日本の旬・魚のお話

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日本の旬・魚のお話
日本の旬   魚のお話(秋の魚-19)
甘鯛(あまだい)
秋から冬が旬。甘鯛は白身で、肉が柔らかく身くずれして扱いにくいが、味が良いので料亭では高級魚として扱われている。

      甘鯛を 焼いて燗(かん)せよ 今朝の冬   小澤 碧童
命名
『本朝食鑑』には、「味は極めて甘美く、肉も淡白で、最も毒がなく久わずらいの人にも害はない。江戸では盛んに賞でおり、甘鯛と言い、興津鯛ともいう」と、きわめて美味な魚だと誉めたたえている。
また『海魚考』によると、「あまだい、味(あじわい)あまし、故に名づく」とあり、味が甘いからだとしている。
また、京都ではクジ(グジ)と呼んでいる。この言葉は『海魚考』によれば、「屈頭角(くずな)・・・頭がケッタイにして屈(こご)むがごとし。故にクヅナと名付く・・・クジはクヅの転音なるべし」
また「方頭角(くずな)」とも書き、頭が四角状をしていることを方頭(くず)と呼ぶことからとも言われている。いずれも形からきた命名。
       くぢ焼きて 京のわかれの しるしとす   高桑 更平
地方名
興津鯛(静岡)・・・・・・・「おきつ」という奥女中が、家康公にこの魚を献じて賞味されたからとも、興津方面に多く産する
              ことからともいう。
タジ(福井・石川)、グジ(京都・和歌山)、グチ(富山)
           ・・・・これらの言葉は痘痕(あばた)の意味で、この魚の顔面の不定形斑紋をいう。
ビタ(高知)・・・・・・・・・・鐚(びた)の意で、使物にならない下魚の意味。
鍋腐らし(淡路)・・・・・・煮た鍋が腐るほどまずい魚の意。
ブドウサン(田辺) ・・・・黄金虫(こがねむし)の意で呼ぶのであろう。昔は黄金虫を葡萄蚕(ぶどうさん)と呼んだ。中国
              の唐時代には、葡萄酒を鬱金香と呼んで珍重したという。鬱金とは黄金色のことであるから、
              魚体の黄金体をしたキアマダイ(黄甘鯛)と呼んだ。
バトウ(山口)・・・・・・・・頭部の大きなことから「馬頭魚」の意で呼ぶのであろう。
コビル・コビリ(山陰)
           ・・・・島根の方言辞典に「コビル・コビリ、甘鯛をいう」とあり、また、「コビレル、発音不全で大きくなら
              ないこと」としてある。鯛と呼ばれる他の魚に較べ、小型であることの呼名であろう。
スズキ目アマダイ科アマダイ属
日本近海には赤甘鯛・白甘鯛・黄甘鯛の3種類がいる。日本海側には赤甘鯛だけしか分布していない。
  赤甘鯛・・・・・・現在市場に出回っている大半はこの種である。成魚は40cmぐらいの大きさ。50〜100mの深さに
           棲息し、干魚として利用が中心。
  白甘鯛・・・・・・50〜60cmと3種類の中で最も大きく、最も浅い20〜40mに棲息する。やや白みをおびたピンク系
           で尾ビレの模様が他の2種類と異なっているのも特徴。興津鯛ともいわれ、味のほうも一番良いとさ
           れる。刺身等に利用。
  黄甘鯛・・・・・・30〜35cmと3種類の中で最も小さく、最も深い100〜150mに棲息。全体が黄色がかり、目の下
           から上顎にかけて乳白色の線がある。
形態
かなりの側偏形をしており、体は細長く、頭部は大きく、額は著しいおでこ型。目の後ろ側に逆三角形をした銀白色の斑紋があるのが特徴。
甘鯛は獲れる時期や成長の時期によって、雌雄の割合が異なる特徴をもつ。
小さいものには雌が多く、大きくなるにつれて雄がふえ、成長しきった大型は全て雄で、これは性転換によるものといわれる。
産卵
9〜12月頃、水深70〜100mあたりの海底で産卵する。1尾の雌の抱卵数は成長とともに増加し、2千から20万粒にもなる。
成長
孵化した稚魚は10mmで、浮漂期といわれる稚魚期では海中を泳ぎ回り、やがて海底近くへと移って行く。寿命は5〜6年ぐらいといわれている。
おでこ型の額を活用して、小エビやシャコ、カ二類、巻貝、多毛類、クモヒトデといった底生生物を捕える。甘鯛の胃袋には、これらのエサといっしょに砂や泥が充満していることもある。
漁法
沖合いのトロール網に入る他は、はえ縄漁が中心。釣ったらすぐに氷水(塩水)に浸ける。真水だと白くなり鮮度が落ちる。
また白と黄甘鯛はほとんど獲れない。
甘鯛は、海底の砂の小山に横穴を堀って暮らしている。普通の魚であれば少しぐらい上にエサがあっても食らいつくが、甘鯛は海底にエサを這わせないと食わないし、エサをくわえて走り出す事もない。また巣穴からチョコンと顔だけ突き出しているのを、手かぎでひっかけて採る潜水夫もいる。
家康が名付け親の興津鯛
『申子夜話(カツシヤワ)』によると、「家康が駿府に暮らしていた時、奥女中の一人で興津の局が宿下りの土産に甘鯛の一夜干しを家康に献上したところ、いたく気に入り、興津の局が持ってきた鯛なので『興津鯛と名付けよ』といったのが名の起こりだという。その後、家臣達は静岡あたりで獲れる甘鯛を興津鯛と呼び、献上魚として重んじる様になった」とされる。
興津鯛用の甘鯛はかつて駿河湾で獲れたというが、今では浜名湖あたりの遠州灘で獲れたものを加工しており、1〜2軒の業者が久能塩を用いて特別にその味わいを伝承している。
多くのものは山口県から11月下旬頃に入荷したものを加工している。地元ではこの生干しを上等の煎茶でお茶漬けにして食べる。
    *申子夜話(1822年)は肥前平戸藩主(松浦)が10代将軍家治に仕えた頃の江戸初期以来の大名や旗本の
     逸話を記したもの。
富士山と甘鯛
江戸時代には、甘鯛のウロコには秀麗な富士山に似た模様があると伝えられ、この話が時の世の最大の権力者、家康という人物の輪郭とあい重なって、特に珍重された魚であったという。      
食べ方
キスと同様に水分が77%と高いため、身は柔らかい。
干物にすることにより、グルタミン酸やリジンの旨味成分が増え、独特の風味が出て一段と美味になる。
刺身では、三枚に下ろした身の皮の方を火であぶるとおいしく食べられる。またフグ同様に薄造りにし、ポン酢に紅葉おろしと薬味のあさつきを入れて食べるのもうまい。
兜酒は、頭に薄塩をして、時間をかけて遠火でこんがり表面が焦げるぐらい焼き、まだジュウジュウといっている頭を大鉢に入れ、上から熱燗を一気に注いで作る。芳ばしい香りで辛党にはたまらない一品。
料理法としては、一夜干しの塩焼きが一般的であるが、脂肪分が2.4%と低いことから、唐揚げは上品な味で食感もよい。他に酒蒸し、骨蒸し、昆布締め(三枚に卸したものを昆布で包んで3〜4日間寝かせる)、椀物、煮物、甲煮など。西京みそ漬けは特に美味しい。


            甘鯛の 味噌漬けもよし 京泊り     矢尾 枝連草
            甲煮の 白甘鯛は 眼をむける      大橋 幾生
            甘鯛を 焼きて煮てわが 女正月    大野 美幸


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