼやけた黒色斑があり、これが「疣」の様に見えることから命名されたとも。
地方名
姥背・ウオゼ(和歌山・大阪・兵庫)・・・背中が曲がってみえるため。
ボーゼ・ボオゼ(兵庫・香川・徳島)
クラゲウオ(岡山・広島) ・・・・・・・・・・・クラゲの下に多くみかけるため。
繻子(しゅす)・シズ(長崎〜関西)・・・・体表の光沢が絹織物の「繻子」に似ていることから「シュス」と呼ぶが、「シズ」は
                       その転か。
馬鹿(ばから)魚(播州室津)・・・・・・・・よだれを垂らすように、体表から粘液を出すため。
ギチ(熊本)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・粘っこいことを九州弁で「ギチ」という。体液が粘っこいことから。
垂魚(たるめ)(鹿児島)・・・・・・・・・・・・粘液の垂れる魚。
疣魚(たるみ)(鹿児島)・・・・・・・・・・・・古語で疣を「タリ」という。
マメノヒラ(浜名湖)・・・・・・・・・・・・・・・「マメ」は「粘(な)め」の訛り。「ヒラ」は「白(しら)」の訛りで、粘りが多い白い魚とい
                       う意。
マガイ(富山)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・方言で「氷柱」を「マガ」といい、氷柱のように白くキラキラ光る魚の意。
アゴナシ(千葉)・・・・・・・・・・・・・・・・・・吻端が円味をおび、口が小さくアゴがない様に見えるため。
ナツカン(下関) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・夏に美味い魚「夏魚」の意。カは魚名語尾。
エボダイ(東京・横浜)・・・・・・・・・・・・・イボダイのなまったことば。
   英名  Butter Fish(体表の粘液が非常に多い魚で、その粘液がバター臭いため)
スズキ目イボダイ科イボダイ
世界の暖海域におよそ27種が分布し、日本近海には4種が分布する。
イボダイ科の主な仲間として、メダイ、オキヒラス(ワレフー)、シルバー(ギンワレフー)、オキメダイなど。
形態
体は卵円形で偏平し、口は小さく鱗はハゲやすい。体側の表皮は筋肉の区切り(筋節)がはっきりわかるほど薄く、葉っぱのような筋が見える。エラの孔の上には輪郭のぼやけた黒斑点があり、胸鰭の下には小さな突起がある。
分布
太平洋側では松島湾、日本海側では新潟以南から東シナ海付近の南の海に分布。昼は100m程の海底で眠り、夜間は表層まで浮上する。浮袋を持たないので、自由に上下移動が出来る。また、季節によって9月頃は大阪湾沖へ、11〜3月頃には紀伊水道周辺に移動する。
産卵
日向灘から紀伊水道では、初夏に浅瀬で数千尾という大群が集結し、オスメス相手かまわず放卵、放精する。卵は浮遊卵で、孵化した稚魚たちは電気クラゲ(カツオノエボシ)の触手のかげに隠れる。このことから瀬戸内の人は、「クラゲウオ」と呼ぶ。
成長
体長は1年で14cm、2年で18cm、3年で20cm前後となり、最大で30cmになる。
産卵する親魚の大半は3年魚以上である。また、成長すると好んでクラゲを食べるが、これはまるで幼魚時代にお世話になっておきながら恩を仇で返すよう。
イボダイには、内側に多数の突起がある厚い筋肉でできた袋状の食道嚢(のう)という器官が食道と胃の中間にあり、消化を助ける役割があると考えられている。これによって、クラゲを消化してしまうのである。
福井県では、ミズクラゲが大発生した年は、イボダイの漁獲が多いという言い伝えがある。
漁法
本州中部以南と東シナ海で底曳網、刺網、定置網などによって漁獲され、年間1500〜8000トンの漁獲量がある。
一方、瀬戸内海では底引網で8〜10月に多く漁獲されるが、体長15cm以下の小型が中心である。
輸入物のシズ
瀬戸内海地域でイボダイを「シズ」と呼んでいるが、近年、北米や南米に分布するマナガツオ科に属するシズ(バターフィシュ)が、大量に輸入されている。
腹ビレがないのが特徴で、イボダイによく似ており、アメリカでは最も美味しい魚の一つとされ、ソテーやオーブン焼、ムニエルなどで賞味される。内臓が小さく、肉が多く、鱗や骨がさほど硬くないなど、食べ易さの点で好まれている。
中央市場によって名が変わる
神戸や大阪、京都の中央市場では、標準和名の「イボダイ」でも「ウオゼ」でもなく「シズ」と呼ぶ。東京都の市場年報は標準和名の「イボダイ」を使用し、横浜市場では「エボダイ」と呼ぶ。それぞれ市場によって扱い名が異なるという、珍しい魚である。
おしずさん
大正の終り頃、長崎の的山に「しず」と言う若い女性がいた。その「しず」さんの肌はもち肌で、鼻も丸く、それに粘液も豊富に放出する。そのことから「しず」を抱いた男は「イボダイ」を連想し、女性の性感が豊かなのだから男の印象にも残る。それでいつとはなくイボダイは「シズ」と呼ばれた。
鮮度の見分け方
イボダイはウロコが脱落し易いので、ウロコが無いと思っている人もいる。そのかわり、体表には粘液が分泌されるので、鮮度の良い魚体ほどヌルヌルしている。
郷土料理
いずみや(愛媛県)・・・・・三枚卸か、頭付きのままで中骨を取り、塩でしめたものを酢につける。その魚に、オカラを甘
               酢で味付けしたものを詰めて食べる。
姿寿司・・・・・・・・・・・・・・イボダイを背開きにして骨を取り、濃い塩水に1時間ほど漬けておく。次に水気を切って酢に
               20分ほど浸す。引き上げてから内側にワサビを少しぬり、間に木酢で作った寿司飯を入れ
               る。これを手で形良く握り、スダチの輪切りを乗せてから、圧し枠に入れる。そして、重しを一
               晩しておけば出来あがり。
食べ方
20cm以上の大きさで、鮮度の良いものは刺身にする。また、生干しにして、焼魚にする。小骨が軟らかいので、唐揚にすれば骨ごと食べることができ、各種の味噌漬にしても美味しい魚である。
  蒸し料理・・・酒をふりかけて蒸し、蒸したての熱いところを酢醤油で食べる。酢醤油にはゴマ油をたらすと風味が
          増す。また、細かくちぎった梅干、おろしニンニク、おろし生姜、酒それに味噌を混ぜたものをかけて
          から蒸す。


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