日本の旬・魚のお話

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日本の旬・魚のお話
日本の旬   魚のお話(春の魚-14)
伊佐木(いさき)
初夏の魚として釣り人に人気がある。『大和本草』には、「早く腐り易い・・下品なり」、また『日東魚譜(にっとうぎょふ)』には、「野人(下々の人)だけがこれを食う」などと書いているが、どうして、どうして、臭みもなく美味しい魚である。昔は、漁師以外に新鮮なものが手に入りにくかった為であろう。
水温が下がる秋から春は脂が落ちて身がバサバサになり、まるで別の魚のように味も落ちる。これほど旬がはっきりした魚も珍しい。

        手際よく 握りて旬の 梅雨鶏魚(いさき)        安川 椢雲
命名
「伊佐木」や「伊左幾」、「鶏魚」などと書く。
イサキは、外洋の岬付近や沖合の小島など、潮早い荒波の礁が棲息場所で、「魚岬(いさき)」と呼ぶようになったという。また、磯(いそ)と魚(き)からなる転訛語という説もある。
その他、中国でも鶏魚という名があるが、これは、第一背鰭(せびれ)の棘が3〜4本鋭く立ち、鶏のトサカに似ているところから。
地方名
昔から近場の磯で親しんでいるせいか、名前も豊富である。「シャミセン」、「ツンテン」は各地で通用し、三本の縞からの連想であろう。
イサギ(関東)、クロブタ・クッカ(神奈川)、コシタメ(静岡)、トビ(三重)、カジヤゴロシ(和歌山)、イセキ(高知)、ハンザコ(宮崎・鹿児島)、マツ(奄美)など。
   英名 Chicken brunt
スズキ目イサキ科イサキ属イサキ
仲間にはコショウダイ、サトダイ、シマセトダイ、ヒゲダイ、ヌマガシラなどがいる。ヤガタイサキ(コトヒキ)やシマイサキにはイサキの名がつくが、シマイサキ科に属し、浮袋で音を出すことが出来る。
形態
側扁形で左右の目の間が狭い。全体に黄色味を帯び、腹部は銀色で、背部には濃い褐色の縞がある。この縞は、幼魚期には特に明瞭であるが、成魚になると不鮮明になる。
体長は最大で40cm、重さは1kgぐらいになる。
分布
東北以南から東シナ海、台湾に分布。暖海性の魚で、黒潮の勢力の強い房総から宮崎、及び石川から長崎に至る海域に多い。岩礁地帯の100m以下に棲息する。夜行性なのか、夜間浮上して活発に餌を追う。
産卵
産卵期は6〜9月で、浅海の海藻の中に浮遊性の卵を産み付ける。2年魚で6万粒、4年魚で100万粒を産卵し、孵化は受精後およそ1日ぐらい。孵化した稚魚は、浅く静かな湾の中で集団生活を始める。
成長
幼魚は、翌年の春に3cmぐらいとなり、水深5m程度に棲息する。夏には10cm程に成長して岩礁地帯に集まるようになり、アジと混棲して生活する。
2年魚で20cm、3年魚で25cmになり、夏には50mほどの深さの岩礁地帯にいるが、冬期には100mの深場へ移動する。
漁法と養殖
定置網や一本釣りが主流である。
昭和40年に近大で人口採卵が成功し、孵化後52日目に放流された。また、伊豆の下田水産試験場でも成功している。イサキは回遊性でなく沿岸に定着するので、今後放流により増殖が可能な魚である。
麦わらイサキ
「麦わらダイ」は脂の乗ってないタイで、この時期のイサキも「麦わらイサキ」と言うが、タイとは逆に濃厚な脂肪の乗った磯魚として呼び、独特の香で美味しい。
珍味
腹子を指先で取り出して水洗いし、水分を切る。醤油やみりん、酒などで調合した、やや薄味の煮汁でサッと煮る。黄色の真子、白い白子を取り混ぜての煮込みが酒の肴に絶品。
また、腹子をホイルにのせ、うす塩で焼いたものも美味い。ボン酢醤油かレモン汁が良く合い、アサツキや万能ネギ、モミジおろしなど添えると一層味が引き立つ。
鍛冶屋殺し
中骨などは、生のときはノドに刺さりにくいが、煮物や焼き物、蒸し物にすると俄然トゲが強くなるので気をつけたい。
その昔、和歌山にイサキの骨がノドに刺さって死んだ鍛冶屋がいたので、この魚に「鍛冶屋殺し」の名がついたという。現在でも手術を受ける患者がいるとのことで、気をつけたい。
食べ方
やや薄切りにした刺身はタイに劣らぬ美味。またアライにして、梅肉醤油かショウガ醤油もいける。
  背ごし・・・・九州の人が好む食べ方で、皮がついたまま、おろさずに背骨ごと輪切りにして、骨ごとかみ砕くという豪
         快な食べ方。身が水に触れないため、皮下脂肪が損なわれずに口に入るので美味しい。

             いさき釣り 絶壁なせる 礁の鼻      高田 明子
             手繰り来て いさきの縞の 黄が躍る   岩崎 英恭
             釣り人の 昼餉を磯の 焼きいさき     藤田 志洸


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