日本の旬・魚のお話

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日本の旬・魚のお話
日本の旬   魚のお話(秋の魚-11)
秋刀魚より早く秋の訪れを告げるのがカマスである。『秋茄子は嫁に食わすな』と同様に、『秋カマスは嫁に食わすな』という諺もあるほど、秋になると脂が乗って白身の上品な味になる。

           カマス干し 初秋の海の 濃き碧き    活 秋
命名
江戸時代には機織りの横糸を通す杼(ちょ)=梭(さ)に姿が似ているところから、梭魚、梭子魚(さしぎょ)とも言われた。また、雑穀や塩、石灰また魚の塩干物をいれる袋を叺(かます)という。
叺は蒲簀(かます)ともいい、もともと蒲(かます)を編んで作った事から、その名がある。この叺は、ワラムシロを二枚重ねるか半分に折って縫い合わせただけの袋で、口が大きいという共通点から同名になったとのこと。
地方名
赤カマスと大和カマスでは呼名が異なる。

 赤カマス
   アカハダ(和歌山)・・・・・・・大和カマスに比べ、鱗が粗いために粗鱗の意で呼ぶ。
   シャクハチ(和歌山)・・・・・魚体が円筒形で、竹笛の「尺八」に似て、体長も約一尺八寸ほどあるということか
                   らの呼名。
   ドロカマス(和歌山) ・・・・・赤褐色の体色から泥カマスの意。

 大和カマス
   アオカマス(和歌山)・・・・・赤カマスに比べ、体色がやや青味がかっていることから。
   磯カマス(和歌山)・・・・・・・内湾でよく獲れるため。
   シズキカマス(京阪神で小型のもの)
                ・・・・志筑地方(淡路)でよく獲れて、京阪神に出荷された為の産地名。
   トウジン(田辺)・・・・・・・・・「東人」の意。東人とは蝦夷の人のことで、野卑なものをいう。カマスの外見から、
                   野卑な魚として呼ぶのであろう。
形態
スマートな体で、時速150kmにも達するスピードの持ち主である。これは尾のつけ根が太く、キック力が強いからであろう。口は受け口で、下顎の先端に鋭い歯が1本、上顎に大きな歯が2本ある他、両顎にはこれより短い尖った犬歯が続いて奥に行くほど長くなり、舌まで小さな歯が並んで奥に向かって生えている。
スズキ目カマス科
日本には9種類ぐらい知られている。代表的なのは赤カマスと大和カマスで、他にはタイワンカマスやオオカマス、ダルマカマスなどあるが少ない。
沖縄から南には鬼カマスと呼ばれる2mにもなる大型がおり、時には人間を襲うと言い、海のギャング(英名バラクーダ―)とも呼ばれている。
またオオカマスは皮に毒性を持ち(シガテラ毒)、食べると腰が抜けたり、口がしびれたりする毒カマスである。
  赤カマス・・・・・・・一般にカマスといえばこのカマスをいう。
  アブラカマス・・・・本カマスとも呼ばれ、最大で50cm一般に40cm前後が多い。3〜5年生存し、やや褐色に
             近く、ウロコも大きく剥がれにくい。味は良く魚価も高い。
  大和カマス・・・・・水カマス、青カマスとも呼ばれている。第一背ビレが腹ビレの直上か、やや前方にあること
             で他のカマスと区別できる。体長は60cmにもなるが、普通は30cm前後である。水っぽい
             ので塩干物にされるのは、このカマスである。旬は夏と言われる。

                水揚げの 青カマス藍 きらきらと     高田 明子
分布
関東以南の沿岸に広く見られ、赤カマスはことに南日本に多い。また、台湾から南シナ海、アフリカ、オーストラリアやポリネシア、ハワイなどに広く分布。
産卵
6〜7月を中心に南の海域ほど早く産卵する。卵は浮遊卵でしばらく海中をただよい、孵化してから沿岸の海藻帯に集まる。
成長
夏から秋の体長5〜10cmとなる幼魚時代は、岸に近く海藻の生えている5〜30cm前後の中層を群泳する。
マアジ、ムツの幼魚と共生し、カマスが上層、マアジは下層、底近くにムツというように棲み分けている。
成長するにつれて共生ら離れ、沿岸から沖の根に棲家を移すが、群れを作ることに変わりは無い。
カマスは受け口のためか常に上層の魚を狙う。大きな目でかなり遠くからでも獲物を見つけ、スーと近づき、いきなり鋭く尖った歯でマアジやイワシ、キビナゴのような小魚に食らいついて、丸ごと飲み込んでしまう。
カマスは消化器が短いので消化も早く、絶えず空腹状態であるため、ひたすら貪欲に餌を追うことになる。
漁法
定置網が多い。
一潮ごとに大きくなると言われるカマスは、獲れ始めの7月頃にはまだ20cm足らずで細長いが、8月頃になると猛烈な勢いで小魚を食べ、10月頃には40cmとなる。
「カマス一匹底千匹」と言われる様に、一匹釣れば底には恐ろしいほどの大群がいる。大群が餌を見つけ、先を争って食いつく光景はさぞかし圧巻であろう。
カマスの歯
チョウツガイの歯になっており、普段は寝ているが、獲物を追って捕らえる時はピンと立つ便利な歯である
一寸ごとに味が変わる
貪欲にえさを食べて成長するため、大きさにより料理法も変わる。小さいものは丸干し、20cm以上は開干し、25cm前後は姿寿司、30cm前後の脂の乗ったものは塩焼きや煮付け、40cm前後のものは刺身によい。
『座り』のよいカマス
魚肉に対し2〜3%の食塩を加えて擂(す)ると、弾力性のあるスリ身が出来る。この弾力性は、魚肉タンパク質が網状の構造を形成するためだが、この弾力性のある状態を『座り(すわり)』という。
蒲鉾の弾力性を『足』というが、赤カマスを使用すると『足が強い』(座りの良い)蒲鉾となる。
生干しが最高
赤カマスの身肉の白さは美しく映えるが、水分は多少多い。
65%の鰯、63%の鯖、62%の秋刀魚に比べ75%と水っぽい。開いたカマスを3%ぐらいの塩水に30〜40分ぐらい浸漬し、日干しにすると『座りの良い』状態となる。水分も僅かしか減少していないので、ソフトな座りとなり、アミノ酸やイノシン酸が増え、旨味が最高となる。
食べ方
「カマスの焼き食い一升めし(広島地方の諺)」といわれる『焼き食い』とは、浜で網を曳いてきた時、網から飛び出してピチピチ跳ねているカマスをそのまま焼いておかずにして食べると、一升もごはんが食べれてしまうという諺で、生きの良いカマスはそれだけで美味しいということであろう。
料理法は、薄造りの刺身、塩焼き、天ぷら、フライ、唐揚げ、酒蒸しやホイル焼きなどの蒸し物、煮物などが向いており、万能魚である。
塩焼きのコツは、重さの3〜4%の振塩にして30分間程度冷蔵庫に入れるか、または、3%ぐらいの食塩水に30分ぐらい浸漬しておくこと。こうすると、塩に触れている間にたんぱく質が凝固して身がしまり、この熟成中にたんぱく質からグルタミン酸やアスパラギン酸が遊離して旨味成分が増える。また、脂肪含有量は5%と秋に出回る魚としては大変少ないが、たんぱく質の凝固に伴ない身肉中に脂肪が抱きかかえられるため、食べても脂のある様な食感となる。


             豊漁の カマスを干して 秋の浦      丹代 晴代
             自家製の カマス背開き 一夜干し     水野 博子
             波音の 聞ゆる宿の 焼きカマス      丹羽 友子 


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