日本の旬・魚のお話

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日本の旬・魚のお話
日本の旬   魚のお話(早春の魚-6)
蛍烏賊(ほたるいか)
昔から富山湾のホタルイカは蜃気楼と共にとても有名で、猫柳の花穂の咲く、春まだ浅い3月も初め頃に姿を現す。
ホタルイカが発光して青緑色に輝く海面を見ていると、思わず幻想的な世界に引きずりこまれていくような気分になる。
ホタルイカ漁は富山湾の春の風物詩でもある。
                 引きあぐる 網に閃光 ほたるいか     大場 美夜子
命名
マツイカやベニイカ、コイカなどと呼ばれていたが、明治38年にホタルの生態研究で有名な東京帝国大の渡瀬庄三郎博士よって、この青白い光からホタルイカと命名され、ボストンの世界動物学界への報告で世界的に認められた。
学名は博士の名を冠 して「ワタセニア・シンチルランス」と名付けている。
中国の『南越志』には、「イカが水面にのんびりと浮かんでいると、空からカラスが死んでいるものと思い、ついばみに来る。イカはそのカラスを足でからめとり、水中に引きずり込んで食べた」とある。つまり、烏を賊害することから「烏賊」の字が当てられた。
英名  Luminescent dwarf squid
形態
ヒメイカやミミイカに次ぐ小型のイカで、外套長は5〜8cmぐらいしかなく、オスはやや小さい。
一般に耳と呼ばれるヒレはハート型をしていて、外套長のほぼ5分の3を占める。目は体表の割りにかなり大きく、これは深海に棲息する為であろう。
発光器
ホタルイカの種類によって異なる。人の眼にはホタルのように青緑色に光って見えるホタルイカの光は、一対の足の先に3個づつある発光器から出ており、発光器自体は、普段は黒い点になって見える。
網に絡まったり、海岸に打ち上げられた時に光を発するところから、外敵に対する威嚇(いかく)のためであろう。
発光器は左右の眼の腹側にもそれぞれ5個並んでいるが、腕の腹側を中心とした部分や、外套膜、漏斗部、頭部にも皮膚発光器があり、合計では約千個ほどになる。これは直径0.2mmほどの小さな発光器で、人間の眼では暗闇に数分間慣らした後でないと見ることが出来ないほどの明るさである。
この発光器は、上部からの明るさに合わせて、外敵から身を守る為に下部方向に光りを発し、周囲の明るさの中に溶け込んでしまうという。言うなれば「光遁の術?」である。
               引きしぼる 網に重なり 蛍烏賊       野田 歌生
頭足網ニ鰓亜綱ツツイカ目ホタルイカモドキ科ホタルイカ
脳のある頭の上に足があることから頭足類と呼び、ホタルイカモドキ科では世界に17種、日本では5種の分布が知られている。
ホタルイカとホタルイカモドキの資源量が最も多く、大きさは後者の方が2cmぐらい大きい。
また、産卵期は前者が4〜5月、後者は7〜8月。分布も後者の方が深い所に棲息する。
分布
オホーツク海や北海道、太平洋側では熊野灘以北、日本海は朝鮮半島南部にまで分布。
通常は200〜1000mの深海に棲息している。だが、富山湾のものは、海底がすり鉢型の構造の為、水深1000mを超えるといい、また、豊な栄養をもたらす河川が幾筋も注ぎ込むことから、魚体も他の地域よりも大きく成長し、美味である。
産卵
1月〜3月頃、オスは生殖腕と呼ばれる右側第4腕から、精子の入ったカプセルである精夾をメスの体に植え付ける。卵がメスの輸卵管から出て来る時に受精する仕組になっている。
オスはカプセルを渡した後、また、メスは産卵後まもなく一生を終え、寿命は1年である。
産卵に来たホタルイカが時には浪打際に打ち上げられることもあり、地元では「ホタルイカの身投げ」と呼ばれ、魚津市から富山市水橋にかけての海岸線で見ることが出来る。
産卵期はメスだけが群生して浅場へ来るので、漁獲したものはほとんどがメスである。3〜5月頃産卵し、卵は1.2〜1.5mmで、産卵数は一回あたり2000粒ほど。一個体では約1万個。
水温10℃で約2週間後に孵化し、2日目には泳ぐようになり、もう一人前に墨をはく。
漁場
日本海では、200mの等深線が岸に向かって凹みをつくっている所が漁場で、佐渡ヶ島から隠岐島周辺海域が有名。太平洋側では駿河湾や相模湾及び房総半島沿岸が知られている。
漁獲量は富山県が2000〜2500トン、福井県が1000トン、兵庫県が2000〜2500トンである。
漁法
富山湾での漁は、1km程沖合の水深50m程度の海域で「ひさご網」と呼ばれる小型の定置網を使って3月初旬〜6月の期間、明け方4時頃に一日一回だけ行われる。網は陸に向かって広がりをもたせて設置してある。
産卵は夜間であるから、漁獲されたホタルイカは産卵後の個体がほとんど。これは資源保護にマッチした漁法である。
5月に入ると夜中に沖合で曳網漁が行われる。また、岸壁から照明灯で海面を照らしながら、タモ網ですくう漁法も行われている。
山陰の漁場では、2月頃から昼間だけ水深200m付近を底曳網で漁獲している。
                引きしぼる 網の渦燃ゆ 蛍烏賊       鹿島 四潮
水平垂直移動
孵化したホタルイカは富山湾外の海域へと移動してゆき、水深50〜130mの層を夜間は浅い層へ、昼間は深い層へと移動する。6〜9月にかけては、成長にともない昼間はさらに深い層へ移動する。この行動は成体になっても続き、日中は200m以上、夜間は50m以浅に浮上を繰り返す。
昼あんどん
いつでも光っている様なイメージだが、実は日中の明るい時に点灯し、闇夜には消灯している。まさに「闇夜にチョウチンでなく、昼あんどん」なのである。これも外敵から身を守る為であろう。
竜宮ソウメン
他のイカと違うのは、腕(足)を生で食べる点だ。ホタルイカの足だけをカラシ醤油で食べるのである。富山の名物。
竜宮の使者
海表近くに浮かび上がり、怪しい光を海面に漂わせるのが神秘的であり、地元ではホタルイカを「竜宮の使者」として愛称している。
                 竜宮の 提灯見せよ 蛍烏賊         佐藤 惣之助
食べ方
シャブシャブ・・・・出汁を煮立て、ホタルイカを肉のシャブトャブのようにして食べる。
桜煮 ・・・・・・・・・・塩分3%の熱湯に3分間入れ、桜色の表皮がはがれない様に冷水で冷す。生ショウガか醤油、又
           はワケギと木の芽を添えて酢味噌で和える。
佃煮 ・・・・・・・・・・桜煮を半日ほど天日で干し、醤油と砂糖を加え、とろ火で2〜3時間煮てミリンでツヤを出し、ゴマを
           まぶす。串刺し作りもある。
墨作り・・・・・・・・・スルメイカの墨を利用して作る富山独特のイカの塩辛。スルメイカの墨とワタを塩で1週間漬けて裏
           ごしし、ホタルイカ、酒、ミリン等で味付をして、1週間ぐらい寝かすと美味しくなる。これは墨汁にプ
           ロリンやグルタミン酸、メチオニン、セリンなどの旨味のあるアミノ酸が多く含まれているからである。
           また、細菌の増殖を抑える働きがあることから、保存食にもなる。
燻製 ・・・・・・・・・・桜煮を天日干しにして、砂糖で味付けをしてから燻製にする。仕上げに香のよいケシの実をまぶす。
その他 ・・・・・・・・石焼や串焼き、宝来焼き、甘露煮、みりん干し、天ぷら、唐揚、ホタルイカ御飯、ホイル焼き、サラダ、
           スパゲッティなど。


                  引きあぐる 網に閃光 ほたるいか      藤岡 筑邨
                  ほたるいか 捕はれし身の 光りけり     村野 陽子
                  蛍烏賊 からりと揚げて 祭宿         保坂 リエ


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