日本の旬・魚のお話

お問い合せ先
現在作成中
係  
部・課 企画管理部
主要扱い品目  
担当者  
TEL  
FAX  

日本の旬・魚のお話
日本の旬   魚のお話(早春の魚-4)
玉筋魚(いかなご)
晩秋から冬にかけて生まれた3〜4ヶ月の稚魚を新子(しんこ)と呼び、瀬戸内海では2月末から5月頃までの体長3cm前後が最もうまいと言われる。明石や神戸の家々では、この頃に獲れた鮮度のよい新子を「くぎ煮」と言う佃煮にするのが、春の風物詩となっている。北海道では3ヶ月遅れが旬。
                     いかなごに まづ箸おろし 母恋し    虚 子
命名
『和漢三才図会』(江戸時代1712年)には、「背が青く、形がカマスに似ていると説明され、『玉筋魚』と書いて俗に“以加奈古”あるいは“加末須古(かますご)”と呼んでいる」とある。
また、『日本山海名物図会』(1790年)にイカナゴ漁の様子が描かれている。4艘の小舟に漁師が二人ずつ乗り、四方から取り囲む様に網をすくいあげている絵があり、説明に「梭魚皃」という文字が書かれ、「かますご」と仮名がふってある。
地方名
カナギ(北九州・山口) ・・・・・・・「カナ」は糸のように細いものの意。「ギ」は魚を表わす接尾語。
コオナゴ(東京・北陸・山陰)・・・コオナゴは「カナゴ」の転呼。「小女子」の字をあてていることもある。女の子のように可
                   愛い姿からの連想か。
メロオド(宮城)・・・・・・・・・・・・・・「小女子(こおなご)」を洒落て「女郎人(めろうど)」と呼ぶのであろう。
シャシャラナゴ(和歌山)・・・・・・関西方言で「シャシャラ」は「ヤシャラ」や「セセラ」ともいい、「孫の孫」のことで、極め
                   て小さなものを表わす語。すなわち、小さな魚の意。
ズブドオシ(茨城)・・・・・・・・・・・「ズブリ通し」の意で呼ぶ。針のように細い体形がらの呼名。
カマスゴ(阪神・三重)・・・・・・・・カマス科のカマスの子に似た魚の意。また、摂津兵庫より蒲簀に入れて諸国に送った
                   ことからの意とも。
シンコ(明石)・・・・・・・・・・・・・・・1年魚を新子と呼ぶ。
フルセ(明石)・・・・・・・・・・・・・・・2年魚を古背と呼ぶ。京都地方では「カマスゴ」と呼ぶ。
コオナゴカマス(東京・千葉)・・・上記と同義の呼名。「カマスに似た小魚」の意。
スズキ目イカナゴ科
日本各地の浅海に分布し、海底が砂や砂礫の水域にすむ。他にシワイカナゴという仲間がおり、相模湾から北に生息しているが、あまり一般的ではない。
形態
体は細く円筒形で、下顎が上顎より突き出し、吻は尖っている。背ビレは長いが腹ビレはなく、砂に潜る習慣があることから、各ヒレは軟条だけで刺条はない。また、歯がなく、浮き袋を持っていないのも特徴としてあげられる。背面は青緑色から黄褐色で、腹部は銀白色を呈する。
産卵
瀬戸内海では12〜1月頃、北海道では3〜5月頃に、砂礫のある深さ10〜30mの海底が産卵場となる。2〜3000粒の卵は砂粒に粘着し、10〜25日で孵化する。稚魚は4mm。
成長
体長が約3cmまでは細くて透明なシラス型で浮遊生活を送り、7〜8cmになると内湾や沿岸の砂底で底生生活に入る。
成魚も未成魚も浮遊性の甲殻類、特に焼脚類が主な餌となっている。塩分濃度や水温などの違う、二つの海水が接する潮目に群れを作って集まり、活発に餌をあさる。
寿命は瀬戸内海で2〜3年、北海道で6年以上である。従って大きさも前者は14cm程度であるが、後者では25cm程に成長する。
夏眠
水温が15〜18℃以上になると砂の中に3〜10cm程度潜り、水温の下がる秋に起き出して活動を開始する。夏眠中は成長しない。
漁法
鮮度が落ちると値段が大幅に落ちる為、スピードが勝負である。網を上げてから一篭に約25kgずつ入れられ、1〜3時間後には店頭に並ぶ。
日の出前に出船し、3艘1組で漁をする。2艘の「こぎ船」が網を曳き、「て船」は出きるだけ早く網を揚げて新しい網と取り替える。獲れたイカナゴは直ちに船倉に入れられ、氷と海水でよく掻き混ぜ、魚体を締めながら港に運ばれる。
この呼吸が合わないとイカナゴ漁はできない。最盛期ともなると、帯状に延びる潮目に70〜80組も集まり、壮観である。
漁獲高
全国で約10万トンあり、兵庫は2〜3万トンでダントツの日本一。香川は7千トンの4位、大阪2千トン、岡山4百トン。
鮮度一番
獲りたての新子は魚体に透明感があるが、時間がたつにつれて白く濁り、赤っぽくなってくる。イカナゴの料理は、どんなに腕が良くても鮮度がよくないと上手に出来ない。
くぎ煮のルーツ
昭和24〜25年頃、兵庫県明石市の県立水産試験場で佃煮を作っていた。砂糖と醤油だけの従来の製法に水飴を加え、甘味のある独自の味を開発し、その色艶から「紅梅煮」と呼んでいた。
噂を聞きつけた近所のおかみさん達がそれを買いにきたが、役所は融通が利かない為、たとえ少量でも分けるとなると、受益者の住所氏名を明らかにして受領の認印が必要になる。それならと、現場の職員達が講習会を思いつき、調理法を伝授して各家庭で作ってもらえば文句も出ないとのことで、早速始めた。
その時の指導で、「手順を間違えると折れ曲がって“くぎ煮”になりますよ」と注意を与えたのが、「くぎ煮」という名の始まりである。
役所生まれの「くぎ煮」は家庭の味として広まり、明石や神戸地区の家々では現在、秘伝の味として、早春にはなくてはならない風物詩となっている。
食べ方
新子は釜揚げ、かき揚、柳川風鍋、から揚げ、くぎ煮、かなぎちりめんなど。
古背は釜揚げ、付け焼き、から揚げ、天ぷらや、背開きにして軽く塩を振り遠火でゆっくりと焼く塩焼き、10cm位を干したげんごべいなど。
  くぎ煮の作り方
    材料  いかなご 1kg  土しょうが 50g
         だし汁(濃口醤油200cc・中ザラ唐250g・みりん50cc・酒50cc)
    1.イカナゴをさっと水洗いし、水切りをする。
    2.だし汁が煮立ったところへ強火のままイカナゴを2〜3回に分けてしょうがと交互に入れ、アク取りをする。
    3.ふきこぼれない程度の強火で30〜40分煮込む。この時、アルミホイルに指で数ヶ所穴を開けた落とし蓋
      を使う。
    4.煮汁が少なくなったら弱火にし、煮汁がほとんど無くなるまで時々鍋返しをする。
    5.ザルに移し、手早く冷ます。
        ※ポイント
          まず鮮度の良いイカナゴをえらぶこと。そして、厚鍋を使い、崩れの原因となるので箸などでかき混
          ぜず、煮汁を手早く捨てるのがポイント。


              かますごの しの字に焼けつ くの字にも       暮 情
              ときなしの いかなご舟に 市もなく           信 一
              いかなごが 烏の嘴に 生きつをり           立 子


ウィンドウを閉じる