日本の旬・魚のお話

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日本の旬・魚のお話
日本の旬   魚のお話(早春の魚-3)
鰆(さわら)
産卵後の夏場を除き、ほぼ年中うまい魚。桜の花盛りの頃に獲れるサワラを和歌山では「桜鰆」と呼び、サワラを春の使者とも呼ぶ。春鰆は関西で、寒鰆は関東で好まれる。
俳句では春が季語となっている。青魚は一般的に赤身であるが、サワラは白身が特徴。とくに尾に近い部分が美味。身の水分が、サバの65%などと比べて70%とやや多く、肉質は軟らかで身割れしやすい。
         鰆来て 瀬戸の内海 活気づき      宇野 政江
命名
春に外海から瀬戸内海に入り込み、春漁の魚から「鰆」と書いて「サワラ」と呼んでいるが、「サ」は狭い、「ハラ」は腹を意味し、腹が狭くスマートな体形と言うのが語源。
貝原益軒は『大和草本』の中で、「馬鮫魚(さわら)あり、曰く魚太なれども、腹狭し、故に狭腹(さわら)と号(な)ずく、サは狭小なり」と書いている。
大きい物をサワラ、小さい物を狭腰(さごし)と呼んでいる。山口から九州にかけては30〜40cmをヤナギ、40〜50cmをサゴシと呼んでいる。
地方名
カマチ(壱岐)・・・・・「カマキ」の転呼であろう。「カマキ」は叺の方言で、ワラ製の口の大きな入れ物を叺と呼び、口の
            大きく開く魚を「カマス」と同義の「ホゴ」、「フゴ」、「ダツ」、「ラス」などの名で呼ぶ。
グッテリ(香川)・・・・グッテリは讃岐方言でグッタリすることの意で、サワラは一気に餌にとびつき、釣り上げると大暴
            れするが、すぐ死ぬことから。
アカキュウベイ(三重・静岡)
         ・・・・明治時代の俗語で「赤九兵衛」と呼んだことが隠語辞典に出でいるが、語意は不明。
   英名 Spanish mackerel
スズキ目サバ亜目サバ科サワラ属
サバ科┬サバ属―サワラ(本鰆)・ヨコシマサワラ(中国語では鰆)
     │      ウシサワラ(沖鰆)・タイワンサワラ・ヒラサワラ
     └カマスサワラ属―カマスサワラ

沖鰆は本鰆とは別種でウシサワラといい、台湾や南シナ海が漁場。体形は2mにも達するが、味は良くない。地方名はハザワラ・クサモチ(神奈川)、ウチ(和歌山)、イヌザワラ(長崎)など。
その他、近年では銀サワラ、白サワラと呼ばれる、オーストラリア東海岸沖及びニュージーランドに分布しているものが輸入されている。この魚は脂質を0.8%しか含まず、肉質があっさりしているので、切り身や粕漬に向いている。
分布
北海道南部からオーストラリアにかけて分布する。
形態
全体のスタイルは女性的だが、頭部は男性的な顔つきをし、口には三角形状の鋭い歯が並ぶので、釣り針をはずす時には要注意である。釣りでは直線的な引きがあり、船上に上げるとケイレンさせる様に大暴れするが、息絶えは早く、潔い魚である。
産卵
5月から6月にかけて直径1.5〜2mmというサバ科の中でも特に大きい卵を産卵する。産卵数は約85万粒。卵は一昼夜ぐらい波間を漂いながら孵化する。
成長
プランクトンを食べて秋頃には40cmぐらいに成長し、外海へ旅立つ。一方、産卵して痩せ細った親も小魚類を食べあさり、外海へ出て行く。出世魚でもある。
  関東・・・サゴチ(50cm前後・1kg以下)−サワラ(50cm以上・1kg以上)
  関西・・・サゴシ(50cm前後・1kg以下)−ヤナギ(50〜70cm・1〜2.5kg)−サワラ(70cm以上・2.5kg以上)
漁法
鰆網(瀬曳網)、曳縄釣、落し釣り、延縄釣り。
   曳縄釣り ・・・・縄の先に針をつけイワシを餌につけ、あたかもイワシが生きているかのように船を操縦して釣る。
                潮境 右し左し 鰆舟     水見 悠々子
   鰆網・・・・・・・・サワラの魚群を数隻の船で追い掛け、疲れた頃を見計らって一隻が魚群の先頭に出て石を海中
            に投げ、サワラが逆転して逃げるところを旋網で漁獲する。
鰆の漁獲量も7〜8千トンで年々減少傾向にあり、輸入が2万トン以上となっている。
DHA
寒鰆は餌がサンマやイワシのためか、EPAやDHAが非常に多く、DHAはサンマより多い。
鰆の美味さの秘密
エキス分中の窒素量は、筋肉100gに対して450mgも含む。この量はタイやヒラメに匹敵するくらいに多い。アミノ酸の中のヒスチジンもサバと同じくらい多く含む。タウリンはタイよりも多い。イノシン酸やカルノシン、カルニチンなど、コクの素になる物質も多い。
刺身の王様
寒鰆は脂肪が14〜16%に達し、インドマグロの様にトロリとした食感を味わう事が出来る。通常、皮をつけたまま造りにする。これは皮と身の間の独特の香りを生かす為と、やわらかい身肉のため。サワラの刺身は漁師か、その近くの人々に限られるようだ。
「鰆の刺身は皿までなめる」という俗諺もある。
関東と関西の食文化の差
関東は寒鰆を好み、塩焼きと西京漬けが中心。関西は春鰆を好み、刺身、照り焼き、塩焼き、西京漬け、かぶら蒸し、押し寿司など、食べ方も多い。西京漬に京都の白味噌がピッタリなのは、京都の白味噌は香りがあまり強くなく、サワラの持味が生かせるため。
豆年貢
愛媛県新居浜地方では、嫁が元気でまめに働いた謝礼に、夫婦同伴してサワラを妻の実家の両親に贈り、そのサワラを料理して娘夫婦をもてなすという風習がある。
       豆年貢 とし茅屋に 鰆来ぬ      岡田 菜根
       新嫁の 里へ持たせる 鰆かな    佐々木 なみ子
からすみ(唐墨味)
『大和本草』には、「その子を干して酒肴とす、味良し、多く食らうべからず」と出ているし、『本朝食鑑』には、「鰆は子が多く、胞(はらこ)は刀豆のサヤのようである。乾燥すると中華の墨の古いものに似ているので唐墨と名づける。これを切るとツヤあり味も甘味である」と記されている。唐墨味の語源である。
食べ方
身が軟らかく身割れし易いため、味噌などに漬ける時は少し長めに漬けるのがコツ。
刺身は昆布締めにしたものを用いるといい。また、酢漬けにして押し寿司にする。
塩焼き、照り焼き、味噌漬けなどにして食べるのが一般的。
煮付、かぶら蒸などの蒸し物、フライなどにしても美味。


         一匹の 鰆を以って もてなさん     高浜 虚子
         渦潮に 鰆とる舟 数知れず        戎  宏樹
         底潮を 読みつくしたる 鰆釣       村上 静月


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