日本の旬・魚のお話

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日本の旬・魚のお話
日本の旬   魚のお話(夏の魚-5)
真蛸(まだこ)
関東では正月に酢ダコを食べる。関西では夏至から11日目の半夏生にタコを食べる風習がある。「土用のタコは親にも食わすな」という、「秋ナスは嫁にも食わすな」と同様のことわざがある。

         とろ箱に 脚のぞかせて 蛸糶(せ)らる 馬場 秀
命名
江戸末期の『私語私臆鈔』には、「タコは多股(たこ)からきている」とある。『和名抄』には、「海蛸子(かいしょうし)(海のクモ)」とあらわされていたものが省略されて「蛸」一字でタコと呼ぶようになったと記している。
ほかには、タコは手の多いことから手許多(てここら)と言われ、これが転訛して出来た言葉という説など、どの説でも姿形からの命名である。
        英名  Common octopus
頭足網八腕形目マダコ科マダコ属
タコは軟体動物で貝類と同類であり、内臓の詰まった胴体は足と反対に頭のすぐ後ろにある。つまり足−頭−胴が一直線上にあるユニークな設計で、頭足類といわれ、イカも同じ仲間。
種類は150種類ぐらいと言われている。食用になる主要なものは、北海道や東北の寒い海に棲む体長3m・体重30kgにもなる水蛸と、飯蛸及び手長蛸があげられる。
形態
エラは意外に小さい。海の中で活発に動き回るには大量の酸素の供給が必要であり、エラへの血液の出し入れを効率良くする為、エラの根元に小さなポンプを備えている。これをエラ心臓と呼び、器官が左右にあるので、本来の心臓と合わせて心臓が3個あることになる。
3億5千万の神経
タコは脳と言うべき神経節や神経繊維が良く発達しており、8本の腕には3億5千万の神経が走っている(ヤング博士)。この様にタコは筋肉の魂で、しかも筋繊維に方向性がない為、高温で加熱すると次第に縮みあがって身がコチコチになり、皮はボロボロになる。
タコを柔らかく煮込むには、塩でぬめりを取ってからよく洗い、大根でまんべんなくたたく。そしてトロ火でコトコトつぎ水しながら水炊きし、柔らかくなってから味を整える。このような手順になっているのは、こんなタコの体組織の為。
分布
本州から台湾、朝鮮半島の南部、オーストラリア、大西洋、地中海など全世界の温帯の砂礫や岩礁海域に分布。
産卵
オスは体色を真っ赤にしてメスを追う。オスは8本の腕の1本が交接腕となり、メスの外套膣内に差し込んで精子のカプセルを送り届ける。一日中交接している場合もあり、2匹が見つめ合ったり寄り添ったりということもなく無関心を装いながら息の長い愛の交換が多いが、中には「つるみタコ」と呼ばれ、蛸壺の中でしがみついている場合もある。
産卵は夏から初秋にかけて。水温が25〜26℃になると、海草の根元や岩礁の窪みなどに約2万個の卵を生みつける。このフサ状の卵は藤の花の様に見えるので、「海藤花(かいとうげ)」と呼ばれ、煮物や吸い物、酢の物に利用される。約25日で孵化するが、親タコは孵化するまで絶食状態で過ごし、やがて死んで行く。
成長
孵化してから約半年で40g程度に成長する。その後は水温の上昇と共に成長がよくなり、生体では2kg・60cm以上に達するものもある。
水温が7℃以下になると生息出来ず、東北地方など、冬に水温が低下する地域では好適水温を求めて移動する。
マダコは一般的に夜行性で、恐ろしいほど貪欲である。アサリなどのニ枚貝は、吸盤で貝殻を引っ張って貝柱を引きちぎり、中の身を食べる為、真珠やカキの養殖場にとっては大敵とされてる。
また、カニなどは8本の脚で包みこんだのち、チラミンという毒素を分泌し、弱らせてから捕食する。
タコの一生
タコ入道の伝説で、人を海に引きずり込むような巨大なタコのイメージがあるが、魚の鱗や耳石による年輪のようなものが無いので確かではないものの、意外と短命であるため、そんなに大きくはなりそうにない。
マダコで1年から1年半、イイダコは1年、ミズダコは4年。
漁法
大根やらっきょう等の白い物に興味を持つ特徴を利用した突き漁や、一本釣り等がある。
タコつぼ漁の歴史は古く、弥生時代の遺跡からもたこ壺が出土していることから、その頃から行われたと推定できる。明石海峡は、いまも日本で最もマダコが取れるところで、6割方が「たこ壺漁」である。
芭蕉が明石を訪れ、「たこ壷漁」を見ながら次のような句を読んでいる。
       たこ壺や はかなき夢を 夏の月
         (獲えるえられたことも知らず海底の蛸壺から月を見上げるタコ。そのタコの運命を・・・)
明石タコの危機
明石のタコは、「サンパチの大冷害」と呼ばれる昭和38年に、水温4℃というかつてない低温になった為、殆ど死滅してしまったのである。この窮地に対する策として、熊本の天草からメスマダコ4000尾あまりを購入して放流し、これによって明石ダコは見事によみがえった。この経験を生かし、現在は増殖事業に取組んでいる。
漁獲量と消費量
全世界の漁獲量は約26万トンで、そのうち約半分がアフリカ北西岸。輸入先はモロッコが7万トン、モーリタニアが2万トンで主力。
日本近海は約4〜5万トンで、そのうち北海ダコが3万トン。海区別では、北海道海区が2.4万トン、瀬戸内海区が約1.1万トン、東北海区が約1万トン。
日本での季節別漁獲量を見ると、ミズダコやイイダコが揚がる10月〜2月が最も多く、次が6〜8月で、瀬戸内海中心にマダコの最盛期にあたる。日本の消費量は約16万トンで、全世界の漁獲量の約3分の2にも達するという世界一タコ好きな国民である。
麦わらダコ
明石では6〜7月に獲れたタコは大変美味しく、麦が刈られ麦ワラが出来る頃、水揚げされるタコを特に「麦わらダコ」と呼んでいる。小さなタコは前年の秋に生まれ、半年を経てこの大きさまで育ち、夏に向かって6月頃から一斉に出て来たもの。
明石タコは、明石海峡の速い潮流が太いがっしりとした脚を育み、また、タコ自身の味に影響を与えるエサが明石海峡に豊富で、歯ごたえと甘さが身上だが、「麦わらタコ」はそれに柔らかさがプラスされる。
世界初マダコ種苗量産化に成功
日本栽培漁業協会の屋島事業場(香川)は、1963年から種苗生産に着手し、2001年7月に量産化に世界で始めて成功した。マダコは全長7〜7.5mmで吸盤数が20個前後になると親ダコと同じ生態に変わるため、今まで20個以上の吸盤を持つまで飼育が出来なかった。
今回、孵化後1〜2週間の仔魚にイカナゴのシラスを餌にしたことが、成功に繋がった。これにより、完全養殖への可能性が増した。
タコの天敵
タコとウツボは双方共に穴を棲家とするので、出会いも多い。ウツボはタコの急所である頭を狙って、あの鋭い歯で噛みつく。タコも必死でウツボのエラ蓋を吸盤で押さえ込み、窒息死させようとするが、ほとんどの場合はウツボの方が勝つので、タコにとってウツボは天敵である。
そのタコも伊勢エビにとっては天敵となる。
タコ配
タコは空腹になってエサがないと、自分の足を食べてしまうといわれる。転じて利益の薄い会社が信用を落とさない為に、自己資金を食いつぶして無理な配当をすることをいう。このような一種の粉飾決算をタコ配と呼んでいる。
他の動物に食いちぎられると足はまた生えて元通りになるが、自分で食べた足はもう再生できないらしい。こんなことを思い合わせると、ちょっと教訓的に思える言葉である。
しかし、本当のところは空腹だから自分の足を食べるのではない。それが証拠に食べた足は全然消化されないで胃に残っている。タコが共食いしたり、自分の足をちぎって食ったりするのは、人間に捕まって狭い所に入れられたときに見られるヒステリーからくる行動である。
干しダコ
生きたタコを竹で組んだ枠に掛け、一日で干し上げたものが明石名物の「干しダコ」。固く干し上がったものを火であぶり、包丁で刻んで食べるが、「タコ飯」の食材としても利用される。
  タコ飯・・・包丁で刻んだ「干しタコ」を砂糖醤油に漬け込み、炊き上がる寸前のご飯に混ぜ込む。
茹でダコのポイント
1.タコは、イカと違って全身が筋肉の塊で、筋繊維に方向性がないため、加熱する前に必ず叩くようによく「塩もみ」し
  ないと柔らかくならない。
2.高温で茹でたりするとコチコチに固くなってしまうので、トロ火でつぎ水しながら水炊きをし、柔らかくなってから調味
  料で味付けする。また、最初から砂糖や塩を入れたり、塩を入れすぎたりしても固くなってしまう。
3.ぬめり取りは、まず、タコの腹(頭)をひっくりかえし、中の墨袋を取除き、全体に一握りの塩をまぶし、ねじり込むよ
  うにしてもみ洗いをする。細かいアワが立ってぬめりが取れたら水洗いをし、大根でまんべんなく叩く。すりこぎなど
  で叩くと、身がさけるおそれがある。
4.加工場では、良くもんだものほど歯応えの良い製品が出来上がる。また、茹で時間を短くして中が半生風のものも
  美味しいが、鮮度保持に注意が必要。
5.茹でる時にミョウバンを使って発色させると、きれいな色に仕上がる。 また、ほうじ茶を加えて煮ると、地ダコのよう
  な茶褐色に仕上がる。
6.硬くなってしまったものは、桜煮のように小豆と一緒に煮ると柔らかくなる。

明石ダコは、あまりもまないで茹で時間も短く、明るい色上げが特徴。
足の先を切り捨てる
タコは足先に触覚を持っており、何でも触れる為、汚れて細菌等の付着が多いので、調理の際にカットする。
半夏生
タコ食文化をもつ関西地方の人は、7月2日の半夏生にタコを食べる習慣がある。半夏生とは24節気の一つで、夏至から11日目の7月2日をいう。田植えも終わり、農家では田神様を祭ってタコを賞味するという。
梅雨時のタコを「麦わらダコ」といい、若ダコで味もよく、柔らかく香りも良い。この旬を食べる知恵かも知れない。
食べ方
刺身・・・・生きたタコのぬめりを取り、吸盤の吸い付く力を利用してまな板にくっつけ、皮をはぎ、そぎ造りにして梅肉醤
      油で食べる。また、皮は湯通しして、桜色になったところを皮とイボをぶつ切りにして、刺身といっしょに盛り付
      けして食べる。
天ぷら・・生でも茹でダコでも、薄切りにして天ぷらにすると、酒の肴として絶好の一品となる。
タコのやわらか煮
   ・・・・酒500ml、サイダー350ml、濃口醤油110ml、砂糖60g、昆布10cm角、鰹節15g(ガーゼで包む)に1杯分
      600gのゆでダコを入れて煮る。沸騰するまでは強火で、その後は弱火で1時間。
タコ飯・・・包丁で刻んだタコを砂糖醤油に漬け込み、炊き上がる寸前のご飯に混ぜ込む。材料は、ゆでダコ足4本、お
      米3カップ、生姜30g、油揚げのみじん切り1枚、出汁800cc、塩小さじ1/2、みりん20cc、濃口醤油45cc、
      薄口醤油15cc、三つ葉とユズをおろしたもの。
タコの卵焼き
      1.タコを2cmぐらいの厚さに切り、切れ込みを入れ、小麦粉を薄く塗る。
      2.卵黄5個、青ネギ3本、薄口醤油小さじ1/2、塩少々、みりん1杯を混ぜ、タコの足にたっぷり塗る。
      3.フライパンで焼く。


         蛸だけは 入歯が残す 寿司の折      尚 美
         湯加減に 蛸はそろそろ 赤くなり      竹 仙
         鉢巻の 蛸が出て来て 酔いつぶれ     紺 矢


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