日本の旬・魚のお話

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日本の旬・魚のお話
日本の旬   魚のお話(夏の魚-18)
鱸(すずき)
スズキはブリやボラと同じように、幼魚から成魚までの間に何回か名を変えるため、出世魚として喜ばれる。
背は青黒く、全体に銀白色に輝き、形はあくまでもスマートな流線形である。また、精悍な顔付きで第一背鱗の棘がピンと立っている姿は「鯛に次ぐ美魚」である。
背白身魚の代表格として、冬のヒラメ、春のマダイ、夏のスズキが誉れ高い。冬のハラブトも脂が乗って美味と言われる。特に東よりも西で人気が高く、関東からも関西市場送りとなっている。

               釣り上げし すずきの巨口 玉を吐く    蕪村
命名
『本朝食鑑』によれば、「黒い色を盧という。この魚は白い生地に黒い章(もよう)がついているので、魚偏に盧とかいて鱸となった」とある。
また『日本釈名』には、「その身白くて“すすぎたる”ように清げなる魚なり」と記されている。この「すすぎ」が「すずき」になったという。
色に関係する以外の説としては、スズキが直進するように泳ぐことから『大言海』では、「進(す)く進(す)くの意。“進(すす)き”の意か」と書かれている。
地方名
デキ(東京)・・・・・・・・体長20cmほどの幼魚をいう。「デキ」は男の子に対する罵言。
ハネ(各地)・・・・・・・・若魚期の終わりの頃のものをいう。
マダカ(浜名湖)・・・・・フッコを越えてスズキにあと一歩の魚をいう。
チュウハン(山陰)・・・若魚の呼名、「中半」の意。
アンサン(山陰)・・・・・方言の「アンサン」は兄弟や若衆の意で若魚をいう。
ニュウドウ(北陸) ・・・「入道」の意で坊主頭の化物に老大魚をたとえていう。
ハクウ(北九州) ・・・・スズキの幼魚の呼名「白魚」の意か。
     英名    Sea bass & Sea perch
出世魚
1.ヒカリゴ ・・・5cm前後で体が銀色に光って見える。
2.コッパ ・・・・当歳魚。小葉と書く。
3.セイゴ ・・・・2年魚。25cm前後。
4.フッコ・・・・・2〜3年魚で30〜40cm。関西では「ハネ」。
5.スズキ・・・・4年魚で60〜70cm。1mにもなるものもある。
6.ハラブト・・・冬の産卵期を向かえた大物。腹太。
形態
体長は最大1mで重さ10kgにもなる。成魚は淡い紺灰色で、幼魚期には黒点があるが成魚になると消失する。鰓蓋は鋭利な刃物の如く、「エラ洗い」と呼ばれる様に、釣られる時は力の限り抵抗を示し、水上に頭を振って鋭い鰓蓋で糸を切ってしまう。
スズキ目―スズキ科―スズキ属
スズキ目こそが硬骨魚類では最も進化した一族で、スズキ亜目の海魚は何と900種にも及ぶ大世帯。何やら「鈴木」サンと似ているのでは・・・。
仲間にヒラスズキがある。この魚は川に遡上しないで荒磯に棲み、体高が高く、アゴの下に一列の鱗を持つ。伊豆以南に分布する。
尚、昭和50年前半まではスズキはハタ科とされていた。
分布と漁法
日本の各地の内湾に分布し、中国や台湾、朝鮮にも広く分布。
巻き網が主だが、松島湾では追込網という変わった漁法もある。
瀬戸内海では、大阪湾、播磨灘、周防灘の順で年間約3千トンの漁獲がある。
産卵
大阪湾では、友が島から岩屋(淡路島)にかけ、12〜1月頃に産卵する。卵は15〜20万粒の分離浮性で、海中にただよい、水温が14〜15度なら4〜5日で孵化する。
成長
1.冬に外海に接した沿岸で育った稚魚は、3〜4月頃に内湾に入る。10cmぐらいになった幼魚は、夏頃になると川
  をさかのぼり、汽水域から淡水域まで侵入する。9月頃になると水温の低下とともに、再び沿岸部から湾内へ移
  動し、次第に湾外の深みへと出て行く。
2.湾外で冬を越した1年魚の多くは、5月頃再び接岸して湾内に入り、9月頃になると再び湾外の深みへと移動を繰
  り返す。3年以上で成魚となる。
3.成魚になると、岸近くの岩礁のある磯につき、根魚と呼ばれて波の渦巻く荒磯を好む。中層の魚を追って活動す
  るが、水面にジャンプすることもある。
夜行性
成長するに従って季節ごとに棲む場所が変わるので、食べ物も色々変わる。
一般に2〜3cmの頃はアミ類、14〜20cmではエビ類や小型魚類、アミ類を、17〜30cmでは魚類や大型のエビを食べる。
生き餌ねらいの知恵者
大食漢のくせに生き餌しか食いつかない。視覚で餌を見付け、振動感覚器官で獲物を捕らえる。そのため、複雑な動きをするルアー(疑似餌)が使われる。直線的で単調な等速運動しているものには見向きもしない。
日本人とスズキ
『古事記』にも、大国主命が出雲の国で宴を催した時にスズキが卓を飾ったとあり、また、全国の貝塚からスズキやクロダイの骨が一般的に見付かっていることから、今では利口者とされているスズキも、昔はたやすく獲れたのかもしれない。

       鱸とる 海人のともし火 よそにだに
           見る人ゆえに 恋ふるこの頃    万葉集 作者不詳

              古来よりスズキが暮らしに息づく風物詩として、土地の人々に愛され、
              親しまれてきたことが察せられる。
スズキ落し
松江では10〜11月に轟く雷を「すずき落し」と呼ぶ。
これは「すずき落し」が鳴り始まると、穴道湖からスズキが海に逃げると言うスズキの生態をうまく言い得ている。
平清盛とスズキ
清盛がまだ安芸守であった頃、伊勢の国の津から船で熊野神社へ参詣した時、途中の海上で大きなスズキが船中へ飛び込んだ。近従者が、「これはまさしく目出たい吉兆でございます。昔、周(中国)の武王の船へ飛び込んだことがあり、それから戦いに勝ち進み、天下を取ったとのことにございます。まさしく熊野権現のご利益に違いありません。早速料理して召し上がりませ」と言った。
その後、霊験あらたかに吉事のみが続き、太政大臣まで出世したことは『平家物語』に出ている。
松江鱸魚(しょうこうすずき)
中国では古くから「松江鱸魚」といって、上海の近郊にある松江のスズキが有名である。
昔、松江出身の晋の張翰(チョウカン)という人が出世し、洛陽で高官になったが、夏になるとスズキの刺身を思う気持ちがつのり、ついに高官を捨てて帰郷してしまったという故事がある。「松江鱸魚」の名はここから広まったと言う。
日本でもスズキといえば島根の松江が有名。不思議な一致である。
このスズキがとりもつ縁で、中国の松江と日本の松江が姉妹都市として友好を続けているのは、心暖まるエピソードである。
   * 中国のスズキは古来よりの珍味であるが、スズキとしては全く違う褐色をした魚で、日本ではカジカ科に属す
     るヤマノカミと呼ばれる魚である。その形相がいかめしいので、「山の神」と名がついている。
あらいはなぜ白身魚か
白身魚には、ATP(アデノシン3リン酸)という物質が多く含まれている。このATPは筋肉を引き締める役目がある。これに対し赤身魚はATPが少ないため、「あらい」にしても、あまり身がしまらないのである。
奉書焼き(松江の名物)
和紙の奉書紙を水に濡らし、魚体を2〜3重に覆い包み、旨味を逃がさないように焙烙か天火で蒸し焼きにしたものを、煮返し醤油にモミジオロシを加えた辛口の適当なワリシタにつけて食べる。
食べ方
セイゴでは焼き物や煮物。スズキでは夏にあらい、刺身、湯引き等。
スズキのあらい 
    昔は生臭みを除くために魚を良く洗っていたようで、その名残のようだ。あらいを造るには、薄く刺身にした後、
    冷水で洗い、ふきんでふき上げ、梅肉かわさび醤油で食べる。
スズキの湯あらい 
    スズキは皮が厚く、食べにくいが、湯あらいすることで、少し歯ごたえのある皮目と表面の若干の脂がぬけた
    刺身となり美味しい。
      1.スズキの皮目に包丁で切り目を適宜入れ、へぎ造りにする。
      2.お湯に酒をさじ1杯くらい加え、1)をくぐらせてすぐ氷水に放つ。
      3.ふきんで水気をとり、わさびか梅肉醤油で、薬味に塩もみキュウリや千切りミョウガを添える。
        * 梅肉醤油は、梅干味を包丁で細かくたたき、醤油と煮切り酒を少し足して、すり伸ばしたもの。梅干が
          酸っぱいときは少し砂糖を加える。


          台風の 残せし波や せいご釣り    水野 睦子
          鱸釣る 下潮の刻 のがすまじ      石毛 昇風
          洗われて 通の喜ぶ 活けすずき        清


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