日本の旬・魚のお話

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日本の旬・魚のお話
日本の旬   魚のお話(夏の魚-7)
毛蟹(けがに)
戦前までは見向きもされなかったケガニだが、戦時中の食糧品統制を受けて売る物がなくなった時、長万部駅の構内立ち売り業者がしかたなく統制を受けてないケガニを茹でて売り出したところ、終戦後に飛ぶように売れ始めたという。
「タラバガニ」、「ズワイガニ」、「ケガニ」が三大蟹と云われており、カニ王国北海道の人達にはケガニが一番人気とのこと。その理由は、他のカニと比べて、カニ肉の甘味とカニ味噌に何とも云えない旨さがあるとのことらしい。
ケガニは、流氷が去る3月中旬から北海道のどこかの海で漁獲されるため、旬はそれぞれ異なる。
甲羅が8cm以上になって漁獲規制から外れるのに5年かかると云われ、年々資源が減少し、またサイズも小型化していることから、ロシアからの輸入に大半を頼っているのが現状。

           朝市の 毛蟹の一つ 泡を吹く 木暮 剛平
命名
日本名も英名も、甲羅から脚の先まではえている毛が名前の由来になっている。
仲間のクリガニに対して大クリガニとも呼ばれた。
   英名 Hair crab 、Horsehair crab
十脚目クリガニ科ケガニ属
クリガニ科で食用として利用されるのは、ケガニとクリガニ、トゲクリガニの3種である。
クリガニはケガニよりも中の側縁第4歯が大きく、全体としては五角形に近い。肉量が少ないので商品価値は低いが、ケガニの代用品として扱われている。
トゲクリガニは中央の2歯が明らかに小さく、青森県の陸奥(むつ)湾が主産地で、桜が咲く頃に漁が始まるので「桜ガニ」と呼ばれている。
形態
甲はやや縦に長い円みを帯びた四角形で、あまり硬くはない。額の中央部はV字型に切れ込み、その左右にそれぞれ2棘が並ぶ。その両側から側縁に向かって、三角形で先端の尖った5棘が鋸(のこぎり)状に並ぶ。
オスの腹部は幅が狭いが、メスの腹部は幅広く簡単に見分けられる。体色は黒味がかった赤橙色。
甲長、甲幅とも10cmを超え、一般にオスの方がかなり大きい。メスが小さいのは、抱卵期間が1年に及ぶことが要因らしい。
分布
水深30〜60mの砂泥底に生息し、通常は昼間に活動する。1〜15℃前後で生息し、4〜10℃が適水温。
ベーリング海から樺太、千島列島、北日本、朝鮮半島に分布する。日本の太平洋岸では仙台以北、日本海側では鳥取以北に生息する。
オホーツク海系群、噴火湾から襟裳岬に分布する系群、広尾から釧路に分布する釧路以西系群、釧路以東系群、奥尻島周辺の系群のほか、冬季にサハリンのアニワ湾南西部から宗谷海峡周辺に分布を広げてくる群も知られている。
オホーツク海系群と釧路以西系群は深浅移動が知られており、夏から秋かけて沖合に移動し、冬は沿岸へ移動する。
産卵
夏から冬にかけて交尾をする。釧路沖では8月から翌年の1月の間に、交尾期のオスが、脱皮して軟甲になるメスを歩脚を用いて背後から抱える。メスはオスに抱えられたまま脱皮を行う。
やがてメスが脱皮すると、オスはメスを仰向けにして上に乗り、歩脚でメスを抱えながら交尾針をメスの生殖孔に差し込んで精莢をメスの体内に送り込む。それに続いてセメントのような物質でメスの生殖孔を塞ぐ。
産卵は交尾の約1年後の秋か翌年の春に行われ、北海道では10〜11月となる。したがって、メスの産卵間隔は早くても2年間を要することになる。
卵は黄橙色をしており、直径0.8〜0.9mmの大きさで、産出される時にメスの体内に保管されていた精子によって受精した卵は、メスの腹部内の内肢に付着して卵塊となる。産卵数は甲長6cm前後のメスで4〜6万粒。産卵から孵化するまで1〜1年半と長い。
成長
孵化した幼生はゾエアからメガルパになり、また脱皮して稚ガニになる。生後2年まで1年間に3〜6回脱皮する。
その後、オスは4歳までは1年に1回、5歳以降は2〜3年に1回脱皮する。メスは3歳以降2〜3年間隔で脱皮を行うため、オスよりも成長が悪くなる。
着底した稚ガニは1年で甲長2〜3cm、2年で4〜5cmに成長する。その後、オスは3年で5〜7cm、4年で7〜9cmになる。
一方、メスは3〜5年で5〜6cm、6〜8年で6〜7cmになる。成体は肉食性で、エビ類などの小型甲殻類、多毛類などを摂取する。
漁法
刺網、手繰り網、カゴ網、底曳網によって漁獲されていたが、現在ではケガニ篭で漁獲される。
ケガニ篭は、導綱に9〜18m間隔で餌の入った篭を取り付け、二昼夜に渡ってケガニの生息する海底に設置して漁獲する。
漁場はカニの深浅移動に伴なって移動するが、オホーツク海は水深60〜130m、太平洋では100mが好漁場である。
漁獲量は2000トン前後で、需要の6割はロシアからの輸入に頼っている。
漁期は、上記の分布にある様に海域や系群によってことなる。需要は夏の7〜9月に年間の約半分を占め、土産品や中元などのギフト品として人気がある。
カニの養殖
カニ類は、商業サイズに成長するまでに時間がかかり、しかも稚ガニには共食いする性質があるため、完全養殖は難しい。そこで、幼ガニになった段階で放流する方法が行われている。
ケガニの缶詰
初めて製造されたのが1929年(昭和4年)、1955年に漁獲量がピークの27千トンとなって缶詰生産量もピークを迎えた。
それ以降は乱獲により激減し、カニ缶もズワイガニが中心となっていった。
カニの血液が赤くないのは
カニの血液は銅を含むヘモシアニンで、ほとんど無色透明な為、切っても血液がどの様に流れているのか判らないが、その代わりに鮮度判定に役立つ。
血液中にチロシナーゼという酵素が存在しており、この酵素は空気と接触する内にメラニンを形成し黒くなる。これを「黒変現象」と呼び、鮮度低下の指標となる。
カニの泡ふき
カニが陸上に上げられてもかなり長い時間平気でいられるのは、エラが海綿のように水を多く含んでいるため。しかし、時間が経つにつれてエラが渇き、呼吸が苦しくなってくる。そのため、エラのベタついた水に空気が混じって小さな泡となり、口の周りの呼吸孔からブクブクと泡が吹き出す。この状態は呼吸困難を起こしているということなので、カニにとっては大変な事態なのだ。
俗諺
蟹の爪がもがれたよう・・・・爪はカニにとって武器であり餌を採る大切な手だが、それをもがれたという状態から、頼り
                 を失い呆然自失の様をいう。
蟹の死にバサミ ・・・・・・・・・カニがいったん物を挟むと、爪がもげても放さないことから、欲深さや執念の深さを例えて
                 いう。
後這う蟹が餅を拾う ・・・・・・いつも「鵜の目鷹の目」でせかせかしていなくても、思わぬ幸運に行き当たることもあると
                 いう意で、人の運、不運を例える。
蟹の穴入り・・・・・・・・・・・・・カニが慌てて穴に逃げ込む様子から、慌てふためく状態をいう。
うろたえる蟹穴に入らず・・・穴もぐりの名人といわれるカニも、慌てふためくと、自分の穴がどこにあるのかわからなく
                 なるという意で、冷静に物事に対処しないと適切な判断や行動が出来ず失敗するという意。             
ケガニの旨さ
旨味成分のグリシン、アルギニン、タウリン、プロリン、アラニンの遊離アミノ酸が非常に多い一方、その他のアミノ酸が少ないという極端な片寄りがあるため。またアデニール酸の含有量もカニ類中では最高で、これらがケガニ特有の味を持つ決め手となっている。
堅カニ・若カニ・戻りカニ
堅カニ・・・・・身入りはもちろん味噌もたっぷりで、ケガニの中でも最高のカニをいう。
若カニ・・・・・身入りも少なく味噌も少ないので、生きているときはズッシリと重量感はあるも、茹でると身が僅かになっ
        てしまうカニをいう。
戻りカニ ・・・若カニの身と味噌の入りが戻ってきたカニをいうが、堅カニの旨さには及ばない。
カニの茹で方
脚を輪ゴムかヒモで結び、腹ブタの中に塩を入れ、甲羅を下にしてカニ味噌が流れない様にする。
活けものは水から茹でると脚がはずれにくくなる。大きめの鍋にカニが隠れるくらいの水を入れ、海水程度の塩分濃度になるよう塩を入れる。沸騰したら茹で煮過ぎず、15分ぐらいにする。
冷凍カニは、自然解凍を8割程度にしたほうが身の締まりもよい。また、自然解凍したのちに塩と酢を隠し味程度に加えた湯で茹で直した時は、蒸し直すと水っぽさが消える。
食べ方
生カニの脚肉をとりだし、そのまま食べるか、二杯酢やポン酢、ダシの入った酢などで食べる。
また、生カニを甲羅焼きや揚げ物にする。煮物や碗種などには茹でたものを利用する。
身肉をほぐしたものに塩や醤油などで好みの味を付け、殻の煮汁ダシで炊き込んでカニメシにしても美味しい。
洋風料理にはホワイトソースとの相性がよい。缶詰ものを用い、カニクリームコロッケやグラタタン、スープの具などによい。
中華料理には炒め物や揚げ物にするほか、卵とよく合うので「卵とじの甘酢あんかけ」にしたり、きのこ類と一緒にスープの具にし、溶き卵を流し入れてとじる。


               手押橇(そり) 泡噴く蟹を おとしけり       山下 喜子
               驚愕の 眼のとび出して 蟹走る         高橋 悦男
               手で毟(むし)る 毛蟹のうまさ 五月来る     中谷 五秋


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