日本の旬・魚のお話

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日本の旬・魚のお話
日本の旬   魚のお話(冬の魚-13)
鮟鱇(あんこう)
「霜月あんこう絵に描いても舐めろ」といわれる程、冬の特に陰暦11月のアンコウは産卵をひかえ美味となる。
しかし、「魚偏に安いと書く春のこと」の川柳のように、アンコウは春になると急に味が落ちる魚である。
                鮟鱇の 外の吹雪を 忘れさせ     中村 雷音坊
命名
愚かな魚というのでついた「暗愚魚」という名前がアンコウの語源と云う説もある。江戸時代の天保2年(1831)に成立した魚類図鑑である『魚鑑』によると、アンコウは別名「華臍魚(カサイウオ)」とも「琵琶魚(ビワウオ)」とも云われていたようである。
確かに立派な臍状のものもあるし、形も琵琶に似ている。頼山陽は「華臍魚を食らう歌」と題し、アンコウ鍋の美味を漢詩にのせて賛美し、フグよりもすぐれていると詠んでいる。
    英名 Angler fish(釣りする魚)
アンコウ目アンコウ科
仲間にはアンコウ亜科、イザリウオ亜科、チョウチンアンコウ亜科の三大グループに分かれ、全体で16科265種の大家族である。日本近海で食用にされるアンコウは、キアンコウとクツアンコウの2種で、味はキアンコウの方が美味。
「関西のフグ」、「関東のアンコウ」と呼ばれ、関東で人気のある魚である。
キアンコウ(Yellow goosefish・・ガチョウのような魚)
     本アンコウとも呼ばれ、北日本に多く、体色はやや黄色味をおびた褐色で、体長1.5mにもなる。
クツアンコウ(Black mouth goosefish)
     屑鮟鱇と書き、南日本に多く、キアンコウよりも小型で暗褐色の体色を持つ。その上、小さな黒点が散在し、
     舌の前部が黒く腹膜も黒い。
その他の変わり種のアンコウ
     ミツクリエナガチョウチンアンコウは、メスがおよそ40cmに対しオスは約2cmで、オスはメスにしがみつき、そ
     のうち両者の皮膚が癒着して血管もつながり、全くの夫婦一体となる。
産卵
夏から秋にかけては深海に棲息しているが、冬になると浅い所に移動し、産卵は4月から7月に行われる。卵は帯状の寒天質に包まれ、卵塊は浮性で、産卵後、間もなく海面に浮き上がり、波間に漂う。
形態
アンコウは水槽に入れると、体から粘液を出して無言の抵抗をする。また餌を無理やり押し込んでも消化せず、胃の中で餌が腐敗して命取りになった例もあり、水族舘でも1週間ぐらいしか飼育出来ない。
外形は、上から押しつぶしたような、平たいシャモジのようなスタイルで、目は頭部に並んでおり、口は著しく大きく、鋭い歯を持っている。
下顎が突き出ており、頭が体に比べてバカでかく、グロテスクな魚であるがとても神経質、と並べれば、人間にも似たような人が・・・
漁法と輸入
水深100〜300mで漁獲され、トロール漁のほかに刺網にもよくかかる。北アメリカ、中国、ノルウェーなどからラウンドで、また、肝臓などはチューブ入りのナイロン袋に入れて輸入される。
アンコウの提灯(ちょうちん)
別名「釣り竿」ともいい、「魚を釣る魚」として知られている。背ビレは、先の尖った鰭状という支柱を等間隔に立て、そこに鰭膜を張った様なもので、提灯はこの背ビレが変化したもの。
先頭の鰭条だけが長く伸び、先端に鰭膜の変化したヒラヒラ状の皮弁というものがついていて、まるで頭の先端から提灯をぶらさげたスタイルになっている。
   昼型提灯アンコウ ・・・浅い海で暮らし、食用となるキアンコウは、先端の皮弁をヒラつかせて釣り餌にみせかけ、
                 小魚が集まって近寄ってきたところを、大口でパクッとひとのみにしてしまう。
   夜型提灯アンコウ ・・・深海魚の提灯アンコウは、暗黒の世界で暮らすので、皮弁を点灯し、漁を行っている。魚
                 類の発光法には自力発光と他力発光とがあり、提灯アンコウは前者である。これは、ルシ
                 フェリンと云うリン化合物が血液中の酸素で酸化されて光を生じるという体内の化学反応
                 によるもので、この発光器の構造は、発生した光を反射層によりレンズに集め、レンズで
                 拡大して体外に出すしくみになっている。ハダカイワシやカラスザメも同様である。一方、
                 他力発光する魚は、ホタルジャコ、ヒイラギ、マツカサウオなどで、バクテリアから発生し
                 た光を利用している。
アンコウの歯
歯は鋭く鋸のようになっていて、内側に傾いている。これは、魚を逃がさないで丸呑みする為である。また、食道にもう一対の歯の固まりがあり、これも鋭く胃の内部に向かって傾いている。
更に、魚の骨や鱗は後方に向かって傾いているので、彼等はそれをうまく利用して逃げられないように獲物を頭からくわえる。
アンコウの災難記 
昭和12年2月に塩釜港沖で揚ったアンコウの腹の中から、海鳥であるハシブトガラスが出てきた記録がある。また、アメリカでもやはり、戦前にニュージャージーで鴨撃ちに出かけた猟師が海面で暴れる異物を発見し、サメかと思って近づいてみると、大きなアンコウが海鳥をくわえ込んでいた。ただし、この時は鳥が大きすぎて呑み込みきれないまま、猟師に出会って両方とも捕らえられてしまい、珍説『漁夫の利』のような、アンコウにとっては災難の記録が残っている。
俗諺
鮟鱇が粕に因ったよう・・・醜い顔が赤くなっているのをあざけった言葉。
鮟鱇の餌待ち・・・・・・・・・・アンコウのように大きな口をポカンと開けている愚鈍な人。
鮟鱇の待ち食い・・・・・・・・何も貢献せずご馳走にだけありつく、怠け者の代名詞。
鮟鱇武士・・・・・・・・・・・・・・口では大きなことを言うが、内心は卑怯な武士をののしって言う。
アンコウの吊るし切り
アンコウの身は水分が80%もあってブヨブヨで、さらにヌルヌルしてつかみどころがないので、誰が考案したのか、なかなか合理的な解体法である。
まず、粗塩とタワシでヌメリをとり、下顎に鈎を通して吊るし、魚体を安定させるため大きな口から水を流し込む。この方法だと大事な内臓を傷つけずに取出せ、最後に残るのがあの大きな口である。
            料理人 つるし置いて 附分けする       柳多留
アンコウの七つ道具
吊るし切りされて解体された後は、背鰭を除いて無駄なく食べられる。これを『アンコウの七つ道具』といい、トモ(肝)、鰭、ヌノ(卵巣)、柳肉(身肉、ホホ肉)、水袋(胃)、鰓、皮を指す。
   チリメン・・・鍋にヌノ(卵巣)を入れて煮て食べると、体が温まるといわれている。肌着1枚分の温かさが体にみな
          ぎるとも云われ、このことからヌノは『チリメン(肌着)』とも云われている。
アンキモ
海のフォアグラと言われるくらいコッテリした美味しさがあり、珍味となっている。脂肪含有量は42%で、トロの約2倍である。
脂肪酸組成をみると、両者共に一価不飽和脂肪酸が大半を占めているが、多価不飽和脂肪酸はトロの方が多い。そのため、マグロのトロは魚の食感を強く感じる。
また、酒を飲むとビタミンAが不足しがちであるが、アンキモにはビタミンAがたっぷり含まれるところから、肴としてベストな食品でもある。
アンコウ鍋
醤油とダシで作る「わりした」の味と、「味噌」味の二つがある。
前者は、キモを茹でて鍋の具とする。後者は茨城やいわき地方の食べ方で、キモはくずして鍋の味噌仕立ての汁に混ぜ合わせる。コクのある鍋で、「どぶ汁」と呼ばれ、水戸黄門が名付け親とも云われている。
とも酢和え 
味噌とキモ、食酢、砂糖、ミリン等で調味したドロドロのソースに、茹でた七つ道具をつけて食べる。トモと食酢を使うことからの命名。


           水揚げの 鮟鱇口の かぎりあけ       幡野 淳子
           鮟鱇を 吊し魚屋 夕景色            山口 青邨
           鮟鱇も わが身の業も 煮ゆるかな      久保田 万太郎


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